北海道新聞一面に標記の記事が載った。わたしは2度、弊ブログで作業員の放射線管理にインチキがあることを数字を挙げて指摘していた。
  原子力規制庁と原子力規制委員会は現場へ常駐して作業員の被曝線量を直接監視すべきだ。法律で監視する義務があるのに現場に常駐しないというのは職務放棄だ。東京から現場の監視が出来るはずがない。
 命がけで仕事をしている作業員の身の安全を確保するために、原子力規制委員会と原子力規制庁は現場に常駐して被曝放射線量監視やるべきだ。チェック機関が被曝線量管理を東京電力に任せっぱなしでは東電や下請け業者がインチキをしてもチェックできない。その通りのことが現場では事故当初からずっと続いているようだ。MOX燃料の3号炉は爆発して原子炉格納容器が吹っ飛んだから、線量が異常に高かったと現場作業員が証言している。

「水素爆発で建屋が吹き飛んだ3号機の周辺には、1時間いただけで20~30ミリシーベルト被ばくしてしまう場所があちこちにある」

1.10月6日付北海道新聞一面より
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/496287.html
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福島第1原発で4カ月 がん「被ばくが原因」 札幌の55歳男性が労災申請

(10/06 07:25、10/06 14:43 更新)

 東京電力福島第1原発事故後の2011年7月から10月まで同原発で作業し、その後膀胱(ぼうこう)がんなど三つのがんを併発した札幌市在住の男性(55)が、発がんは作業中の放射線被ばくが原因だとして労災の申請をしていたことが5日分かった。原発事故後、被ばくを理由に労災を申請した人はこの男性を含めて全国で4人。いずれも審査中で、労災が認定された例はまだない。

 男性は重機オペレーターとして同原発の原子炉建屋周辺でがれきの撤去作業などに従事した。被ばく線量が4カ月間だけで原発作業員の通常の年間法定限度である50ミリシーベルトを超えたため、同年10月末で現場を離れた。

 12年5月に膀胱がんが見つかり、札幌で手術。今年3月には大腸がんと胃がんも見つかった。現在も通院しながら抗がん剤治療を続けている。転移でなく、それぞれの臓器で独立して発病していた。

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2. 北海道新聞31面の記事から
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/496299.html
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「まずいな」線量計外す合図 原発労災申請の男性「命懸け、結局使い捨て」

「線量計はピーピー鳴き続けた」「赤いバツのついたがれきを手作業で運んだ」。東京電力福島第1原発の事故処理の最前線で4カ月働き、放射線被ばくが原因でがんになったとして労災申請した札幌市内の男性(55)は、北海道新聞の取材に、2年前の現場の現実を生々しく語った。

 56・41ミリシーベルト。厚生労働省の「特定緊急作業従事者等被ばく線量等記録手帳」に記された2011年7月から10月までの4カ月間の男性の被ばく線量だ。「本当はこんなもんじゃない」と男性は言う。

 放射線量の高い現場に到着すると5分もたたずに胸の個人線量計の警告音が鳴る。「まずいな」。現場責任者のつぶやきを合図に作業員が線量計を外す。マニュアルでは線量が高ければ現場から退避することになっているが、実際は放射線を遮る鉛を張った車中に線量計を隠すなどして作業を続けたという。・・・

 水素爆発で建屋が吹き飛んだ3号機の周辺には、1時間いただけで20~30ミリシーベルト被ばくしてしまう場所があちこちにある。特に線量の高いがれきには赤いスプレーで「×」と印が付けてある。前線基地の免震重要棟での朝礼で「赤い×には近づくな」と注意した現場責任者その人自身が、最前線に行くとがれきを手作業で運ぶ。作業員も黙って手伝う。「言っていることとやってることが、まるで違った」
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*#1480 「工程表」と作業被曝量 Apr. 20, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-20

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 京都大学原子炉実験所の小出裕章助教がラジオ番組で司会者の質問に応える形で「工程表」を論評している。彼ら核技術者の規制値が年間20㍉Svだ。政府はそれを「作業員」に拡張し250mSvにかさ上げした。現場の高濃度汚染で従来の規制値では復旧作業が不可能になるという事情があるがとんでもない数字だという。
 ロボットが原子炉格納容器建屋に入り計測したら50mSv/hであった。わずか5時間足らずで250mSvを超えてしまう。1号基建屋の40メートル手前で250mSv/hが検出されているから、ロボットが計測した50mSvの計測精度は疑わしい。

 ラジオ番組の中では質問者に9ヶ月かかるとして、何人ぐらい作業員が必要かと問われて、数千人必要になるかなと答えていた。一度作業したら2度と作業できないとも。
 仮に1~4号機に5人ずつ5時間3交代で作業させたらどうなるだろう?

 5人×4基×9ヶ月×30日=5400人

 作業内容は破損部分の修理や冷却水ループの新設、配管作業などを含むから、熟練した作業員でなければできない仕事もかなりありそうだ。
 10人単位で作業すると仮定したら1万人を超える作業員を集めなければならぬ
 作業員は「ただちに健康被害」がなくても将来被曝による発病の可能性が高い。現場の被曝線量の高さを考えるととても「工程表」どおりには行かないというのが小出氏の結論である。健康や命と引き換えの作業に1万人(延べ人数ではない、一度作業したら被曝量の関係から2度目の作業はできないから、実人員で1万人)を超える人が必要になりそうだ。
 過去の作業実態から考えると、東電はまたでたらめな管理で危険な作業を下請けの作業員にやらせかねないから、原子力安全保安院は現場に行って作業員の被曝管理チェックをすべきだ


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**#1485 作業員の被曝管理を強化せよ:追跡調査ができるような体制をとれ Apr. 24, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-24

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 #1483で作業実態を伝えた。現場は週4日働き2日休んで翌週も仕事をしている。現場の放射線量から考えて信じがたい作業実態である。聞いたときは誤報と思った。

 今朝の北海道新聞朝刊では1面の見出しは「建屋周辺がれき900㍉シーベルト 東電が汚染マップ」となっている。福島第一原発敷地内の汚染マップが載っているが、一番低いところは3号機南側の「生コン圧送機周辺」で20~30mSvで、タービン建屋外側にある「移送配管表面」は75~86mSv、4号機からだいぶ離れた集中廃棄物処理施設では160mSv、3号機西側の瓦礫からはそれぞれ300とか900mSvが検出されている。

 この状況からはかさ上げした被曝限度量に最大で2日間、最小で17分しか作業できないことになるが、22日のNHKテレビ報道によれば現場では「4日働いて2日休みで、翌週も仕事」をしている。
 仮に作業環境の線量が30mSv/hあったとしよう。一日5時間延べ4日間働いたら600mSvの被ばく線量になる。翌週まで作業できるはずがない

 すでに250mSv というかさ上げされた被曝線量すらはるかに超えている作業実態が明らかになったというべきだろう。放射線技術者ですら年間20mSvであるのに、その12倍を超える放射線量の限度をもはるかに超える被曝量で作業がなされているとみなさざるをえない

 ゼネコンは立場の弱い下請け取引先企業に「原発敷地内での仕事の協力依頼」を出しているが、このままでは過度な被曝をした立場の弱い作業員が将来次々に放射線被曝による傷害を起こすことになる
 作業従事者の健康追跡調査をし正当な補償措置可能にするためにも、作業従事者の作業記録を完全な形で保存すべきだ。
■誰がいつ何時間作業し、フィルムバッチから計測した被曝線量がいくつなのかの記録を残すべきだ。
原子力安全保安院は東京電力任せにせずに自ら現場に赴いて作業記録の監視をすべきだ
 原子力安全保安院と権限をもっている経済産業省は現場に人を派遣して作業を監視すべきで、それがかれらの仕事だ。自分たちに課せられた仕事から逃げることなく、正直に誠実に職務を果たしてもらいたい。先ずトップのほうから幹部が数人交替で現地入りをすべきだ。

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