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#2528 根室市教委の仕事ぶり(2):「全国学力・学習状況調査の結果報告」 Dec. 15, 2013 [69.H25全国学力テスト・データ分析]

【概要】
 平成25年度の全国学力テストの結果を踏まえて、根室市教委は標記の結果報告書を作成している。
 根室市教委が作成したのはわずか7ページの数字の羅列の報告書であり、北海道教育委員会が公表した「根室管内版」に比べてかなり後退したものになっている。なにが大きく違うのかというと、児童・生徒たちの低学力をなんとかしたいという熱意だろう。地域格差を縮めるには何がどうなっているのかを把握しなければならないから、事実がわかりやすくなっていることが大事だ。「管内版」はレーダチャートを作成して、表をチャートに変換してわかりやすい。

【具体的な論点5つ】
 結果報告書から3点だけ抜粋引用、他に2点、合計5点をとりあげてみたい。
 《児童・生徒質問紙からの考察》にこういう記述があった。
(1) 「国語や算数・数学が好きな割合に比べて、平均正答率が低いことは、指導方法や学習方法に何らかの課題が考えられるため、今後、改善に向けた取り組みが必要である」(5頁)

 好きであろうとなかろうと、平均正答率が低ければ、指導方法や学習方法に問題があることはあたりまえだ。
 算数・数学に関して言えば、中学1年生で分数の加減算や小数の乗除算があやふやな生徒が4割近くいるのに、学校として放課後補習体制を組むとか、小学校でやらせる問題量を増やすとかいうような具体策がないのはどうしたわけだろう?まさか中学生に基礎計算問題集『カルク』を配ってこと足れりというわけではないだろう。成績下位層は一時期は手間をかけて丁寧に教えてやらないと分数や小数の計算をマスターできない。根室西高校で新入生に分数や小数の四則演算から教えなおしているのを知らないとは言わせない、いつまで放置しておくつもりだ。この数年は根室高校生の中にも基礎計算能力に疑問符がつく生徒が入学している。
 こんな問題は小学校と中学校で、学校あげて取り組めば簡単に解決できる問題だが、市教委はどうしてこういう手間のかかることを学校に要求できないのか、理解に苦しむ。毅然と放課後補習を指示すべきだ。
 成績上位層は大学へ進学してほとんどがふるさと根室へ戻ってこないから、町の未来を担うのは成績中位層と下位層である。基礎学力問題をほうっておいて町の未来があろうはずがない、市議会文教厚生委員会でもとりあげてもらいたい。こういう問題こそ「オール根室」で取り組むべきだろう。

(2) データをクールに読んでもらいたい、小学校の算数も平均正答率が低いが、中学校になってさらに下がっていく傾向があるのは過度なブカツの影響が考えられる。しかし、そうしたことへの言及がまったくない。
  6時半までブカツをしたら、ほとんどの生徒が家庭学習時間をとれないことくらい生活時間を分析したらすぐにわかることだ。過度なブカツを制限する具体策をなぜださない?ことなかれでは学力向上ができるはずがない。軋轢を起こしても学力向上を成し遂げる意志をはっきりだせ。

「算数・数学の基礎知識を測定する算数・数学Aでは、全道と比較して小学校はやや低く、中学校は低い。また、全国と比較して小・中学校とも低い」
「算数・数学の基礎知識を測定する算数・数学Bでは、全道と比較して小学校はやや低く、中学校は著しく低い。また、全国と比較して小学校で相当低く、中学校は著しく低い」(1頁)

 これは教育行政としてのあるべき姿でなない。教育行政は教育に資してこそ意味があるが、単にデータを並べて見せただけで、当事者としての視点が欠けている。なぜこうなるかはハッキリしているのだから、残されているのは適切な具体策(ブカツ制限と放課後補習体制)を実施するだけだろう。

 青字で引用した問題点は二つともいま始まった問題ではあるまいに、根室の子ども達の学力を上げるという熱意がまったく感じられない。仕事をやる気があるのだろうか?

(3) 「放課後を利用した補完的な学習サポートを実施した学校は、小学校では8割強で実施、中学校では全校で実施・・・」(5頁)

 「中学校では全校で実施」となっているが、定期テスト前の1週間でもやったことになるが、そのようなやりかたで何年やっても基礎計算能力に疑問符がつく成績下位層は放置されたままになっている。市街化地域の中学校はたったの3校しかないから、簡単にヒアリングもできるし実地調査も可能だから、「補完的な学習サポート」の実態をきちんと調査してから報告書を書け。やった振りだけあるいは仕事のやる気のなさがこういうコメントに如実に現れている。

 基礎計算能力に欠ける成績下位層は市街化地域の各学校に3~4割もいる。成績下位層の生徒はブカツを休ませ、週2回・2ヶ月間くらい放課後補習を継続しないと底上げできない。そんなことは現場の数学担当の先生たちは充分わかっている。小学校の算数授業に問題のあることももちろん中学校の数学担当の先生たちは知っている。なのに、ほとんどの先生が放課後補習を継続して目の前の生徒達が基礎計算能力を強化しようとしないのは、学校がブカツを週に2日×8週ほど制限して成績下位層の生徒や保護者に放課後補習体制を宣言しないからだ。どんなに抵抗があってもやるべきことを毅然とやれ。根室高校出身の教員もいるはず、「敢為和協」は校訓だ。生徒達の基礎学力を上げるために言うべきことをはっきり言い、やるべきことを敢然と為せ。

(4) ページ数は示さないが、学校で実施している朝読書は読書力の強化にまったく役に立たないことはすでに結論が出ている。これは手抜き仕事だ。
 ニムオロ塾では小中学生に良質なテキストを選んで音読トレーニングを実施しているが、児童・生徒の日本語語彙力不足には目を覆いたくなる。読めない漢字の量が8年前の生徒たちに比べると格段に増えている。「てにおは」の読み違え、そして「先読み」できない生徒の割合も、気味が悪いほど増えつつある。日本語語彙力の低下は学力全般に及ぶから、一番重視しなければいけない部分だが、そこから壊れてきているというのがふるさとに戻って10年間教え続けてきた実感である
 10年続けた音読トレーニング経験を踏まえた上で、断言するが、「朝読書」は読書力の強化にまったく効果はない。先生がついて、良質のテクストを選び音読トレーニングすべきだ。児童書から大人の本の読書への切り替えがうまくいっていない。適切な読書指導が学校でなされていないからだ
 教育行政は、出版業界に小4でも読めるくらいのルビを振った書籍の出版を増やすように意見表明すべきだろう。「読み、書き、そろばん」、一番大事なのは「読み」である。

(5) 家庭学習習慣のない生徒が多いことにも言及があるが、これも教育行政にできることがある。小学校1年生に入学時に、保護者対象に家庭学習習慣の育て方についての講習会を継続してやればいい。1年間、フォローしたらいい。最初が肝心で、1年生で躾けたら、あとは心配ない。小学校を卒業するまで家庭学習習慣をつけなかったら、それは「家庭で学習しない習慣」を6年間賭けて育てたことになる。これは厄介だ。「一種の生活習慣病」に罹ってしまったと考えるべきだ。中学3年間で治らぬ生徒が半数以上だろう。ブカツに異常に熱心な保護者達が自分の子ども達の健全な家庭学習習慣の芽を摘んでいる。教育行政は警鐘を鳴らすべきだ。

【管内版との相違】
 大まかにみると根室市教委は管内版から数値を拾って並べただけであるが、根室市の情報開示をしている部分もある。異なっているのは以下の4点。
①前回調査データとの比較をしていること
②アンケートと平均正答率の関係を分析している(4頁中段から5頁8行目まで)
③根室市内の学校の先生の年齢構成表が示されていること
④根室市内の学校のデータ(学校別ではない)が7頁目に示されていること

 もっと工夫がありそうなもので、前年対比をするならレーダーチャートでやるくらいの手間はかけてもらいたい。いままでの分すべてをレーダチャートにプロットすれば、変化の様子がよくわかる。もちろん学力テストの結果だけでなく学習状況調査データもレーダチャートでプロットするくらいのことはやれるだろう。
 釧路市教委作成の結果報告書も並べておこう。こちらのほうが根室市教委よりもずっと具体的でグラフも入っており、見た目がきれいだ。道教委の統一フォーマットのそれぞれの管内版を基にしていながら、視点も作成技術にも大きな相違がある。生徒の学力も問題だが、根室市教委の面々の仕事の能力やスキルは釧路よりも格段に落ちる。生徒達の学力が低いということは、その20年後30年後の姿である根室の大人たちの基礎学力や仕事の能力が著しく劣るという結果を引き起こさずにはおかないだろう。なんと30年も40年も前から問題は起きていたとしか考えられない。

 三つの資料を眺めて、その作り手の基礎学力や仕事のスキルの差の大きさに愕然としてしまう。根室市教委さん、ebisuのところへおいで、来年はもっとまともなものを創ろうじゃないか。余計なことは何にも考えなくていい、ふるさと根室の子どもたちと、町の未来を込めた分析と提案資料を一緒に創ろう。
 そういうわけで三つともURLを書いておく、クリックして見比べたらいい。

 根室市教委作成「全国学力・学習状況調査の結果報告」全7頁
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/9ebe7710315e8ac149257aec000a715c/$FILE/H25gakuryokutesutokekka.pdf

 北海道教育委員会作成「根室管内版」
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h25chosa/14_nemuro.pdf

 釧路市教委作成「全国学力・学習状況調査(結果)」全22頁
http://www.city.kushiro.lg.jp/common/000050797.pdf



【結論&仕事の評価】
 手抜き仕事はじつに恥ずかしい、似たような資料を作ってもこんなに差が出る。知識と技術の差が明確に出てしまった。それだけではない、資料を比較すると基礎学力向上への熱意にも大きな差を感じる。

 みんなが見ている、仕事は正直に誠実に、渾身の力でやろう。


(蛇足:三つの資料に偏差値をつけてみよう。
  道教委作成資料   60
  釧路市教委作成資料50
  根室市教委作成資料37
もちろんデータの統計学的な根拠はない、お遊び。)
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*#2529 根室市教委の仕事振り(3):「確かな学力向上に関する取組方針」 Dec. 15, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-15

 #2527 根室市教委の仕事ぶり(1):教育に関する評価報告書 Dec. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-14

*#2526 根室は学力テスト結果非公表 :学力向上の抵抗勢力は誰だ Dec. 13, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-13

 #2503 (3) 根室管内版解説 : RC-4 生活習慣の調査  Nov. 19, 2013  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18

 #2509 (眼耳鼻舌身)意と仕事 Nov. 24, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-24#favorite

 #2500 11月7日 中学1・2年生 学力テストの結果  Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-1

 #2499 個別指導と戦略思考 Nov. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17

 #2498 中学校 英語授業進捗管理の実態 Nov. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-16-3

■ 【全国47都道府県別・偏差値ランキング表】

#2482 (小学校)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-2

#2476 (中学校)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-06-1

#2483 (小・中対比)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-3


■ 【全道14支庁管内・偏差値ランキング表】

#2485 (小・中対比)
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09


■ 【全道14支庁管内別・科目別・偏差値表】

#2484
 (小・中対比)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-4

#2480 前半
 (中学校)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08

#2481 後半
 (中学校)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-08-1



■ 【計算過程の開示】

#2476 (都道府県別基本統計量)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-06-1

#2478
 (管内別基本統計量)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-07-1

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*#2486 ⑪卑怯な論:北海道新聞社説「管内別に何の意味が」 Nov. 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09-1
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