北海道新聞10月28日、根室地域版の記事である。29日市議会最終日の市長発言と比較するとその発言の場当たり性があらわになる。
 病院事業の破綻を論じたが、100%という話ではない。蓋然性の問題を論じている。ありていに言うと、そうなりそうだということだ。破たん前の夕張市によく似ていることはたしかだろう。読んで、自分の頭で考えて冷静に判断して欲しい。わたしの意見がすべてではない。


 市立病院経営
     課題が山積み
 膨らむ繰り入れ
   建て替え財源にはめど
【根室】26,27の両日行われた第3回定例市議会の代表質問と一般質問で、市立病院建て替えの財源にめどがついた一方、病院経営では加害が山積みしていることが浮き彫りになった
 12億3千万円。長谷川俊輔市長が明らかにした病院事業会計の本年度決算見込みで、赤字を埋めるため一般会計から繰り入れる金額だ。当初予算より3億5千万円増え、9月に公表された2013年までの計画「病院事業改革プラン」と比べても2億7千万円多い
 こうした乖離が生じる理由について、長谷川市長は「当初予算を決める際は、全体の財源の配分を考えなければいけない」と理解を求めた。
 同プランは、13年度までの繰り入れは最大で年に11億9千万円を超えると試算する。今後も毎年、繰入額が計画を数億円上回るようだと、150億円規模の一般会計自体に大きな影響が出かねない
 市長は「現時点で一般会計が破綻することはない」と強調。ただ、繰入が将来にわたって「12億、11億円と続けばたいへん厳しい」と危機感を示した。
 一方、建て替えについては、財源に一定のめどがついたとの認識が示された。
 建て替えの総事業費62億8千万円のうち、22億6千万円は国の交付金が利用でき、残りはほとんど起債で賄う。起債は種類により償還額の最大70%が国からの交付税措置されるため、国による財源措置は合計で「総事業費の65%。市の負担は残り35%の約22億円になる。」(長谷川市長)という。
 また、一部市議が市民説明会の開催を要望していたことについて、長谷川市長は「(11月からの)まちづくり出前講座のメニューに市立病院を掲げた」と述べ、10人以上の市民でつくる団体が希望すれば、担当職員が説明に出向く考えを明らかにした。(幸坂浩)


< コメント >
【満場一致で可決成立】
 この日は一般会計からの繰り入れが11億、12億円と続けば苦しいと言っているが、29日は一転して15億円でも大丈夫だと言い切ったようだ。H市議はその言質を得て62億円の建て替え総事業費のうち、29.9億円の予算に賛成を投じ、苦渋の決断だったと自身のブログに書いている。

(本年度分、6700万円の起債許可が下りただけである。総事業費のたった1%であるが、総額の半分の29.9億円の工事を市議会が承認してしまった。起債総額は37.99億円である。
 工事が始まってから、来年度分の起債許可が下りないとなれば、支払不履行となる。業者と訴訟騒ぎを起こすことになるだろう。下請け企業はつぶれかねない。38億円の財源などどこにもない。市議会でH市長はそのようなリスクの説明をしていないし、チェックすべき市議会も機能しなかった。たいへんなリスクを背負い込んだことに気がつくのはいつだろう?⇒11月6日追記)

【この国を潰つぶす交付税という麻薬】
 起債の半分近くが交付税で措置されるために、欲の皮の突っ張った地方自治体は根室市のように30~35億円ですむ物を62億円もかけることになる。
 根室にみるように地方自治体の8割はコストカットの意識などさらさらない。いくら借金しても半分以上は交付税で補填されるから、地元業者が濡れ手に粟で潤えるように金額は多いほどいい。国の借金が900兆円に膨らむはずだ。
 地方自治体がこうした意識を変えない限り国の借金は増え続け、まもなく1000兆円を超えて国家財政の財政破綻が起きる。根室だけではない、(隣マチの別海は別として)全国のいたるところで同様のことが起きているのだろう。それもあって私たちは国家財政破綻に備えなければならない状況下にある。

【医師退職が続き病院経営はさらに悪化】
 今年度の実質赤字額は前年度の11.7億円がさらに膨れ上がり、14億円を超えるだろう。麻酔科医の退職、外科医2名の退職、そして来年3月末までに他にも医師数名の退職がうわさされているから、このままなら来年度は15億円を超える。病院事務局の実質赤字見込みは当初8億、次に9億、そして今回市長の発表では12.3億円と時間が経つほど膨らんでいく。どれも信用できない数字ばかりだ。
 語尾がハッキリしなかったが、市長答弁によれば取りざたされた産婦人科医は取りやめになったもようだ。富山の外科医招聘もその後音沙汰がなくなった。北大や旭川医大との信頼関係をそこねるようなことを市当局はしている。その辺りの事情はコメント欄への投稿でも明らかだ。
 来年4月には補充がなければ常勤医師数が10名になる可能性が出てきている。事情次第によっては雪崩減少が起きかねない。12名でも病院事業の実質損失は15億円を超えるだろう。補填できる財源はない。市役所財政課は破綻処理を一身に背負うことになるのだろうか。

【市民と患者への影響】
 経営破綻すればどうなるかは夕張の先例が示している。よくて診療所だ、入院病棟がなくなり、入院患者は行き場を失う。民間病院の受け皿は、精神科の200ベッドがあるだけだから、代替にはならぬ。500人を超す外来患者の半数は民間病院へなだれ込むだろう。地域医療の崩壊である。

【市役所職員の生活への影響】
 財務課長は魔法使いではないから、経費節減と補助金事業のカットでは到底間に合わないから、人件費に手をつけざるをえないだろう。それが20%になるのか30%になるのか、まったく不明だ。
 これから大学進学を控えているお子さんをお持ちの職員は子供の進学だけは何があっても夢をかなえてやって欲しい。家のローンを抱えている職員は30%給与カットになれば返済不能になる人もでるだろう。家を処分してもなお借金が残る。

 経営破綻までそう時間はかからないと思うのだが、労働者の生活と権利を守るはずの市役所労組幹部はいったい何を考えているのだろう?労働者の権利主張をしているだけでは、労働者の生活と職場は守れない時代なのはお分かりのはず。
 自分たちの身を守るためにすこしは経営の勉強もすべきではないのか。君らの先輩諸氏をわたしは何人か知っているが、かれらは結構熱かった。時代は大きく変りつつある、労働組合とは何か、いまなにをすべきかをよく考えて欲しい。

【経営改善プランのない着工は病院事業経営破綻の決定に等しい】
 病院事業は整理縮小せざるをえなくなるが、どういう形になるのだろう?
 具体的な経営改善計画の裏付けのない(別海の2倍もの)総事業費62億円の病院建て替えに市職労は反対表明しなかった。そもそも賛成反対にかかわらず、給与カットを受け入れざるを得ないだろう。
 今後三年間で18名の看護師が定年退職するそうだが、このような経営状況では補充できるわけもない。応募してくる若い看護師はほとんどいないだろう。病院事業はまもなく、医師不足、看護師不足、実質損失の急拡大という三重苦に見舞われる
 病院コンサルタントの言うように半分にコストカットし、療養病床を確保して経営改善できるような仕様で病院を建て替えろとブログで具体策を提案したが、無駄だった。まもなく着工する。
 経営の要諦は事前に手を尽くすことだが、しかしもう打つ手がなくなった。誰がやってももう破綻処理しかなくなったように私にはみえる。
 市議会はなにをしたのかわかっていない。第3回定例市議会で市立根室病院事業の破綻を決定したのだ。

【していることが引き起こすことについての自覚のなさ】
 記者が書いているように、経営上の問題がクローズアップしてきている。建て替え後の収支見通しも経営改善策もなく強引に建て替えを進めることになったから、数年で市立病院経営は破綻するだろう
 夕張市の病院の現実を目の前にしないと、H市長と市議たちはいま自分たちがしていることの意味がわからないのだろう

【市政と市議会のレベル】
 全道最低である子供たちの学力はこの数年の間にさらに急激に低下しつつあるが、それ以上にまちを運営している大人たちの学力や仕事の能力の低さは問題が大きい
 二つ前のブログで別海町立病院の基本計画と根室のそれを比較したが、根室市は仕事のやり方においてお隣の別海町にはるかに劣っている。

【破たん前の夕張市とよく似た状況】
 月曜日深夜に平成5年(1993年)放送の「クローズアップ現代」が再放送されていた。北海学園教授が夕張市の財政問題を解説していたが、破綻可能性については、「最悪の場合破綻可能性がある」というのみだった。なんと甘い解説だったかと今にしてみればそう思うが、それは酷だろう。だれも夕張市が破綻するなどとは思っていなかったのだ。
  その時点ではいくらでも回避できたはずだが、夕張市は小手先の対策を繰り返した。現実は14年後の2007年3月に破綻してしまった。14年後の破綻を知る由もなく、ニコニコして賞与を受け取る市役所職員の笑顔が映っていた。

 私なりにまとめてみると次のような条件が生まれていた。
 ①石炭博物館や夕張メロン館など箱物をつくり150人の雇用を増やし、毎年1億円を映画祭に投じ、当時の市長は得意満面だった。
 ②市長は交付税を当てにして借金を増やすことに躍起になっていた。地元信金からの協力を得て借入を膨らませた。「オール夕張?」の支援を受けていたのだろう。そして
 ③市議会はチェック機能をなくしていた。
 ④市民は町が財政破綻へまっしぐらに落ちていくのに、発展していると錯覚し、財政破綻への危機感がなかった。

 ①②③④のどれもが言葉を少し入れ替えるだけあるいはそのまま、破綻前の夕張市の市政、市議会、市民の関係が現在の根室にぴったり当てはまる。残されている猶予期間はせいぜい数年だろう。
 根室は夕張の轍を踏んでいる。私たちの前にワダチがくっきり見える、それは夕張市が通った跡だ


 

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