<最終更新日時>
9/1 正午

 8/19から中3、8/22から高1の新しい生徒が来て勉強している。数学の基礎を固めるのと、勉強のしかたを身に着けてもらうために、最初の1か月は毎日来てもらうことにした。そろそろ手一杯である。生徒の学力レベルにもよるが、一クラス7人、生徒総数20-24人くらいが、わたしの個別指導の限界である。健康上の理由で、週4日体制は崩したくない。高校統廃合の影響で、中学生が勉強しなくなったのと、高校生が増えたので中高の比率が4:6、高校生が6割になった。来年は高校生が8割になる。高校生を教えている私塾は根室に二つだけ。中学生の塾と高校生の塾で棲み分けが進みつつある、ケセラッセラ。

 高1の新入生は苦手の集合と数Aの場合の数や確率の章をやっていた。個別指導だから生徒たちからは質問が次々に飛んでくる。昨日のB帯(7時半から9時まで)の授業は、中2、高1×2、高2×3、高3が勉強していた。それぞれ英語があきれば数学にチェンジ、やっているモノは教科書あり、学校の宿題プリントあり、教科書準拠問題集あり、難易度の高い塾用問題集『SIRIUSシリーズ』ありと、学力と興味に合わせてバラバラ。
 高2男子二人は4時半ころから9時まで奥の大きな座卓で化学の勉強をしていた。教えあいをしているときは、声が授業の妨げになるので、奥の座卓が便利だ。そこでやる分には、声が邪魔にならない。1階にも3人分の自習スペースがある。他にも部屋と座卓があるから、生徒の7割が一度に来ても大丈夫だ。
 来週火曜日(9/3)から根室高校は前期期末テストがはじまるから、生徒たちはテスト範囲の消化に大わらわ。

 ふだんちゃんとやっている生徒は、テスト前1週間になってから慌てることがない。昨日もハラリのSapiensをやろうとしたから、「来週定期テストだから、今日はテスト勉強していいよ」と告げたが、いくぶん不満顔だった。(笑) ふだんちゃんとやっているから、塾では難易度の高いテクストをいつも通り読みたいということなのだろう。進研模試やZ会の模試の偏差値アップを目標にしているから、学校の定期テストは眼中にない。目標の医学部がもうすぐB判定に入りそうだ。ハラリのSapiensが100頁ほど消化し終われば、その領域に到達するだろう。
 難易度の高い問題集で勉強しているから、教科書準拠問題集レベルは「お子様ランチ」になっている。でも、なかにはシビアな問題もある。群数列の最後の問題でてこずったと言っていた。「この問題、答えを見たら負けだと思った」、チャレンジ精神というべきか負けん気が強いというべきか、自力で解いたのだそうだ。時々意地になるから、観察していて面白い。

 漸化式の問題は昨年は学校では扱わなかったが、今年はテスト範囲に入っている。基本タイプの2つのほかは、教科書には解説のないタイプの問題が載っていたから、ほとんどの生徒が理解できていないだろう。教科書には ①an+1=pan+q 型の漸化式しか解説が載っていない。
 漸化式には数Bの範囲内に限定しても、他にもタイプがある。②qの部分がnの一次式になっているタイプ、③2次式になっているタイプ、④q^nになっているタイプ、⑤分数式になっているタイプ(an+1=pan/ran+s)、 ⑥S=(anの式)、⑦連立漸化式、⑧隣接三項間漸化式、⑨対数の漸化式等がある。準拠問題集の72番には②の一次式のタイプと③の2次式のタイプと④累乗のタイプが載っている。

(高校で扱うのは有限数列だが、無限数列の世界はもっとたのしくなる。πだって、eだって、さまざまな無限級数であらわすことができる。オイラーの公式()では、指数関数が三角関数の和で書ける、実数の世界では見えてない数の調和が表層に浮き出てくる。オイラーの等式(e i π = − 1 {\displaystyle e^{i\pi }=-1} )では虚数単位とπとeが一つの等式のなかに調和しており、二つの無限小数が虚数単位の助けを借りて、-1に化ける。数の世界の美がここに現れている。シンプル、じつに美しい。高校生は受験なんか気にせず、高校の範囲を超えて興味の赴くままにどんどん勉強したらいい。)

 昨年の根室高校2年生は、数Bはベクトルをやってから数列だったので、数列は後期期末テストの範囲になっており、時間が足りなくなって漸化式の章を端折り、群数列までだった。
 数Bの教科書を見ると、テスト範囲は38頁までだ。あと半年あるが、「第3章確率分布と統計的な推測」はやらないのだろうから、空間ベクトルと平面ベクトルが108頁まで残りは70頁、ほぼ2倍の速度でやらないと教科書が終わらない計算になる。とても無理な速度だ。ここまで追い込まれたら、残り半年でカバーできる量ではない。さて、根室高校の数学担当の先生たち、どうするのだろう?

 「第1章第3節漸化式と数学的帰納法」の最後の項目である数学的帰納法もテスト範囲から除外されてる。現代数学にとって数学的帰納法は証明の柱だから、ここは外してほしくない。むしろ、メインテーマの一つに据えたいくらいだ。数理論理学の自然数の定義ではゼロを含むんだ。ペアノの自然数の公理というのが5つあるのだが、数学的帰納法と密接に関係している。
 ついでだから書いておく。

①公理1:ゼロは自然数である
②公理2:任意の自然数の後者は、また自然数である。
③公理3:0はどの自然数の後者でもない。
④公理4:自然数xの後者と自然数yの後者が一致しているなら、x=yである。
公理5ある性質が0に対して成立し、その上、その性質をもつ任意の自然数の、その後者に対しても成立するなら、その性質はすべての自然数について成立する
 『証明と論理に強くなる~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』小島寛之著 技術評論社2017年刊

 公理5は数学的帰納法そのもの。
 教科書や受験参考書だけでは高校数学の意味は理解できそうもないね。
  経済学部へ進学して、将来ノーベル経済学賞をとりたい人は、ユークリッド『原論』とこの小島さんの『証明と論理に強くなる』の2冊は必読書です。まったく新しい経済学が、ここから生まれます。ebisuが言うのですから、ほんとうです。(笑)

 1年生のほうをみると、数Aは条件付確率をテスト範囲から除いた。昨年はテスト範囲になっていたが、今年は昨日までのところだが、教えていない。条件付確率は生徒たちの理解がとっても悪い。意味がつかめたら、条件付確率の公式なんて不要なのだが、そこらあたりを理解できる生徒は普通科では5%、120人中5~6人くらいなもの。

 なんだか、昨年よりも授業速度が落ちているように感じる。生徒たちの学力低下が著しいのでしかたがないと言えば、どこまでも後退することになりかねない。難易度の低い問題と緩慢な授業、イージーな方へ流れたら、30年後に根室を担う30歳代の層の学力、知力はどうなるのだろう?すでに市政も民間企業も問題山積みだが崩せる人材がいない。現実を直視していないだけで、根室市の人材の枯渇はずっと以前からはじまっている。
 
 8/22から来ている生徒が、金曜日の授業が終わった後で、「先生、土日はやっていないのですか?」と微笑みながら訊いた、やる気満々、めんこいね、この生徒は、毎日12時ころまでしっかり勉強しているから、毎回質問がたくさんある。1か月もしたら、勉強の仕方がわかってくるし、理解が進むので、質問の回数はどんどん減っていく。最初は手間を一杯掛けなきゃいけない。この次のテストのときは、期待に応えて土曜日はやらなきゃいけないかな。(笑)

 ニムオロ塾は水・土・日がお休み、体力の関係で週4日がいまのわたしにはちょうどいい。
 水曜日はテーマを設けて、補講に充てることもある。いま、英語が苦手な高2対象に、高3の英語教科書を使った短期集中特訓を10回やっている。無料の特訓だから、参加はやる気のある希望者だけ。これが終われば、英作文の特訓を数回やることになる。苦手な科目は背中を押してやらないと、自力では歩き出せない。しばらく押してやれば、自力で歩くようになる。塾先生はなんだか理学療法士に似ている仕事だ。
 英語の短期トレーニング授業は今週と来週はテスト期間なのでお休み。

<余談:群数列の問題>
 学力トップの生徒がてこずったと言っていた教科書準拠問題集「WIDE数ⅡB」の問題を紹介する。数学が得意だった人は、久しぶりにやってみたらいい。

[69]数列1/1, 1/2, 3/2, 1/3, 3/3, 5/3, 1/4, 3/4, 5/4, 7/4, 1/5,・・・について、次の問いに答えよ。
①15/16は、この数列の第何項か。
②この数列の52項は何か。
③初項から第200項までの和を求めよ。

 高2の生徒二人、HとRからこの群数列の問題で質問があったので解説した。わかったようでも1時間後にすらすらできるとは限らない、家に帰ってから、2回やっておけば試験は大丈夫だろう。数列の基本要素が詰まった良問である。
 内容をちゃんと理解したら、①16/18、②60項、③初項から230項までの和、という風に数字を変えてやってみたらいい。こうしておけば数字を変えて問題が出題されても時間内に対応できる。
 そういう勉強のしかたをしてもらいたい。ふだんの勉強にほんのちょっと工夫して手間暇かけたら、内容の理解がまるで違ってくる。そういうことを生徒たちの疑問に応えながら伝えたい
。こういうことをわたしは「拡張」と名付けている。新しい概念や概念の拡張も高校数学ではだいじことだ。具体例を挙げると、微分・積分、実数⇒複素数、直交座標⇒斜向座標(ベクトル)など。

 答え、①第128項 ②13/10 ③195


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