今朝(11/9)の北海道新聞社説を見て驚いた。これが北海道新聞の社説なのだろうか?特定の政治団体の機関紙かと見まがうような内容である。
 北海道新聞根室支局の記者のKHさんは、根室赴任中に3度も教育シリーズを敢行し、丁寧な取材を重ねて根室の教育問題の核心に迫ってくれた。あのシリーズ記事は根室の教育問題を考える人々にとって共有の財産といってよいだろう。そういう北海道新聞が社説でなぜこのような左翼学生のような現実遊離の観念論を吐くのか理解に苦しむ。

 わたしは小学校4年生から国語辞書を引きながら道新社説を読み、時にその論に共感してきた。小学生のときに見た「三矢研究」に関する論説、落下傘部隊の数少ない生き残り兵だったオヤジは何を感じたのだろうか、いまとなっては知る由もない。沖縄返還のときの社説は東京で知ったが、琉球新報と中部日報と同じ論旨の社説、なかなか歯切れのいい論が多かった。
 高校を卒業してから35年間、進学と就職で東京で暮らしてきたが、思うところあり2002年の11月にふるさとにもどって、私塾を開いている。親子を含めて60年に近い北海道新聞の定期購読者であるが、道産子の一人として今回の社説は肯けない、その理由は卑怯の一点にある。

(「H25全国学力テスト・データ分析」というカテゴリーを新設して、関連記事を集めたので、すでに11本アップした偏差値情報とコメントをお読みいただきたい。)

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/503075.html
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学テ成績公表 「管内別」に何の意味が(11月9日)

 道内14教育局管内の個別の成績を公表して、下位地域を特定することに何の教育的意味があるのだろう。

 道教委は小中学校で今春行われた全国学力テスト(全国学テ)の管内別平均正答率を公表した。上位と下位の差は昨年度より広がったと指摘し、家庭生活にも課題があると分析している。

 成績下位と明示された管内の学校が萎縮することにならないか、危惧を拭えない。序列化につながる発表手法に強い違和感を覚える。

 道教委は今年のテスト前、道内平均が他県や全国と比べていかに低いかをグラフで示し、「北海道の子供は全国最低レベル」と訴えるチラシを児童生徒向けに作成した。

 他者との比較の中で、出来の悪さをことさら強調し、子どもたちに奮起を促す。これが学習意欲の向上につながると考えるなら、勘違いもはなはだしい。教育現場を圧迫し、閉塞(へいそく)感を強めかねない。

 毎年、文部科学省が都道府県別の平均を公表するたびに、北海道は下位に甘んじてきた。

 ただ、「過度の競争をあおる」として、道教委は管内別成績は数値ではなく、「やや高い」「低い」などの表現で発表してきた。

 それを数値の公表に切り替え、ひと目で最上位や最下位の管内が判別できるようにしたのは、2011年度からだ。

 この年、道教委は全国学力テストの道内平均を14年度までに全国平均以上にするとの目標を掲げた。公表の数値化は「この目標を達成するため」と理由づけられた。

 しかし、その後も北海道の成績は47都道府県の下位から抜け出せない。本年度も基礎問題で差をやや縮めるにとどまった。目標年はすでに来年に迫っている。

 これ以上、地域や学校を駆り立てて目標達成を目指すことが、果たして教育政策として有効なのか。むしろテスト対策にしのぎを削る事態を一段とエスカレートさせかねない。

 テストの本来の狙いは都道府県が順位を競い合うことではなかったはずだ。学習到達度を測り、教育現場などで指導に役立てるのが目的である。原点を見失ってはならない。

 道内は産業、経済、人口など地域ごとに多様性が大きく、当然ながら学力や学習に対する考え方も地域や家庭で異なっている。

 そんな中で、テストの点数を学力を測る唯一の物差しであるかのようにみなし、上位、下位を決めつけるのは極めて乱暴だ。

 道教委がなすべきは、テストの成績を競わせることではなく、指導法の確立や教員の手厚い配置など教育環境を地道に整備することだ。

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【コメント】

 論点はただ一つ、卑怯の一点に尽きる。

 この社説を書いている人はおそらく大卒だろう。それなりの学力競争を勝ち抜いて、北海道新聞に就職し、いま社説を書いて口をそそいでいる。そういう人が、学力競争に目をつぶるべきだという主張は、はなはだ奇異で卑怯に感じる。
 目を閉じ、耳をふさいでも学力競争は厳然としてあり、北海道は全国レベルで学力を測定したら、じつにお寒い状況なのである。道民はそうした事実をうすうす知っているが、素朴であまりモノを言わぬ。

 自然が豊かで、海産物や農作物にめぐまれ、勉強をあまりしなくても豊かな天然資源のお陰で食べることができた。
 具体例を挙げると、豊かな水産資源に恵まれた根室ですら高校卒業生の大半が進学し、そのまま都会で就職して戻ってこない。地元に就職がなく高卒で根室を出て働く若者も少なくない。

 都会で働くには学力は有力な武器の一つである。学力をいわずとも学歴がモノを言う。上場企業で正規雇用社員は大卒しか取らない会社は多い。
 たとえば上場企業の本社が集まっている東京では大卒割合は6割を超える。高卒や専門学校出では職種も会社もきわめて限定されてしまう。いまや4割が非正規雇用である。大学新卒ですら非正規雇用となり年収100~200万円の低賃金にあえぐ者たちが増えている。
 そうした現実を承知していながら、「成績下位と明示された管内の学校が萎縮することにならないか、危惧を拭えない。序列化につながる発表手法に強い違和感を覚える」とのたまう。この論説委員は学力競争を勝ち抜いて大学へ進学し、北海道新聞へ就職したのではないか。
 いわば「学力競争勝者」が競争するなという。自分は学力競争を勝ち抜いてきて、後から来る若者たちには学力競争は不要だと説く。こういうのを欧米ではダブルスタンダードといい、日本語では二枚舌という。

 TPPについての論議がかまびすしいが、これからは頭を使って農業経営をしていかなければ生き残れない時代が来きている。そうした時代に、学力問題に目をつぶり、耳をふさいで競争がないことにしていいわけがない。道産子は自ら低学力の現実を数値で認識し、具体的な対策を立て、結果をチェックして学力向上に努めるべき時代を迎えている。
 「テストの点数を学力を測る唯一の物差しであるかのようにみなし、上位、下位を決めつけるのは極めて乱暴だ」というなら、テストにかわって学力を測定する手段や方法を具体的に提起してみたらどうだろう?すべての学校が、生徒に成績をつけるために(定期)テストを実施している事実をどのように理解しているのだろう、バカを言うのもほどがある。

 わたしは北教組の先生たちの中にもいい先生がいたことを身をもって知っているし、高校時代から仲のよい友人の一人に共産党員もいる。だから根っからこれらの主義主張をする人々が嫌いということはない。人物次第だと思っている。しかし、こと教育問題に関しては別だと考える。
 教職員組合である北教組が道新社説と同じような主張をしているのだが、政治団体だから主義主張はあるのだろう、そのこと自体は是としたい。
 しかしながら、北海道新聞は特定の政治集団の機関紙ではなく、道民にこよなく愛されてきた一般紙であるから、教育問題、とりわけ道産子の低学力問題はその原点に立ち戻って適切な社説を堂々と掲げてもらいたい。

 北海道の地域経済が衰退しつつある根っこに、低学力問題があるとわたしはにらんでいるが、そう感じている企業人はすくなくない。いろんな分野で問題山積み、解決のための人材不足をきたしているのが現実だ。

 わたしは北海道の学力の現実をわかりやすい数値で示すために、文科省が公表した47個の都道府県別平均正答数データから、EXCELを使って都道府県別偏差値を計算して公表した。そのデータを元に、北海道教育委員会が公表した「管内版」を利用して、管内別偏差値ランキング表も作成した。「管内版」がなければ、こうした偏差値情報すら計算できない。偏差値での測度は統計学的な正しさをもっており、これを否とするならどのような数値をもって特定の地域の全国的な学力判定ができるのだろう?道民は何をもとに自らの地域の学力を判断できるというのか?

 小学校は全国平均値の50を超える地域は一つもないが、こんな現状であることを数値を挙げて明快に説明してくれた者があっただろうか?
 都道府県別全国偏差値40~46までの間に三支庁管内(檜山・石狩・上川)があるだけで、あとはすべて40未満である。偏差値40以下は下位16%を意味する。14支庁管内のうち11支庁管内が成績下位16%に含まれる現実にいままで目をつぶってきたということになる。

 中学校は都道府県別偏差値が50を超えたのは、石狩管内の52.2一つのみの惨状である。他10支庁管内が40台、後志・日高・宗谷が30台である。

 低学力の現状に目をつぶったままでは、北海道の未来は暗い、なにがなんでもこの現実を覆したい。「H25年全国学力テスト・データ分析」のカテゴリーにある記事をお読みいただき、偏差値で道内14支庁管内別偏差値をみて、どうすべきかebisuと一緒にお考えいただきたい。

 ふるさとの根室についていえば、中学を卒業したら、全員が道立高校に入学できる。根室高校普通科に入るために学力競争があるという人もいるだろうが、あんなものを「学力競争」とは言わない。道内偏差値で42~45であり、全国偏差値なら40を切っている。下位16%のコップの中での戦いを「過度な学力競争」とは言わない。適度なレベルを考えても、「学力競争」はないに等しい。
 大学受験ではじめて「学力競争」にさらされるというのが道内の生徒達の現実。高校生になってから全国模試で全国レベルの位置を知ったのでは大半の生徒が手遅れとなっている。
 だからこそ、全国学力テストで、小学生や中学生の内から、自分達の学力が全国レベルでどういうものか知る必要がある。

 わたしが計算した全国偏差値を学校の使って、先生は生徒に自分の学校の地域の学力レベルを具体的に説明してもらいたい。きちんと話せば生徒たちは正しく理解し、行動する。情報隠しが一番いけない。道新社説は「管内の学校が萎縮することにならないか、危惧を拭えない。序列化につながる発表手法に強い違和感を覚える」と書いているが、先生たちはこの現実に打ちひしがれて当然だ。学力テストの結果は先生たちの普段の授業内容への勤務評定のようなものだから。
 しかし、生徒は別である、ニムオロ塾の生徒達は「先生、わたしたち全国で最低レベルほ北海道で14支庁管内で最低ということは全国最低レベルってこと!」と憤慨していた。「なら、もっと勉強するわ」と「ブカツ大好き&勉強きらい」な女子が奮起してます、だから生徒達には学力問題に関しては事実をそのまま伝えるのがいい。道新社説が心配するのとはまったく異なるいい効果がでる、いや、説明のしかたしだいで出せるものなのです。
 今回偏差値を計算して確認した結果、根室管内((小学校37.0、道内7位)、(中学校41.4、道内9位))は道内最低レベルよりはすこしよく、全国レベルでは小学校が下位9.7%、中学校が下位19.5%に当たることがわかったから、学力は努力次第であげられるものなのだと伝えればいいだけ。後は先生たちと生徒自身の努力と家庭学習習慣のシツケ次第だ。
 先生たちはいままでのやり方とはまったく別の工夫を普段の授業でやればいい、そして学力不振の30%の生徒達に放課後補習を義務付けたらいい。
 授業のやり方の改善については、別項で言及します。釧路の教育を考える会の仲間が、しっかり情報をつかんできてくれました。

(根室管内へ視野を広げてみれば、中標津も毎年40人ほどの欠員を出している。標津も欠員。札幌圏(石狩市長管内)や旭川圏(上川支庁管内)そして函館圏(渡島支庁管内)を除いた道内の多くの支庁管内が似たような状態だろう。)

 地元紙である北海道新聞が、そして大卒の論説委員が、学力テストの管内別結果公表をさして「過度な競争を煽る」なんて論を吐くのは、じつに卑怯で片腹痛い。

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< 弊ブログから引用 >

 元データは文科省が公表した47都道府県の平均正答数と北海道教育委員会が公表した「管内版」に載っている管内別平均正答率である。元になる都道府県別偏差値算出の元データ数は、「47個×4科目」だけ。
 したがって、ばらつきが少し大きくなる傾向は否めない。正規分布を外れるデータが一つ二つ混ざると、それらのデータは±3σを外れることになる。 都道府県別偏差値の分布をみると、 小学校: 32.0~81.6 中学校: 14.4~74.8 通常の偏差値は全受験者の個別データを用いて計算されるので、本データとは性格が異なる。数万から数十万のデータを用いて計算される偏差値との性格の違いがあるということだ。
 統計に不慣れな人のためにもうすこし事情を具体的に説明すると、47個のデータが理想的な形で正規分布していないことが予測できる。イレギュラーなデータが一つあるとその影響が偏差値の分布に出てしまうのである。小学校の都道府県別データでいうと秋田県の81.6、中学校のデータでいうと沖縄県の14.4がそうしたデータに該当する。47個のデータが±3σの範囲から外れてしまう。この範囲を外れるデータの出現確率は0.0013だから、データ1000個に一つの割合となるから、47個のサンプルデータでは出現しないはずのものである。これはサンプル数が少ないためだから、そのように諒解いただきたい。都道府県別に分析する限り、データ数は47個とならざるを得ない。

  偏差値による本データ分析の意味するところは、都道府県単位で正答数の標準偏差値を計算してそれを尺度に全道14支庁管内別データ比較をすることにあり、その限りでは統計学的に正しい方法といいうる。
 都道府県単位の全国データの尺度基準で、14支庁管内それぞれがどのような位置にあるのかが明らかになる。こういうデータが明らかになったことは、ebisuの知る限りではいままでにない。
 それぞれの地域で学ぶ道産子が、自分達の学力を全国基準で測度できるということは今後の勉学に大いに役に立つ、いや役立ててほしい。
 高校生になって全国模試で自分の位置を知ったのでは偏差値65以下(96.6%)の生徒は手遅れである。 首都圏のトップレベルの生徒達は小学校4年生から、生活習慣を受験用に切り替え、予習中心のハイスピード・難問題トレーニングをしているのである。
 高校生になってから追いつけるのは、スタートが遅れてもそれをものともしない馬力をもつ偏差値65以上の極小数の生徒達だけ。スタートを早く切れば偏差値60以上の受験戦争のフィールドで本来戦える生徒達のほとんどが偏差値50前後の大学へ進学することになっている。これを「惨状」と呼ばずしてなんと言おう。
 道産子の一人であるわたしはこうした現状も変えたいと願っている。道産子(ニムオロっ子)による道産子(ニムオロっ子)の意識改革のための情報発信、それが「ニムオロ塾」の役割。

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これが噂の「管内版」 : 北海道教育委員会ホームページより
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gakuryoku.htm

 「全道版」をスクロールすると、次に「管内版」がでてきます。学校の先生たちは、自分の地域の版を一月かけてじっくり読み解いてください。レーダチャートは、全国・全道・秋田県と比較できるようにわかりやすくつくられています。授業のあり方、改善のヒントが満載ですよ。
 低学力の現実は変えられる。そういうパワーをあなたたちが握っている、あとは現状を変革する意志をもつかどうかです。大半の人が現状改革の意志をおもちなのだと信じます。

*「北海道新聞の学力社説の真の目的(?)」 (「大学受験と高校受験と教育ブログ」より)
http://maruta.be/gakusyu/1069

**釧路の高校の偏差値にたとえて、面白い解説してくれています、ぜひお読みください。
ブログ「情熱空間」より
「14管内別偏差値換算表(中学3年生)」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6916378.html

「偏差値で見る学力格差」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/6916295.html


*#2509 (眼耳鼻舌身)意と仕事 Nov. 24, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24

 #2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1



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