今日(金曜日)も3時間目の授業を見てきた。三年生の数学を見たかったからだ。
  一クラスの授業が二つにグループ分けされており、基礎グループは10人、標準グループは26人だ。
 基礎Gは2次方程式を複数の先生で教えていたが、個別指導が間に合っていない。学校の先生たちは放課後補習をやらないから、できない生徒の個別補習に慣れていない様子。一人の先生が3人みていたが、手持ち無沙汰の生徒一人にヒントをあげたら、1問目なんとかクリア、「先生、これであってる?」と横の生徒に教えている先生に確認を求めていた。次の問題もやはり途中でつまづいているので、またヒントをあげる。これもクリア、三問目だ。X^2のところが多項式になっている2次方程式の二つ目の問題だ。答えが a±b√c になるタイプのもの。√12のままだったので、「ここ、まだ終わっていないよ」と該当箇所を指で押さえて小声で言うと、「わかった!」と正しく処理した。「数学は分かると楽しいだろう?」とまた小声で聞いてみた、「はい、楽しい!」、いい笑顔だった。
 余計な口出しをして申し訳なかった。個別指導はなれないとむずかしい。とくに成績の悪い生徒の個別指導は手こずるのが普通だ。個別指導のコツはヒントを出してやること、ただし生徒の段階に応じて最小限にとどめること、そうしないと生徒自身の達成感が薄くなるからだ。自分でやってできたという実感のわく指導の仕方がベスト、そのあたりの匙加減が経験値で決まる。そしてできたら、ほめてやることだ、「やればできる、必ずできるようになる」と言葉に出してあげると、自信が湧く。できなかった生徒ほど自力で分かったときには嬉しそうな笑顔を見せてくれる。
 隣の生徒に先生がノートに書き込んで説明していたが、姿勢が悪い。あ~あぶない、やはり姿勢が崩れたまま寝てしまった。やっかいなことに、勉強をしないことが習慣化されてしまった脳は、勉強を始めたとたんに拒絶反応を起こし、"ご主人様"を眠らせてしまう。たった十人の授業に先生が二人ついてもこういうことが起きるから、基礎Gのほうの授業のたいへんさがわかるだろう。どの学校、どのクラスにもたいていこういう生徒が一人か二人いる。
 その一歩手前の生徒たちの中には、問題に取り組み始めるとパニックを起こし感情がコントロールできなくなる生徒がいる。理性の座である前頭前野が未発達なのだろうと推測している。
 嫌なことを我慢してやり遂げるとか、勉強のときに使う脳の部位は同じところで、勉強することや我慢をさせることで、その機能が発達する。脳が発達するといっていい。ところが、家庭学習習慣がなく、親も甘やかす、ジジババも甘やかして、ブカツやゲーム三昧してきた子どもは、脳の前頭前野に負荷をかけることが著しく少なくなるから、未発達のまま中学生になっている。こういう生徒が一番厄介なのである。B中学校でも年々増えているよ。いま学年60~76人だが、最下位層の10人は5年前のB中学校には一人もいなかった。そして学力テストで400点を超える生徒が四分の一ほどに減少している。20人いたのが5人以下だ。原因の一つは小学校低学年で家庭学習習慣を躾けられない親が「激増」していることと、小学校の先生たちが授業力に問題を抱えていること、ブカツに異常に入れ込みすぎていることだ。ブレーキのない先生たちや保護者が多すぎるから、小学校のブカツは週に3日までと制限をすべきだ。学校行事で国語と算数の授業を平気で潰すのも大きな問題の一つに数えられる。具体的な問題はそれぞれ一つずつ解決可能なものばかりだ。

 成績で2グループにわけて、先生たちは成績不良の生徒を指導するたいへんさがわかっただろう。C中学校では三つのグループに分けたが、テストの平均点が30点台、60点台、80点台とはっきり分かれてしまっている。成績でクラス分けすれば、それがそのまま固定化することになる。
 成績下位層の三人に一人は同じことを10回、20回繰り返してもできない生徒がいる。それでも、できないという思い込みがとれれば何とかなる場合が多い。そこも個別指導のワザで、「バリア・リセット」とか「アレルギー反応鎮め」と呼んでいる。時間がかかる作業だが、これをうまくやらないといつまでたっても個別指導の努力が徒労に終わる。お互いに時間のロスだが、ここを一緒に乗り越える覚悟をこちら側がもたないといけない、あきらめたらそこまでになる。

 小学校6年間でつまづいた者が通常の方法では1年で治るわけがない。2年かけるつもりで取り組まなければならない生徒もいる。根気と観察と励ましが必要なのである。小学校に入学したときに家庭学習習慣をつける努力と本を読む環境を家庭(と学校)はぜひ心がけてもらいたい。努力のできる子ども、成績のよい子どもを育てるための大事なポイントがここにある。
 家庭学習習慣をシツケできずに六年間ほったらかしにしたり、小学校の先生たちが国語や算数を教え切れなかったら、中学校の先生たちはたいへんな苦労をすることになる。いままではクラス分けせずに、放課後補習もしなかったから、習熟度別クラス編成をして初めて成績下位層の生徒の学力を上げる大変さを実感しているはずだ。通り一遍の授業で何とかなるはずがない、基礎コースの授業はまだ思い違いがあるようにみえる。
 悪いことは言わぬ、ブカツは週に2度は休んで放課後補習をしてやんな。自分の生徒すら満足に教えきれないで放課後補習もやらずにブカツ指導している場合ではないだろう?さっさとブカツ指導は辞退して本業の授業と補習に渾身の力で取り組んでみたらいい。先生たちの個別指導のスキルが格段に上がるだろう。
 十点台の生徒が突然80点を超えるなんてことはないと思い込んでいるだろう。きちんと個別補習してやれば、5人に一人はそういう域に突入する。放課後補習をしないからわからないのだ。できない生徒を放置するな、あなたたちの仕事だ


 さて、標準Gのほうは2次方程式の文章題の最後のところで、教科書85ページの問題をやっていた。教科書の内容をきちんと教えるのはたいへんだ。一次関数との複合問題は大半の生徒が理解できていない様子で、先生は机の間を歩き回って、個別の質問に答えていた。
 86ページから2次関数だ、教科書は230ページくらいあったのではないだろうか。授業速度が遅い、これでは1月末で50ページ以上やり残すことになる。北海道でやっている学力テストの範囲スケジュールが学校の授業に悪影響を与えている。これ見直さないとダメだ。校長会の天下り団体がやっているという噂があるが、学校を辞めてから、悪さはするな。
 1月末までに教科書を終了させ、2月を総合問題に充てるスケジュールなら、いまごろは130~140ページあたりをやっていてほしい。とんでもなく遅れている。こんなに遅い授業速度で仕事の責任が果たせるのか、わたしは数学担当の先生たちの意見を聞きたい

 教科書の単元ごとのページ数を列挙する。
---------------------------------------------------------------
章ごとのページ
1. 多項式  p.6
2. 平方根  p.34
3. 2次方程式  p.62
4. 2次関数  p.86
5. 相似な図形  p.112
6. 三平方の定理  p.148
7. 円  p.168
8. 標本調査  p.191
9. 巻末のページ 総合問題と復習 p.203~259
-------------------------------------------------------------


 ついでに、2年生の国語の授業を見た。生徒の机の上には例解国語辞典と漢和辞典(ベネッセ)がおいてあった。授業で使っているようだ。英語の授業はどの学校でも英和辞典を使っていない、おかしな話だ。いくら会話重視だって、辞書も引かないでどうやって勉強するの?日本語教育のほうは辞書を使っているから少しまともだ。
 生徒に作業をやらせるときには指示は具体的でなければならない。何をどうやるのか、何ページのどこを何回やるのかはっきり指示しなかったので、あちこちからな「なにやるの?」「どこやるの?」「何回やるの?」と声が上がっていた。先生という職業は一生勉強です。どんなに授業が上手になったつもりでも、生徒は一人一人違う、そして毎年新たな生徒が入学してくるから、工夫の余地がつねに生まれるもの。教師は毎日研鑽を積むしかない。指示されたのは漢字の読みと書き問題だった。
 「仮借」の例をいくつか黒板に挙げていたが、語彙説明をどのようにしたのか興味があったが、授業の終わりのほうだったので聴けなかったのが残念。
 いまの子どもたちは児童書の次のステップの本を読んでいる量が少ないから、語彙解説の頻度を増やしてやらないと、日本語を使った説明なのにちっとも授業で話されたことが理解できないという事態がおきる。国語の授業に限らず、語彙解説は必要だ。どこかの中学校の社会の先生が、語彙解説を工夫しながら授業をしていた。C中学校だったはずだ。なるほど、これなら生徒は理解できると合点がいった。

「ケイヨウシはメイシをシュウショクする」
と授業で説明して、適切な漢字を頭に思い浮かべ正しく理解できる生徒は中2では10~20%かな。
なかなか手ごわい生徒が多いのである。
 ニムオロ塾では、小学生も中学生も音読トレーニングをやっている。生徒たちの日本語語彙を豊にしたいためだ。使っている教材は、
中1 『読書力』斉藤孝著
中2 『国家の品格』藤原正彦著
中3 『すらすら読める風姿花伝』世阿弥著、林望現代語訳
   『日本人の矜持』藤原正彦著

 教室の後ろ側の棚の中に30冊ほど本が並べてあるが、内容が貧弱すぎる。C中学校のある教室が充実していた。北方謙三の『三国志』が文庫本で全巻揃っていた。他にも目に付くものがあった。
 市教委は各教室に文庫本でいいから毎年1万円程度の予算をつけてやればいい。良質な本が半分くらいあればいい。半分だけ生徒に選ばせてやろう。

*#2093 教員の質向上はどうやる?⇒ "Educating educators" Sep. 25, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25-1

 #2092 根室の子どもたちの大学進学率と地元企業の自己改革について Sep.25, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-25

 #2090 プロの仕事をしよう:授業速度管理の提案 Sep. 23, 2012
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-09-23

 



にほんブログ村