釧路医師会病院はどうなる

 釧路医師会病院に行ってきた。今回の半年定期検査が最後になった。診察の最後にドクターが転院先をどこにするか私に希望を尋ねる。もちろん地元の専門医にお願いした。もともとそこからの紹介で釧路医師会病院へ入院したのが始まりだから。
 カルテその他は来月中旬ぐらいに送ってくれるそうだ。他の患者分と合わせてそれぞれの転院先に一括して発送するのだろう。

 4月からは整形外科病院に衣替えのようだ。病棟に張ってある写真付きのスタッフ紹介ボードには見知った病棟の看護婦さんがすでに数名いない。エックス線CTは2年ほど前に入れたばかりの最新鋭機だが、整形外科ではほとんど必要ない代物だろう。MRIもだ。

 整形外科病院になるなら、入院病棟もほとんど必要なくなる。1室4ベッド、トイレ付きの病室は快適だから、そこが空きになるのはもったいない。根室にこの建物をそのまま欲しいぐらいだ。すくなくとも病院建設問題は解消する。建物を丸ごと移す魔法はないものだろうか?

 残っている医師もすでに行き先が決まっているようだ。残っているスタッフが新病院でどれほど抱えられるのかも心配である。
 この病院は道東で消化器内科と消化器外科を揃えた中核病院である。阿寒のホテル鶴賀が顧客満足度で全国No.1だが、釧路医師会病院も顧客満足度では道東一かもしれない。じつにいい病院だ。道東が誇れる病院が経営難で消えてしまう。こういう事態に陥ったのは、医者がいなくなったことがきっかけだが、それだけではないだろう。自治体病院と違い一般会計からの数億円規模の赤字補填はない。いい医療と経営のバランスは難しい。淺川院長を経営面で支える、経理に堪能な経営専門家が必要だった。ニーズは大きいが、しっかりとしたデータに基づいて経営改善を提案でき、理解と納得をベースに医者と対等に渡り合える人材は非常に少ない。特色のある良い病院が3月末で道東から消える。患者の一人としても寂しい限りだ。はっきり言って、変わりうるレベルの病院(診療機能、施設管理、CSを意識したスタッフの教育の3点で)はない。
 
 さて、前を向いて語ろう。
 わたしは道東の地域医療に責任をもつ「道東医科大学」が欲しい。
 札幌と旭川にあって、道東にないのはおかしい。帯広・釧路・網走・根室支庁と3管内は住民は50万ほどいるのではないだろうか。面積をみても北海道の三分の一ほども占める。国立医科大学がひとつあってしかるべきだ。

 ついでにもう一つ。根室出身の医師を増やすために、奨学金制度を設けるべきだ。医学部を受験可能な優秀な生徒は各学年に10名近くいる。自前で医師を育てなければ、30年後の根室の医療は崩壊しているかもしれない。30年前にそうしなかったことが今日の窮状を招いている。
 3000万円を限度として、市の病院に60歳までに8年間の就業義務を課すことで、返済を免除すればいい。千葉県にそういう制度があるというので、参考にすればいい。

 「成績が良いだけの医者なら要らない」という現場の声を耳にした。この半年ほどいろいろな情報が流れているが、医療スタッフも強いストレスかにあるのだろう。どういう意味かは聞きそこなったが、状況から考えて「地域医療を守る覚悟をもった医者が欲しい」ということもあるのだろう。しかし、声の感じからはそれ以上の意味合いが含まれていることを感じた(外科医のDr.ゴルゴは診断のために内視鏡技術を習得して「消化器専門の総合医療技術者」となって道東のある地域の医療を支えてくれるはずだと伝えると、にっこり肯いていた)。
 中標津町立病院の元院長も新聞でのインタビューに同じことを答えていた。地域医療に必要な医者の、いいや求められる医者になることのなんとハードルの高いことよ。どんな仕事もその仕事を選択した志の有無が問われる。

 内科の副院長、外科の執刀医のDr、手術を見守ってくれていた院長、手術室担当のナース、病棟の看護師さん、いつもトイレをきれいに清掃してくれていたスタッフの皆さん、毎日3度お茶を入れてくれたおばちゃん、皆ありがとう。
       m(_ _)m

 2009年2月18日 ebisu-blog#553
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