「財政で面白い本が出ているから、それをもってきてあげるから、読んでみたら」と伝えて、翌日新書版の本をあげた。
財政とは国や地方公共団体の収入と支出である。政治と経済の接点に財政があるのでその仕組みをざっと理解しておくことは受験生にとってもムダではあるまい。
「中学生のときに音読指導でやったように三色ボールペンで線を引いて読むといい」
「わかった、先生やってみるね!」
ツタヤで同じ本を注文してきた。また誰か読むかも知れぬ。
四千冊の蔵書のうち、経済学に関する専門書は書棚に千冊はあるだろうが、高校生が気軽に読める本はほとんどない。経済学の体系構成に関する研究が専門だったからしかたがない。本棚を眺め渡したが、受験生に適した本は意外にないものだ。
面白いものなら最近数年間で出版されたもので、推奨できるものが何冊かあるのだが、経済学部を受験するわけではないのでお手軽で面白い本を選んだ。
【余談】
ところで、財政で扱っていいものと悪いものがある。夕張市は市の財政で扱っていけないものを、財政に取り込んで破綻してしまった。民間事業がやるべきことを市の財政負担でやってはいけない、これはまげてはならぬ原理原則である。
財政で扱うべきものだけに限定していないと、市の財政は膨張を続けいつのまにか火の車になり、破綻へ向かって後戻りのできないところへ踏み込んでしまう。財政でやるべきものは上下水道事業などの公企業、港湾整備、道路整備などのインフラ、学校、病院、公共施設など。
老人医療、とくに終末医療は根室の場合は人口が少なくてなかなか採算をあわせるのがむずかしいから、市が財政でやるべきものである。しかし建て替えられつつある市立病院に医療療養型のベッドはひとつもない。市が財政負担をしてやるべきものがなされていないという現実がある。
その一方で、野鳥観光とかベトナムサンマ輸出というような民間事業に市が積極的に関与している。原理原則を忘れたおろかな施策であるとは思わぬか。そんなことはぞれぞれの業界や会社に任せればいいことで、市が財政負担をしてやるべきことがらではないはず。
釈迦に説法と知りつつ、市長と市の政策部局は『財政の仕組みが分かる本』を一度読むことをお薦めしたい。
民間事業にかかわるものには市の財政が関与してはならないことは、夕張市の先例が教えてくれている。さまざまなハコモノや第三セクターをつくり、映画祭などのイベントをやって財政規模を膨らまして破綻した。やっていたとき、市長も市の政策部局も財政でやってはいけないことをやってしまっているとい自覚がなかったのだろう。財政規模が膨らむのは要注意である。
迷ったときや、こんがらがってきたら、原理原則にもどれとわたしは常々生徒たちに教えている。
大人も同じで、根室市の財政負担でやるべき事業は何か、原理原則にもどって考えるべきだろう。
市議さんたち、市政チェックはあなた達の役割のはず。根室に市議がいるならチェック機能を果たしたらいい。報酬と仕事はセットのはずだ。
市の予算規模は5年ほど前までは140億円台だったが、この数年間膨張を続け170億円に増えてしまっている。市の財政は危ない綱渡りをしている。
ここいらで一度この本に眼を通して考えたらいかが。財政でやってはいけないものへの支出をカットして、財政支出でやるべき事業をしっかりやるのが市政のまっとうな役割だ。
【おまけ】
先月東京へ行った折に本屋で見つけた「政経」に関連がある本を紹介しておきたい。外国為替に関する本である。これとリカードの『経済学及び課税の原理』を読み比べてみたらたのしいから、大学生にお薦めしたい。こういう授業をニムオロ塾でやってみたいものだ。