11月27日付北海道新聞根室地域版の記事をとりあげる。
 根室市の財政運営は市立根室病院の赤字額が前市長時代の8億円前後から昨年度17.2億円*へ拡大して、厳しいものとなっている。
 8億円を限度としていた新規市債発行額は24億円となり、借金額は年々増えている。市税収入は28億円前後であり、市立根室病院の赤字拡大はすでに由々しき問題となっている。

*#2505 根室市 財源不足7億3500万円 Nov.20, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20

 H23年度当初見込みだと、H25年度末の市債残高は192.8億円だったが、25年度当初見込みでは224.6億円に拡大してしまっている。31.8億円も計画外で市債残高が増えている。たった2年間でこのテイタラクだ。この2年間放漫財政運営をしてきたことが数字で明らかだ。このうえまだ明治公園の再開発をやり、借金の山を積み上げようとしている。市議会がブレーキにならなかったことも数字から明らか。
(市債発行残高については本田市議がブログで「公債費年度末残高の推移」という資料を公開している。「公債費」と書いてあるが「公債発行残高」である。
 *「改革プラン、前年度決算及び今年度決算見込み対比分析資料」2010/10/22作成)

 記事を読んでから、ebisuのコメントをご覧戴きたい。

 11月27日付北海道新聞根室地域版より
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  市立病院
   患者数 順調に推移
    本年度 財政特別委で報告

【根室】市立根室病院の経営に市民の意見を反映させる財政再建特別委員会(委員長・山本連治郎根室商工会議所副会頭)が26日同病院で開かれた。2012年度病院事業改革プランの実施状況や、新病院開業後の患者数が報告された。
 昨年度の外来患者数は12万1021人(目標達成率87%)、入院患者数は3万4386人(同88.7%)。いずれも医師不足などが影響したためで、収入不足分は一般会計から15億3955万円を繰り入れた。
 一方、新病院が開院した本年度は10月末時点で外来患者数が7万6895人(前年同期比8.8%増)、入院患者数が2万1773人(同13%増)と順調に推移。医療収益も昨年同期より9705万円多い13億6344万円となっている。
 ただ委員からは「消費税増税で経営が苦しくなるのでは」との指摘も上がった。病院側は3%の増税で5千万円程度の影響があるとの試算を明かし、「さらに進んだ計画を考えたい」と説明した。
 事業改革プランは公立病院特例債の発行を国に認めてもらう際、数値目標を挙げて経営改善の道筋を示す計画。09年3月の策定以降、毎年の収支実績は計画を下回る厳しい状態が続いている。  (笠原悠里)

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【ebisuの辛口コメント】
 市債残高が2年間でなぜ31億円も増えたのか?
 財政再建特別委員長は商工会議所副会頭であるが、委員長も含めてこの委員会はその機能を果たしているのだろうか、検証してみたい。

(1)H24年度の病院事業赤字額はいくらか?⇒17.2億円
 H24年度は一般会計繰入金が15.4億円となっているが、純損失が1.8億円あるから、H24年度の病院事業赤字額は17.2億円だろう。

資料「平成25年度~平成27年度 市立根室病院事業会計収支 (試算結果)」:病院作成資料http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/fde217d7ec2c7fe94925749f0016c254/$FILE/HPkeisai.pdf

直接ジャンプできないようですから、病院ホームページの当該項目「~(試算結果)」をクリックしてください。
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/doc/byouin

(2)医師数不足による売上減少はほんとうか?⇒ じつは不明
「昨年度の外来患者数は12万1021人(目標達成率87%)、入院患者数は3万4386人(同88.7%)。いずれも医師不足などが影響したためで、収入不足分は一般会計から15億3955万円を繰り入れた。」
 常勤医師数だけみてもわからない、非常勤(派遣等)医師も含めてみないと、医師不足で売上減少が起きたかどうかはにわかに判定ができない。そういう資料を病院側は公表していない。

 診療機能を維持するためには常勤医師数が減少すると派遣ドクターが増えるということになる。真偽のほどはわからぬが、派遣ドクターの日当等の中央値は40万円前後と噂に聞いているから、交通費(飛行機代+空港からのタクシー料金)も含めて医業費用が大幅に膨らみ、赤字を大きくするだろうことはだれでも容易に推測がつく。
 1日の派遣だと往復2日分の日当で40万円くらいになるようだ。交替で繰り返したらどうなるのか年換算してみてほしい、常勤医に比べて法外な金額がかかっていることが明らかだ。大学派遣なら派遣元の大学へいく。常勤医を送らずに「派遣医」でつないだほうが大学にとっては収入増になる。もちつもたれつである程度はしかたがないが、度を越すと派遣受け入れ先の病院の経常赤字額が数億円も膨らんでしまうから、大学医局側も自制が必要だ。こういう点を決算特別委は見ているのだろうか?

         医師数  売上     
 H21年度  17名  28.9億円 
 H22年度  16名  25.9億円
 H23年度  14名  25.1億円
 H24年度  13名  ???

 H22年とH23年では常勤医指数が2名異なるが、売上は0.8億円ダウンしただけ。H24年度はいくらダウンしたのだろう?数字があきらかでない。
 考えてみてほしい、常勤医が減少しても派遣医を増やせば外来患者数が減少することはないだろう。だから、派遣医を含めた非常勤医をあわせて考えないと、収入減少の理由がわかるはずがないのである。
 H23年度13.0億円だった赤字がH24年度になぜ17.2億円に拡大したのだろう?病院がホームページで公表している資料でも、新聞記事でもこのように様子がまったくわからない。
  常勤医の採用を院長と参事が妨害しているということを財政再建委員会は知っているのだろうか?市長がお墨付きを与えないでそうしたことができるはずもない。病院経営改革を妨害しているのは誰なのか、院内のドクターにヒアリングすればすぐにわかることだ。


(3)H25年度の赤字見込み額はいくらか?⇒24.6億円
H24年度売上 22.3億円
H25年度売上 23.4億円(10月までの実績売上を年換算した)
差し引き増分   1.1億円(4.9%CH)…CH:変化率(増加率)

 10月前の実績値で、外来患者数8.8%増、入院患者数13%増だそうだから、10%の2.2億円売上が増えてもよさそうだが、年換算値で1.1億円しか増えない。売上ベースで見たら増収分は5%にすぎない。外来患者数は目標値に対して95.2%*の達成率だ。計画対比で見ると5%の未達だからけっして順調ではない。

*10月末までの外来患者数を土日と祭日を除く日数147日で除すと523.1人/日となるが、計画では549.6人/日である。

 逆算すると(「病院事業収益-一般会計繰入金-特別利益」)売上の目標値は25億円のようだから、実績値ベースの年換算売上と比べると1.6億円少ない、計画を超える赤字拡大が予測される。
 では、新病院になって経費増はどれくらいか?赤字額が拡大するのか縮小するのかは売上と費用のバランスをみる必要がある。

H24年費用 39.5億円
H25年費用 48.0億円
差し引き増加 8.5億円(21.5%CH)

 医業費用が前年対比で8.5億円増える試算になっているが、21.5%CHなのに内訳がないのでさっぱりわからぬ。普通はこんなに増えるのだから内訳明細を注記するのが当然だ。なぜ注記がないのだろう?わたしの目にはアナだらけの資料に見える。
 こんな資料を部下が作ってきたら、どこがダメなのかを具体的に指摘してわたしなら作り直しを命じる。病院管理職はこんなことすらチェックできないのか?
 旧建物の固定資産除却損は特別損失だが資料を見てもないから、医業費用の中に入れてしまっているのではないか?しっかりしてくれ。こういう低レベルの仕事では経営改善なんてできるはずがない。

売上-費用
H24年     17.2億円
H25年     24.6億円
差し引き増加  7.4億円   


  病院事業赤字額が7.4億円膨らみ24.6億円になるのに、一般会計からの繰入額は15.3億円だから、9.3億円の不足が生じる。赤字として次年度へ繰り越すつもりだろうか?それともこれは全部資金支出のない赤字分なのだろうか?昨年11月に病院側で作成した資料では7.6億円の純損失となっている。これに一般会計繰入金の15.3億円を加算すると22.9億円の病院事業赤字となる。民間の企業会計基準で損益計算書を作成したら22.9億円の赤字計画


(4)財政再建の焦点は何か?
 病院事業赤字に関しては放漫経営が数値になって現れている「費用増大」の原因を探ることと、コストカットをするのは当然だが、財政再建委員会はそのことにまったく触れていないようだから、じつに奇妙である。何が原因でこのようなバカバカしいことになったのか?

(医療費に消費税はかからない。だから仕入れにかかる消費税分がコスト増になる。消費税率アップによって経営が悪化するのではとの質問に、「3%の増税で5千万円程度の影響がある」と答えているから、仕入れなどが16億円くらいあることになる。消費税の問題など病院経営にとっては枝葉末節の問題だろう。小さな問題に焦点を当てることで、大きな問題からピントがそれるようなことがあってはならぬ。)

 市債残高が2年間で31億円も増えているようだが、なぜこのような放漫財政がなされるのかその理由を突き止め、放漫財政をストップする具体的な提言をするのが財政再建特別委員会の役割ではないのか?

 部門別損益計算がないから、予算も部門別に編成できない。したがって、部門別予算管理ができるわけがない。損益計算制度的にも市立根室病院は放漫経営になるような仕組みで動いている。正規職員が百数十人もいる企業でこういうでたらめな損益計算制度の民間会社はほとんどないだろう。どうしてこういう基本的なところを問題にしないのか?

 消費税増税に目がいっているが、本丸はそういうことではない。病院赤字拡大は医者が少ないからともいっているが、ここ数年間常勤医は12~15名前後で大きな変動はないから、赤字額が急増した理由の説明にはならぬ。
 常勤医が不足しているにも関わらず、副院長らの推す常勤医を院長や参事が拒絶して経営改善を妨害するのはなぜか?
 赤字特例債による損失繰り延べ措置で、病院経営は圧迫されている。病院側の資料によれば平成26年度から返済額が1.1億円増えて年間3.6億円になるこれだけでも前市長時代の年間赤字額8億円の40%にもなる。このように後年時負担を多くして病院経営をさらに窮地に追い詰めることになるから、赤字の繰り延べをしてはならない。部門別予算制度を導入し、放漫経営に歯止めをかけて、さらに人件費を削っても全額一般会計から繰入を行うべきだ。
 財政再建委員会はこれらの重大な問題には触れようとしない

 国の基準をはるかに超える(10倍以上)老健施設や特養へ度を越した多額の補助金交付も放漫財政の一環と考えるべきだ。委員長殿は30ベッドの増床で9億円弱の補助金交付を受けた老健施設経営者とはごく近い親戚であるから、いわば「利害関係人」、そういう人が財政再建委員会の委員長であること自体がおかしい。利害関係人をこういう委員会の委員や委員長に選んではいけないことは世間の常識だ。

 消費税増税は小さな問題で、それよりもはるかに大きい問題にはまったく目が届かない財政再建委員会。補助金問題には委員長の親戚が関係しているから委員諸氏も遠慮して物が言えないのかも知れぬ。かくして利害関係人を委員に選ぶことは委員会の機能を麻痺させることになる。根室の町は何十年間もこういうことを平気でやってきたから、町の活気が失われたのもあたりまえだ。
 消費税増税にかかわる議論しかできないのでは話にならない、財政再建委員である大人がこういう拙劣な議論をするようでは子ども達への教育上もよろしくない。

(5)赤字拡大の原因を調査すべき:業務監査の必要性
 この8年間の派遣医の報酬と交通費を調べてみたらいい。赤字拡大の理由の一端がわかるだろう。業務監査もやってみたら、放漫経営にかかわる別の赤字要因が明確になるはず。常勤医を拒否してどの程度赤字を拡大させているのかもわかるだろう。

(6)利害関係人を委員にしてはいけない
 市の利害関係人である町の有力者がこういう委員会の委員やら委員長を引き受けて、市政翼賛装置と化し、町の衰退に拍車をかけているが、そろそろこういうデタラメはやめよ
 財政再建委員会だけではない、明治公園再開発では「明治公園憩いとふれあいの森構想市民委員会」委員長を信金元理事長殿がやっている。ハコモノをつくり借金を増やせば信金の融資先が増えるから、まるで営業活動だと揶揄されてもしかたあるまい。他にも「根室再興を考える市民会議」のように市と利害関係の深い業者が委員長をやっている例がある。
 こういう市となあなあの取引業者が各種の諮問委員会委員長となって、市政にお墨付きを与え、市政を壟断する、根室の旧弊と言ってよいだろう
 「オール根室」と声高に叫ぶ、ほんの一部の地元経済界人の中心にいて騒いでいるのは現市長とこういう連中だ。根室の町に活気を取り戻し、恣意的な市政運営をストップするには、こういう人たちに市政から退場してもらわねばならない。

 話しを元へ戻そう、財政再建特別委員会の皆さんはピントを外しているのではないだろうか。問題なのは消費税増税ではない、。ピントを合わせるべきところがどこなのかはすでにいくつか指摘をした。委員の方々は付託された仕事ができないとか、古里のために戦う覚悟がないのなら、そもそもこういう委員は引き受けるべきではない。
 市は財政再建対策特別委員会を解散して、分析能力をもち、具体的な提言ができる委員を選びなおせ



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【参考資料】
*#2334 大地みらい信金3期連続の増益そして地域経済は衰退 Jun. 19, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-19
 以下、抜粋引用
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**<ebisuのコメント>** 
 アンダーラインをしておいたが、数年前の病院事業赤字特例債を皮切りに根室市への融資が膨らんでいる。大地みらい信金元理事長が「明治公園憩いとふれあいの森構想市民委員会」の委員長をやっている。これは市民委員会ではなくたんなる市長の諮問委員会だ。ほとんどの委員が市の委嘱である。異例に速い結論で40億円近い再開発が進行中だ。
 大地みらい信金は市の借金が増えることでリスクのない融資先を確保できる。こういう姿を癒着といわずしてなんと言おう。夕張信金と破綻前の夕張市の関係にじつによく似ている。

以下は「#2318 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(1):広報ねむろより Jun. 2, 2013」からの抜粋
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-02
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 市債を増やすことに手を貸し、大地みらい信金が自ら引き受けるなどということがあってはならない。根室市の財政規律の乱れに地元信金が手を貸す構図は道内のほかの市でもあった。
 大地みらい信金は預金量は増えているが融資先がないと2012年2月号の「財界サッポロ」のインタビューに同じ元理事長が応えている。それと明治公園整備事業を重ね合わせると根室市を有力な資金貸し付けのターゲットにしているように見られて当然だろう。
 こういう「営業政策」は市民感情から言っても問題があるし、根室信用金庫(旧名称)の歴史と伝統に唾するような「営業政策」に見える。
 本社建物は立派になったが精神が腐り始めているのではないか?こんなテイタラクの信金では仕事に誇りをもてないだろうから職員たちがかわいそうだ。地域財政や経済を破綻へ導くのではなく、破綻へブレーキをかけるように行動してもらいたい。
 大地みらい信金の理事たちはその歴史と伝統の重みを省みて行動すべきだ。夕張信用金庫の轍を踏むな。

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*財界サッポロ2012年2月号より元理事長の発言部分を抜粋
http://www.zaikaisapporo.co.jp/kigyou/intervew/115.shtml

「不安があるから預金が増える。地元の中小企業も設備投資を控える。資金需要がない。われわれとしても融資先がない。どうしても預貸率は下がります。」


*#2473 市立根室病院を外部の医師はどうみているか? Nov. 1, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-01-1

  #2513 市立根室病院の経営状況について:財政再建特別委は機能しているか?  Nov. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-28




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