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#3068 C中学校の基礎学力充実対策 Jun. 30, 2014 [55. さまざまな視点から教育を考える]

<更新情報>
7/1 朝9時追記&ヘッダー付け、そして編集作業


 気象庁のデータを見たら、根室の今日の最低気温は8.6度、最高気温は17時の14.8度である。今日はまだ暖かいほうで、このところ寒い日が続いている。ストーブが必要だといっても、東京の人には信じられないだろう。暑い夏になったら根室に遊びに来たらいい、根室の夏は日本一涼しい。

<朝学習の変化>
 C中学校の2年生の学力テストの五科目平均点が低い(約200点)ことは以前とりあげた。学校は朝、基礎計算プリントを生徒にやらせて基礎計算力強化を図っているようだ。2年生だけかと思ったら、1年生にも実施している。このようにC中学校は学力向上に向けて具体的な対策をはじめている。部活に影響させないためには朝学習にこうした計算練習をもってくるのはいい方法だろう。プリントをやらせるだけでは効果は小さいから、低学力層の生徒たちには計算のやり方の説明があったほうがよい。欠点もある、朝学習だと数学のできる生徒には必要のない基礎計算問題を強いるということになっている。そんな時間があったら、上位10%の生徒には難易度の高い複合問題に取り組ませるべき。理解度も計算速度も1:10以上の開きがあるのに、「一律に同じ作業」ということが、現実無視で無理なのである。

<先手必勝>
 学力の低い学年にあたる2年生を今年のうちに何とかしないと、せっかく2014年度の全国学力テストで全国平均をクリアできたのに、一気に下がりかねない。学校側は教員と一丸となって手を打ち始めている。これが巧くいけば、来年入学してくる学年も学級崩壊に近い状況を経験しているようだから、同じ方法で臨める可能性が出てくる。いわば予行演習みたいなもの。
 しかし、一定の効果を認めつつも十分であるとは思えない、なぜかをデータを挙げながら具体的に論じてみたい。

<1年と2年の期末テスト・データ比較分析:全体>
 6/19にあった期末テストの「得点通知表」からデータを引用して一つ一つ論じたい。

                1年生       2年生   
 五科目合計の平均点  290.5      283.8
 400点超    6人/58 (10.3%)   9人/53(17.0%) 
 200点以下   9人 (15.5%)     12人(22.6%)

 学期末テストは学力テストよりも難易度が低いので、学力テストよりもおおむね50点平均点がアップするのは市街化地域の3中学校に共通している。2年生の四月の学力テストの平均点は約200点だったから、学期末の五科目合計平均点283.8点はずいぶん点数に開きが生じている。問題の難易度が下がったのか、生徒の学力が上がったのか、次回8月の学力テストの結果で判断できる。注目してよい面白いデータである。

<1年と2年の期末テスト・データ比較分析:科目別>
 英語は1学期はほとんどお遊びだから、平均点が一番高くなるのは例年のことである。五科目合計点400点超がたったの1割しかいないのは寂しい。B中学校では、生徒数が100人前後のときに、学期末テストは410点でも20番以内に入れないことが十年前にはあった。学校のテストで400点超の構成比が半減している。学力テストではおおよそ1/3。

 <平均点>
    1年生   2年生
国語 57.9    56.2
社会 52.1    53.6
数学 62.0    56.8
理科 51.5    63.9
英語 67.0    58.6

 国語の得点が50点以下の層は17人、29.3%(2年生は22人、41.5%)に達する。小学6年生の語彙力テストを実施したら両学年のこの層のほとんどの生徒の正解率は50%以下だろう。授業で先生が説明に使う用語を頭の中で正しい漢字に三つに一つは置き換えられない。だから、授業を聞いていてもさっぱり分からない。
 「証拠」がある、1年生は社会と理科の50点以下の層がどちらも29人で半数いる。授業を聞いていても理解できないからだと推測できる。たとえば斉藤孝『読書力』を音読させたら、まるで歯が立たない。2年生社会の50点以下は24人、45.3%、理科は13人、24.5%である。理科は先生が小テストの繰り返しをやっているような成績だ。問題が極端に易しいものでなければ、小テストを繰り返す以外にこういう平均点にはならない。以前にB中学校のS井先生が記憶の定着を図るために小テストを頻繁に実施して生徒の学力テストの平均点を他校よりも20点アップしていた例がある。

 日本語の読解力が国語の点数ばかりでなく、社会や数学の文章題の成績に大きく影響するから、学力アップを目的とした語彙力強化のためには漢字検定問題集をやらせることと、良質のテクストを選び音読トレーニング指導をすることが有効だ。ところが音読トレーニングは手間がかかるので先生たちはやりたがらない。朝の読書で生徒に本を選ばせ勝手に読むだけで音読指導がない。ほうっておいたら、半数以上の生徒がほとんど本を読めないまま中学校を卒業していく。こういう生徒は社会人となったときに上司の指示の意味が理解できなくなる可能性が高い。もちろん業務報告書を書かせたら分けのわからない文章になるだろう。大量に読まなければ、分かりやすい文章は書けないものだ。
 昔の論語の素読はじつによいトレーニング方法だったが、いま素読をやる小学校はほとんど存在しないだろう。英語の授業なんかやる暇があったら、小学校で論語の素読を週2時間ほど2年間やってもらいたい。もちろん中学校でやっても効果があるだろう。

 数学は「正負の数」と「文字式」だけ、難易度が低く範囲も狭いから平均点が高くなるのは当然のこと。それでも、14人、24.1%が50点以下(2年生は18人、34.0%)である。分数や少数位取りなどの基礎計算があやしい層だ。この14人(2年生では18人)はプリントをやらせるだけでは無理、計算の仕組みがきちんと理解できていないから、解説と問題数をたくさんこなすトレーニングが必要である。計算問題は考えずともできるくらい十分なトレーニングを積まないと、文章題ができない。文章理解で脳を使い、そのうえ計算でも脳を使うのでは、正解は著しく困難になる。せめて計算だけは脳を使わずにできるようにしておかねばならない。トレーニング量が不十分だと、標準的な普通科の高校数学にはとてもついていけない。テストの問題量が多くて中学とは比較にならぬレベルで計算スピードと正確性が求められる。

<低学力層には放課後個別補習が効果的>
 中体連が終わったら部活を休ませて放課後十数回の個別指導が必要である。C中学校では週に2回補習体制を強いているが、肝心の低学力層の生徒が部活を理由に出席しない。国数英の3科目は得点30点以下は毎週2回の強制補習を義務付けるくらいのことをしなければ救えない。部活よりも勉強のほうが優先すると、優先順位を明確にすればいい。夏休みの午前中2週間を個別補習に充当しても効果は出る。文武両道、とにかくできることはやりつくし、結果をだそう。
 ニムオロ塾では基礎計算力に問題がある生徒が入塾すると1~2ヶ月くらい4時から6時まで集中的に毎日個別指導するのだが、部活を休めないという理由で補習に来ない生徒が多い。きちんと来た生徒は零点が2ヶ月で88点になったりすることがあるから効果は大きい。毎週一日だけ部活を休んで個人補習に来ても効果はある。過去に数学と英語の両方の合計点が30点いかなかった生徒が半年後に150点を超えた例もある。もちろん途中で挫折し成績が上がらなかった生徒もいる。
 生徒自身が塾での「放課後補習」を理由に週に一度部活を休みたいと部活担当の先生に申し出るように指導している。放課後補習受講の理由にはいくつかパターンがあった。「何が何でも根室高校へ進学したい」「勉強がこのままでは就職のときに困る」「数学や英語の勉強がまったく分からなくなっている」、等々。
 生徒たちには文武両道を繰り返し説いている、理論研究のないトレーニングの効果は小さい、部活のトレーニングも頭を使え、一流の選手はトレーニングにも工夫が必ずある。

<1学期・期末テスト・データの特異性>
 1年生の1学期の英語はほとんどお遊びだから、平均点が67点(2年生は58.6)と高い。どの学校も1学期末は平均点が70点付近になる。2学期になり、「三単現のS」なんていうのが出てくるととたんに平均点は10点ほど低下していく。

 数学と英語の平均点が高く出るという理由で1年生の1学期期末テストの五科目平均点が1年間を通じて一番高く出る。

<学力テストよりもさらに難易度が低い定期テスト問題は学力低下を誘導する>
 成績下位層の問題を取り上げてきたが、成績上位層が薄くなってしまったことは別な問題を引き起こしている。競争相手が少ないのである。ライバルがいてお互いに伸びるということがあるが、ライバルがいなければ思い上がってしまう。難易度の低いテストで高得点を撮ることにさほどの意味はない。
 高校生になって全国模試の進研模試を受験すれば50点を取れる生徒は1学年に数名だ。成績上位者に難易度の高い問題に取り組ませていないから、高校生になって複合問題主体の全国模試を受験したときに悲惨な結果になっている。毎年全国模試の数英の根室高校普通科1年生の平均点は20~30点の間である。

<成績上位層の枯渇化減少:競争条件の劣化が全体の学力低下を招く>
 1年生58人中の学年トップは「441~460」点の階層にいるが、四月のお迎え学力テストのときのトップと同じ生徒である。2年生のトップはさらに一段上の「461~480」点の階層にいる。1年生の1番が2年生だとしたら、3番くらいになる。

<学力と家庭の躾の関係>
 現在の3年生の学年にはO君という生徒がいたが、お迎えテスト以外は全部学年トップのまま1年生の終わりに転校して行った。言われたことはきちんとやりぬく生徒だった。小5からだったが小学生のときは英語を教えていない。中1の4月に指定したある英語の音読教本をたった2ヶ月でやり終えた。そのあと使う音読トレーニング教本のレベルを上げた。社会と理科が苦手だったが、指示したとおり勉強してすぐに90点超に持っていった。中1の終わりには中3数学を半分ほど終わっていた。もちろん難易度の高い問題集をやらせていた。中2の10月からは数ⅠAをやり、中学校を卒業するまでに数Ⅱを終わらせるつもりだった。こういう生徒はどこの塾へ通っても、道内のどの公立中学校へ転校しても学年トップグループであり続ける。
 能力の高い生徒は、その能力さらに高める努力をしている。将来担うべき仕事に向けて学力を高める努力をしており、はっきりした目標をもっている。

 先生の指示をきちんと守ってやりぬく生徒は、概して親の言うこともよく聞く。自分の人生にとってプラスになるかならないかを峻別しながら大人の発言や人柄を判断している。
 こういう生徒たちを見ていると、小学校入学以前の躾と小学校に入学してからの2年間の家庭学習習慣の躾方が、その後の学力に大きく影響しているように思える。
 小学校高学年になってから躾けようと思っても、自我が出来上がってしまっているので無理なケースが多々ある。自我ができてしまうと、親の言うことも聞かないし、学校の先生の言うことも素直に聞けなくなる。言うことを聞かないことが毎日積み重なり習慣となり、小学校6年間と中学3年間そういうことを続けたら、それは性格にまでなってしまっている。だからこういう生徒は「手ごわい」。

 小学校高学年には自我が芽生え始めるから、その前に家庭の躾を完了しておかなければならない。家庭学習習慣の躾も小学校Ⅰ・2年生のときにしっかりやっておきたい。

<まとめ>
 C中学校は学年によって学力に大きな格差があることを直視して、学校全体で具体策を考え、実行している。以前は火災報知機が頻繁に鳴ったり、授業を抜け出し空き教室で遊ぶ生徒が見られた。北海道新聞がそうした状況を数年前の教育シリーズ記事でとりあげている。弊ブログでもその記事の一部を転載した*。
 そうした荒れた学校がこの数年間でおさまったのは、低学力の生徒たちをほうっておかなくなったからだろう。2014年度の全国学力テストで全国平均を達成した陰には、先生たちの学力向上への取り組みがいくつもあったに違いない。
 現に同じ学区の小学校の先生たちと定期的なミーティングもなされている。小学校の学級崩壊を放置していたら、中学校の努力は賽の河原に石積みににたことになるからだ。言い難い事も回を重ねるごとに信頼関係ができて言えるようになる。こういう具体的な努力を延々と積み上げることが大事なのだと思う。
(市街化地域の他の2中学校でもそれぞれ取り組みがあるのだろう。要は結果を出すこと、努力をどれだけしたかではなく、学力が全国平均値を上回ったという結果を残すこと、それが知の職人としてのプロの教師の重要な役割のひとつではないだろうか。道教委は全国平均を上回ることを目標に挙げている。)

<生徒の学力向上は校長のマネジメント次第>
 市街化地域の中学校ですら全校生徒数が160~220人である。職員数は30人前後だろうから、企業規模でいうと小企業である。
 中小企業においては、オヤジ(社長)の経営能力が業績を左右する、根室の中学校もオヤジ(校長)のマネジメント次第ということ。低学力は学校のマネジメント如何でも解消できる。もちろん、学齢期前の家庭の躾や小学1・2年生での假定学習習慣の躾も子どもたちの学力育成に重要な役割を演じていることを忘れてはならない。

<C中学校の保護者の皆さんへ>
 個人面談など学校へ行って先生たちと話す機会があったら、一言「ありがとうございます」と言ってあげて下さい。そうした言葉が先生たちの活力の元になります。「ああ、がんばってよかった、教師っていい仕事だ」、心の底からそう思えます。いい先生は生徒と保護者が育てるのかもしれません。

 

 ブログ「情熱空間」が学校の先生たちも結果で勝負しろと気炎をはいているので、お読みいただきたい。
*「頑張ろうが頑張るまいがどうでもいいから、とにかく結果を出しましょう!」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8012254.html


<余談:>
 ニムオロ塾では3年生は80%の生徒がこの3年間で五科目合計点が最高点、2年生は66%の生徒が過去2年間で今回が最高点だった。1学期期末テストだから、範囲も狭く平均点が高いことが追い風になっているから、2年生は点数がよくても学年順位はそれほど変わらない。3年生は手応えが違っていたからしっかり学年順位を上げているだろう。5人のクラスだが落ち着いてしっかり勉強するようになった、そういうことに生徒の成長を感じる。このクラスはあと数ヶ月でもう一段階アップしそうな予感がする。

 一日一日の努力が積み重なりよい習慣となる。よい習慣が続くことで生活習慣全体が改善されていく。よい習慣はやがてその人の性格の一部になり、人生をよいほうに変える力となる。だから、一日一日が大事だ、おろそかにしてはならぬ。
 ゲームは勉強を1時間してからやろう、勉強が先だ。予習は毎日欠かさないようにしよう。予習していけば学校の授業が復習となり、理解度が飛躍的に上がってしまうから、成績も上がる、なにより学校の授業が楽しくなる。
 復習中心の勉強を予習中心の勉強に切り替えよう。

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*#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

 北海道新聞によるC中学校の取材記事です。C中学校は5年前にこんなに荒れていました、よく立て直してくれました。


*#2789 全国学力テスト 支離滅裂な記事 Aug. 27, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-26-2

 #2871 根室の中学生の学力の現状(3):学級崩壊  Nov. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-16-2

 #2896 学校通信が学力向上の旗を振るC中学校 Dec. 5, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-04
  
  #2895 H26全国学力テストデータ分析(5):3×3マトリックス分析 Dec 3, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-03

 #2899 問題のすり替え:数学問題文の漢字が読めないのは誰のせい? Dec. 9, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-09

*#2865 マルクスの労働観と日本人の仕事観:学校の先生必読 Nov. 13, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-13

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 ピケティ『21世紀の資本』を超える経済学がここにある。ebisuのライフワークを28回のシリーズで2015年1月にアップ。経済学部で学ぶ学生たちに読んでもらいたい。

*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 
 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらすホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02


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