<更新情報>
7/5 朝9時半追記 わかりやすさのために3箇所追記した

 さて、前回(#3070)とりあげた根室花咲線廃線問題、根室にとっては由々しき大問題である。泣きっ面に蜂で、毎年17から20億円もの赤字を出し続けている市立根室病院事業があり、数日前に来年度からのロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁全面禁止が決まった、そしていまJR北海道再生会議で花咲線が廃線検討の俎上に載ってしまった、もうすぐ三重苦が根室を襲う。
 市役所発行の「広報根室7月号」の裏表紙の人口統計には前年同月(6/1現在)比で456人人口が減少したと書いてある。10年前には年間400人未満だったから人口減少は加速している。ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁の全面禁止で、来年は人口減少が700人を超えるかもしれない。経済的な事情が暗転して進学できるかどうか不安を抱える高校生が増えている。
 2040年には社会保障・人口問題研究所の地域別推計値の1.8万人を超えて、1.5万人程度まで人口減少が進みそうだ。町の人口が小さくなっても、いろいろな機能を維持していけるように、自分たちでできることはどんどんやっていこう。「鋳型」を創っておけばあとは次の世代が受け継いでくれる。団塊世代の役割はそういう「良い鋳型」をふるさとに残すことだ。

 自分たちの町は自分たちで守るとしたら、どういう手がありうるのか、シミュレーションしてみたい。前回の資料から、根室=釧路間はおおよそ年間4億円弱の旅客売上しかない。それを前提で、維持可能な運営方法を考えてみたい。

 不測の費用支出に備えて利益を積み立てることを考えると、税金が免除されるNPO法人が運営企業として望ましい形態である。
 運営に当たる人員を常勤換算で百人と前提してみる。線路の保守に50人、運転要員10人(安全を考えて2人体制をとる、運転席のスペースを拡張して待機席を作る必要あり。1日8往復、週3日・2日・2日で班編成すると実人員は70人、運転は楽しいだろうな、全国から希望者殺到だろう)、根室、厚床、厚岸の駅要員に20名、予備20名とする。
 人員は全員60歳以上のボランティアとする。ボランティアではあるが小遣い程度の報酬を支払いたい。週に3日働く者と2日働く者×2で一週間をカバーする。報酬は週3日働くものに4週間で3万円とする。常勤換算だと4週で7万円という計算になる。根室には現状で老人が8000人いるから十分調達可能な人数だろう。

 素人だけでは困るから、JR北海道のOBたちに「業務指導員」として同じ条件でボランティアに参加してもらう。線路保守や端末操作など技術指導がなければこなせない業務がある。
 100人を業務ごとに班編成して業務に関する勉強会を毎月開き、すぐに業務体験してみる。

 常勤換算で百人体制を、週3日、2日、2日働くグループで班編成すると運営に必要な実人数は300人になる。企業としては中規模の組織になるので、業務規程、経理規程、人事規程、各個別業務マニュアルをきちんと作成して運用する。
 月次部門損益計算制度を導入し、予算実績対比を月次で行い、全面バーに周知徹底する。もちろん年次予算や決算情報も公開する。

 人件費は年52週だから、
   52週÷4日×100人×10000円=1300万円

 人件費を除く、保守点検費用の目安を年間1億円、車両運行費を1億円、合計2億円くらいで運営できるのではないだろうか。

 現行「釧路⇔根室」間の運賃2490円は1800円くらいに値下げできるのではないだろうか。

 旅客売上 4億円×70%=2.8億円
 人件費            0.13
 線路保守費         1.0
 列車運行費(燃料代等)  1.0
 予備費            0.3
 費用合計           2.43億円
  差し引き          0.37億円

 さて、これでやれるかどうか、現状かかっているコスト明細をJR北海道に提供してもらえばいい。それを元にして、JR北海道OBを数名入れてケース・スタディをしてみたい。もっと現実的なラインが見えるだろう。

 クリアすべきハードルがいくつかある。JR北海道から線路や駅舎の資産無償譲渡が可能かどうかということや、それが不可能なら、無償でそれらをNPO法人が借り受け可能かどうかという問題がある。これはJR北海道との交渉ごとになる。無償借受でいいと思う。

 線路の保守作業などで、力仕事で老人たちの手に余るような仕事があれば、土日を利用して若い人たちのボランティアを募ることもできるだろう。

 NPO法人で、しかも60歳以上の老人だけで廃線になった区間の鉄道を従来どおり運営できたら、全国の廃線対象路線に希望の光となる。そういう仕事を根室の老人たちが成し遂げたらすばらしいことだ。子どもや孫に誇れる。自分たちの町の鉄道は自分たちで守ろう。

<余談-1>
 後志のおじさんが#3070の投稿欄にネット上での「ブレイン・ストーミング」を提案してくれています。なるほど線路の保守には信号もはいりますね。具体的な仕事とコストをリストアップしていかねばなりません。一番確かなのはJR北海道に現状のコストに関する資料提供をしてもらうことです。独占事業の公共交通機関ですから、廃線の前にそうしたデータの公開は企業の社会的責任においてやるべきでしょう。
 利用の便を考えて、EXCELファイルでデータを公開してもらいたい。JR北海道さん、検討してください。

<余談-2>
 会計ソフトは数万円のものでも何とかなりますが、場所が離れているので、それぞれ会計データを現場入力できるほうがいい。クラウドコンピューティングで安価なシステムがあればいいですが、なければ本支店会計の仕組みで厚床と厚岸は処理できます。伝票枚数はそんなに多くないでしょうね。
会計システム投資は200万円以内とする。人事給与システムは老人のボランティアだから必要がない。シンプルでいいですね。
 この辺りの実務設計やシステムに関しては、ebisuがお手伝いできます。月次損益管理制度や、内部監査業務、そして内部牽制制度の構築も協力できます。年間3億円前後のお金を扱うことになるので内部統制制度は重要です。根室漁船保険組合や落石漁業協同組合で使い込みが起きていますが、内部統制制度と監査人はいても実質的な監査業務がなされていなかったことが犯罪を引き起こす原因となっています。内部牽制と監査をきちんとやれば、こうしたことは防げます。
 300人が働くことになると中規模の企業ですから、しっかりした組織や規程に支えられた内部管理制度が必要です。
 目安は3年間動かすこと、そこをクリアできたら10年は心配要りません。団塊世代中心で10年間は支えられます。10年間あれば、仕組みを洗練しながら、次の世代に引き継げるでしょう。きっとよいものができます。首都圏へ出た高学力で専門スキルの高い者たちも、数人でいいからふるさとへ戻りこのプロジェクトに協力したらいい。
 老人パワーの面白いプロジェクトになりますよ、わいわいがやがやお祭りでいい。


*#3067 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁:先手必勝 Jun. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25

 #3069 根室-釧路 鉄路廃線が俎上に載っている:弱り目に祟り目  July 2, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-02

 #3070 釧路-根室 廃線 コメント欄よりアップ  July 3, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-03


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 マルクス『資本論』を超える21世紀の経済学がここにある。四百字詰め原稿用紙300枚、ebisuのライフワーク。中部大学の武田邦彦教授もブログでebisuと同じ労働観を主張し始めた。西洋労働観に日本の仕事観を対置している。弊ブログ#2951と#2952の二つと読み比べてほしい。
*武田邦彦ブログ「人生を知る(3)日本の勤労観とヨーロッパの悪しき考え」
http://takedanet.com/archives/1031718315.html


*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2936 『資本論』と経済学(2):「1.経済現象と日本の国益」 Jan. 26, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26

 #2937 『資本論』と経済学(3):「円安はいいことか?80⇒120円/$の威力」 Jan. 27, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27

 #2938 『資本論』と経済学(4) : 「経済学とは?」 Jan. 27, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-1

 #2939 『資本論』と経済学(5) : 「『資本論』の章別編成」 Jan. 27, 2015  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-2

 #2941 『資本論』と経済学(6) : 「マルクス著作の出版年表」 Jan. 29, 2015   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-1

 #2942 『資本論』と経済学(7) : 「デカルト/科学の方法四つの規則」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-2

 #2943 『資本論』と経済学(8) : 「ユークリッド『原論」 Jan. 29, 2015   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29

 #2944 『資本論』と経済学(9) : 「何をやりつつあったかは残された文献に聞け」 Jan. 29, 2015    
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-1

 #2945 『資本論』と経済学(10) : 「プルードン「系列の弁証法」 Jan. 29, 2015    
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 #2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観を時間座標系においてみる」 Jan. 29, 2015     
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  #2948 『資本論』と経済学(12) : 「公理書き換えによる21世紀の経済学創造」 Jan. 29, 2015 
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 #2950 『資本論』と経済学(13) : 「マルクスの経済学体系構成法」 Jan. 31, 2015
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 #2951 『資本論』と経済学(14) : 「マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
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 #2952 『資本論』と経済学(15) : 「ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
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 #2953 『資本論』と経済学(16):「仕事がキツイ!に潜む心(仕事観)の問題」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01

 #2955 『資本論』と経済学(17):「要領の悪いものほど忙しいとぼやく」 Feb.3, 2015
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 #2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015
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 #2960 『資本論』と経済学(19):「日本経済の未来」 Feb. 6, 2015
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 #2961 『資本論』と経済学(20):「経済成長の天井 山田久氏の論」 Feb. 7, 2015
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 #2964 『資本論』と経済学(21):「過剰富裕化論」 Feb. 8, 2015 
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 #2966 『資本論』と経済学(22):「相対的貧困率上昇と富裕層増大」 Feb. 9, 2015
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 #2967 『資本論』と経済学(23):「ピケティの空想的所得再分配論」 Feb. 10, 2015
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 #2968 『資本論』と経済学(24):「浜矩子 予算案と公共性について」 Feb. 11, 2015
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 #2971 『資本論』と経済学(25):「村落共同体と税:自由民と農奴について」 Feb. 12, 2015
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 #2972 『資本論』と経済学(26):「文部科学大臣下村博文「教育再生案」について」 Feb. 13, 2015
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 #2973 『資本論』と経済学(27):「注-1~5」 Feb. 13, 2015
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 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらすホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
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