北海道新聞根室地域版で面白いシリーズが始まった。5回連載記事である。初回は幸坂記者が医療問題を採り上げた。ぜひこのシリーズを読んで根室の将来を一緒に考えてもらいたい。
 なお、青字部分は新聞記事からの引用である。

【市立病院の1日平均入院患者数 145.3人⇒97.1人】
 5年前に比べて、入院患者数は66.8%にまで減少している。入院病棟の売上がそれだけ減ったということで、病院赤字が5年前の6億円から10億円に拡大したと書いてある。
 念のために言うと2009年度の実質赤字=一般会計からの繰り入れ金額は11億円を超えている。札医大からの派遣医師が1名9月で退職するというニュースが巷に流れている。もう一人医師が退職するようだ。補填はできるのだろうか?できなければ今年は実質赤字が13億円に膨らみそうである。一般会計では全額補填できないかもしれない。できなければ「不良債務」になる。150億円の市の予算規模からみてこれ以上の病院事業赤字補填は市財政を危うくするだろう。

 市長が「医師を個別にスカウトするなど医師確保に奔走。現在は常勤医が16人にまで回復した」と書いてあるが、どのドクターが市長が個別にスカウトしたのだろう?地域医療協議会や医師派遣制度を利用して確保できた医師は何人もいるが、市長が個別にスカウトした医師は何人なのだろう。具体的な数字を宣伝したらいい。不祥事はあった。札幌にスカウトに行っているはずの事務長が医師確保ではないことをしていて、問題になった。

*医師確保についてコメント欄へ書き込みがあった。現事務長の功績だという意見である。ハッキリ書かなかった私の意見を書いておこう。
 旭川医大が新臨床研修医制度の下、医師が足りなくなり派遣医師の引き上げをした。その結果常勤医が6名にまで減少した後、根室で打てる手は医師報酬の大幅な引き上げだったのではないだろうか。
 北海道の東端の僻地で給与が同水準のまま医師を十人も増やせるような甘い状況にはない。根室の医師の報酬3000万円はそのとき以降にできあがったとわたしは推測している。リクルートをしようにも以前の報酬水準では医師が集められないと現場から悲鳴が上がったのではないだろうか。
 市立根室病院は近隣の別海や中標津町立病院よりも1.5倍から2倍に近い水準である。私が市長でも報酬引き上げを承認しただろう。少しやり方が違うが、わたしはブログで医師は必要な人数を集められると2度ほど書いた。そのときは3000万円プラス1年間いるごとにボーナス1000万円を考えていた。必要な科と医師数を明示して、市のホームページ上で広告すれば医師は集められるだろう。しかし、地域エゴ丸出しの感もあるので、あまり感心した策とは言えない。各地の自治体病院が類似策をとると、医師報酬の水準が揚がってしまい、財政の悪化した市町村は病院を維持できなくなるからだ。それゆえ「背に腹は変えられぬ」非常手段と思っている。
 もしこの推測が当たっているなら、リクルートのために報酬の大幅引き上げ案を上申した担当者の智慧を褒めるべきだろうか。そしてこれが現場からの悲鳴でなく、すぐれた経営センスに裏打ちされたものなら病院は変りうる可能性があったことは指摘しておかねばならない。一人の人間がいろいろな能力を兼ね備えるということは現実にはなかなか難しいし、稀なことである。複数人で機能分担するしかないが、人件費が数倍かかることと、権限の問題がある。
  いろいろな専門分野の書籍を自在に読みこなし、いろいろな業務に好奇心をもち学習を欠かさない、基礎学力の高い人材が求められているということだろう。こういう人材が市政や病院経営の中心にいて仕事をすれば町の将来も明るいし病院の経営改善も進むに違いない。根室の子どもたちの学力の衰えは根室の将来にとって重大な問題であることが分かるだろう。いや、現在を考えても要職にある大人たちをみれば、子どもたちの30年後の姿も根室の30年後も想像できる。子どもたちの基礎学力を上げねばならない。
 いま教えている生徒の中に未来の根室市長がいるかもしれない。彼または彼女が現市長波の杜撰な仕事しかできなかったら、責任の半ばは私にもある。根室の最高気温は28度の予報だ、今日も暑い、しかし仕事の手は抜かないぞ。(9月1日朝8時40分追記)


【4人は道の医師派遣制度で札医大から派遣されている】
 期間4年という制限があり、この期間が終了したら後は根室市が自前でまかなってくれということだ。「3人が11年度末、もう一人が12年度末で期間が満了する」ということは、前に拙ブログでも書いた。市長の対応は「道に引き続き派遣をお願いしたい」というが「道側は「制度を変えない限り難しい」地域医師確保推進室」という状態である。
 つまり、派遣が切れた後は根室で独自に医師を雇えということで、それまでのツナギが医師派遣制度だ。市長は何の手も打っていないようだ。手の打ちようがないのだろう。だから、いままでも市長が独自にスカウトしたなどという話はにわかには信じがたい。事前にきちんと手を打つというような仕事の仕方が苦手のようで、病院建て替え問題にしても問題が生じた後で慌てて対応するのが常である。

【5年間で病院事業赤字が2倍になった】
 5年前は実質赤字(=一般会計繰入金)が6億円だったのが、この5年間で11.5億円の実質赤字に拡大した。赤字は5.5億円増えたのである。そしていまも実質赤字は縮まる気配すらない。
 長谷川市政は病院事業の経営改善に寄与したのだろうか?赤字額は2倍になっている。

【看護師も、14~16年度に定年退職のピークがある】
 「この3年間だけで計18人が退職する見通しだ。新たに人材が確保できなければ、せっかく新築した病棟を休止せざるを得ない可能性もある」
 この点も前に書いた。本田市議もブログで指摘していることである。年間実質赤字が12億円にも達するような病院にそうそう新人看護師が応募してくるはずもない。いつ夕張のように診療所になるかもしれないのだから。なれば、給与は半減、大多数がリストラに遭う。

 何よりも、このままだだっ広い病院を62億円もかけて建て替えれば、建て替え後5年間は年間赤字額が16~20億円に膨らむ。一般会計から毎年このような巨額の赤字補填はできないだろう。市長は現実的な計画損益計算書すら市民に開示していない。無投票当選市長だからこそ市民へ丁寧な説明が当たり前だ。あなたは信任投票すらされていないのだから。
 市が招聘した病院コンサルタントの講演会で30億円での建て替えが可能だと説明があったはずだが、市幹部を含めて50名ほども出席していて誰一人として62億円の建て替え計画案にノーと言わない、まったく不可解である。市幹部や特別委のメンバー病院事務局と関係者ほとんどが出席したはずである。なぜ意見を言わずに黙っているのだろう。おかしな市政運営がまかり通っている。

 根室の未来を考えるよい材料になるだろうから、みんなでこの特集シリーズを読んで声をかけよう。
  「大見出しは「医師数回復も経営難」、シリーズ記事は読んだか?」

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*担当記者はずいぶんと関係方面へ気を配った記事の書き方をしているようにみえる。今後の取材のこともあるから、できるだけソフトに書いたのだろうとはebisuの勝手な推測である。遠慮のない論はebisuの役割でいい。
 北海道新聞は根室支局に有能な記者を配置しているように常々感じている。ありがたい。

**コメント欄へお二人から詳細な意見をいただいている。実に具体的な内容なので、ぜひ両論比べ読みいただきたいと思う。
 産科はどうなるのか、病院収益は、市立根室病院で何が起きているのか、いままで不明だったことがそれぞれの立場から語られている。(9月2日追記)

***#1187 「 無投票市長選 数字で見る根室の課題(2):人口推移
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-02

#1189「無投票市長選 数字で見る根室の課題(3):支庁統廃合はチャンス」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-03-1

#1191「無投票市長選 数字で見る根室の課題(4):無節操な北特法」
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-05

#1194 無投票市長選 数字で見る根室の課題(5)最終回:NPO法人ゼロの現実
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-07


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