昨日「広報ねむろ6月号」が町内会を通じて配布された。恒例の「根室市の家計簿」が載っている。まったくわけのわからない表が満載だ。なにがどのように訳が分からないのか数回に分けて書き連ねてみたい。


<#1 第1表>
大見出しは「平成24年下期(10月~3月)予算執行状況」となっているが、「■一般会計」と題した表の左側三分の二に載っている数字は通期の数字(年額)である。右側三分の一に下期の数字と執行率が載っている。はっきりいうが、見づらいフォーマットである。「下期」となっているのだから下期が先に来て、通期(年次)の数字はその後がこの手の表を作る常識だろう。わたしは最初表を読み違えてしまった。
  「執行率」というのは行政用語である。市役所の内部資料ではないのだから行政用語は民間の用語に直すべきだ。民間では「予算実績差異」を載せるか、予算を100%として%を載せるのが普通のやりかたである。前年実績比も"%CH(変化率)"で表示する。

 年間予算額が164.7億円*だったから、「収入済み額」の合計欄が145.7億円は差異が19億円もある。「」支出済額」の合計欄が154.4億円だからこちらも予算・実績差異が10.3億円である。ずいぶんドンブリ勘定だなというのが率直な印象。こんなでたらめな予算でを上場企業が公表したら大問題になる。上場廃止もありうるし、もちろん取締役の責任問題になる。

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【標準財政規模】
 根室市の標準財政規模は97.5億円である。コンサルタント提言の2倍の70億円での病院建て替えや老健施設30ベッド増床へ9億円の補助金など放漫財政が続いており、財政規模が膨らんでいる。明治公園の開発なんてとんでもない。140億円台に歳出規模を縮小すべきだ。
 この「標準財政規模」は市側の資料に記載がある。「根室市健全化比率等の審査意見」**(監査委員会)10ページに載っている算式に数字があった。財政健全化指標計算の分母に当たる重要なファクターである。「標準的に収入しうる経常一般財源」となっているから、不健全な市債新規発行での借金運営のようなものを含まない。つまりこの範囲内に歳出を制限しておけば何の心配もいらぬということ。ところが根室市はその標準財政規模を70億円も超える一般財政予算を2年続けて組んでいる。経常収入が97億円しかないのに167億円の予算?家計を考えたらとてもやっていける状態ではない。根室市政がいまやるべきこと、そしてこれからやるべきことは財政規模を膨らませるのではなく縮小することだろう。

*「平成24年度当初予算案について」
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/0/738e7a78c055d04e492579b100305aee?OpenDocument

**「平成23年度 根室市健全化比率等の審査意見書」
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/072655f020242b59492574fa0026f4b0/$FILE/24kenzenka.pdf

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 まだ他にも問題がある。「予算現額」欄の歳入合計金額は190億円とあるのだが、一般会計の当初予算164.7億円と比べて25.3億円もの差異が生じている。表を見ても、解説を読んでもこれだけ大きな差が出ている理由がない、なぜコメントしないのか?

 「予算現額」と「収入済額・支出済額」を比べているが、「予算現額」は行政用語だから一般市民には馴染みのない用語である。市役所職員向けの資料ならこのような行政専門用語を使ってもいいだろうが、「広報ねむろ」は市民向けの説明資料である。財政課長殿、だれに向かって資料を出すのかぐらいは考えて作成してほしい
 ネットで調べたら、「予算現額」とは当初予算に補正予算を加えた額だとあった。市立根室病院の予算に見られるように当初予算が好い加減だから、毎年大きな補正予算が組まれている。おかしなことに、当初予算の欄がない。これは決定的な欠陥であるから、ただちに是正してもらいたい
 民間会社では当初予算との比較がなされるから、市民への説明資料としての「根室市の家計簿」には当初予算額との対比を載せるべきだ。

 結論:「広報ねむろ」には通期の予算実績対比表と下期の予算実績対比表そして前年実績値との対比表を載せるべきだ。
 紙面の制約があるなら、財政課のホームページ上にEXCELファイルで明細レベルの予算実績対比表(前年実績対比付)を公開すればいい。

<#2 借入金の現在高>
 「■一時借入金の現在高」となっているが表には「一時借入金20億円」と「一般会計20億円」とあるが、合計40億円ということなのだろうか?
 一般会計で20億円の短期借入れがあり、特別会計と企業会計の一時借入金が20億円あるのだろう。おそらく「1年以内返済の短期借入金」だろうが、予算外だろうから、なぜこのような短期借入れが生じているのか説明がほしい。
 一般会計予算が165億円の規模で40億円もの巨額の短期借入れはおかしい。そんなに資金が不足しているのか?正直に理由を説明すべきだ。夕張市は財政破綻時に運転資金が足りずに巨額の一時借入金を抱えていた。なんだか様子が似てきたのではないか市議会は今度も市政をチェックできないのだろうか
 病院事業が17億円弱の赤字を出していることが関係しているのだろうか。
 こんなに訳のわからないことでは困る、市民は市財政について知る権利がある。日曜日に3回ほど総合文化会館で市の財政についての説明会を開くべきだ

<#3 市債の現在高>
 この表も分からぬ。合計196.5億円は市税収入26.9億円の7倍を超える。財政健全化のために市債の新規発行枠を8億円以内としてきたが、2年続いてそれが破棄され、予算規模が膨らんでいる。今年度は24億円という数字と16億円という数字があるが、どちらが正しいのだろう。さっぱりわからない。市が自ら設定してきた新規市債発行限度枠8億円とはなんだったのか、そしてなぜ8億円以内に収められないのか、理由を書くべきだ。そして過去三年間の市債の残高の推移を載せるべきだ。

 もう一つ挙げておきたい。65億円が「銀行ほか」となっているが、「大地みらい信用金庫」分は金額が大きいだろうから別途表示すべきだ。
 病院事業の赤字特例債10億円を数年前に大地みらい信金が引き受けている。あのときに国からの借金も大地みらい信金へ切り換えた。そしていま明治公園の大規模整備事業で元理事長が委員長をやっている。市民の間からは必要がないから住民投票をすべきだという声まであがり始めた。
 市債を増やすことに手を貸し、大地みらい信金が自ら引き受けるなどということがあってはならない。根室市の財政規律の乱れに地元信金が手を貸す構図は道内のほかの市でもあった。
 大地みらい信金は預金量は増えているが融資先がないと2012年2月号の「財界サッポロ」のインタビューに同じ元理事長が応えている。それと明治公園整備事業を重ね合わせると根室市を有力な資金貸し付けのターゲットにしているように見られて当然だろう。
 こういう「営業政策」は市民感情から言っても問題があるし、根室信用金庫(旧名称)の歴史と伝統に唾するような「営業政策」に見える。
 本社建物は立派になったが精神が腐り始めているのではないか?こんなテイタラクの信金では仕事に誇りをもてないだろうから職員たちがかわいそうだ。地域財政や経済を破綻へ導くのではなく、破綻へブレーキをかけるように行動してもらいたい。
 大地みらい信金の理事たちはその歴史と伝統の重みを省みて行動すべきだ。夕張信用金庫の轍を踏むな。

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*財界サッポロ2012年2月号より元理事長の発言部分を抜粋
http://www.zaikaisapporo.co.jp/kigyou/intervew/115.shtml

「不安があるから預金が増える。地元の中小企業も設備投資を控える。資金需要がない。われわれとしても融資先がない。どうしても預貸率は下がります。」

*夕張信用金庫は夕張市への融資を拡大し、平成13年に北海信金へ合併されている。2007年の夕張市の破綻時で67億円の貸付があった。金融機関からの借入れは道庁が肩代わりしたので、貸し付けていた金融機関はどこも責任をとらなかった。民間だったら融資先企業が破綻すれば債権の全額回収はできない。半分回収できたらいいほうだろう。
 夕張市はいまも322億円の債務を道庁に対して支払い続けている。破綻処理の際に金融機関が負うべき損失を道庁が肩代わりしたために貸した側は責任をとることなく100%の債権回収を果たしている。だから、金融機関にとっては地方自治体への融資はリスクのない美味しい商売なのである。もっとはっきり言うと、エゲツナイ恥さらしな商売のやり方。
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【市議選】
 根室市議会選挙の投票日が9月1日日曜日に決まった。わかのわからぬ「広報ねむろ」の「根室市の家計簿」の記載は改めることができる。市議会で決議すればいいだけだ。民間会計基準で当初予と実績の対比表形式での記載を義務付ければいい。
 付き合いのある市議に改善を要求しよう。できる範囲のことすらしないなら、根室の町は行き着くところまで行ってしまう。いまあなたが試されている。
 

【夕張市の教訓】
 夕張市の財政破綻に手を貸したのも地元信用金庫ではなかったか?信金の借金は道庁が肩代わりして支払い、分割で夕張市が道庁にいまも支払い続けている。
 地方債の残高は平成22年度の資料では439億円*、標準財政規模が50億円の夕張市には重すぎる負担である。
 イージーな商売をやって市を食いものにしていたという自覚が当時の夕張信金理事たちにあったのだろうか?
 金融マンとして応分のリスクを背負って商売をしているという仕事に対する矜持はあったのだろうか?
 夕張市が財政破綻するよりもずっと前から地元信金の経営者達は健全な商道徳をなくしていたのだろう。やっていいこととやってはならぬことの見分けがつかない者が企業のトップに立ってはいけない。災害はそういう者たちが引き起こす

*夕張市(ウィキペディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%95%E5%BC%B5%E5%B8%82


 仕事は正直に誠実に。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

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*#2327 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(2) :いい町はこうやってつくる  June 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-09-1


【予算関連記事】
*#2247 根室市予算案をチェックする(6): 補助9億円「高すぎる」 Mar. 20, 2013
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 #2236 根室市予算案をチェックする(5): 国の借金は1100兆円になる
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*#2231 根室市予算案をチェックする(4): 成央小耐震改修4億円 Mar. 1, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-1

 #2229 根室市予算案をチェックする(3): 病院事業赤字はどこへ? Feb. 27, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-27

 #2227 根室市予算案をチェックする(2): アカウンタビリティ  Feb. 26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-26

 #2226 根室市予算案をチェックする(1):市債発行額24億円 Feb.26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-25

 #2203 明治公園再整備市民委員会:市民委員会は市政翼賛装置 Feb. 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09

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