中高生がどういう本を読んでいるのか知りたくて、彼ら・彼女たちの読んでいる本を借りて読んでみている。
 ソードアートオンラインシリーズに関しては本編15冊をすでに読み、最近は生徒が貸してくれたプログレッシブ・シリーズを3冊読んだ。合計18冊である。これらは内容から判断するとほとんど漫画本のレベルだ。

 プログレッシブ・シリーズは本編に対して続編とは呼べない構成になっている。主人公のキリトとアスナは本編では仮想空間にある小さな村で幼馴染として育ち、あるときアスナが禁忌に触れて連れ去られてしまう。
 プログレッシブでは百層のアインクラッド攻略のパートナーとして第一層の攻略からキリトとアスナがパートナーとなっている。小さな村での幼馴染という設定は葬り去られているから、本編を読んだ読者はしばらく矛盾と違和感にさいなまされる。
 百層のアインクラッド攻略を第1層から書き始めたら、平均2層の攻略ストーリーとすれば、このシリーズで50冊書き続けられることになる。SAO一本でこれから10年間食べていくための営業戦略なのだろう。出版社も好評なシリーズなので、売上金額を確保するためにも歓迎だろう。
 本編のストーリーでは百層のアインクラッド攻略は完結しているから、生きるか死ぬかの懸かったデスゲームがどうなるかという緊張感はプログレッシブ・シリーズにはない。結論のわかっている物語を読むことになる。そういうわけで物語はデスゲームからファンタジーとなってしまっている。

 アインクラッドの攻略が終わった後の物語が本編で始まっていたが、一段落ついた形になっている。米国が洋上に浮かぶ人工知能とオンラインゲームに関する日本の国策研究所を乗っ取るところまでストーリー展開があったが、あちらのほうの続編を読んでみたい。

 ところで、この本はもともとアニメのノベライズnovelizeとして書かれた作品のようだが、英語を習い始めたばかりの中1の生徒が、「先生、その本ノベライズだよ」というのを聞いて驚いた。CALDには載っていない。realize、industrialize、mobilizeという単語は知っていて当たり前の単語だが、novelizeが使われている文章はお目にかかったことがない。中学生はノベライズという語彙を普段あたりまえに使っているようだ。
 GENIUSには1988年の初版から載っているが、アニメのnovelizeという意味ではないだろう、アニメの小説化は日本特有の現象である。語彙力と表現力豊かな書き手が現れたら、「文学作品化」がなされるかもしれない。

 英語由来のカタカナ語彙を除くと、この本(プログレッシブ)の日本語語彙レベルも内容も小学校高学年レベルである。ゲームが好きな男子生徒が、ゲームの延長上にこういうゲーム攻略物語を読むのだろう。
 高校生になっても読書対象がSAOシリーズ・レベルを出ないとすると、精神年齢的には小学生程度である。そして語彙レベルがこの程度にとどまっていたら、大学受験模試の現代国語の点数がかなり低いものになる。はっきりいうと論説文の文意が理解できず、記述式問題の答えが書けない。

 2週間ほど前に、高校3年生が河合塾の模試を受けた。現代国語の問題は論説文が主体で、それも難易度が相当高い。SAOレベルの本しか読まない生徒なら、150点満点で20点前後の得点という悲惨な結果になる。手も足も出ないということになる。ボーダーフリー(Fランク)、偏差値40以下。
 本を読む速度の大きい生徒でも、普段から難易度の高いものにチャレンジしていなければ河合塾の模試で現代国語40点を超えることはかなり困難である。難易度の高いものに普段からチャレンジしておかないと取り返しがつかぬ。
 語彙レベルを上げると同時に、難解な文章を読みなれていないと正答を書くことができない。



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