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#3472 鉄路縮小への衝撃:NHK「北海道スペシャル」 Dec. 3, 2016 [27. 花咲線廃線問題]

 昨日夜7時半から1時間15分番組で放送された「北海道スペシャル:鉄路縮小の衝撃 ―地域への影響は―」が先ほど(10時から)再放送された。
 この番組はハンドルネーム「とんとろ」さんが投稿欄で教えてくれた。意見募集をしていますよと、お誘いの連絡。本放送中は授業中だったので、意見は送れなかった。
 HN「とんとろ」さんはこの手の情報を実にタイミングよく知らせてくれる。おそらく仕事の関係からの情報だろうが、余計な詮索はしません、感謝。

 パネラーは4名、JR北海道島田社長、北大副学長吉見宏さん(公共交通が専門とNHKキャスターから紹介あり)、遠軽町長、どういうわけか本州の女性ジャーナりスト。
 島田社長は最後のところであと3年で資金ショートが置きかねないと述べていたから、検討の時間は残り少ない。北大の吉見さんは九州大学経済学部卒業、会計学者であるが、その専門は監査論と公会計である。なぜNHKは公共交通が専門と紹介したのだろう、ご本人も否定しなかった。不思議。
 道外のジャーナリストは鉄道の旅で稚内と根室に2度行ったことがあると話していた。多くの道民にとって鉄路縮小は観光の問題ではなく、生活路線喪失である。観光はバスがメインだ、鉄道旅は百分の一もあるだろうか?場違いに感じた。

 島田社長はもう民間企業のJR北海道の手に負えない問題と、各沿線自治体や道に協力を要請している。道のほうは断ったようだ。ない袖は振れないから、相談にすら乗れぬというのが高橋はるみ知事のスタンスか、ドライですね。
 営業損益の巨額赤字は民営化したときからの構造的な問題である、最近状況が変わったわけではなく、国鉄から移管された運用財産6822億円が底をついたのか、運用益が少なくて毎年国から数百億円の補助金をもらっても巨額赤字に耐え切れないと悲鳴をあげているのだろう。

 さて、沿線自治体の費用負担を具体的に話し合うためには、どれくらいのコストが路線ごとにかかっているのかがわかっていなければならない。たとえば、花咲線が「年間10.7億円の営業赤字」という情報ではまったく役に立たぬ。費目別にコストが明らかになり、配賦された費用が費目別にどれだけあるのかも重要な情報である。
 トンネルや橋梁、駅舎などの固定資産台帳の開示も必要である。耐用年数から計算して次の建て替え費用も計画に入れなければならないからだ。台風被害で橋梁が失われたり、鉄路が寸断されたらどれほどの復旧費用がかかるかもそうした資料があってはじめて計算可能になる。固定資産台帳記載項目が路線別に附番してあれば、ソートするだけで利用できる。路線別の営業損失額を公表しているから、大丈夫だろう。
 地域住民や沿線自治体が費用負担するには、何をどれくらいの割合で負担するのか、負担総額と負担基準についても具体的な検討が必要である。そして沿線自治体の負担能力の問題も調査しなければならない。
 こういう基本的な調査・分析はだれがこの問題を担当しても必要な実務作業であるから、さっさと人選をしてプロジェクトをスタートさせなければならない。

 NHKが北大副学長の吉見さんをパネラーに選んだということは、NHKが調査した結果ではこの人くらいしか人材がいないということだろう。しかし、「鉄路縮小」は監査論の専門家にはまったく不向きな問題、門外漢と言って差し支えない。傲慢に聞こえたらすみません、理由はあとで書いておきます。

 わたしがこれらの仕事全体を仕切るなら次のような手順でやる。
①JR北海道へ出向き、原価計算資料とシステムを見せてもらう
 1日目は固定資産台帳(明細データのコンピュータファイル)や原価計算資料を閲覧し、原価計算システムの概略の説明を受け、質問をいくつかさせてもらう
②ヒアリングのあと、仕事の進め方についておおまかな合意と調整を行う
③必要なスキルをリストアップして、プロジェクト・メンバーの人選を行う
④専用掲示板を立ち上げ、ネットを通じて役割と作業分担を決め調査やチェックすべきことを指示する

 ①と②は2~5日間で終了できる。③は1ヶ月、④は3ヶ月を目処に作業を進め、1ヶ月で分析結果をまとめ、提案のたたき台を作成し、キックオフからおおよそ半年で公表する。各自治体内部での予算取りや議会での審議の時間も必要だから、これくらいの速度で仕事を進める必要がある。いくつかの分野で段取りよく実務のできる人材を集めなくてはならない。

 北大の吉見さんは監査論の専門家だから原価計算に対する知識もプロジェクトの指揮の経験もないからとても無理。必要なスキルは、原価計算、経営、コンピュータシステムの専門知識とプロジェクトの仕事の段取り企画・調整などの経験、そして各自治体の負担能力調査に関する能力。こういうことは大工仕事と同じで、全体が見渡せ具体的な指示ができる棟梁がいないとできない仕事。
 北海道はこの手の問題が起きたときに必要なスキルを持ち合わせた専門家がいないからほんとうにたいへんだ。普通の人にやらせたら①~④に2年でも時間が足りないから、とっくに時間切れ。
 検討が間に合わなければ、JR北海道が資金ショートで経営破綻して、北海道から鉄路がまるごと消えるだけ。
 各自治体首長さんたちは「鉄路縮小」に反対するだけで、テーブルにさえ着こうとしない危機感のなさ、誰かが何とかしてくれると知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいる。財源捻出は容易ならざる仕事だが、そこに具体的な手を打ち始めた首長は一人もいない。市長選挙で対立候補すら滅多に出てこないほど、こちらも人材不足、いや人材枯渇が進んでしまっている。緩みきっています。

 万が一にもそういうことはないだろうが、北海道JRか道庁からオファーがあれば①~④まで担当する用意があります。私塾をやっているので仕事へ支障は出ますが、最悪のケースでも1ヶ月間ほど休塾すれば片がつきます。わたしも道産子の端くれ、ふるさと北海道のためにそれぐらいはやりますよ。(笑)

 まだお読みでない方は、下記の弊ブログ記事もお読みください。

*#3459 JR北海道13区間維持困難 Nov. 19, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-11-19

*地域経済経営ネットワーク研究センター:センター長吉見宏
http://rebn.econ.hokudai.ac.jp/



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ジョン・タイラー

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181030-00010000-doshin-hok
JR北海道は29日、花咲線(釧路―根室)の初田牛(はったうし)駅について、来年3月予定のダイヤ改正に合わせて廃止する方針を根室市に伝えた。

花咲線彩るハマナス ラッピング列車11月から運行

 JRの萩原国彦・釧路支社長が根室市役所を訪れ、説明した。初田牛駅は無人駅で、2013~17年の1日の平均乗降者数は0・2人。JRは鉄道事業見直しの中で、極端に利用の少ない無人駅の廃止を進める方針を示していた。

 市は「市民の暮らしに欠かせない公共交通機関として役割を果たしており残念極まりない」とした上で、JRに対し「利用者や地域に丁寧に説明し、合意に努めてほしい」と要請した。

 初田牛駅は1920年(大正9年)開業。現在は1日4往復が停車する。鉄道ファンの間では利用客が少ない「秘境駅」として知られ、雑誌やテレビでも紹介されていた。

>「市民の暮らしに欠かせない公共交通機関として役割を果たしており残念極まりない」
 これほどまでに説得力がないコメントも珍しい。
公共交通機関と言うのなら自分たちでコストを負担すればいい。
国鉄だったらそのまま維持されてたかも知れないけど今は民営化されたから赤字路線や利用客のいない駅は廃線、廃止になる。
「市民の暮らしに欠かせない」とか寝言みたいなことを本気で言っているとはおもえないので、聞く必要はないか、利用したことのある身としては時の流れを感じます。
by ジョン・タイラー (2018-10-30 09:45) 

ebisu

ジョン・タイラーさん

>市は「市民の暮らしに欠かせない公共交通機関として役割を果たしており残念極まりない」とした上で、JRに対し「利用者や地域に丁寧に説明し、合意に努めてほしい」と要請した。

根室市はこんなコメントを出すほど幹部職員のレベルが落ちているのですか、悲しくなります。
この新聞記事を中高生がみたら、根室市役所に幻滅するでしょうね。
ふるさとに誇りがもてるコメントを出してもらいたい。
by ebisu (2018-10-30 21:59) 

ジョン・タイラー

初田牛駅はつい先日Tvhの番組で「秘境駅」取り上げられ、2日程度安田大サーカスの団長が居たけど、番組初の利用者なしだから、廃駅は仕方ない。

あと噂話で真偽不明だが、最近市役所内で職員の自殺未遂があったらしい。
by ジョン・タイラー (2018-10-31 15:18) 

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