最低気温が10度前後になった途端に小さな庭にスズランが咲き始めた。あっというまに咲いて枯れ始めている。時折そのかおりが漂い鼻腔をくすぐる。いい季節になった。

 大地みらい信金増益のニュースが6月19日北海道新聞根室地域版に載っていた。好業績にまずはおめでとうと言っておこう。「震災遺児奨学支援支援金利プレミアム定期預金」はいいアイデアだった。
 バランス上苦言も書いておく。根室市へのリスクのない融資、市内の中小零細業者へ無理な融資や一部に囁かれる「歩積み両建てでの融資」いずれも感心しない営業方針。理由は記事の後で明らかにする。


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 大地みらい信金
 3期連続の増益
   3月期預金残高は過去最高

【根室】大地みらい信金(根室、遠藤修一理事長)は18日、通常総代会を根室商工会議所で開き、2013年3月期決算を承認した。経常利益は前期比7.9%増の11億8100万円、当期純利益は同6.1%増の6億4900万円で3期連続の増益となった。
 本業の儲けを示す業務利益は同22.9%増の14億1700万円。増益は「貸し出し業務に積極的に取り組んだことに加え、国債や地方債中心の有価証券の運用により収益を確保できた」(同信金)
 預金残高は、震災遺児奨学支援支援金利プレミアム定期預金などが好評で同1.0%増の2942億7400万円。また、貸出金残高も地元企業への積極的な融資が奏功し、同0.9%増の1344億8600万円。いずれも過去最高を更新した。
 金融再生法基準の不良債権額は同5.3%増の95億2600万円。経営の健全性を示す自己資本比率は29%(同0.6ポイント増)と国内金融機関の基準4%を大きく上回った。(丸山格史)

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**<ebisuのコメント>** 
 アンダーラインをしておいたが、数年前の病院事業赤字特例債を皮切りに根室市への融資が膨らんでいる。大地みらい信金元理事長が「明治公園憩いとふれあいの森構想市民委員会」の委員長をやっている。これは市民委員会ではなくたんなる市長の諮問委員会だ。ほとんどの委員が市の委嘱である。異例に速い結論で40億円近い再開発が進行中だ。
 大地みらい信金は市の借金が増えることでリスクのない融資先を確保できる。こういう姿を癒着といわずしてなんと言おう。夕張信金と破綻前の夕張市の関係にじつによく似ている。

以下は「#2318 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(1):広報ねむろより Jun. 2, 2013」からの抜粋
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-02
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 市債を増やすことに手を貸し、大地みらい信金が自ら引き受けるなどということがあってはならない。根室市の財政規律の乱れに地元信金が手を貸す構図は道内のほかの市でもあった。
 大地みらい信金は預金量は増えているが融資先がないと2012年2月号の「財界サッポロ」のインタビューに同じ元理事長が応えている。それと明治公園整備事業を重ね合わせると根室市を有力な資金貸し付けのターゲットにしているように見られて当然だろう。
 こういう「営業政策」は市民感情から言っても問題があるし、根室信用金庫(旧名称)の歴史と伝統に唾するような「営業政策」に見える。
 本社建物は立派になったが精神が腐り始めているのではないか?こんなテイタラクの信金では仕事に誇りをもてないだろうから職員たちがかわいそうだ。地域財政や経済を破綻へ導くのではなく、破綻へブレーキをかけるように行動してもらいたい。
 大地みらい信金の理事たちはその歴史と伝統の重みを省みて行動すべきだ。夕張信用金庫の轍を踏むな。

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*財界サッポロ2012年2月号より元理事長の発言部分を抜粋
http://www.zaikaisapporo.co.jp/kigyou/intervew/115.shtml

「不安があるから預金が増える。地元の中小企業も設備投資を控える。資金需要がない。われわれとしても融資先がない。どうしても預貸率は下がります。」

*夕張信用金庫は夕張市への融資を拡大し、平成13年に北海信金へ合併されている。2007年の夕張市の破綻時で67億円の貸付があった。金融機関からの借入れは道庁が肩代わりしたので、貸し付けていた金融機関はどこも責任をとらなかった。民間だったら融資先企業が破綻すれば債権の全額回収はできない。半分回収できたらいいほうだろう。
 夕張市はいまも322億円の債務を道庁に対して支払い続けている。破綻処理の際に金融機関が負うべき損失を道庁が肩代わりしたために貸した側は責任をとることなく100%の債権回収を果たしている。だから、金融機関にとっては地方自治体への融資はリスクのない美味しい商売なのである。もっとはっきり言うと、エゲツナイ恥さらしな商売のやり方。
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【夕張市の教訓】
 夕張市の財政破綻に手を貸したのも地元信用金庫ではなかったか?信金からの夕張市の借金は道庁が肩代わりして支払い、分割で夕張市が道庁にいまも支払い続けている。
 地方債の残高は平成22年度の資料では439億円*、標準財政規模が50億円の夕張市には重すぎる負担である。
 イージーな商売をやって市を食いものにしていたという自覚が当時の夕張信金理事たちにあったのだろうか?
 金融マンとして応分のリスクを背負って商売をしているという仕事に対する矜持はあったのだろうか?
 夕張市が財政破綻するよりもずっと前から地元信金の経営者達は健全な商道徳をなくしていたのだろう。やっていいこととやってはならぬことの見分けがつかない者が企業のトップに立ってはいけない。災害はそういう者たちが引き起こす

*夕張市(ウィキペディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%95%E5%BC%B5%E5%B8%82


 仕事は正直に誠実に。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

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 返済能力がなさそうなのに融資枠を増やす無理な融資は問題がある。返済が滞ると返済期間の延長とセットで連帯保証人増員を提案してくる。そういう準備をしてから債権を売り飛ばしたら高く売れるからだ。こうして不良債権を債券整理機構に売り飛ばしてしまう。連帯保証は江戸時代の五人組制度の名残だ、欧米先進国で連帯保証で銀行が貸し付けるなどということはない。倒産するのは借り入れた本人だけで、連帯保証がないのだから周りに影響が及ぶことはない。日本では借りた本人が破産するとその影響が連帯保証人に及ぶから、自殺する例が多いと言われている。
 こうした理由から「歩積み両建て」も無理な融資も連帯保証も倫理上やってはいけない融資であることがわかる。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」という伝統的な商道徳があるが、無理な融資も連帯保証も、すべて売り手の金融機関だけがよければいいというもの。買い手である借手である企業や個人、あるいは根室市がどうなっても構わぬ、世間(根室市民や地域経済)もどうなっても構わぬという姿勢の営業政策ではいずれ刃は自分に還ってくるとは思わないのか?地域経済が衰退し続けたら、優良な融資先がなくなるのは必定、元理事長自身が「財界サッポロ2月号」で語っているではないか。とっくにそういう兆候が出ている。

 市側の資料によれば根室市の適正財政規模は97億円、今年度の予算は166億円だから適正財政規模の1.7倍に膨張した予算。市債の新規発行は市が決めた限度の8億円を2年続けて反故にした、今年度は24億円だ。市債残高は減少していく長期計画だったが、実績はそれとは真逆の動きをしている。市債の発行残高が増えている。
 市債だけではない、決算時に資金が足りないときに一時借入れ(短期借入)が生じるが、6月初旬に届いた「広報ねむろ」のよれば3月のその額は40億円である。年間予算が160億円台のマチで40億円もの巨額の借入れはどこの金融機関から借り入れたものだろう。こういうものが追加されて大地みらい信金は貸付総額を前年対比でわずか0.9%増の実績作りことができた。まことにきわどいやり方である。市債や市の一時借入れがなければ大幅な貸付縮小の実態が明らかになっただろう。根室管内の地域経済の衰退が数字にはっきり出たに違いない。
 市との癒着を強める以外に貸し付け総額を増やす手立てが見つからないのだろう。情けない経営陣だ。地元企業を育て、まっとうに業績を上げる方法はいくらでもあるのに、そうしたスキルがないからイージーな営業戦略を選択したにすぎぬ。

 無理な貸付を増やしていないかチェックするために不良債権比率を計算してみよう。
  95億2600万円÷1344億8600万円=7.1%
 不良債権比率が7.1%というのは少し高い数字ではないだろうか?無理な融資をしている結果と読むこともできる。貸し出し総額は0.9%しか増加していない(つまり増えていない)のに、不良債権は前年比で5.3%も増えているから、営業方針を見直すべきだ。

 無理な融資や「歩積み両建て」は地元の企業を育成するという観点からはまことに不都合な融資形態である。大地みらい信金がどの程度そうした「歩積み両建て」の融資や無理な融資をやっているのかはわからない。だが、具体的な事例を聞いたことはある。長期にわたる根室地域経済の衰退と無縁ではないだろう。

 コンプライアンス委員会があれば、こうした営業戦略にブレーキをかけることもできるが、元理事長が率先して市が借金を増やすことに手を貸して融資をさらに増やそうとしているところをみると、ないだろう。

 コンプライアンス委員会を作り、営業戦略を軌道修正したほうがいい。理事たちの「暴走」にブレーキをかけるべきだ。地元信金の一番の役割は、地元企業を育成することだ。誇りのもてる仕事をしてもらいたい。

 ある程度の規模になっても、退職金規程も経理規程もないような会社にはそうした規程類を作るように強く言えばいい、従業員へ決算を公表しない会社があれば、融資の条件に従業員への決算公表を要求すればいい。オープン経営で、健全な企業を地元に増やすことが大地みらい信金の役割だろう
 夕張市と夕張信金のような関係をつくってはいけない。やっていいことと悪いことがある、ダメなことはダメ。
 大地みらい信金の役割は大きい。

 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

 
こういう方針で営業戦略を策定してもらいたい。
 大地みらい信金にはふるさとを愛してやまぬパトリオットがいるだろう。理事達はダメだ、ダメなものはダメだ、パトリオットの君達若い者が経営の自己改革をして根室や釧路の地域経済の復興に手を貸せ。

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*パトリオット
patriot:辞書には"愛国者"とあるが日本語のこの語とはニュアンスが違う。"自分の生まれ育ったところに敬愛の念を有し、(多少の不利益を省みることなく)ふるさとのためになすべきことをなす者"
とでも定義しておきたい。ナショナリズムのように思想的なものではなく、パトリオティズムは「ふるさとへの素朴な心情と義務」とでもいうべきものだ。

 手元にある英英辞典2冊をみるとナショナリズムとパトリオティズムは次のように定義されている
Nationalism: 2 a great or too great love of your own country
Patriotism: When you love your own country and are proud of it
     (Cambridge Advanced Learners Dictionary)
Nationalism: 2 the belief that your nation is better than other nations
Patriotism: strong feelings of love, respect, and duty towards your country
     (Macmillan English Dictionary)

 ナショナリズムはtoo great love of your own country(度を越した祖国愛)だったり、他国を省みない排他的なニュアンスがあるが、パトリオティズムにはそういう負のイメージはなく、生まれ育ったホームタウンへの素朴な郷愁や誇りにすぎない。しかしそれも程度問題で、容易に排他的愛国主義(ジンゴイズム)へと転化しかねない危うさももっている。
 Patriotism can turn into jingoism and intolerance very quickly. 


#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17
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*#2327 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(2) :いい町はこうやってつくる  June 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09-1


【予算関連記事】
*#2247 根室市予算案をチェックする(6): 補助9億円「高すぎる」 Mar. 20, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-19

 #2236 根室市予算案をチェックする(5): 国の借金は1100兆円になる
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-03-2

*#2231 根室市予算案をチェックする(4): 成央小耐震改修4億円 Mar. 1, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-1

 #2229 根室市予算案をチェックする(3): 病院事業赤字はどこへ? Feb. 27, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-27

 #2227 根室市予算案をチェックする(2): アカウンタビリティ  Feb. 26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-26

 #2226 根室市予算案をチェックする(1):市債発行額24億円 Feb.26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-25

 #2203 明治公園再整備市民委員会:市民委員会は市政翼賛装置 Feb. 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09



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