四月に根室西高校と根室高校が統合された。根室高校普通科の生徒たちの学力はどうなっただろう?
 数学の習熟度別振り分けテスト結果から判断してみたい。

クラス別平均点
 Aクラス           72点
 B~Dクラス 41-43点

  問題の難易度はとても低い。合格書類と一緒に渡されたスタディサポートの数学の問題は30ぺージほどあったはずだが、それを一通りやっていたら80点以上取れる代物。一番最後の問題は、高さ24cm、底面の半径10cmの円錐の表面積を求める問題だった。問題集そのまま。




  Aクラスは「特進コース」であるが、それぞれの事情で特進コースを辞退した生徒数人いる。数学のクラス分けは、合宿研修時のテストと入試の点数から振り分けがなされ、次のようになった。

 ガンマ1       20人
 ガンマ2       15人
 ベータ1       40人
 ベータ2       35人
 アルファ1    25人
 アルファ2    20人
    合計       155人

  特進コースのA組がガンマクラス、BCD組はその下に位置づけられている。

 数年前までは普通科全体の平均点が70-75点であった。平均点から判断すると、A組が数年前の普通科全体の学力分布とほぼ同じと言えそうである。ベータ2以下は根室西高の学力レベルと判断して間違いがない。
 根室高校普通科は今年の新入生から数学の教科書を変更した。2年生と3年生は数研出版の教科書で、新1年生は東京書籍「数1 Standard」とその準拠問題集を使用している。教科書会社は学力レベル別に数種類の教科書とそれに対応する問題集を制作しており、今回採用された教科書はわかりやすく編集されている。準拠問題集の難易度レベルは格段に低下した。最初の因数分解の箇所だけチェックしたが、難易度の高い問題は全く載っていない。中3の生徒に「数1 シリウス」をやらせているが、問題の難易度が比較にならない。
 準拠問題集を数回繰り返しても、進研模試の問題のほとんど(80%)が解けないだろう。

 ベータ1クラスの生徒によれば、問題集をもう一冊購入することに決まったらしい。難易度が低すぎるので、学校ではもう少し難易度の高い問題集で補完するようだ。
 学力差が大きいので、同じ教科書や同じ問題集を使うのは無理だと弊ブログで何度も書いてきたが、高校問題検討委員会はそういう学力差を無視して統合後の高校の姿を決めてしまった。具体的なデータに基づかぬ議論は誤りを犯すと警告したが無駄だった。

 中学校の学力テストで、五科目500点満点で400点を超える生徒が市街化地域の3校で十年前には、それぞれ十数人いた。いま、各校では学年に一人のところが増えている。この数年間に学力トップ層が激減しているのである。学校の授業は高学力層にまるで対応できていない。授業のレベルは低いところに照準を合わせて、高学力層がスポイルされている。この状況は釧路も同じで、釧路湖陵高校の学力が低下している原因の一つと、釧路の学校教育行政が考えている。

 4月13日に中学校で学力テストが行われた。C中学校の数学の平均点は16点だが、前年4月の同じテストは19点だった。これは釧路市内の14中学校の最底辺校(19点)よりも低い。60点満点で31点以上は59人中5名のみ。普通に勉強していれば中3学力テストの数学は、学力が低くても30点以上とれるはず。4月13日実施の学力テストでC中は10点以下が59人中23人、20点以下は40人(67.8%)である。B中も61.8%が20点以下である。この学力層の生徒たちは昨年まで根室高校普通科で採用されていた問題集は消化できないし、授業内容も理解不能である。
 高学力層は60点満点で51点以上だが、C中学校では学年トップのみ、B中学校はゼロという情けない状況だ。60点満点の学力テストで30点以上の生徒の振り分けテストの平均点は80点を超えただろう。

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新高校1年生の生徒たちの中3の時の数学の平均点を、4月学力テスト・総合ABCの順に並べる。
 光洋中学校 23.9⇒19.2⇒18.4⇒17.6
 柏陵中学校 23.1⇒19.7⇒20.6⇒17.7
 啓雲中学校  19  ⇒  16 ⇒ 16 ⇒ 16

 どの中学校もこの数年間の学力低下が著しいが、釧路の14中学校の最低レベルかそれ以下というのが実態である。釧路の平均値ぐらいはクリアしてもらいたい。5年ほど前はそれくらいだったのだから。
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 同じ教科書でやるのは無理だから、普通科は2クラスか1クラスで十分で、2-3クラスは科を変えるべきだ。統合によって学力差が拡大してしまったので、普通科に準じた科を併設するしかないのである。
 このままでは、根室高校普通科が「学力崩壊」を起こす。教育行政と学校関係者は、根室の子供たちと町の未来のために、学力データに基づいたあるべき姿をもう一度議論すべきだ。



 地元の経済団体は教育問題にもっと発言したほうがいよ。あなたたちが経営する企業の未来に直接かかわる問題だから。

<余談>
 問題なのは数学よりも国語かもしれない。読書習慣のない生徒が増えている、読書習慣があってもアニメのノベライズもの程度の本にとどまっているものが多い。そういう子供たちが高校現代国語に載っている文章を理解すののは甚だしく困難である。語彙力が貧弱だから、耳で聞いても頭の中で漢字に変換できない。それができなければ、授業は外国語でなされているのと変わらない。数学も英語も世界史も理解科目も授業は日本語でなされている。普通科の1/4は日本語語彙力が著しく劣り、授業内容が理解できないだろう。C中学校社会担当のN先生がやっていたように、語彙解説をしながら授業をせざるを得なくなる。根室高校の先生たちの戸惑いは始まったばかりだ。


*#1475 お迎えテスト :〔人災〕全道14支庁管内最低の学力はこうして造られる Apr. 14, 2011 

http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-04-14