<更新情報>
8/11 9時 <余談>追記 


 8月6日13時半から15時まで、根室振興局地域政策課の主催で標記の会が開催された。
 参加メンバーは公募の2人(SSさんとIさん)と振興局のご指名が6人。「出席者名簿」の順に紹介する。個人名は書かない。

 根室市文化推進協会代表 Fさん
 大地未来信用金庫地域みらい創造センター次長 Mさん
 北海道教育文化研究所副所長 Iさん
 根室地域障害者が暮らしやすい地域づくり委員会代表 SSさん(女性)
 一般社団法人Be-W.A.C代表 YMさん(女性)
 日本ロングトレイル協会北根室ランチウェイ代表 SMさん
 知床標津マルワ食品 代表取締役 Tさん
 公益財団法人知床財団普及・情報係長 YSさん(女性)

 司会は北海道総合政策部政策局計画推進課主幹佐々木敏氏。

(公募が受け付けられると、道庁作成の資料が事前に郵送されてきました。)
 配布資料は次の5種類です。語る会とはいってもすでに論点が決められていました。

資料1:北海道の総合計画について
資料2:新しい総合計画の策定に向けた考え方
資料3:道民意識調査の概要(平成26年7月)
資料4:企業等意向調査の概要(平成27年1~2月)
資料5:地域懇談会(グループインタビュー)の概要


 1時30分ぴったりに会議が始まった。道庁側の作成資料と住民アンケートの説明が30分、自己紹介と道側が整理した論点ごとに出席者に意見が求められた。
 佐々木主幹は端から順に4分以内でまとめるように言い添えて意見を求めた。お膳立てしたあったテーマの最後の項目「北海道の地域や未来を担う多様な人材」は時間切れできなかった。終わりの方で急いでまとめて、3時ジャストに終了。手際がいいのか悪いのか判断がつかないヘンな会議となった。
 民間会社では、ターゲットを決めたら、とことん話し合う。決めた時間をオーバするなら、日を改めて結論が出るまで議論する。仕事とはそういうものだ。民間企業で時間で働くのはパートタイマーの賃労働者。


 座っている席の順に、道庁側に近い方から佐々木さんが指名。
 最初はIさん。Iさんは教育関係者だから、根室市内の生徒たちの学力がこの十年間で著しく低下したことをデータを挙げて簡単に説明した。市街化地域の3中学校では学年の3~4割が小学4年生程度の「読み書き計算」があやしい現状は、根室の未来に深刻なダメージを与えるだろうと警告した。その一方で学力上位層の枯渇化現象が起きている。10年前には市街化地域の3校だけで学力テスト5科目合計点が1学年400点以上が40~50人いたが、現在は4~12人程度に激減。高学力層を厚くして地域医療を守るためにも地元出身の医師を増やす努力をすべきだと話した。人口減少問題と絡めて地元企業のオープン経営への切り替えを提起したかったが、4分だから学力問題だけに絞った。

 2番目は障碍者の団体の代表SSさん。障碍者に働く場所がほしいという切実な願いを吐露した。

 3番目はロングトレイルのSMさん。北根室でロングトレイル、ようするにフットパスだがそれで北根室に人を呼び込もうというわけだ。歩くことが人間の基本だと持論を展開していた。だから、本は読まないし、偏差値の高い生徒を医者にするなんて意味がないとこれも持論を展開。

 4番目は標津でしゃけ節を試験製造している食品会社のTさん。焼津に通って製造技術を教えてもらった苦労段を語った。現在8人雇って手作りでしゃけ節をつくっているという。鰹節と違った出汁がでるので、これを普及できたら、日本食に別の出汁が加わることになると夢を語った。

 5番目は根室市文化推進協会代表のFさん。この人は東京から移住してきた宝飾デザイナー。根室のよさを宣伝して、根室に移住者を呼び込みたいと夢を語った。

 6番目は台地みらい信金のMさん。企業をつないで、地元企業のネットワークをつくりたいと、仕事の夢を語る。

 7番目は社団法人Be-W.A.CのYMさん、「べっかいわくわく」を記号化してネーミング。コミュニティセンターをつくって、お母さんたちの交流を促進しているようだ。東京出身で、別海の漁師の嫁に来たと自己紹介。

 8番目は知床からYSさん。横浜出身の方。知床が世界遺産に登録されて、財団の普及・情報係長はこの人で3代目(?)かな。知床の自然を利用して人を呼び込みたいと夢を語った。

 意見の出た問題のひとつは地域医療を支えるために地元出身の医師を増やすこと。これにはロングトレイルのSMさんが反対、偏差値の高い者を医者にしたって意味がないという意見。Iさんは学力上位層が激減しているので、地元から医師を出すのが困難になっているので、学力上位層を育てる方策が必要だと発言しただけ。学力は高いが医者になりたくない者をむりやり医者にするような話はしていないが、そう受け取った様子。実際には、学年トップクラスの生徒が何人も医師になりたいと思っていながら、高校生になって全国レベルを知ることで、学力不足を痛感して断念するのをIさんは何人も見ている。根室の中学生は全国レベルを知らずに学校生活を送っている。能力が高くてもスタートが遅れたらアウトである。首都圏では小学校4年から中学受験で勉強をスタートさせる。
 医師が足りないなら、東京から呼べばいいというのがFさんとYMさん。Fさんは3年前に移住してきたが、根室の医療事情がお分かりではない様子、YMさんは別海(尾岱沼)だからそういう根室の深刻なニーズをご存じない。別海も中標津も医師不足で困ったという事態を引き起こしていない、医師不足で困っているのは根室管内で根室市だけの固有の問題なのである。それは市政の失政と関連がある。
 学力問題で、大地みらい信金のMさんから面白い意見が出た。札幌支店に転勤になった同僚の子どもたちがまいっているというのである。授業のレベルが高く、宿題の多いことにへたっているという。根室の小中学校の宿題は他地域に比べて極点に少ないのが実情である。ある転勤族が中標津から来たときに、宿題の少なさに驚いていた。こんなに少なくて、根室以外のところへ転勤になったときに大丈夫かと不安をもらしていた。根室の常識は他地域では非常識、とくに学力問題でその傾向が強い。
 Iさんは、学齢期前の家庭の躾と小学校入学時の家庭学習習慣の躾が大事であることを指摘。

 次に、地域の未来を担う子どもたちの学力がこの十年間で著しく低下したことに対してのご意見。遊びが足りない、体力と学力には関係があるという意見を披露したのはYMさん。大人がこどもに遊びを教えるべきだというのはロングトレイルのSMさんの他にお二人いた。ようするに施設を作り、そこで大人が子どもに遊びを教えればいいというのである。よく遊ぶ子は体力もつき勉強もできるようになる、もっともなご意見。
 しかし、よく考えてみてほしい、子どもは遊び方を大人から教えてもらうものなのだろうか?団塊世代のIさんは次のように語っていた。
 市立根室病院下に「古川の池」があって、そこにはトン魚やゲンゴロウ、蛙や大きいカラス貝が生息していて、近所の子どもたちの格好の遊び場になっていた。本町の海岸には石組みの突堤があり、石にはつぶ貝がびっしりついていて、石の隙間には小魚が泳いでいた。そこは子どもたちの遊び場になっていた。ひざまで海につかるとウニもいた。花咲小学校下の海岸は砂浜で子どもたちが遊べた。布切れの端をつかんで友達と二人で2mも移動すればイカやタコの幼生や海老がとれた。花咲小学校のグランドの後ろは、原野で長いスロープがあり、スキーやソリの遊び場だった。雪が降っていなければ放課後は生徒たちがたくさん遊んでいた。北海道銀行のあるところは空き地で、近所の子どもたちが、「缶けり」「ケンパ」「ドッチボール」などをして遊んだ。家の裏の空き地では、「ビー玉」「パッチ」「釘刺し」「パチンコ」など外遊びの種類は多かった。昔は生活圏内に子どもの遊び場がたくさんあったが、いま60年前に主要な遊び場だった場所がひとつも残っていない。岸壁の埋め立てや特定地域の再開発をするときには子どもの遊び場をつぶしていないかよくよく検討すべきである。   
 以上がIさんの発言の趣旨。
 大人に教えてもらって覚えた遊びはほとんど記憶がないというの団塊世代の共通認識だろう。こどもたちは遊びの発明の名人である。生活圏内に遊び場があることが、外遊びの絶対条件である。車で親に連れて行ってもらわないと遊べないようなところでは、頻度が少なくて体力がつくわけがない。
 東京から尾岱沼の漁師の嫁に来たYMさんは、地元にずっと住んでいたわけではないから、その辺の環境変化がわからないから、無理もないのである。

 地域医療に関して、Iさんから次のような提案があった。人口99万人の地域にに医科大学が一つもないのは道東だけである。道東の地域医療に責任を持つ「道東医科大学」を釧路に誘致してもらいたい。そのための道庁と道東の各市町村長は結束して医科大学誘致運動を起こすべきだ。

 花咲線廃線問題をIさんが提起。利用しない鉄道線路は廃線になるのは当然と、標津線の廃線の経緯を思い出してSMさんが発言。ボランティア活動を主体とするNPO法人を事業の受け皿にしたときに、どういう採算になるのか道庁のほうから北海道JRに申し入れを行ってほしいとIさん。モデルケースが創れるかもしれない。やってみる価値はあるだろう。
 釧路⇔根室間の線路脇にロングトレイルをつくれば、スコットランドのように鉄道利用者が増えて鉄道が存続できるとSMさんが我田引水のご意見。

 障碍者雇用の問題については障碍者雇用促進法という法律で、一定規模以上の企業は雇用を義務付けられているが、その点はどうなのか根室振興局からも道側からも数字の提示がなかった。出席者の肩書きを考えたら当然予想できた発言だが、事前に肩書き入りの応募書類を贈ってあるはずなのに、何の準備もなかった様子に、唖然としてしまった。根室振興局道庁はこの問題への関心度が低そうである。わたしが、道庁側の人間なら、事前に出席者の肩書きをチェックして、事前に調べておくべきデータの指示はする。有能な部下が独りいれば、そんな指示も不要である。

 Fさんは、バックのメーカとジェリーのコラボレーション展示会を東京品川で開催したという。根室をテーマにしたデザインのものを並べ毎日30万人×30日=1000万人の人に根室を知ってもらったと報告。計算根拠がよくわからないが、東京新宿西口駅前の広場でときどき地方の物産展をやることがあったが、あそこなら一日百万人×30日で3千万人の人に根室を知ってもらえるのだろうか?
 それが若い人に移住につながるなら結構な話だ。いろいろ活動した結果、移住実績は何人あったのだろう?人口動態データをみるとピントが外れているといえる。前に弊ブログで出生・死亡・転入・転出データを10年間ほど並べたことがあった。根室の人口減少は毎年450人前後、高校を卒業して進学のために転出するのが毎年150人、このほとんどが戻ってこない。それ以上に大人が根室を離れていっている。人口減少を食い止めるためには、移住を促進ではなく、地元から若い人の流出をどれだけ減らせるかをターゲットにするのが本筋だろう。

 根室の人口減少の主たる原因は若い人が夢をもって働ける企業が少ないことによる。同族企業でオーナが会社を私物化していては社員が意欲をもって働けるわけがないし、親だって自分が勤務していた企業に子どもが就職するのを喜ばない現実がある。企業は公器でもあるから、決算・予算情報は従業員へ公開すべきだ。基本に立ち返ったこういう努力を惜しんではならない
 高校を卒業して毎年150人ほどが根室を離れて進学し、戻ってこない。転入転出の差は300~500人だから、高校生の流出だけでは説明がつかない。定年退職をして根室を離れる例が多いのは高校の先生や市役所職員が多いと聞く。子どもが大学へ進学して戻ってこないから、定年になったら親のほうから、子どもたちの住む都会へ移住する人が多いのかもしれない。
 道庁からの出向者である歴代の教育長3人は教育長の任を解かれると、すぐに根室を離れている。

〈配布された道の住民調査資料から〉
 「資料3」によれば、「できれば今と同じ市町村に住んでいたい」という道民の割合は76.2%である。根室では2009年6月に実施した青年会議所の調査資料がある。そのアンケート調査では「ずっと住み続けたい」と回答したのは8.3%に過ぎず、「できれば住み続けたい」が46.1%、両方あわせても49.9%である。市民の43%が「住み続けたくない」と回答している。
(一昨日北見へ行って来たが、駅前商店街はしっかり残っていた。駅前通りの2番街と三番街がアーケードとなっていて、にぎわっていた。活気のある町に感じた。北見市の人口は12.6万人である。商店街の規模は人口18万人の釧路市よりも、よほど大きく活気があった。)
 道民意識と根室市民意識のこのギャップをどのように分析するのかが問われてよかった、市政に関与できるのは「10%のオール根室村」という閉鎖性が大きな問題であることは論を俟たない。
 同じ資料の「ウ 今後の社会的問題について」に「老後の生活」に不安を感じている人が84%もいる。ほとんどの人が老後の生活に不安を抱えている。子どもがそばにいないことや地域医療が貧弱なこと(根室は療養型病床がⅠベッドもない珍しい市である)、公共交通機関が風前の灯であることが主要な原因だろう。
 そういうわたしは、1年おきくらいに母親の様子を見るために、東京からふるさとを訪れていたが、あるときに、帰ろうとしたら寂しさに耐えかねて目にいっぱい涙を浮かべて見送る母を見たときにふるさとへ戻る決心をした。もともと、50歳になったら、ふるさとに戻って役に立ちたいと考えていた。
 その母親を4年前に見送って、こんどは娘の願いを聞かなければならない。
 「お父さん、根室で死なないで、元気なうちに東京へ戻ってきて、冷たくなったお父さんにあうのはいやだから」、これにはまいった。
 でも、根室にいる、もうだめだと思うまでは。

  会議が3時ちょうどに終わったあとでIさんが大地みらいのMさんに話しかけた。店頭公開企業を一つ創ってみないか、そうすれば人口減少の歯止めになる。大地みらいも超優良顧客を確保できる。一社やれば、オーナは数十億円を手にできるから、あとに続くものが必ずでる。最初の一社をどう創るかが決め手になる。店頭公開2社、東証Ⅱ部と東証Ⅰ部上場と4回の上場に関与した人材は北海道ではただひとりIさんのみ、大地みらい信金とIさんが組めば、根室の未来が切り拓けるだろう。これは民間にしかできないことだ。
 大地みらい信金さん、全国の信金で株式の店頭公開をバックアップしたところはまだないよ、もしやり遂げたら全国一の信金だと胸を張っていい。田舎信金のままで終わるもよし、仕事の内容が全国トップの信金になるもよしだ。もう12年間見送り続けた、来年着手できなければチャンスは二度と来ないだろう。仕事を担うにたる人材なしにはことは成らない。そんなに難しい仕事ではないのだからやってみたらいかが?

 次回は、Iさんが事前に作成しておいたメモを公開したい。


〈参考〉
*2009年6月の根室青年会議所による「市民意識アンケート調査」
 http://ameblo.jp/nemurojc-b/entry-10283985445.html

 このアンケート調査はサンプルに偏りがあり、初歩的なところで問題が多いことを承知で数字を挙げておく。
 43%の市民が根室に住み続けたくないと答えている筆頭に上がっているのが「医療・福祉」である。病院建て替え問題一つとってもその好い加減さに市民はうんざりしている。市民の思いは市政に反映されない、あきらめが広がっていると見るべきだろう。だが、諦めてはならぬ、いい町をつくるのはそこに住む住民以外に誰がいる?

<余談>
 道庁は毎年同じテーマ(人口減対策)を掲げているのではないか。高橋はるみ知事は4期目の道政の舵取りをしているが、人口減対策に関してはなす術がない。やることははっきりしている、北海道には優良な企業が少ないから、毎年若者が大量に流出していく。「雇用の確保が急務だ」と2008年の北海道新聞社説も述べている。そんなことは誰もがわかっていることだが、だれも答えが出せない、だから北海道総合政策部政策局計画推進課は毎年同じ課題と取り組んでいる。答えは簡単、オープン経営に切り替える仕掛けをつくればいい、そして店頭公開企業を増やせばいいのである。前者は道と市町村のやること、後者は民間のやることだ。
 2008年4月18日の道新社説をご覧いただきたい。

*#171道内人口急減 知恵絞り地域守らねば(道新・社説)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-04-17





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