近頃根室で大きな問題になりつつある「ロシア2百カイリ内流し網漁禁止法案」に関する記事が今朝(6月6日)の北海道新聞根室地域版に載っている。

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ロシア200カイリ内流し網漁禁止法案
 「道東の損失訴える」
  根室市対策本部 12年ぶり会合

【根室】ロシア200カイリ内の流し網漁を2016年から禁止する法案の審議が佳境を迎える中、根室市と市内4漁協でつくる「ロシア200海里内サケ・マス流網漁業根室市対策本部」(本部長・長谷川俊輔根室市長)の会合が5日、12年ぶりに開かれた。関係者は「禁止法案が成立すれば数百億円に及ぶ影響があり、早急に対策が必要だ」と危機感を募らせた。
 会合には根室市としない4漁協、根室水産協会など14団体が出席し、関係者以外シャットアウトして行われた。終了後、根室漁協の大坂鉄夫組合長は「ロシア200カイリ内の流し網漁が禁止されれば大変なことになる。新聞を通して情報を得るしかなく、詳しい状況が分からず困っている」と厳しい表情を見せた。
 対策本部はロシア200カイリ内でサケ・マス流し網漁ができなくなった場合、道東地域が受ける経済的損失について早急に算出。それを受け、長谷川市長や関係団体幹部が10、11の両日、首相や外務省、道内選出国会議員などを訪れ、「具体的な数字を示し、道東地域が崩壊しかねない重大な問題であることを訴える」(市幹部)
 会合後の記者会見で、長谷川市長は「サケ・マス流し網漁がなくなれば、地域産業が崩壊しかねない」と語り、「これまで30年間に及ぶ操業は日ロ友好の象徴。長期的、安定的な継続を訴えたい」と強調した。近視となった場合の補償問題について質問が及ぶと「現在は考えるべきではない」と答えるにとどまった。(丸山挌史)
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 根室の悪弊の一つはは閉鎖的・排他的で大局を見る視点がないということ。市政のいたるところにそれが現れるから始末に終えない。ロシア200海里内での流し網漁禁止は漁業や水産業界だけの問題ではない。そこで働いている父さん母さんの問題でもあるし、養われている子どもたちへの影響も大きい。業界関係者以外はシャットアウト、閉鎖的な議論がろくな結論にならないことはさまざまな問題事例(市立病院建て替え、市立病院経営赤字2倍へ膨張、明治公園再開発、老健施設や特別養護老人施設への異例の巨額補充金交付、高校統廃合問題、全国一斉学力テスト結果に見る他地域との学力格差拡大問題等々)が証明している。

 道東の漁協自身が問題を作り出したとも言える。20トンの割り当てに160トンも獲ってきて、ロシアの監視員に1000万円の賄賂をわたしたことがばれて、漁獲割り当てが有名無実化している実態が明らかになったり、羅臼漁協所属の多くの漁船が協定で決められたGPS利用の位置確認装置の電源を切って密漁を繰り返したことがばれたりと、道東のいくつかの漁協自身が漁獲割り当てを無視した違法操業を黙認し続けたことが今日の危機を招いたという反省は、市役所と業界関係者だけの会合では出るわけもない。部外者立ち入り禁止の「村社会」に自浄作用はない。いい加減にやり方を替えたらどうだろう? 
 法案はロシア国内の問題だから日本がどうこうできる問題ではない。種は、道東の各漁業協同組合と所属の漁師たちが蒔いたのである。
 それゆえ業界外の一般市民を入れて議論しないとダメだ。上場企業はこうした弊害を取り除くために社外取締役制度を導入して、執行取締役の業務を監視している。オンブズマン制度も必要だ。
 
 市長の言とは裏腹に、対策本部はどうやら補償問題に視点が移っている様子。
 塾に通っている生徒のお父さんやお母さんが水産関係で働いているケースは少なくない。水産業の町だから当然のことだ。市役所や道庁に勤務しているお父さんやお母さんがいる家庭の子どもたちには影響がないだろうが、同級生で水産関係で働く親をもつ生徒たちの中には、塾通いや進学そのものをあきらめざるを得ない者が多数出る。その一方で根室市内に高卒者が働く企業が激減する。
 ロシア200海里内でのサケ・マス流し網漁が禁止となれば、秋刀魚漁だけでは船員たちの収入は半減する。船を下りて首都圏へ出稼ぎにいく者が増えるだろうし、根室に見切りをつけて他の地域へ移住する人も増える。サケ・マスの値段が暴騰すれば水産加工会社は原料を仕入れられないから、日給・月給のおばちゃんたちを真っ先に解雇することになる。予定通り禁止になれば、根室の小規模水産加工業者も比較的大きい水産加工業者も3割はつぶれるだろう。
 繰り返すが「関係者」は漁協と水産加工業の会社だけではない。閉鎖的で排他的な市政運営はやめて、日曜日ごとに市民自由参加でテーマごとに市の総合文化会館で継続議論すべきだ。危機はチャンス、オープンなよい町づくりをする絶好の機会と捉えたい。

<余談:語彙の選び方>
 道新記事中に「佳境」という言葉が使われているが、これは喜ばしい状況や面白いことに使うものだ。流し網漁禁止で苦境に立つ根室の状況を取材した記事に使うべきではないだろう。釈迦に説法だがあえて書いておく。

 「佳境を迎える」⇒「山場を迎える」

 道新根室支局の取材記事にプロらしからぬ突っ込み不足(市立根室病院決算記事)の取材や今回のように問題のある言葉の選び方が散見されるのは、五十数年間愛読し続けている定期購読者として憂慮に堪えない。

 大辞林より
佳境:(小説や話などの)興味深いところ。面白い場面。

(無意識にだが、わたしは言葉をプラスのイメージの語群、マイナスイメージの語群、どちらともいえないフラットな語群に分類して使って考えていたようだ。その分類に従えば、「佳境」という語彙はプラスイメージの語群に属する。根室が大変な苦境に陥るかもしれないロシア200カイリサケ・マス流し網漁禁止法案審議がいま山場に差し掛かっている。自分が記者なら、面白いという意味を帯びた「佳境」という語彙の選択はこの記事中ではありえない。
 しかし、これは個人的な語彙選択の好みの問題なのかもしれない。担当記者が書いた記事を根室市局長がOKをだしたのだから、たぶん支局長も違和感を感じなかった。根室がふるさとであるebisuには違和感と小さな痛みを残した語彙選択だった。
 なおアンダーライン部分は先ほど修正・追加した。7日朝9時追記)


*#3056 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁禁止:閉鎖的な漁協と市政 Jun. 6, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-06

 #3058 サケ・マス流し網漁禁止法案ロシア下院通過 Jun. 11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11

 #3060 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁 1962トンで妥結 Jun. 12, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-12

 #3067 ロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁:先手必勝 Jun. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-06-25


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― 13時30分追記 ―
 コメント欄より

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おはようごじゃいます。ebisuさん。
久々の書き込みですっ。

私も今朝の新聞を読んで、今後の根室水産業の岐路になるだろうと感じましたね。

しかし根室は何をするにしても、市民より、業界団体を大切にするという点は選挙をしても変わりませんね~。
市長にとっての市民は、業界団体に属する市民であって、我々のような属していない市民は、市民と考えていないのかも知れませんね。
(選挙で票になる人だけが市民という考えなのだろう)

こと最近、今まで以上に市政に対する不信感が高まるできことが多くなってきている。

とある人より相談を受けたが、現在残りの部分の光洋住宅の建替え案が進行中らしいが、昨年末に現在の住居者にアンケートしたらしいが、その結果発表なく、最近、測量作業が開始され、住居者から建替えになるのかという不安感が出ているらしい。
これを聞いた際、アンケートの結果は公表されたか?を確認したが、相談者には結果は届いておらず、測量開始の用紙が投函されただけらしい。
このような案件は、まず住民への説明を適切を行った上で、作業を適切に進める事案ではなかろうか?

住民が減少し高齢者が増加している中で、団地のような非効率的な住居は、何も考えていないと感じる。
私であれば、団地ではなく、今見たいな長屋タイプを維持するべきと考える。

過去、東京に住んでいたので、マンションなどの上下左右を意識して生活より、長屋タイプの方が安心感があるし、高齢者には階段などがない分、住みやすいと感じるのだが?

結局のところ、建築業界に対して高額な仕事を回すための口実としたいとしか見えないのが、今の光洋団地と考える。

病院についても、以前より闇が深くなったのではないだろうか?4月より地方公営企業法の全部適用になったらしいが、管理者が経営に関しての「マニフェスト」などは公表したのだろうか?今までは市の行政の一貫であったが、管理責任者がいるのだから、管理者が目指す経営方針を市民に公表すできである。約2か月経過しているがその声は聞こえてこない。
赤字に対して対処や経営の改善などを1年単位に評価する体制を構築できていなければ、全部適用になった意味がありません。

明治公園の改修についても、最近話が出てきていない。
半数の市民が必要性を疑う改修にも関わらず、恐慌(本当は強硬ですが、ここではあえてこちらの文字を選択)で進めようとしている。

以前にも記載した記憶があるが、東北のとある市で「復興」に関して、どのように進めるかを60歳以上の高齢者が中心となるのではなく、次世代を担う20~40代を中心にした検討を行っている。これは実に理にかなっている。結局、その世代が住み良いまちであれば、人口減少を止めることができるかもしれない。高齢者中心となれば、次世代は刺激を求め、都市圏に移住することになる。
根室は既に何歩も遅れ、人口減少にブレーキをかけることができていない。今の市政体制では当たり前である。勉強にしても仕事にしても、根室の考えでは、他では通用しないのである。

ebisuさんのように根室の中で、他でも通用するように指導してくれる環境が今以上に必要な時期になっているのは確かです。
by 相川始 (2015-06-06 10:21)

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相川さん
こんにちは

一般市民をないがしろにする業界団体と市政の癒着構造がまた顔を出しています。ねむろの悪弊にはうんざりします。
市民の10%に満たぬ「オール根室村」の悪徳顔役たちはふるさとの未来なんかちっとも考えていないようで、自分たちの利益を確保することしか頭にない様子。
「オール根室村」の住民が好き勝手なことをすればするほど、根室の町は衰退の度合いを深め、自滅の道をひた走ることになります。

病院赤字問題拡大は別途取り上げますが、「広報ねむろ」によれば、今年度予算は44億円、実際には過去の売上は21~24億円程度しかありませんから、予算通りの支出があれば23~20億円の赤字がでるということ。
これでは地方公営企業法全部適用で指定管理者の権限を強めた意味がありません。
市議会文教厚生委員会はこんな野放図な予算案をそのまま通したのでしょうか、いったいなにをしているのでしょう。
民間会計基準で予算と決算を組み直して市議会便りで経営実態を公表すべきです。

根室高校商業科と事務情報科の3年生は市立病院の決算データを教材に取り入れて生徒に組み直しにトライさせて根室高校のホームページ上で公開したらよい。
若い人たちが自分たちのふるさとの町とでたらめな市政運営を見直すよい機会になるでしょう。
地域の高校がよい町づくりに貢献できる絶好の機会です。
by ebisu (2015-06-06 13:12)

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 「佳境」という言葉について、ハンドルネーム「元・根室市民」さんからスマートな異論が投稿されたので、これもアップします。書かれた文章からは、じつにきちんとした方のようです。
 わたしの語感が記事を書いた記者さんや元・根室市民さんよりも少々古いのかもしれません。(笑)
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いつも興味深く記事を拝読させていただいております。

「佳境」についてですが、goo辞書によれば、

1 興味を感じさせる場面。「話が―に入る」
2 景色のよい所。「県内随一の―」
[補説]1は、ふつう物語、演劇等の興味深い場面をいい、「佳境に入る」などの形で使うが、最近「年賀状仕分け佳境」のように、ある状況の頂点・最盛期をいう使い方が目立ってきている。

とあります。
2は今回は当てはまりませんから、1について考えると、この記事で「佳境」を使っても良いのではないか?と考えました。
「興味深い」ですから、「興味」についても調べました。

1 その物事が感じさせるおもむき。おもしろみ。興。
「人生の最も深き―あり」〈高村・友の妻〉
2 ある対象に対する特別の関心。「―がわく」「―を引く」「―に満ちた表情」「―の的」
3 心理学で、ある対象を価値あるものとして、主観的に選択しようとする心的傾向。教育学では、学習の動機付けの一つ。

 やはり、「喜ばしいかどうか」は示されていません。「おもしろみ」を感じる場面というのが「佳境」という言葉の意味です。
 今回の記事を書いた人は別に「喜ばしい状況」と思ったわけではなく、「最も興味深い場面だ」と思ったに過ぎないのではないでしょうか。
 だとすると、「佳境」で良いかと思いました。
 あるいは、この状況を喜ばしいと思っているのかもしれません。
 
by 元・根室市民 (2015-06-06 15:18) 

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元・根室市民さん

弊ブログを読んでいただき感謝申し上げます。
「佳境」をgoo辞書で調べてくれたのですね、ありがとうございます。

>1 興味を感じさせる場面。「話が―に入る」

これは私も異論がありません。

>[補説]1は、ふつう物語、演劇等の興味深い場面をいい、「佳境に入る」などの形で使うが、最近「年賀状仕分け佳境」のように、ある状況の頂点・最盛期をいう使い方が目立ってきている。

「興味深い場面」という説明から、さらに興味を引いてくれました。

>1 その物事が感じさせるおもむき。おもしろみ。興。
「人生の最も深き―あり」〈高村・友の妻〉

興味に「喜ばしい」というイメージがないことにも同意しますが、「その物事が感じさせるおもむき」や「おもしろみ」というのは少なくともプラスのイメージの語です。

死活問題に関わるロシアの禁止法の審議過程が山場に差し掛かっている様子を表現するのに、「興味深い場面」というのは北海道新聞札幌本社の記事ならともかく、根室支局の記事には似つかわしくありません。

広辞苑第2版によれば「佳境」は次のように説明されています。

①景色のすばらしくよいところ
②面白いところ。興味深いところ。「話が佳境に入る」

おそらくこの記事を書いた記者は「面白いところ」か「興味深いところ」という意味で使ったのでしょう。

もう一度書きますが、北海道新聞根室支局の記事ですから、「面白いところ」という語感の強い言葉を、ロシアの200カイリサケマス流し網漁禁止法が地元経済にとっては死活問題だと大騒ぎをしている根室で取材記事に使うのはプロとして不謹慎のそしりを免れないというのが、わたしの意見です。

死活問題や人の不幸という断崖絶壁にあるような状況を言い表すのに「面白いとか」「興味深い」という語感の語は文章書きのプロらしくないと思いました。
あなたのコメントを読んでも、「山場に差し掛かっている」という語のほうが、文脈上ふさわしいと私は考えます。

ひょっとしたら、この語感の違いは年代の相違によるのかもしれませんね。言葉は変化するもの、さては老いぼれたかな?(笑)

どうぞ、異論があればまたご投稿ください。読む人(もちろんわたしもその中の一人)が楽しめます。
by ebisu (2015-06-06 16:23)
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