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#4697 大谷真一先生ありがとうございました:市立根室病院眼科医 Jan. 20, 2022 [29. 道東の地域医療を考える]

 今朝の最低気温を見ると-4.4度、二十四節気で最終節で「大寒」、最も寒い時期とされています。それで数日前に載ったいささか寒い感じのした記事を思い出しました。前からそろそろと思っていましたが、そういう時期が来てしまったようです。

 旭川医大から元学長の好意で根室へ常勤医として赴任されていた市立根室病院の眼科部長大谷真一先生が2月1日の診療で退職されると1月15日の北海道新聞が報じていました。大谷先生は2015年6月に来られて、6年半精力的に診療と手術をこなしてこられました。白内障の手術だけでも毎週水曜日平均して5人くらいやってこられたようです。
 わたしも大谷先生がなされた白内障患者手術1500人のうちの一人です。6年間の先生の仕事の大きさを感じずにはいられません。老人人口が8000人ほどいますから、白内障患者や緑内障患者が多いのです。眼科はいつも混雑しています。
 白内障手術をしていただいて、わかったのですが、手術は4人のチームでなされますが、息がピタッとあっていました。点滴での麻酔だけですから全部聞こえます。手術が始まると水晶体が破壊されて吸引されると何も見えなくなり、終わると同時にプラスチックレンズを通して光が眼に入り、周囲がが見えます。あれは感激と驚きでした。
 手術機器もツァイス社製の最高性能のものでした。光学系はツァイスが最高です。ソニーのカメラがツァイスのレンズを使用しています。

(最大手の検査センターSRL八王子ラボで機器の購入を担当していた時(1987-89)に、ウィルス検査室の蛍光顕微鏡の半分以上くらいがニコンやオリンパス製だったのですが、それらを全部ツァイス社製のものに買い替たことがありました。入社してすぐに、東証2部上場審査要件で、暗礁に乗り上げていた経営情報系システムを8か月で稼働させ全社の予算編成を担当して、検査試薬の値引き交渉を提案し、製薬メーカーと直接交渉して毎年16億円ほどコストカットを3年間やったので、わたしは当時平社員でも権限が大きかったのです。経理担当役員Iさん(ガンちゃん)と専務のY口さんがたしの提案にはノーは言いません。オリンパスの2倍近い、ニコンの1.5倍の値段でしたが、性能がいい。世界最高性能のものを使わないと、最高品質の検査はできないし、なにより検査をしている人たちに最高のものを使っていい仕事をしてもらいたかった、単純な理由です。「え、全部ツァイスの蛍光顕微鏡にしてくれるのですか」とウィルス検査課の課長の驚いた顔が眼に浮かびます。)

 患者の側から見ると、同じドクターに診察してもらうのが安心なのです。いままでの病態を理解してくれていますから。わたしは白内障手術をしていただいたほうの眼は緑内障の前駆症状があり、年に2度経過観察中です。
 医師が変わると治療方針も変わることが多く、それで不安になる患者もいます。3年くらいの間に頻繁にドクターが変わって不安を抱いていた知り合いの患者さんの話を古里の戻って2年目くらい(2004年頃)に聞いたことがありました。そのときは自分が眼科で受診することなんかないと思っていました。ところが加齢とともに状況は変わりました、他人ごとではなかったのです。

 同級生の劇画家、神田たけしの五十周年展示会を見に行ったときだったか、大谷先生が奥様と男のお子さんと文化会館前で遊んでいるのを偶然おみかけしました。ああ、小さいお子さんがいるんだと思ったのと、先生がずいぶん背が高いので驚きました。一度、診察の合間に北海道の北部の方へ勤務が変わったら、適当な塾があるだろうかとお尋ねになりました。僻地の高校からは医大への現役進学がとっても困難であることを自身の進学で経験していたからでしょうね。やはり札幌がいい、札幌南高校がダントツに実績があります。そのようにお答えしたように思います。

 わたしの勝手な推測ですが、おそらくお子さんの教育が最優先事項だったのではないかと思います。そろそろピカピカの1年生、お子さんは札幌の小学校に通学と考えるのが合理的です。勝手なことを書いて申し訳ありません。根室の地域医療の未来を考えるときにとっても大切な論点なので、あえて言及させていただきました。

 市立根室病院では学齢期のお子さんのいるドクターはいないのでは?理由は簡単、根室は教育の僻地です、学力が低い。根室高校は偏差値45の高校です。首都圏の偏差値45の学校から国公立大学医学部の進学実績はゼロでしょうね。ありえない話なのです。根室は高校が1校ですから、生徒は玉石混交なのです。うまく育てたら、同レベルの難関大学に毎年3-5人現役合格者が出せるポテンシャルがあります。それが実現できていないだけ。たった一人ですが、7年通塾して国立旭川医大へ合格した生徒が昨年現れました。
 根室高校から、毎年国公立医大へ現役合格者が出せたら、あるいは大谷先生は市立根室病院勤務をもっと長く続けてくれたかもしれませんね。地域医療の充実を考えるときに、教育抜きでは打てる手が狭くなります。根室は地域医療を守るためにも、高学力の生徒を育てるべきです。わたしのブログには具体的な提案や、実際にやってきたことの記録が残されていますから、参考にしてもらいたい。

 ところで、大谷先生は旭川医大出身で、岡田医院の消化器内科専門医である岡田優二先生の後輩です。
 数年前に東京のメガネ屋さんで視力検査をしたとき、一度眼科を受診した方がいいと言われて、東京の住まいの近くの眼科クリニックを受診したら白内障との診断があり、手術を決めました。根室に戻って主治医の岡田先生に相談したら、腕のいい後輩が市立根室病院にいるから紹介状を書いてあげると言われて、お願いしました。分厚い紹介状を開いて開口一番、「岡田先生とどういうご関係ですか?」と問われ、「小さな塾をやっていて息子さんを教えています、それだけです」とお答えしました。
 なにかで岡田君の現役合格を知って、進学校じゃない道内の高校から現役で旭川医大へ合格するのはほとんど不可能なのだとおっしゃって、わがことのように喜んでくれました。

 次回の眼科の診察は出張医の方が担当してくれるようです。2/2から3月末までは出張医で対応と、新聞記事に載っています。異動の時期までのピンチヒッターが派遣医、4月からは常勤医のドクターが決まっているということでしょうね。眼科の患者にとってはありがたい。
 大谷真一先生、お世話になりました。


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くまを

すみませんひとつ前。小学生時代に道新のコラム「卓上四季」にはルビがあったというくだり、わたしは漫画の吹き出しのルビで漢字を覚えたなあと思い出しました。

ほとんどすべての週刊漫画誌を読んでいたのは、裕福だったのではありません。父が鉄道マンだったため終着駅根室で棚に置いたまま降車するのを持ってきてくれたのです。

そのうち活字に飢えて世界文学全集なども買い揃えてくれたのですが。どうもただの物語より図版のある子ども百科事典のほうに向いてしまう。果ては大人用の大日本百科事典(まだ学習帳に「ジャポニカ」の名が残ってます)も全巻読み尽くしました。

北斗小学校3年の担任だった豊原先生が、当時放映されていた人気アニメ「夕やけ番長」の荘司としお先生と従兄弟で、むかし防空壕で遊んだという話を聞き大興奮。

同級生3人で描いていたマンガを雑誌に仕立て、父兄参観日に「ご自由にごらんください」とやったのです。
いま思えばよくそんなことを許してくれた。
まだまだ「漫画は教育上よろしくない」とされてたはずです。
(当時「ハレンチ学園」がPTAから有害認定されてたはず、しかし父は少年ジャンプは持ち帰りませんでした)

劇画の神田たけ志先生は根室出身だったのですね。
わたしも「御用牙」読んだことがあります。

北海道は漫画家のみならずアーティストも多く輩出しているのはやはりおおらかな風土にあるのかもしれません。

ちなみにわたしがつまみ食いした「世界文学全集」は娘たちが完読し、また荘司としお先生のもうひとつの代表作「サイクル野郎」全37巻もボロボロになったのでした。

by くまを (2022-01-21 00:30) 

ebisu

くまをさん
投稿ありがとうございます。
コンピュータ印刷が導入されるまでは、北海道新聞にはいい塩梅にルビがふってありました。総ルビではなかったように思います。
いまコンピュータ編集印刷にはルビを振ることについては制限がなくなりましたが、もうひと世代もルビを振らなかったので、どの程度ルビを振ればいいのか、いま現場の記者さんや編集者にはわからないものになっているようです。
昔の新聞が北海道新聞に保管してあるでしょうから、調べりゃいいだけです。
それよりも、書き手の方が常用漢字で書きなれてしまって、難読字を使って文章が書けないようになっています。これは文化破壊です。仮定の仮は正しい字に変換できません。どうもこの字は気持ちが悪い。意味が違うので。大辞林を引いても旧字が出てきません。假というのが正字です。の旁の原義は「まことにあらざるなり」です。「反」にはそういう意味がまったくないのです。
表意文字のはずが、いつのまにか元の意味とはまったく別の表音文字化してしまいました。これでは漢和辞典をいくら引いても「新字」では意味が解らない。

劇画家の神田は本名は神田猛といいます。高校2年から同級生でした。かれは柏陵中学校出身です。総番長のヒロシとは家も近かった。3年G組。面白いクラスでしたよ。個性的な人間が集まっていました。学校側の方からすると「掃きだめ」でした。担任はベテランの冨岡良夫先生。他の先生では無理でしたね。(笑)
何しだすかわかりません。じっさいに総番制度を破壊する「13対7の決闘」なんて文字が北海道新聞に載りました。3年生と引継ぎでもめたようです。
丸刈り坊主の校則改正もわたしたちがやりました。そういうなかで、3Gが台風の目、エネルギーの中心でした。あのクラスでよかった。わたしは1年生と時はF組でしたが、担任にたいそう嫌われて2年次でG組へ。猛獣の檻へもう一頭猛獣を入れたようなものです。ヒロシと息があってしまった。先生たちから見たら、まったく毛色の違う二人でしたが、お互いに、同じ気質を相手に認めていたのです。
タケシは3年生の夏にアルバイトしてお金をためて、サイトウタカオの元へ飛び込みました。高校中退して劇画に人生賭けるなんてやつは滅多にいないでしょうから、サイトウタカオ先生、先に来ていた弟子6人を差し置いても特別かわいかったはず。4年くらいで独立してます。3年間は税務申告頼まれてやってあげました。3年目に、所得も増えたし、税理士に頼めといって手を引きました。
ひょんなことから、義理の兄弟ということになっています。
人生は何が起きるかわからない、だから楽しい。

中学1年生の時にわたしに漫画の週刊誌が出たのを教えてくれた同級生はトビサワケンジ。手塚治虫の真似がとっても上手でした。絵の才能があり、美術の岡田先生が彼の絵を展覧会に出すと、きまって賞をもらってました。あいつには絵ではかなわない、それでしかたなく勉強の方へしふと。少年サンデーか少年マガジンだったか、すぐに両方読んでました。少年キングというのもあった。ビリヤード店を手伝っていたので、お小遣いはたくさんあり、自分で買って読んでました。小学生から高校卒業まで、ずっと店番手伝ってましたので、門前の小僧で、ビリヤードの腕前は確かでした。(笑)
言い訳ではありませんが、勉強時間がなかった。だから、短時間で勉強する術が身につきました。授業を全力で聞いて、全部覚えてしまいます。店番しながら、その日に先生が黒板に書いた字を思い出します。数分で復習できました。ビリヤードを脳の中で無限にやることができたので、その技を中2のときに勉強に使ってみたのです。効果抜群でした。びっくりするほど成績は上がりました。
「必要は発明の母」「窮すれば通ず」
この言葉を絵にかいたようなものでした。
店番しながら、お客の相手をしていない数分間に、脳裏にその日の黒板に書かれたものをくっきり思い出すだけでよかった。それで記憶が定着しました。後はページをめくるように記憶にある黒板を見ればいいだけ。
将棋のプロが、将棋の差し手を記憶するようなものです。夢中になってやったことは、だれでも思い出しやすいのでしょう。
小学生高学年のときには、布団に入るとグリーンのラシャのビリヤードテーブルと、白いボールと赤いボールが頭に浮かんでいくらでもゲームが続けられました。
あれが、「脳トレ」だったようです。脳のキャパが大きくなったと思います。子どもには、夢中で遊ぶ時期が数年間どうしても必要です。
勉強だけしていても、勉強ができるようになるのは高が知れています。飛躍的に伸びるのは夢中で遊んだ経験のたくさんある子供だけかもしれませんよ。
わたしには、勉強と遊びは混然一体で、ある部分では区別がつかないのです。

くまをさんも夢中で漫画の本を読んだ時期があった。そして百科事典や文学全集へ。いい少年時代でしたね。両親に感謝しているでしょうね。(笑)

by ebisu (2022-01-21 13:04) 

内海成彰

おつかれ様です大谷先生!
ここ数年病院の悪い噂ばかりしか聞きませんでしたが、眼科だけは良い噂しかありませんでしたよ。
by 内海成彰 (2022-01-28 08:58) 

ebisu

ハンドルネーム内海成彰さん

明後日の2/1が大谷先生の根室での診療の最終日になってしまいますね。
白内障の手術をしてもらった患者はわたしを含めておおよそ1500人です。老人人口が8000人ほどの町で、地元の市立病院で安心して眼科の手術を受けられるというのは安心につながっていました。
感謝してはいても、感謝の言葉を伝えられなくてもどかしく感じている根室市民がたくさんいるでしょう。
わたしも前回の11月の定期受診は視野検査だけだったので、先生にはお目にかかれませんでした。診察していただいても、根室から去られるご予定を知りませんでしたから、直接お礼申し上げる機会はありませんでした。少し心残りですが、引っ越される新しい場所で同じように坦々と患者と向き合う姿が想像できます。
先生のすばらしい技術がその地で目の病気を患う人たちを救うことになるのでしょうから、心からお喜び申し上げたいと思います。

そして非常勤で2か月来られるドクター、四月から常勤で来られるであろうドクターのお二人に期待したいしています。
by ebisu (2022-01-30 08:35) 

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