<更新情報>
6/26 10:50 追記
6/27 10:10 「水産資源減少に備える提言ができなかった地元経済諸団体」、他追記
6/27 15時 「村抜け」のススメ 追記
6/27 16:45 「反骨精神と改革意欲のあるリーダを推し立てて・・・」 追記
6/28 8:45 シーズン終わりの羅臼沖ジャミサンマの大量捕獲は翌年の漁にどれくらいの影響があるのか? 追記  
(物置の寒暖計は5度をさしていた、超さむい!ここ数日、どんどん気温が低下していく、どうなっているの?)
6/30 8:50 番頭を育て、自分と同等以上の報酬を支払え

 この問題はすでに3回取り上げている。根室市政は漁業会社や水産加工会社のほうしか視野にないようで、雇われ漁師や水産加工場で働く人たちのことが考慮されていない。長谷川市長も市民の10%に満たぬ根室「村」の住人たちも、この期に及んでも「村」の利害しか考えられないらしい。「オール根室村」の村民の皆さんの中には自分の損得をこえてふるさとのために一肌脱ごうという人が必ずいる。子どもや孫のために、それぞれの団体を牛耳っているふがいないリーダたちを見限ってさっさと「村」抜けするか、反骨精神と改革意欲のあるリーダを推し立てて反旗を翻したらよい。ふるさと根室の未来が懸かっている。

 こういう問題が起きると、政府にお定まりの補助金要請を繰り返すだけではいかにも能がない。来年は全面禁漁が確定だと漁業関係者たちが嘆いている。「考えてもしようがない」とあきらめ顔の漁船員がテレビのインタビューに応えていた。来年は来年の風が吹く、状況に応じてどうするか決める、いまから決めようがないというのが本音だろう。息子に後を継がせられないと考える漁業会社のオーナも出始めている。
 これが根室の情けない現状である。だが、あきらめる必要はない、ピンチはチャンスだ、オーナーも漁船員もみんなで具体的な対応戦略を考えよう。

 根室の漁業は北の海の水産資源を食い荒らしてきた、羅臼と歯舞の事例をすでに挙げた(#3056)ので再説しないが、50年たっても変わらない。
 かてて加えて根室市政もまた十年あるいは二十年先を見て仕事をしてこなかった。根室の未来を慮(おもんぱか)り乱獲防止を根室管内の各漁協に働きかけたり、意見具申したことがない。お互いに、都合の悪いことは言わないように、閉鎖的な根室「村」を維持し、そうして未来の選択を誤った。10%に満たぬ、「オール根室村」がいつまでも市政を壟断していると根室の町の未来はお先真っ暗だ。
 水産業を主力としていながら、地元経済諸団体も一つとして漁協に乱獲禁止や資源管理の重要性を説いたところがない。水産業で成り立っている町だから、だれも漁業者にモノが言えぬ。
 水産業が崩れたら、地元経済の基盤が崩れ、あらゆる業種に深刻な影響があることが明々白々でありながら、水産資源が小さくなったときへ向けての備えについて具体的な提言がなされたことはない。歴代の市長も経済諸団体も市議会も、各漁協に対してふるさとの未来を考えてきついことを言うべきだった。人材の枯渇と「村」の存在がそのような建設的な提言への大きな障害であり続けたのである。そうした状況の中で水産資源はこの50年間減り続けた、最初がカニだった。

 昭和30年代には北海道最大の水産加工会社、(株)日本合同缶詰傘下の4工場ですらも処理しきれない量のカニの水揚げがあり、海へ棄てても、漁を休まなかった。カニの仲買で食べている人たちも多かった。いまから見れば乱獲によって貴重なカニ資源を食いつぶすおろかな行為だったのだが、当時の根室ではそれがいいことのように受け止められていた。欲に目がくらみ資源管理の智慧がなかった。根室人の金銭欲とロシア人の金銭欲が北の海のカニ資源を食いつぶしたのである。昭和30年代終わりから40年代は越境してやる密漁は毎年莫大なお金(100億円前後?)を生み、船外機を3基もつけた高速密漁艇の乗組員は「特攻隊」と称していた。その結果この60年間で領海内のカニ資源は激減し、特攻隊も姿を消した。
 それに加えて、近年ではロシア側の漁具が充実してロシア人によるロシア領海内のカニとウニの密漁が増えた。密漁して根室花咲港に運んでくれば、莫大なお金を生んだ。ロシア人の密猟者は密漁でもうけたお金で根室で漁具を調達していた。ロシアと日本の関係者にはじつに美味しい話、持ちつ持たれつだったのである。こうして今度はロシア領海内のカニとウニが激減した。まずはじめに北方海域の日本領海内のカニ資源が激減し、次いでロシア領海内のカニ資源が激減したのである。
 わたしは欲に目がくらんで資源を食いつぶすことに加担した個々の関係者を非難しているのではない、根室の漁業がそうした枠組みや構造の上に成り立っていたということが言いたいのである。それはいまもあるから、そうした構造を壊し、根室の町に別な枠組みを作らなければ未来が展望できないとと言いたいのである

 根室の未来にとっては水産資源管理が死活問題なのに、ロシア(官)と根室(民)の間で、水産資源管理について話し合いのテーブルすらない。こういうことこそ市政が関わるべきである。根室市政は肝心なことをせずに、ベトナムへのサンマ輸出に熱心だった。水産業界の一部がそれに追随したのだが、大局がみえない者たちだけだろう。「いままで市役所が言い出すことにろくなことはなかった」からと距離を置いた賢明な業者もいる。
 カニの後はサケ・マス、そしていま羅臼でホッケが激減しつつある。
 サンマの未来は大丈夫か?漁期の終盤に羅臼沖でのジャミサンマの捕獲は量を制限すべきではないのか?シーズン終わりになって、なぜ羅臼沖にジャミサンマが大量にいるのか、羅臼沖で大量にジャミサンマを捕獲することが翌年の漁にどれほどの影響があるのかなどまったくわかっていない。根室管内の漁協にはそうした資源管理上必要なサンマの生態系調査に関する問題意識すらない。このようなありさまを続けていて根室の水産業の未来があるのだろうか?
  根室市内だけみていたのではダメで、根室市政は根室管内のリーダとして発言し、行動しなければならないのだが、根室管内4町に背を向けている。ゴミの広域処理の問題でも、町役場・市役所職員採用一括選考でも協力姿勢の片鱗もなく4町に背を向け続けている。これでは根室管内ですらリーダシップがとれない、器が小さすぎないか?

 根室管内の漁師たちと北方領土のロシア人たちの欲と欲がからみ、これでは水産資源がもつはずがない、次々に枯渇していくのは当然である。欲望の自己規制ができなければ、水産資源で食べていける次の世代は半減する。

 今日(6/25)の北海道新聞根室地域版の記事にはホッケの資源が激減したことが報じられている。
 羅臼のホッケは2005年、2009年、2010年には8000トン弱の水揚げがあったが、昨年(2014年)はわずかに966㌧である。今年はいまのところ昨年の6割減で、羅臼漁協に記録が残る1961年以来最悪の不漁を記録しそうである。新聞記事によれば羅臼では干したホッケが1枚1200円もしている。羅臼の美味しいホッケはすでに庶民の口に入る魚ではなくなった。次はサンマかもしれない。

 乱獲ということもあるだろうが、海水の表面水温の変化も関係があるだろう。頭を使って水産資源の状態を監視し、頭を使って欲望を自制して漁をしないと適切な資源管理ができない。
 タダとってくればいい略奪産業の時代はとっくに終わっているのである。欲望の自制と水産資源管理に旗を振るリーダが根室管内の漁業組合には一人もいなかったということ。人材の劣化こそが漁業の町の資源枯渇の真の原因とは言えないだろうか。そろそろこういうところに焦点を当てて、人材育成をしないといけないのではないのかね。

 サケ・マス流し網漁の漁期は6月と7月の2ヶ月間である。金額が高いから主力の商品でもある。根室水産物の柱はカニ、サケ・マス、サンマ。カニがとっくに乱獲で漁獲量が減少し、主力商品から外れてしまった。そこへサケ・マスの打撃である。まずは漁期の分析だ。

 サケ・マス 6~7月
 サンマ   8~11月中旬

 この二つの魚種で雇われ漁師は5.5ヶ月間稼ぐことができる。昔は半年船に乗れば、後の半年は陸に上がって遊んで暮らせたが、水産資源が年々細ってしまった現在ではとても暮らしていけないから、多くが出稼ぎにでる。
 ロシア200カイリ内のサケ・マス流し網漁が来年から全面禁漁になれば、サンマの3.5か月分しか稼ぎがなくなるから、通年雇用先を見つけた者から船を下り、家族と共に移住を決意することになる。
 前回試算したが中型船の出漁禁止だけで280家族程度がその条件に当てはまる。全面禁漁になれば、450家族ほどが根室を出て移住を検討せざるをえなくなる。
 水産業が主力の町だから水産加工場で働いている人たちも多い。雇われ漁師の数の数倍いるから、連鎖反応が起きる。

 塾に通えなくなる生徒も出るし、進学をあきらめざるを得ない生徒も出る。家業を継ぐことをあきらめる船主の長男も。

 泣き言ばかり言っても始まらぬ。このまま地元企業が次々につぶれてもらっては困る。来年から禁漁になることを前提に戦略を練るべきだ。禁漁になるのはカムチャッカ沖の北洋だけではない。国後島の西側と択捉島の東側の漁場も禁漁になる。サケ・マスだけではすまないだろう。問題点を挙げてみる。
 
■ 6~7月の北洋サケ・マス漁がなくなる穴埋めをどうやるか
■ サケ・マスで売上の30%がなくなるとしたら、どういう工夫をしてその穴埋めをするか
■ 船員や水産加工場の雇用維持はどうやるか
■ ベテランが大量にやめた後の品質維持をどのようにやるのか

 お先真っ暗ではないよ、ハッキリしているのは工夫をしない漁業会社や水産加工会社だけが淘汰されていくということだ。頭を使って長期経営戦略を練り、しっかりそれを実現できる会社だけが生き残る、ピンチはチャンスだ
 補助金なんてもらっても一事のことだ。地元企業の経営者は補助金に頼らなくてもなんとかできるような工夫をしよう

 息子がいたら、大消費地の東京の大学に進学させたらよい、道内ではダメだ。大消費地の首都圏を四年かけて自分の目で見て来い。夏休みや冬休みは魚に関係のある業種でバイトをさせよう。あらゆる機会を捉えて大消費地の東京に「人のネットワーク」を築け。
(道内でも北大水産学部ならいい、後を継ぐ子どもを北大水産学部か東京の大学に進学させよう)

<「利己心はすべての過失と不幸の源泉である」・・・ことわざ>
 根室に何が必要か、何が不足しているのかは少し頭を使えばすぐにわかるし、そのラインをたどっていけばしぶとく生き残る道も見つかる。必要なものを手に入れるには、頭を使わなければダメだ。企業経営能力のない2代目、3代目でもやれた時代は終わったということ。しっかりした能力のある者が事業を継承しない地元企業はつぶれていく。優れた人材を「番頭」として使い、自分と同等以上の報酬で処遇できたらその企業は永く栄えるだろう
 自分の家族だけを大事にして、従業員の幸せを省みない経営者とその企業は人材が集まらずに淘汰される。
 この難局にどう対処するのか、具体的なビジョンを従業員に語り、そこに向けて従業員を引っ張っていこう。
 いま足りないのは高度な加工技術、販売チャンネル、大消費地の人脈、そしてこれらの仕事を担うに足る智慧と人材である

 根室の町の人口は減っていい。大幅に減れば、水産資源を大事にすれば人口2万人以下の町なら、みんながそこそこの所得を維持して食べていける
 大幅な人口縮小を前提に町の将来ビジョンを創れ、先手必勝。

<今日6/26出漁>
 新聞報道によれば、ロシアからの許可証が届き、今朝北洋サケ・マス流し網漁の船が港を出た。小型船のみの出漁で、中型船は出漁取りやめ。
 ここ数日、異常低温で最高気温が10度に達しない。最低気温も5~7度。北洋の海には寒い風が吹いている。いい漁がありますように。


*#3056 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁禁止:閉鎖的な漁協と市政 Jun. 6, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-06

 #3058 サケ・マス流し網漁禁止法案ロシア下院通過 Jun. 11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11

 #3060 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁 1962トンで妥結 Jun. 12, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-12

 #3067 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁:先手必勝 Jun. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25


-------------------------------------------

*#195「少し過激な北方領土返還論」MIRV(多核弾道ミサイル)開発・組み立て・解体ショー
ロシアをぎゃふんといわせ北方領土を返還させるための具体論
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07

 #1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-06

 #2050 竹島と北方領土 :韓国大統領の竹島上陸にどう対抗する?  Aug. 10, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-2

 #2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14

 #2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16

 #2095 おろかな領土紛争:白人支配終焉のチャンス
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28

  #2097 中国や韓国と如何に付き合うべきか
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-29

 #2050 竹島と北方領土 :韓国大統領の竹島上陸にどう対抗する?  Aug. 10, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-10-2

 #2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-14

 #2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16

 #2095 おろかな領土紛争:白人支配終焉のチャンス
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-28

  #2097 中国や韓国と如何に付き合うべきか
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-29


======================================

*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 
 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらすホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02