数日前に昨年農業大学校へ進学した生徒から電話連絡があって、9月に国立帯広畜産大学の編入試験を受けるという。英語長文の読解ができないと過去問を携えて7年通ったニムオロ塾へ来た。220kmの距離を運転してきた意気ごみに気圧(けお)されて、休日の土曜を返上して過去問を利用して三時間みっちり長文読解の特訓をした。精読と速読の二通りの読み方のコツを伝授したから、あとは自分でトレーニングしたらいい。
 本を読む速度が人並み以上で中高と小説の類を濫読していた。英語の教科書はつまらないからやる気が出ないと言い、好きな科目の勉強しかしない「偏食癖」の強い生徒だったが、本を読むことは大好きなので、英語で書かれた小説を選ばせてみた。しかし2度とも挫折した。そういうわがままなところがあるが、英語以外は出来の良かった生徒だから、暇を見つけて往復450㎞を運転して数回来ればなんとか間に合わせるだろう。この次はお土産いらないよ。(笑)
  合格できたら、大学院は同じbio関係で医学の先端分野(真菌)の研究をしている九州大学のある研究室の教授を紹介してあげる。興味があったらこれから2年半の間に実力を蓄えて門を叩いてみたらいい。その教授の研究内容は弊ブログ#3490で紹介している。

  過去問を8年分ほどざっと見たら長文問題だった。年度の古い過去問には簡単な英作文が載っていたが、最近のものは長文問題のみ。内容は結構楽しめるものが多い。一番近い年度の問題は携帯電話からでる電磁波(radiation)が体や細胞に与える影響に関する研究を取り上げたものだった。
 問題を8年分ほど見たが、古いも年度が新しいものほど英文の分量が多く、問題のレベルは年々上がっているようだが、英検2級程度の力があれば大丈夫だ。
 メスとオスそれぞれ90匹ずつの電磁波被曝実験群と同じ数のコントロール群(電磁波による被曝なしの群)の比較対照実験である。ラットでの研究では脳腫瘍や心臓の組織に癌が発生する。脳腫瘍は2%、心臓の組織ダメージは2-6%あるという。それがそのまま人間に当てはまるかどうかは定かではない。ラットの数も少ないし、期間も短い。
 いま世界中に十数億台の携帯電話が普及しているから、壮大な人体実験期間中ということ。30年後には40歳代、50歳代で世界中で癌が急増なんてことになるかもしれない。

  電磁波の被曝に関する動詞は三種類使われていた。dose、exposure、それともう一つあった。brain tumorは脳腫瘍、tumorは要するにcanserと同義語である。脳に関しては「脳癌」とは言わない。重要な用語は別の単語で言い換えられるので、要注意だ。
 cell(細胞)とかnerve tissue(神経組織)という用語も覚えておくべきだ。developは病気に関する目的語が続いていたら「発症する」である。動詞の訳語は目的語とセットで考えると見当がつく。
  高校時代に物理をとっていなかったので、 radio frequency (RF:無線通信で使われる周波数帯域、ラジオやテレビやスマホで使用している周波数)の意味がつかめていなかった。高校教科書程度の物理知識はbio関係の英文を読む場合でも必須である。医学の先端分野は物理学と工学と生物学の垣根がなくなっている。
 帯広畜産大学はbio関係の学校、その編入試験英語問題なのだから、oncology(腫瘍学)、oncogene(腫瘍遺伝子)などの語彙も知っておいたほうがよい。普段から英字新聞の医療・健康・食品・感染症などに関する記事にも目を通しておきたい。根室のようなところではキオスクで英字新聞が販売されていないから、ネットで検索するしかないが、これらの英文記事は容易に見つけられるだろう。スマホやパソコンがあれば学習材料には事欠かない。

 いまではスマホの電話機能を使う人は少ないから、脳腫瘍は可能性が低いかもしれない。携帯電話を耳に当てて話をすると、携帯から電磁波が発信される。脳に近いほど電磁波のエネルギーも大きくなる、耳は脳に近いからイヤホンやヘッドフォンを使うほうがいいとはWHOのスマホ使用に関するガイドラインに書いてあることだ。


*携帯電話機の比吸収率(SAR)について F-05J
https://www.fmworld.net/product/phone/sar/f-05j/
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この機種F-05Jの携帯電話機は、国が定めた電波の人体吸収に関する
技術基準および電波防護の国際ガイドラインに適合しています
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< 余談 : 回り道 >
 やりたいと思った時でいい、ときに人生は回り道が必要なことがある。迂回することで損もあるが、それに見合うだけ得るものもある、人生はうまくできている。あきらめちゃダメ、目標が定まったら身近にいる大人の助けも借りたらいい。

< 放射能汚染地域で起きた山林火災灰を使用した実験提案 >
 3月31日に福島県伊達市で起きた山林火災で生じた灰には高濃度の放射生物質が含まれていた。風で飛べば放射能感受性の高い子どもたちが呼吸によって肺に吸い込む、内部被曝である。肺に取り込まれた放射生物室は放射能を出し続ける。同じ環境を作ってラット1000匹を被曝群とコントロール群に分けて数世代にわたって実験したらどのような結果が出るのだろう、想像するだに恐ろしい。パーセントで二ケタの様々な癌が生ずるのではないか?
*https://blogs.yahoo.co.jp/akaruria/35295907.html

**#3490 勉強と研究はどうのように違うか:生物物理化学の先端 Jan. 6, 2016

http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-01-05

< 余談-2 :さむい >
  午前中は雨が上がっていたのでMTB(マウンテンバイク)でサイクリング9km、速度が大きくなると風が冷たい。冬用グローブをつけて走った。
   11時の気象データ: 気温6.7度、北北東の風6.0m/s
  今日の根室は冷蔵庫の中の寒さ。




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Molecular Biology of the Cell



  • 作者: Bruce Alberts

  • 出版社/メーカー: Garland Science

  • 発売日: 2014/12/02

  • メディア: ペーパーバック






  1990年前後のことだが、国内最大手臨床検査会社SRLの八王子ラボで学術開発本部で仕事をしていた時に、本部内の開発部の仕事、製薬メーカとの検査試薬共同開発案件を2件担当していた。必要な先端の学術論文を読むために、この本の旧版(第2版1989年)を辞書代わりに使っていた。
 学術開発本部が管理していた図書室には、NATURE や SCIENCES、ONCOGENE など20種類ほど定期購読雑誌が揃っていた。これらの科学・医学専門雑誌の記事を読むと、ステッドマン医学用語辞典には載っていない専門用語が出てくるので、調べる必要があった。
 数学と英文読解スキルは先端分野で仕事をするときには必須の基礎技能である。翻訳出版には時間がかかるので、仕事をしている時に翻訳書はまだ出版されていないケースが多い。システム開発関係の専門書や会計システム関係の専門書もそうだった。

  すでに翻訳書が出ているから、興味のある学生と知的好奇心の旺盛な大人のためにこちらも紹介しておく。





細胞の分子生物学



  • 作者: Bruce Alberts

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Essential細胞生物学(原書第4版)



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