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#2531 (4) 根室管内版解説 : RC-5 & RC-10学習時間等  Dec. 17, 2013   [69.H25全国学力テスト・データ分析]

  北海道教育委員会が作成した全国学力調査資料の根室管内版に載っているレーダーチャートを二つとりあげる。RC-5は小学6年生でレーダチャートの5番目(8ページ)のもの、そしてRC-10は中学3年生で10番目(13ページ)に載っている。

http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h25chosa/14_nemuro.pdf


【fact:レーダチャートに現れている特異点】
 RC上で気になる部分だけみよう。
 凡例: 小学6年生⇒中3年生
①学校の授業時間意外に普段1日当たり1時間以上勉強する
   82.9%⇒71.6%
②学校が休みの日に2時間以上勉強する
   74.2%⇒68.2%
③家で、学校の授業の予習をしている
  122.4%⇒59.5%
④学習塾(家庭教師含む)に通っていない
  125.4%⇒168.4%
⑤家で、学校の授業の復習をしている
  192.4%⇒117.4%
⑥家で、テストで間違えた問題について勉強している
  114.8%⇒186.6%  

 全国平均を100%として根室管内の各項目の割合を測度した数字が載っているから、元の計算値(割合)が不明となっている。だから小学校⇒中学校と推移を見ようとしても、全国平均比率に対する相対的な割合しかわからない。元の比率みられると、小学生が中学生になるとどのように変化しているかがよくわかる資料となる。

【各項目ごとの分析】
 ①をみると、1日当たりの勉強時間が1時間以上である生徒の割合が、小学生で全国平均の82.9%あるのに、中学生になるとなぜ71.6%に落ちるのだろう?
 小学校よりも中学校のほうが教科の内容は格段に難しくなるのに、1時間以上勉強する生徒の割合が減少しているのである。
 だが、実際生徒のどれくらいの割合が1時間以上勉強しているのかはこの表からはわからない。実際の割合を併記してもらえると利用範囲が広がるので、次回から是非改善をお願いしたい。

 ②は休日に2時間以上勉強する生徒の割合であるが、これも小学6年生が74.2%なのに、中学3年生になると68.2%に減少している。
 実際の数値が減少しているのか、それとも全国平均値に対して減少しているだけなのかは重要なポイントであるが、元の割合が書いていないので判断ができない。
 元データの割合が併記してあると便利だ。

 ③は予習している生徒の割合だが、これが一番落差が大きい。小学6年生では全国平均値を上回って122.4%もあるのに、中学3年生では59.5%と全国平均値の6割に激減する。中学になると各教科内容が難しくなることと、英語の授業が入ってくることを考えたら、これほど激減するのは解せない。これも実際の割合を併記してくれたらもっとはっきりしたことが言える。

 中学生になると、教科内容が難しくなることや英語が追加されるから、家庭学習時間が増えて当然だが、全国平均値と比べてしまうと、実際の時間数が増えているのかどうかがわからなくなる。
 だから、全国平均値と比べてしかものをいうことができない。
 レーダチャートから言いうることは、全国平均に比べて普段の勉強時間も、休日の勉強時間も、予習する生徒の割合も、根室管内は落ちるということだ。これが学力に影響していることはいうまでもない。

 これらの限定されたデータから言いうることは、健全な家庭学習習慣を破壊するなんらかの「装置」が中学校にあるということ

(2002年の12月にふるさと根室にもどって私塾を開いて驚いたことに一つは、生徒達に予習の習慣のないことだった。中3年生で予習する習慣のある生徒は10%程度だろう。だから高校生になってから予習習慣を身につける生徒が大半である。これでは中学生になってむずかしくなる教科内容に対応できるはずがない。
 東京の子ども達の25%は私立中学受験をするので、その生徒達は小学4年生から予習の習慣を育むことになる。中学受験は学校のスケジュールどおりにやっていたらとても間に合わないから、塾では予習中心で学習をする。もちろん、中学受験しない生徒でも予習習慣のある生徒は多い。根室管内の小学生の偏差値が37.0であるのは、そういう教育環境の差も影響している。もちろん全道的な問題でもある。)

④は通塾していない児童・生徒の割合(非通塾率)だが、全国平均に比べて小学6年生で1.2倍、中学3年生で1.7倍にもなる。根室管内は学習塾が少ないということと、保護者の教育への関心の薄さを表しているようにみえる。
 学習塾の中に、習字や小学生の英語教室やそろばんなどの習い事も含まれているかもしれない。「学習塾」とはなっているが、生徒達の解釈にばらつきがあるだろう。首都圏では中学受験のために小学生の通塾率が高いのに、根室管内の小学生の非通塾率が全国平均より少しだけしか高くなっていないのはこうした事情があるのではないだろうか。根室の特徴は幼児英語熱が高いということ。都会は中学受験をするから、小学高学年の生徒が英語教室に通う割合は小さい。そんなことをしていたら成績のよい生徒でも有名私立中学には合格できないという現実がある。

 さて、根室市内に限ってみると、学習塾はすくない。高校生まで教えている学習塾はわずか三つで、一つはブログで再来年廃業を宣言している。個人経営の学習塾がほとんどで、それも高齢化し十数年で現在ある個人経営塾のほとんどが消える。
 法人経営はたった二つで、ひとつは幼稚園が私塾を経営している。学校法人は税金を免除され公的補助金が出ているから、営利事業である塾経営をやるのは法令違反になるのではないかと思うが不思議だ。他の地域で学校法人が塾経営をしているという例は聞いたことがない。法に抵触しないやり方でもあるのだろうか?普通に考えたらアウトだから、考え違いをしていないか心配だ。うっかりしていたなら法に抵触しないやり方に改めたらいい。私塾の数も種類も多いほうが生徒達にとっては選択肢が増えて望ましい。
 法人経営のもう一つは(中学生も教えているが)小学生対象の英語教室だから「学習塾」の範疇に入るかどうか微妙だ。
(文科省の生徒質問票には「学習塾の定義」がないのでこういうことになる)
 大手進学塾が進出してくるほどの生徒数(現在1学年250名前後、10年前は400名)はいないから、受け皿をなくして10年後の「非通塾率」はもっと増大しているだろう。現在2.8万人の人口が2040年には1.8万人に減少するから私塾経営は採算が合わなくなる。もっともこの数年はインターネットで配信される授業が激安になってきているから、そういうところを利用すればいいのだろう。
 ただし、成績下位層はネットによる学習は無理だ。教える側の情熱と根気を必要とするからだ。学校で救えないのはそれが欠けているからでもある。継続した放課後補習などよほどの情熱と根気がなければできるものではない。
 教育は生徒と先生のコミュニケーションが大切だ。わたしは30年後のふるさとを支えうる、正直で誠実、不屈の精神をもち、そして基礎学力のしっかりした人材を残すために35年ぶりにふるさとに戻り私塾を開いた。
 私塾の原点は、吉田松陰の松下村塾にあるとわたしは思っている。授業技術もあるかも知れぬが、松蔭の松下村塾はそうしたところに焦点はなかっただろう。

⑤家で学校の復習をしている割合は、全国平均に対して小学6年生が1.9倍なのに、中学3年生は1.2倍に激減する。中学生になると、家庭で復習する時間も確保できないようなブカツを大半の生徒がやっていることを意味するのだろう。中学校のほうが強化がやさしくて、復習の必要がないというわけではないからだ。その結果、学力が落ちることになる。

⑥テストで間違えた問題について勉強しているかと聞いているが、小学6年生で全国平均の1.1倍から中3年生は1.9倍に激増している。こんなにテストの復習をしているのに、学力が上がらないのはなぜだろう?
 成績上位の生徒は直すべき箇所が少ないが、成績下位の生徒達は直す箇所が多い。B中学校の学力テスト総合ABCの数学の平均点を見ると、
   ■ 学力テスト総合A 17.8点
   ■ 学力テスト総合B 17.7点
   ■ 学力テスト総合C 16.2点

 それぞれ60点満点だから、平均点は30%に満たない。半数の生徒が問題の7割も直さなければならない。基礎計算能力さえ確かでない成績下位層の生徒が、文章題の多少複雑な問題をどうやって直せというのか?先生達は模範解答をコピーして生徒に渡すだけ、生徒はそれをみて写していく。みたってわからないからだ。学校ぐるみでそんなことをしているから、全国平均の1.9倍という数字が出るのだろう。実態は「やった振り」である、じつにみったくない仕事だ、きちんとフォローしてくれていたら、成績下位層の生徒達の点数が上がる、しかし上がっていない。仕事は正直に誠実にやるべきだ。

 B中学校の3年生が例外だと思われても困るので、たまたま手元にあるので、C中学校2年生の11月7日の学力テスト「得点通知票」から数学のデータを拾ってみる。こちらは百点満点である。
   ■ 平均点 46.0点
   ■ 40点以下の生徒 40.4%(19人/47人)

 同じC中学校の1年生の学力テストの数学のデータは、
   ■ 平均点 47.9点
   ■ 40点以下の生徒 42.2%(19人/45人)
 40点以下の比率は2年生と同じようなものだ。学力テストの問題の難易度は高くない。

 成績下位40%の生徒達に模範解答を渡しても、自力でトレースして理解できないだろう。やはり、放課後補習をして、丁寧に解説してあげるべきだ。それが本来の仕事であることに異を唱える教員はいないだろう。成績下位層の生徒達の学力向上のために、当たり前のことを当たり前に坦々とやるだけだから誰にだってできる。もちろん私塾のわたしも毎日のように成績下位の生徒に補習をやっているよ。


【まとめ】
 ①②③⑤は中学校での過度なブカツの影響が否めないだろう。④は受け皿の学習塾自体が少ないという教育僻地であることと、親の教育への関心の薄さを表す数字だろう。⑥は生徒に模範解答を写させているだけ、自分の生徒の学力を知っていながら、模範解答を渡すだけという教育への熱意のなさが現れていると言ったら言いすぎだろうか?得点30%以下の成績下位層が半数もいるのだが、先生達はこれらの生徒ときちんと向き合うべきだ。

 普段のブカツを5時半まででやめて、晩御飯前に1時間家庭学習をするように、学校と家庭が協力して取り組めば、普段1時間以上勉強する生徒の割合を増やせるだろう。
 そして休日のブカツを半日だけにして、土日いずれかは原則ブカツは休みとし、3時間以上の勉強を推奨すればいい。
 これらに加えて、復習中心の学習から予習中心の学習への切り替えを中学生に強いるべきだ。先生たちがその大切さを具体的に生徒に説明してやればいい。

 やるべきことをちゃんとやれば、全国学力テストで根室市内の生徒達が全国平均値を上回ることは案外簡単なのである。数値管理を入れずにピント外れなことばかり何年もやっているから埒があかない。

 「仕事は正直に誠実に、渾身の力でやり遂げよう」
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」
 「小欲知足」
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*#2529 根室市教委の仕事振り(3):「確かな学力向上に関する取組方針」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15

 #2528 根室市教委の仕事ぶり(2):「全国学力・学習状況調査の結果報告」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14-1

 #2527 根室市教委の仕事ぶり(1):教育に関する評価報告書 Dec. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14

 #2526 根室は学力テスト結果非公表 :学力向上の抵抗勢力は誰だ Dec. 13, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-13


 #2509 (眼耳鼻舌身)意と仕事 Nov. 24, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24#favorite

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 #2503 (3) 根室管内版解説 : RC-4 生活習慣の調査  Nov. 19, 2013  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18

 #2494 (2) 根室管内版解説 : RC-2, RC-3 <例証:データの限界>  Nov. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-14

 #2492 (1) 根室管内版解説 : RC-1と偏差値 難易度の高い問題を授業でやるべし  Nov. 13, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-12
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 #2500 11月7日 中学1・2年生 学力テストの結果  Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-1

 #2499 個別指導と戦略思考 Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17

 #2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-16-3

 #2405 中学数学の先生たち、授業進度管理は大丈夫ですか?  Sep. 12, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-12-1

 #2456 市町村別学テ情報公開解禁へ(読売新聞)  Oct.21, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-21

 #2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1



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ZAPPER

そちらもこちらも、市教委はめっぽう数字に弱いですね。もう、数字に弱い職員ばかりを、わざと集めているんじゃないか?ってなくらいに(笑)。

分析能力がとてつもなく低いです。道教委のデータがなければ手も足も出ないんですから。やはり、市町村教育委員会のレベルは、地域の子どもの学力と、強い相関があるのでしょうね!
by ZAPPER (2013-12-18 12:34) 

ebisu

ええ、強い正の相関があるようです。
相関係数は0.98程度かな?
最近数年間は偏差値50前後の大卒(地元出身者)が応募しても合格しないほどの「難関就職先」になっています。そういう人たちが半分でもいればずいぶん変るのでしょう。
しかし、根室市役所はあいかわらずコネ採用が多いと聞いています。根室高校で中位以下の成績でも合格者がいるようです。
学力も問題ですが、公的機関にコネを使ってズルをして就職する、あるいはさせる人々の心根の問題がもっと大きいのかもしれません。これでは市役所内部で人心荒廃が進みます。

人材を確保するためには採用人事からコネ採用を排除することですね。
by ebisu (2013-12-18 12:53) 

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