ビザなし交流は北方領土を訪問して実際にどのように行われているのか?
 島民2世でありながら行ったことのない私は知る由もないが、サリーさんが実際にビザなし交流に参加してブログにアップしているのでご覧戴きたい。
 文の中にも行間にも写真にも、「もちつもたれつ」の重層構造があちこちに見え隠れしている、素直ないいレポートである。

 ロシア側の要求で住民交流会では領土問題の話しはご法度、出席するのはめんこいロシア人の子供たちが主体。今回の話題は「きびしい冬の過ごし方」。和気藹々、日本外務省の苦心(?)の演出。

 ビザなし交流に参加している元島民は1割ほどしかいない、すくないと驚くかも知れぬがゼロにはできない。なにしろ名目は「北方領土問題解決のための環境整備」で対象者は「北方領土に居住していた者、その子供及び孫並びにその配偶者、北方領土返還要求運動関係者、報道関係者、訪問の目的に資する活動を行う学術、文化、社会等の各分野の専門家等」となっている。
 元島民と書いてあるがこれは間違いで、事実どおり「元島民で引揚者となった者」と定義すべきだ。千島歯舞居住者連盟は元々引揚者の団体で、元島民を代表する機関ではない。引揚者ではない元島民であるオフクロ(昨年没)や叔母(5年前に没)、叔父(存命)は千島歯舞居住者連盟に属していない。したがって、北方墓参にも参加していない。もちろん一度も連盟から通知を受けたことはない。引揚者の団体だから、引揚者でない人は(墓参やビザなし交流の)権利(?)がないらしいのだ。おふくろはあきれてしまっていつのころからか町内会かどこからか回ってくる返還運動に署名もしなくなっていた。

 引揚者とその子・孫そして配偶者が1割、メンバーの構成からは「北方領土問題解決」とはほとんど関係のない恒例行事のようである。12年目だろうか、なぜこのような「行事」が「北方領土問題解決のための環境整備」を名目にして続けられるのかを考えてみよう。もちつもたれつの関係が見えてくる。
 サリーさんのビザなし交流体験記からはいろんなことが行間に読み取れる。住民交流会の他にも企業訪問、住民の家への訪問、十数台の車での送り迎えなど関係しているロシア側の人も少なくない。
 ロシア住民にとってもビザなし交流は「ありがたい恒例行事」なのだろう。なによりうれしいのは毎年場所を変えての日本全国観光旅行への招待だろう。予算は日本外務省もち、「ビザなし交流」を名目にすれば毎年数億円の予算確保ができる。けっこうな金額を使っているから日露両方で利権化するのは当然の成り行きか?

 あの大きな会社ギドロストロイとかいったな、とっくに根室の水産会社とは比較にならぬ規模と質的内容を備えている。十年前にビザなし交流に参加したことのある人の話だと択捉島は様変わりしている。
 もうひとつの大きな島の国後島には戦前・戦中時代この島には北の勝の碓氷家所有の大きな缶詰会社とその工場があった。建物はレンガ造りで堅牢だったからいまも使われている。その辺の事情は北の勝碓氷勝三郎商店の現当主(女主人)がよくご存知だ。
 北方領土関係史には国後島の大きな缶詰工場は欠かせぬ要素である。当主自身による記録を残し公開してほしいとebisuは思う。根室市が将来根室市史をまとめようとしたときに資料や関係者の証言を整理して残しておかないと取り返しがつかぬ。狭い町の中だからどこでいつ話しをする機会があるかもしれない、偶然の機会を待つのも楽しみだ。にっこり微笑んで言葉をかけることのできる気さくなレディである。言うことはまっすぐで誰にも遠慮のないところが、90代半ば博士の学位をお持ちの老考古学者によく似ている。
 (こういう人がたった二人しかいないことが根室の人材不足を物語っている。サリーさんもあと10年くらいしたら、こういう域にいる一人かもしれない。(笑い)人は育っているから案外大丈夫なのだろう。北海道新聞が取材でとりあげたタクヤとカズキも今春高校を卒業して家業を継ぎ6月1日のコンブ漁解禁日から漁に出ている。一昨年高校を卒業したオホーツク海側の水産会社の跡取り息子も漁や網の手入れに忙しい毎日を送っている。素直でまっすぐな者たちが試練を潜り抜けながらそのまま30代を迎えてほしい。)

 半分ボケたうちの爺さんが、ときどき正気にもどると懐かしそうに繰り返し言っていた、「択捉は宝島」。お袋の話しだと秋になりシャケが川を俎上し始めると、川の中に竹ざおを立てても倒れないのだそうだ。
 択捉島はいまも「宝島」である。そのむかし、出稼ぎの船頭が北海道の3倍稼げたという好漁場だから、普通に経営しているだけで巨額の利益が上がり、いくらでも投資できる。ギドストロイ社は従業員やその家族のためにも巨額の投資をして、豊かな生活と安心を保障している。企業は設けないとウソだ。世のため人のために何かするには儲けないとできない。
 儲けは従業員やその家族のためにもこうやって使えと言わぬばかりの光景が択捉島のギドロストロイ社で繰り広げられているから、写真でご覧戴きたい。こういう会社がひとつでもあったら根室に優秀な人材が残るし、全国から根室に移住したいという人が殺到するだろう。人口減だってとまる。
 市長が旗を振り、市役所がやっている「根室再興」と比較してみればいい。町の繁栄の礎は民間企業が利益をあげ、従業員やその家族に安心や満足をどれほど与えられるかにかかっている。根室市がどれほど勘違いをしているか関係者はサリーブログを読んでよく考えた方がいい。

 圧倒されたのは標津のそれとは比較にならぬきれいで巨大な人工孵化場。根室の水産会社でギドロストロイ社にあるような保育設備や従業員福利施設(温泉)、医療施設(病院)などなどをもった会社があるだろうか、ない。およそ比較にならぬほど立派である。「宝島」だからこそできる利益とゆとり。

 引揚者の団体である千島連盟は年に何度も行われる「恒例行事」の名目として利用されているだけ、というのは私の印象。どういう印象をもたれるかは読んだ人の自由だから、とにかく読んで写真を見て、ご自分の頭で判断されたい。楽しい旅行記になっている。URLはひとつだけしか挙げていないが、6つともお読みいただけたらうれしい。ebisu推薦の択捉島ビザなし交流体験記だ。
 続編も期待したい。

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 サリー・ブログには択捉島訪問記事が6個アップされている。
 住民交流会編
 http://ameblo.jp/sommelier/entry-11268783365.html

  企業(ギドロストロイ)訪問編
 
http://ameblo.jp/sommelier/entry-11267592884.html#cbox

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 以下は弊ブログの関連記事のURLです。
*#1971 北方領土問題コメント(欄)対話(2):もちつもたれつの重層構造(福島県・福井県・根室市) June 12, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-12

*#195「少し過激な北方領土返還論」MIRV(多核弾道ミサイル)開発・組み立て・解体ショー
ロシアをぎゃふんといわせ北方領土を返還させるための具体論
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07

 #465「"Japan sent uranium to U.S. in secret"は北方領土返還運動の好機か?」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-30

  #1401「ロシアがフランスから新型軍艦を購入し北方領土へ配備、対抗措置はあるか」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-1

 #1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-06

 #1965 ビザなし交流=通過型観光旅行? June 8, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-08

 #1969 北方領土問題コメント(欄)対話(1): ビザなし交流の虚実  June 11, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11




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