東京電力から「工程表」が公表された。原子力安全保安院も枝野官房長官も東電の工程表を無批判に垂れ流すのみ。

 京都大学原子炉実験所の小出裕章助教がラジオ番組で司会者の質問に応える形で「工程表」を論評している。彼ら核技術者の規制値が年間20㍉Svだ。政府はそれを「作業員」に拡張し250mSvにかさ上げした。現場の高濃度汚染で従来の規制値では復旧作業が不可能になるという事情があるがとんでもない数字だという。
 ロボットが原子炉格納容器建屋に入り計測したら50mSv/hであった。わずか5時間足らずで250mSvを超えてしまう。1号基建屋の40メートル手前で250mSv/hが検出されているから、ロボットが計測した50mSvの計測精度は疑わしい。

 ラジオ番組の中では質問者に9ヶ月かかるとして、何人ぐらい作業員が必要かと問われて、数千人必要になるかなと答えていた。一度作業したら2度と作業できないとも。
 仮に1~4号機に5人ずつ5時間3交代で作業させたらどうなるだろう?

 5人×4基×9ヶ月×30日=5400人

 作業内容は破損部分の修理や冷却水ループの新設、配管作業などを含むから、熟練した作業員でなければできない仕事もかなりありそうだ。
 10人単位で作業すると仮定したら1万人を超える作業員を集めなければならぬ
 作業員は「ただちに健康被害」がなくても将来被曝による発病の可能性が高い。現場の被曝線量の高さを考えるととても「工程表」どおりには行かないというのが小出氏の結論である。健康や命と引き換えの作業に1万人(延べ人数ではない、一度作業したら被曝量の関係から2度目の作業はできないから、実人員で1万人)を超える人が必要になりそうだ。
 過去の作業実態から考えると、東電はまたでたらめな管理で危険な作業を下請けの作業員にやらせかねないから、原子力安全保安院は現場に行って作業員の被曝管理チェックをすべきだ。

 原子炉格納容器が損傷している。3号機は原子炉圧力容器も損傷しているだろう。例えば2号機に冷却水を入れれば一番下側にある圧力抑制室の爆発破損部分から注水量に等しいだけ高濃度の汚染水が漏れ出てしまう。注水を止めれば原子炉圧力容器内燃料棒が溶融しメルトダウンし水蒸気爆発を起こしかねない。高濃度の汚染水が漏れ続ければ破損箇所を塞いだり、冷却水のループを作る作業ができない。福島1号原発はいまたいへんなジレンマにあるというのが小出氏の認識だ。

 1号炉への窒素の注入については、圧力容器が破損しているのだから意味がないと小出氏が明言していた。米国がなぜあのような提案をしたのか当初から意味がないと思っていたという。現にいくら窒素を注入しても原子炉格納容器内の圧力は上がっていない。原子炉格納容器が破損しているから当然だろう(東電自身が破損を認めている)。当初7日の予定が10日たってもまだ窒素注入を続けているという。なにやら引っ込みがつかないようでこっけいである。

 枝野官房長官も原子力安全保安院も東京電力側の「工程表」を無批判に垂れ流すのみ。これでは存在意義がない。国民の安全を守るお役所も政府も現実には存在していない。それぞれ自分の立場を擁護するのみ。皆、トップの菅総理へ「右へ習い」だ。

 明光義塾釧路愛国教室ブログに小出裕章氏のラジオ番組のURLが載っている。
 「原発に反対する原子力の専門家」4月18日
http://blog.livedoor.jp/meiko_aikoku_blog/archives/51780655.html

●小出裕章(京大助教)非公式まとめ
http://hiroakikoide.wordpress.com/

●原子力の専門家が原発に反対するわけ 京都大学・原子炉実験所 小出 裕章
http://stop-kaminoseki.net/shiryo/20110320yanai.pdf

●原発計画30km 圏内の光市民として 京都大学原子炉実験所 小出 裕章
http://stop-kaminoseki.net/shiryo/20090628hikari.pdf

●ストップ!上関原発! 資料集
http://stop-kaminoseki.net/siryo.html#report

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*「東電、工程表を公表 事故収束に6~9カ月 2011.4.17 17:00
http://www.sanspo.com/shakai/news/110417/sha1104171701013-n1.htm

「工程表によると、目標は2段階で「放射線量の着実な減少」に3カ月、その後「放射性物質の放出を管理し、線量を大幅に抑える」に3~6カ月。
 当面、克服が必要な重要事項として、1~3号機の原子炉格納容器で水素爆発を起こさないことと、2号機で放射線レベルの高い汚染水を敷地外に放出しないことの2点を挙げた。
 大きく損壊した1、3、4号機の原子炉建屋について、建屋を覆うカバーをかけるなどの対策を示した。」

*「東電工程表、実施に相当の困難と班目委員長
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110418-OYT1T00857.htm?from=y10

*「福島第1原発:「信用できるのか」 東電工程表に疑心暗鬼
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/news/20110418k0000m040103000c.html





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