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#3057 Alice's Adventures in Wonderland 『不思議の国のアリス』 Jun. 8, 2015 [44. 本を読む]

<更新情報>
 6/10 11時 <マザーグースより> ハンプティダンプティを追記

  高校の前期中間テストが先週土曜日に終わった。根室高校はこれから約1ヶ月間学校祭準備に入る。仮装ダンス衣装の準備やら、ダンスの練習が忙しくて、来週からは塾に来るのもままならぬ。クラス対抗だから、最後の思い出作りに高3年生は気合が入るから、その分受験勉強はお留守となる。受験生がこれでいいのかと首を傾げたくなる根室高校特有の現象にはもう慣れてしまった。8月9・10・11日の金刀比羅神社のお祭りまで、お盆(7月13日から)や港祭り、花火大会と行事が続くので、気分は浮かれたまま、勉強が手につかぬ。
 三年間毎年繰り返すから、ほとんどの生徒が潜在的な能力よりもワンランクかツーランク下の大学に進学することになる。学力が弱くて専門学校へ進学せざるをえなくなる生徒も多い。高校生になっても進学にはさっぱり緊迫感のないのが根室の高校生の特質である。
 その根室は朝夕に霧が出る季節になった。最低気温は7度、最高気温は10-18度程度、日本で一番涼しく過ごしやすい季節が到来、勉強にはもってこいなのだが・・・。全国レベルで大学進学を考えたら、優先順位が間違ってはいないか、高校生が優先すべきは学校祭やお祭りではないはず。
 優先順位を適確に判断して行動できない者は就職してから確実に落ちこぼれる、高校時代に悪い癖をつけてはいけない。高校の先生たちはどう考えているのだろう?

 とにかく試験が終わったと高校生3年生がまったりしている。4月の進研模試と5月の全統模試(河合塾)の結果表を見て、課題を再確認した。

 すぐに勉強には手がつかない、本棚から『不思議の国のアリス』を取り出して1時間ほどで読み終え、ようやく数学の問題を解いていた(いま使っている問題集を2回やり、青チャートを2回やれば、希望の大学への進学は120%かなう、簡単な話なのだが・・・)。
 原著を探し出して、生徒の横に置いておいたが、こちらはぱらぱらめくっただけ、あまり興味がなさげで空振り。原著の言葉遊び、奇想天外な物語の裏に込められた当時の社会風刺、数学的なパズルなど、読み手の教養に負うところが大きい。当時の英国を知れば知るほど『不思議の国のアリス』の奥行きの深さがわかってくる。
 わたしはマザーグースの歌を知らないが、知っている人にはまた別の情報が読みとれる。マザーグースや聖書も読まずにアリスを読むなんてと笑われそうだが、たぶんその辺りは後志のおじさんが詳しい。子供向けでありながら、大人が十分に楽しめるのがこの本。

 原著は英国で150年ほど前に書かれた、子ども向け「9-12歳対象」の本である、英国では聖書やシェークスピアに次いで読まれているという。著者はオックスフォード大学の数学の講師。本の名前は知っていても、読んだことのある中・高校生は少ないだろう。
 高速読みも良いが、ふんだんに出てくるなぞなぞや詩をゆっくり噛むように読むのもおもしろい。何を風刺しているのかを考えながら読むのも一興。
 英語で書かれた詩を日本語の詩に訳すのは至難の業、日本語で韻を踏んでるところなど、翻訳者は日本語の言葉選びにずいぶん力を入れているようにみえる。英詩の音韻などかまわないからすっかり無視して、日本語特有のリズム、五七調の歌に置き換えたらどういうことになるのか見てみたい。
 この本は言葉遊びが随所でなされているからそれをどのような日本語に置き換えるかも腕の見せ所。だからところどころでも原著の英文を確認しながら読めば楽しさは百倍となる。翻訳のむずかしい本だ。
 原著のほうは別の物語であるThrough the Looking Glass『鏡の国のアリス』も載っているので341ページある。
(『鏡の国のアリス』にはマザーグース由来のキャラクターがいくつか出てくる。お馴染みなのは卵のハンプティ・ダンプティ)

---------------------------------------------
<マザーグースより>
 Humpty Dumpty sat on a wall,
 Humpty Dumpty had a great fall;
 All the king's horses,
 And all the king's men,
 Couldn't put Humpty together again.

 ずんぐり卵のハンプティ・ダンプティ 塀に座った
 ずんぐり卵のハンプティ・ダンプティ おっこちて割れちゃった
 王様の馬ぜんぶでも
 王様の家来ぜんぶでも
 ハンプティを もとにはもどせやしない

  斉藤孝『からだを揺さぶる英語入門』より引用
---------------------------------------------

 王様だって偉そうにしているけれど、割れた卵ひとつだって元に戻せやしないんだ。当たり前のことを言っているように見えながら、身分制社会の理不尽さやばかばかしさがマザーグースの中に垣間見えてくる。

 優れた本を一冊読めば、
 読みたい本が10~20冊は増える、
 人生は短く、読みたい本は増え続ける
               ・・・ebisu


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不思議の国のアリス (角川文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)

  • 作者: ルイス・キャロル
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: ペーパーバック

 わたしがもっている古いPUFFIN BOOK版(ISBN 0 14 03.0169 0)が見当たらないので、別のものを挙げる。2冊目のほうは92枚の水彩画が追加されている。

Alice's Adventures in Wonderland and Through the Looking Glass

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  • 作者: Lewis Carroll
  • 出版社/メーカー: Seven Seas
  • 発売日: 2014/08/19
  • メディア: ペーパーバック

Alice's Adventures in Wonderland (Puffin Classics)

Alice's Adventures in Wonderland (Puffin Classics)

  • 作者: Lewis Carroll
  • 出版社/メーカー: Puffin Books
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: ペーパーバック

 150年前に出版された『不思議の国のアリス』にはさまざまな研究がなされているから、興味のある方はこちらもどうぞ。著者のルイス・キャロルはペンネームで、オクスフォード大学の数学講師であるチャールズ・ラドウィッチ・ドッドソンが著者。だから、数学に焦点を当てた研究もある。それも1冊もっていたはずだが、見つからない。しかたなく別のものをリストアップする。


不思議の国の“アリス”―ルイス・キャロルとふたりのアリス (求龍堂グラフィックス)

不思議の国の“アリス”―ルイス・キャロルとふたりのアリス (求龍堂グラフィックス)

  • 作者: 舟崎 克彦
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 1991/07
  • メディア: 大型本


翻訳の国の「アリス」―ルイス・キャロル翻訳史・翻訳論

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  • 作者: 楠本 君恵
  • 出版社/メーカー: 未知谷
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 単行本

からだを揺さぶる英語入門

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  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/02
  • メディア: 単行本
セット・マザーグースのうた(5冊セット)

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  • 作者: 谷川俊太郎
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 1993/05
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マザー・グースの唄―イギリスの伝承童謡 (中公新書 (275))

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  • 発売日: 1972/01
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コメント 5

Hirosuke

 ●      ●      ●       ●
Humpty| Dumpty | sat on a | wall,

 ●       ●     ●         ●
Humpty|Dumpty|had a great|fall.

●           ●        ●          ●
All the king’s|horses, and|all the king’s|men,

 ●          ●        ●      ●   
Couldn’t put|Humpty |together|again.

こうしたリズム付き押韻はマザーグース全般に言えますが。

【Hirosuke訳】
-----------------------------
ハンプティ・ダンプティ 座っとる
ハンプティ・ダンプティ 塀の上
ハンプティ・ダンプティ 派手に落ち
王の馬や家来が全部でも
ハンプティを二度とは一緒に出来ぬ
-----------------------------
by Hirosuke (2015-06-11 11:00) 

ebisu

遊んでくれて、ありがとうございます。
口ずさむと調子がいいですね。
そういう点では短歌と似たところがあります。
それぞれの言語に固有のリズムがあるからでしょう。

had a great fallの「派手に落ち」という日本語訳もなかなかすばらしい。卵のハンプティが塀から「派手に落ち」れば、割れるのは当然です。「割れちゃった」といってるのでしょう。

ところで、

All the king's horses,
And all the king's men,
Couldn't put Humpty together again.

この文は解釈の余地が広くてちょっと面白い。

①All the king's horses couldn't put Humpty again (on the wall).

②All the king's men couldn't put Humpty again (on the wall).

③All the king's horses and all the king's men couldn't put Humpty together again (on the wall).

こんな風にも読めます。

①王様の強い馬でもハンプティを落っこちる前(割れる前)の状態で塀の上に戻すことはできない。
②王様の優秀な家来でもハンプティを落っこちる前の状態で塀の上に戻すことはできない。
③王様の強い馬と優秀な家来が力を合わせても、割れてしまった卵のハンプティを元の状態には戻せない。

王様は何でもできると王様自身も庶民も錯覚していますが、王様の権力を全部使っても、割れてしまった卵一つすら元には戻せやしないのだよと笑っているように聞こえます。
しっかり風刺が効いています。
簡単なように見えて、マザーグースはところどころ手ごわい?

はっきりいって、わたしはこういう分野の英語は苦手です。でも楽しそう。
by ebisu (2015-06-11 11:27) 

Hirosuke

英語詩は基本的にダブルミーニングなんです。
ダブルどころかトリプル以上の場合もあります。

この謎めいたタイトルもダブルミーニング。
        ↓
Where is 【Him】? [わが里程標]
http://tada-de-english.blog.so-net.ne.jp/2015-05-23

----------------------------
賛美歌=hymn(ヒム)
天なる父=Him(ヒム)

Fa-ther=天なる父=Far-there
-----------------------------

英語聖書は、こんなのだらけなんです。
トリプル以上の謎々だらけです。
日本語聖書は表面しか訳されていない。
これを読んで「信仰に到達した!」と言う人は何なのか?
友人によると僕の思考が捻くれてるらしいのですが。

by Hirosuke (2015-06-11 11:50) 

ebisu

へえ~!

聖書はダブルミーニングやトリプルミーニングだらけなのですか、その当たりが理解できたら、聖書を読むのが百倍楽しいでしょうね。
同じ音の別の言葉が隠されている。
万葉集の一部の歌も和語に充てられた漢字の意味を読み解くことで、別の意味が現れる。中国語だったり、古代朝鮮語だったりと、知的な遊びの宝庫ですね。

>Fa-ther=天なる父=Far-there

世の中は知らないことだらけです、
Father=Far-there
これだけでもわたしには十分に楽しい。(笑)

教えてくれてありがとうございます。楽しみが増えました。
by ebisu (2015-06-11 11:58) 

Hirosuke

【Hirosuke リズム改善訳】
-----------------------------
ハンプティダンプティ 座っとる

ハンプティダンプティ 塀の上

ハンプティダンプティ 派手に落ち

王の馬・家来が全部でも

ハンプティを二度とは戻せない
----------------------------
by Hirosuke (2015-06-11 12:56) 

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