#1283 病院会計への繰り出し圧迫 Nov.19, 2010 [33. 地域医療改革の烽火]
11月18日付北海道新聞根室地域版の記事を紹介する。担当記者は病院建て替え問題の専門家と言ってもよいだろう。
病院事業の赤字拡大で来年度予算の投資的経費が圧迫されているという指摘はその通りだろう。そして経営改善がまったく進まない病院事業はさらなる赤字拡大をもたらし、ますます「投資的経費」を削らざるをえない状況に追い込まれる。将来、学校建て替え等の事業ができなくなると心配する市幹部もでてきているようだ。
市09年度一般会計決算
病院会計への繰り出し圧迫
投資的経費全体の13%
独自施策実施難しく
【根室】市の2009年度一般会計決算が19日の臨時市議会に提出される。現時点での国の「早期健全化基準」に達する危険はないものの、市立根室病院事業会計への繰り出しが重く、市の独自施策や公共事業などに使う投資的経費が圧迫されている。(幸坂浩)
一般会計の歳入は162億2685万円で、歳出は159億9347万円。財政健全化法に基づく4指標のうち、特に将来の財政見通しにかかわる歳入に対する市債残高などの割合「将来負担比率」は119.3%で、財政再建計画策定が義務となる基準(350%)を大きく下回った。
市の貯金に当たる各種基金の残高は約17億1600万円で、職員給与の独自削減などで前年度より3億弱増やした。市債の償還が集中する11~14年度の赤字に備えるためで、市財政課の角知浩課長は、歳入の大部分を占める地方交付税を国が大幅削減しない限り「市財政が傾くことはない」と説明する。
ただ、歳出を目的別に見ると、投資的経費は20億840万円で、全体の12.6%しかなかった。残りは、市債の償還に当てる公債費や人件費など、市政運営にかかる経費で、病院事業会計の赤字を埋める繰り出しが同7.3%の11億7300万円と重しになっている。
市幹部は「病院の赤字を少しでも減らさないと、将来学校建設などが厳しくなる」と危機感を持つ。職員給与の独自削減も続く可能性がある。
市議会は、24~26日に開かれる決算審査特別委員会に審査を付託し、決算の内容を議論する。
< コメント >
財務課長は言い方が慎重である。「歳入の大部分を占める地方交付税を国が大幅削減しない限り「市財政が傾くことはない」」と言っており、しっかりexcuseがついている。
他方、国家財政の危機により地方交付税交付金は5年以内に見直さざるを得なくなる。建物部分の市債の償還期間は30年だそうだから、その期間の大半が引っ掛かるだろう。このようにして交付税措置があるからと2倍に予算を膨らませたツケは必ず回ってくる。
国債等と政府保証債務の9月末残高は954兆円である。来年度中には1000兆円を超す。このまま行けば今後5年間でさらに250兆円積みあがり1200兆円にもなる。
円への国際的な不信任が起きるだろう。それを防ぐには国家財政を健全化しなくてはならない。地方交付税制度や公務員人件費の大幅なカットをせざるをえなくなる。どうやら民主党は政権奪取前の選挙では財政健全化を声高に叫んだが、やっていることは真逆、史上最高額の50兆円を超える新規国債増発を繰り返しながら外圧で追い込まれることになるだろう。
30代で民間企業でシビアな仕事を経験したことのない者たちの寄せ集め集団特有の欠陥が最悪の形で露呈することになる。地元選出の国会議員も例外ではない。
平成21年度は実質病院事業赤字11.7億円ですんだが、22年度は14億円に繰出金が拡大する。23年度は医師不足から15億円を超えるだろう。これは一般会計からの繰出金部分であり、。病院建て替えがすめばさらにさらに実質負担分が2~3億円増大する。実質赤字額は3.8億円の旧建物除却損等(この部分は繰出金は必要なし)が加わり20億円前後になり、市財政は予算が組めないほど逼迫する。
学校建設などへの影響を心配し始めている市幹部がいるようだ。だったら、なぜ総事業費62億円の建て替えに反対せぬ、経営改善視点のまったくない基本設計に異を唱えぬ。いまからでも遅くはない。君らは傍観者ではない、当事者である。出世の道が一時閉ざされたっていいじゃないか、己に正直に仕事をする公務員を市民は支持する。
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