<更新情報>
5月1日朝8:40 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」に関わるエピソードを<余談>のところに追記

 ゴールデンウィーク初日ですが、根室は朝から大粒の雪が降っています。真っ黒いアスファルトに雪が触れると融けていますが、裏通りはシャーベット状になってきました。気温が0-1度の間なので、日中は凍結の心配ななさそうです。
 数年前にも五月の連休に大雪が振りました。夏タイヤに換えていましたが、国道は大丈夫だろうと釧路までいきました。遠方へお出かけの方は、安全運転を心がけてください。無事がないよりです。

 さて、今日は本の紹介をします。原著は企業人である小寺次夫さん、企業人で富士通やシャープでシステム開発やマーケティングの仕事をしていた人です。そういう視点から進路選択と就活についてガイドブック(具体的な戦略マニュアル)を書いています。システム開発を伴う経営企画・経営管理畑の仕事が多かったわたしにはとっても興味深い「作品」です。
 高校1年生がイラストを描いて、高校の先生である鈴木朗さんが編集しています。もう一人中村洋四郎さん(元富士通工業専門学校長)、四人の方のコラボレーションによる出版です。

 故事成語やシステム関係の専門用語が出てきますが、これらは同じページの下段に説明書きが載っているので、辞書を引かずに高校生にも読めます。
 どういう人間になりたいのか、どういう職業に就きたいのか(「要求分析」のための小論文作成)、目標を設定するのは中高生の時期でですね。だから中高生にも読めるものでなくてはなりません。そういうところにフォーカスを絞って編集された本です。イラストを担当した高校1年生と編集担当の鈴木さんは高校生と大学生の読者に焦点を絞って小寺さんの旧著を若い人たちに受け容れやすいようにチェックを入れたようです。それが下段に設定された用語解説によく出ています。解説なしでは難しい本ですよ。マーケティングやシステム関係の専門知識がなければ意味のわからないところが頻繁に出てくることになったでしょう。小寺さんはプロ、仕事人だから説明にはどうしても専門用語が混じってしまいます。そのほうが物事を精確に書けるからです。そういう専門的な内容と高校1年生のイラストと下段の用語解説の按配がじつにバランスがよくて、群を抜いています。なんということでしょう、こんなに読者フレンドリーな本があるでしょうか、ビックリポンです。
 昨日、編集者の鈴木朗さんから贈っていただき、さっそく全部読みました。高校生と大学生は進路選択や就活のために手元に一冊置いておきたい本です

 以下に目次を並べるので、内容は本をごらん戴きたい。
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 高校生が絵を担当
  総合力アップのためのガイドブック
    夢こそ生きる力
   企業人の教えが生きカエル
 (バドミントンラケットをもったカエルのイラストが描いてあります)

第1章 あなたの未来を考えるための準備
     ~仕事を考えて自分の特徴を学ぼう~
第2章 自分を売り込むノウハウを学ぼう
     ~潜在顧客への働きかけ「パーミッション・マーケティング」~
     就職活動で営業のノウハウを学んでみよう
第3章 企業志望動機の焦点の絞り方
     ~就職活動は志望理由から始める~
      第1節 志望理由作成のポイント
      第2節 学生生活の目標を小論文にまとめる
      第3節 志望理由がうまく書ける会社は、自分に適している
      第4節 自分のビジョンを明確にする

第4章 会社訪問ワンポイント・レッスン
     ~マーケティングを通して会社を見る目を養おう~
      第1節 会社訪問における質問のポイント
      第2節 正面受付に隠れたメッセージを読み取ろう
      第3節 会社の内部をチェック
      第4節 先輩との面接時のポイント

第5章 就職試験における実践テクニック
     ~シナリオ・プランニング的発送で小論文を乗り切ろう~
      第1節 小論文は点数を稼げる
      第2節 ペーパー試験は最後まで粘れ
      第3節 面接では正直に個性を出すことを心がけよ

付録1 就職活動を行うためのチェックポイント・フローチャート
付録2 小論文のやさしいチェック項目
付録3 本書の利用の仕方           

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 目次を見ただけで読みたくなったでしょう。
 ほとんどのページにカラーの図やイラスト、そして用語解説が載っています。若い人たちに読んでもらいたいという想いが高校1年生の参加で見事な形になった。年代を超えたコラボレーションがすばらしい作品を生み出す力であることを思い知らされました。
 進路選択に迷っている高校生、就活はまだ先のことだと思っている大学1・2年生、就活をはじめた大学3・4年生、たくさんの人に読んで参考にしてもらいたい本です。

『総合力アップのためのガイドブック 夢こそ生きる力』
 原作小寺次夫、編集鈴木朗、イラスト鈴木萌花(高校1年生)、2016年4月15日発行、
 出版社「星奈のお店」、本体1200円+消費税
   ISBN978-4-9908905-0-6
*http://www.seina-shop.com/
 http://www.seina-shop.com/service/book.html

 この二つのURLに本の画像が載っています。下段のURLに本の大きな画像と注文票のボタンがあります。本屋さんで注文するときはISBNコードを控えていって注文してください。

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<用語解説>
permission marketing: one to one marketingの進化型。

*IT用語辞典より
http://e-words.jp/w/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0.html

 パーミッションマーケティングとは、顧客や消費者の許可を得て行うマーケティング活動。あらかじめ承認を受けた顧客や消費者に対してのみ勧誘や販売をするため、レスポンス率が高く強引さを感じさせないという特徴がある。企業と顧客の間に長期的な友好関係を築くのに有効な手法である。

ポータルサイト世界最大手のYahoo!社の副社長をつとめていたSeth Godin氏が提唱した概念で、個々の消費者や顧客の嗜好やニーズなどに合わせて一人一人個別に展開される「One to Oneマーケティング」をさらに進化させた形態ということができる。

現在、最も一般的なパーミッションマーケティングとして、消費者があらかじめ自分の趣味や嗜好を登録し、それに関連した企業からのメッセージを受け取ることを許可した上で配信される「オプトインメール」と呼ばれるダイレクトメール広告が挙げられる。
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<余談:続編への期待>
 この本は主として、大学生向けに、そして大企業へ就活する人たちを対象とした就活戦略マニュアルのようですが、どんな就活にも共通することがふんだんに載っているので、高校生や専門学校生のみなさんの就活の役にも立つことでしょう。

 ところで、いったん就職してもそれが非正規雇用である場合が半数を占めているというのが昨今の就職事情です。
 あきらめずに再チャレンジし続けている人たちがたくさんいます。だから、一度就職に失敗した人たちのための就活マニュアルへのニーズが大きいのだと感じています。
 就職に一度失敗して、就活に再チャレンジする人たちのためにもこの本は役に立ちますが、再就職の就活に焦点を絞ってこの本の続編が出版されたらいいなと思いました。

 わたしは、SRLにいたときに、業界3位の会社に"proposal marketing"を考えていたことがあります。生産システムと利益志向の原価計算システムを組み合わせた業界の順位を入れ替える攻撃的で魅力的な長期戦略提案でした。業界3位を1位にする「戦略提案売り込み型」の転職です、実現するためには自分が指揮する必要がありました。それまで同じ業界では転職しないという原則を貫いてきたので悩みました。結局のところ構想だけにとどめて実行はしませんでした。業界3位が1位になるのはそんなに難しいことではありません。具体的なビジョンとやりきる意志、そして経営能力があれば可能です。そうですね、生産や経営の仕組みそして社員の意識を根底から変えてしまいますから、おおよそ、10年かかります。創造的なプロの技ですから、書いたものでは伝わりません。ビリヤードのプロの技と同じです。利益志向のシミュレーションシステムを包含したまったく新しいアイデアの原価計算システムの部分だけは50年後の人工知能が創造できるようになるでしょう。
 社員がこの会社でずっと働いていたい、働いていると自分のスキルがぐんぐん上がっていく、社員の処遇が業界No.1、この会社はお客様のためにとっても役立っている、仕入先のために役立っている、会社に関係するすべての人々を幸福にする、そういう風に社員が信じられる会社が業界ナンバーワンであるような経済社会を造りたいものです。これとは反対に、儲けることが至上命題になっているような会社経営者は下種(ゲス)の極みです。そういう会社はよく見えてもどこかで高転びに転びます。言いたいことは、企業経営は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」を貫けということです。創業200年以上の会社の多くがそういう経営を貫いています。念のために書いておきますが、「世間」の中には非正規雇用や外注先も入ります。

 原著者の小寺さんは、昨年根室を訪れ、啓雲中学校でバドミントンのトレーニング法を教えてくれました。バド部みなさんたち、目を輝かせてトレーニング法を真似てました。
 弊ブログのコメント欄にときどき投稿してくださっています。


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