今朝の最低気温を見ると-4.4度、二十四節気で最終節で「大寒」、最も寒い時期とされています。それで数日前に載ったいささか寒い感じのした記事を思い出しました。前からそろそろと思っていましたが、そういう時期が来てしまったようです。

 旭川医大から元学長の好意で根室へ常勤医として赴任されていた市立根室病院の眼科部長大谷真一先生が2月1日の診療で退職されると1月15日の北海道新聞が報じていました。大谷先生は2015年6月に来られて、6年半精力的に診療と手術をこなしてこられました。白内障の手術だけでも毎週水曜日平均して5人くらいやってこられたようです。
 わたしも大谷先生がなされた白内障患者手術1500人のうちの一人です。6年間の先生の仕事の大きさを感じずにはいられません。老人人口が8000人ほどいますから、白内障患者や緑内障患者が多いのです。眼科はいつも混雑しています。
 白内障手術をしていただいて、わかったのですが、手術は4人のチームでなされますが、息がピタッとあっていました。点滴での麻酔だけですから全部聞こえます。手術が始まると水晶体が破壊されて吸引されると何も見えなくなり、終わると同時にプラスチックレンズを通して光が眼に入り、周囲がが見えます。あれは感激と驚きでした。
 手術機器もツァイス社製の最高性能のものでした。光学系はツァイスが最高です。ソニーのカメラがツァイスのレンズを使用しています。

(最大手の検査センターSRL八王子ラボで機器の購入を担当していた時(1987-89)に、ウィルス検査室の蛍光顕微鏡の半分以上くらいがニコンやオリンパス製だったのですが、それらを全部ツァイス社製のものに買い替たことがありました。入社してすぐに、東証2部上場審査要件で、暗礁に乗り上げていた経営情報系システムを8か月で稼働させ全社の予算編成を担当して、検査試薬の値引き交渉を提案し、製薬メーカーと直接交渉して毎年16億円ほどコストカットを3年間やったので、わたしは当時平社員でも権限が大きかったのです。経理担当役員Iさん(ガンちゃん)と専務のY口さんがたしの提案にはノーは言いません。オリンパスの2倍近い、ニコンの1.5倍の値段でしたが、性能がいい。世界最高性能のものを使わないと、最高品質の検査はできないし、なにより検査をしている人たちに最高のものを使っていい仕事をしてもらいたかった、単純な理由です。「え、全部ツァイスの蛍光顕微鏡にしてくれるのですか」とウィルス検査課の課長の驚いた顔が眼に浮かびます。)

 患者の側から見ると、同じドクターに診察してもらうのが安心なのです。いままでの病態を理解してくれていますから。わたしは白内障手術をしていただいたほうの眼は緑内障の前駆症状があり、年に2度経過観察中です。
 医師が変わると治療方針も変わることが多く、それで不安になる患者もいます。3年くらいの間に頻繁にドクターが変わって不安を抱いていた知り合いの患者さんの話を古里の戻って2年目くらい(2004年頃)に聞いたことがありました。そのときは自分が眼科で受診することなんかないと思っていました。ところが加齢とともに状況は変わりました、他人ごとではなかったのです。

 同級生の劇画家、神田たけしの五十周年展示会を見に行ったときだったか、大谷先生が奥様と男のお子さんと文化会館前で遊んでいるのを偶然おみかけしました。ああ、小さいお子さんがいるんだと思ったのと、先生がずいぶん背が高いので驚きました。一度、診察の合間に北海道の北部の方へ勤務が変わったら、適当な塾があるだろうかとお尋ねになりました。僻地の高校からは医大への現役進学がとっても困難であることを自身の進学で経験していたからでしょうね。やはり札幌がいい、札幌南高校がダントツに実績があります。そのようにお答えしたように思います。

 わたしの勝手な推測ですが、おそらくお子さんの教育が最優先事項だったのではないかと思います。そろそろピカピカの1年生、お子さんは札幌の小学校に通学と考えるのが合理的です。勝手なことを書いて申し訳ありません。根室の地域医療の未来を考えるときにとっても大切な論点なので、あえて言及させていただきました。

 市立根室病院では学齢期のお子さんのいるドクターはいないのでは?理由は簡単、根室は教育の僻地です、学力が低い。根室高校は偏差値45の高校です。首都圏の偏差値45の学校から国公立大学医学部の進学実績はゼロでしょうね。ありえない話なのです。根室は高校が1校ですから、生徒は玉石混交なのです。うまく育てたら、同レベルの難関大学に毎年3-5人現役合格者が出せるポテンシャルがあります。それが実現できていないだけ。たった一人ですが、7年通塾して国立旭川医大へ合格した生徒が昨年現れました。
 根室高校から、毎年国公立医大へ現役合格者が出せたら、あるいは大谷先生は市立根室病院勤務をもっと長く続けてくれたかもしれませんね。地域医療の充実を考えるときに、教育抜きでは打てる手が狭くなります。根室は地域医療を守るためにも、高学力の生徒を育てるべきです。わたしのブログには具体的な提案や、実際にやってきたことの記録が残されていますから、参考にしてもらいたい。

 ところで、大谷先生は旭川医大出身で、岡田医院の消化器内科専門医である岡田優二先生の後輩です。
 数年前に東京のメガネ屋さんで視力検査をしたとき、一度眼科を受診した方がいいと言われて、東京の住まいの近くの眼科クリニックを受診したら白内障との診断があり、手術を決めました。根室に戻って主治医の岡田先生に相談したら、腕のいい後輩が市立根室病院にいるから紹介状を書いてあげると言われて、お願いしました。分厚い紹介状を開いて開口一番、「岡田先生とどういうご関係ですか?」と問われ、「小さな塾をやっていて息子さんを教えています、それだけです」とお答えしました。
 なにかで岡田君の現役合格を知って、進学校じゃない道内の高校から現役で旭川医大へ合格するのはほとんど不可能なのだとおっしゃって、わがことのように喜んでくれました。

 次回の眼科の診察は出張医の方が担当してくれるようです。2/2から3月末までは出張医で対応と、新聞記事に載っています。異動の時期までのピンチヒッターが派遣医、4月からは常勤医のドクターが決まっているということでしょうね。眼科の患者にとってはありがたい。
 大谷真一先生、お世話になりました。


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