12月4日の北海道新聞根室地域版に医師退職情報が載った。

 市立病院
  外科医2人が退職
  11,12月で常勤13人、外科医1人に

【根室】市立根室病院の常勤医として勤務する3人の外科医のうち1人が、11月末で退職した。12月末には、さらにもう1人が退職する。これにより常勤医は13人、このうち外科医は1人となる。
 11月末に退職したのは中島太診療部長。松岡功治部長が12月末で退職する。いずれも一身上の都合という。
 今後、外科医の常勤医は1人になるものの、平日午前の外来診療は従来通り続け、入院も受け入れる。ただ、緊急手術への対応は難しいため、釧路などの病院へ搬送する。
 病院事務局では「外科医の複数体制に向け、招聘に努めたい」と話している。
 外科医2人の退職などに伴い、本年度決算見込みの数値が下方修正される。病院事務局によると、当初予算では入院は1日当たり111.6人を想定したいたが、決算見込みでは91人に。また、外来も598.3人が515人に減少する。
 この影響で、病院事務局では一般会計から病院事業会計への繰り入れは、当初予算比4割増の12億5200万円になると見込んでいる。(幸坂浩)

< コメント >
【3月までの退職情報】
 麻酔科医と外科医が退職済み、年末にもう一人の外科医の他に退職医師がいるという情報があるが、慰留中なのだろうか?それとも、単なる手続きの問題なのかは1ヶ月もしないうちに分かるだろう。
 病院事務局が退職医師情報公表を以前より早く行っていることは評価したい。これで常勤医数は16人から13人へ減った。12月末日付けで1人、3月末でさらに2人の退職が予定されているから、補充がなければ4月1日には常勤医数は10人である。何人補充できるかは努力次第だ。いろいろ意見はあるだろうが、常勤医師は数だけでなく質が大事なことは言うまでもない。

【本年度決算見込みは相変わらずの損失過小評価】
 さて、本年度の決算見込みを正直に語っているか否かを検証してみたい。91人で再計算したようだが、10月の入院患者数は83.5人である。仮に12月から3月まで80人で推移したとしたら入院患者数の年間平均値は86.9人となるから、決算見込みと4.1人差異が出る。相変わらずの赤字過小評価だ。「改革プラン」では一人平均42113円で計算していたようだから、この数字を使ってみる。

  4.1人×365日×4.2113万円=6302万円

 つまり、繰出金の決算見込みは入院患者数だけ検証してみても13億円を超えそうだということだ。わたしはおおよそ14億円と予測している。

【大きな問題の存在】
 もっと大きな問題は別にあり、これに比べれば医師の数などそれほど大きな問題ではない。
 景気浮揚策で地方交付税が10億円膨らみ、財政規律がゆるみ歳出規模が159億円へ拡大している。赤字特例債での不良債務の解消の先延ばし、小中学校統廃合の先延ばしなど、問題解決を怠り先延ばしする市政の姿勢こそが問われなければならない。過去のツケを払うために歳出規模が膨らんでいる。
 景気浮揚策は無限に続くものではなく早晩なくなるが、来年度予算が予算要綱レベルで3.5億円の歳入欠陥を生じてすでに根室の市財政は危機にあるから、一般会計から病院事業へ十数億円の補填は継続的できない財政事情を抱えている。
 繰り返すと、156億円の歳入予算は早晩140億円に縮小し、「2011年度予算要綱」で歳出は159億円だから歳入が140億円に縮小すれば一般会計赤字は20億円にもなるだろう

【影響】
 こういう状況下で「投資的経費」はわずかに20億円。厚床の小中学校の建て替え要望が住民から出されたが、それに応える予算を捻出するのはむずかしい。「売り手よし、買い手よし、世間よし」とはならない。建て替え予算捻出ができずに小中学校の統廃合が進む可能性が出てきた。
 かようにいろいろなところへしわ寄せが行くことが予想されるが、どうにも理解できないのは地元経済団体が自らの首を絞めるような62億円の総事業費での建て替えを「オール根室」という"名"のもとに支持していることである(なぜ正直にH市政を支持する地元経済界あるいは○○経済団体を名乗らないのだろう)。
 下請けあるいはジョイントベンチャーで請け負う建築業者はたしかに工事費が膨らみ、儲けが増えてうれしいには違いなかろうが、根室市と取引関係にある大部分の業者や補助金が下りている業者・団体は予算が削られてたいへんなことになるのにさっぱり反対の声を上げない、不思議だ。死活問題が生じてから慌てても遅いのである。まもなく、入札が行われ受注した業者名が明らかになる。根室の医療を危機に陥れても工事費を膨らませた美味しい仕事が欲しい地元の業者は誰だろう。

【監査委員の指摘】
 もうひとつ忘れてならないことがある。公営企業については資金不足比率20%以下という規定があるようだ。病院事業で不良債務を5億円出せば翌年度直ちに「経営健全化団体指定」がなされるようにみえる。
 素直に読めば、この「経営健全化団体指定」が病院事業だけに及ぶものなのだろう。「当該比率について財政再生基準は定められていない」と但し書きがあるから、指定を受けても内容不明な制限を受けるのは病院事業だけであり、市の財政には影響がないというように読める。
 市議会ではこの比率の存在についてだれも指摘していない。監査委員ただ一人が「審査意見」に記したのみだから、知られざる規定というべきか。
 現実のリスクについてH市長は市民へ説明すべきだし、市側がやらないなら市議が市議会で質問し、市民へアナウンスすべきだろう。
 こういう事例を考えても、市民から見ればわからないことだらけであり、市側は病院建て替えについて市民説明会を開くべきで、丁寧に説明すれば疑問点の半分くらいは自ずと氷解するのではないだろうかと私には思える。
 市民と市政の信頼関係は正直で丁寧な説明から生まれる・・・、「市民との協働」を標榜するH市長はそれでも拒否か?この市長、ひょっとして「協働」という言葉の意味が判らないのかも知れぬ。


*#860「杞憂(6) 病院赤字特例債と早期健全化団体指定の関係について」  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-01-11

*『根室市健全化判断比率等の審査意見』
    ⇒4頁に「エ.市立根室病院事業会計」が載っている
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/072655f020242b59492574fa0026f4b0/$FILE/%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%91%EF%BC%99%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E6%A0%B9%E5%AE%A4%E5%B8%82%E5%81%A5%E5%85%A8%E5%8C%96%E5%88%A4%E6%96%AD%E6%AF%94%E7%8E%87%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%84%8F%E8%A6%8B.pdf


*#943「病院建て替え:病院コンサルタントの提言、30億円で病院は建てられる」 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09-1


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