1. < 宿題と仕事の責任 >
2. < 根室の中学生の数学の学力 >
3. < 変わった教え方 >

  < 余談-1:配慮の足りない教え方の事例 >
   < 余談-2:投稿欄から紹介 >
  < 余談-3:本の紹介>
**********************************

 雪が降っています。真夜中0時で積雪16cmです。北風に乗って雪が流れています。気温は-0.2度、北東の風10.4m/sです。明日午後7時まで吹雪くようですから、積雪量は40cmくらいかもしれません。湿って重い雪です。

1. < 宿題と仕事の責任 >
 根室市内の中学校と高校は21日が終業式で、今日から冬休みに入りました。
 数学の宿題プリントが中高ともに渡されています。高校生は量が少ない、自分で自主的にやるのが当たり前だから、当然です。
 中学生はそこそこ量がありました。宿題を出さないと勉強しないと思っているようですね。そういう生徒が多いことは事実です。宿題がないと、スマホでユーチューブの音楽を聴いたり、ゲームをしたり、ラインをやったり、ツィッターでつぶやいたり、デジタル作画ソフトでお絵かきしたりといくらでも時間がつぶせます。そうはさせじと宿題を出すのでしょう。
 でも、いつまでも宿題を出すと、いつまでたっても自らやるようにはなりません。子どもから大人への成長は、宿題を出されなくても自ら計画を立てて勉強できるようになることも含まれていませんか?そういう機会がほとんどの中学生にないとしたら、深刻な問題ですね。スマホの普及で大人にならないまま、高校を卒業する若者が激増しています。中高の時代にやらなければならないことをすっ飛ばして、スマホに振り回される中高生が増えているのです。

 ある中学校の3年生の数学の宿題を見ました。プリントはA問題とB問題に分かれており、A問題プリントには解答がついていましたがB問題には解答がついていませんでした。
 6割を超える生徒が60点満点の学力テストで20点以下ですから、B問題が文章題だったら、独力で半分やれる生徒は10%を切ります。
 わたしはこういう宿題の出し方が理解できません。生徒の6割が1/3しか正答できなければ、休みを返上して教えるのが仕事の責任と考えるからです。
 おおよそ1/3は分数や少数の四則演算ができないことはテストの採点からわかっているはずですが、どうして冬休みを利用して教えてやらないのでしょう?
 生徒は冬休みでも、教員は休みではなく、毎日出勤しているはずですから、手間を惜しまなければいくらでも冬休みの間の補習は可能です。

 3年生の担任をしている先生は、5教科の教材を作って冬季補習を生徒に宣言しています。EXCELで作成した社会科のプリントがなかなか優れものでした。冬休み明けの学力アップに寄与するでしょう。3年生は学年末試験と模試が冬休み明けに立て続けにあります。
 2年生の理科の先生は、理科の計算問題ができない生徒たちに「算数クリニック」を予定しているようです。それが冬休みに実施されるのか、冬休みが終わってから実施されるのかは知りませんが、意欲的ですね。仕事に対する責任感と情熱がひしひしと伝わってきます。
 小数の分数計算トレーニングをやらなければ、理科の計算問題を授業で教えても、生徒たちの大半がそれを理解できないし、立式ができても、6割の生徒が計算できないか計算でまごつく姿を見たからでしょう。
 こういう現実を踏まえた対応は生徒も保護者も地域住民の皆さんも地元企業の経営者たちも歓迎するでしょう。根室の未来は子どもたちの教育にかかっています。

2. < 根室の中学生の数学の学力 >
 釧路市と釧路町の14中学校の学力テスト総合Bの科目別平均点一覧表が公表されています。14校で数学の点数が一番低かったのは、鳥取西中と景雲中でした。平均点は19.7点です。あとは20点以上です。URLを書いておくのでクリックしてご覧ください。
 わが町の中学校の学力テスト総合Bの数学の平均点は、啓雲中が16点、柏陵中が20.6点でした。光洋中学校の平均点は知りません。根室は釧路市の中学校の最底辺と同じレベルで、じつに厳しい結果です。有効な手立てを講じて、自分が教えている生徒たちの学力をアップして、平均点を上げましょう。
 
-------------------------------------
  釧路市と釧路町の中学校14校の学力テスト総合Bの集計が出ています。平均点が20点以下の学校は鳥取西中学校と景雲中学校の2校(19.7点)のみです。あとの12校は20点を超えています。数学に関しては根室市内の3中学校は釧路の最底辺の学校並(B中)かそれよりもさらに低いことがわかります。学力テストの平均点は数学を担当している先生たちの勤務評定とも言われています。
(12/21 追記)
*釧路教育活性化会議
http://www.kitamon.com/cpek/datas/1610b.shtml
------------------------------------


3. < 変わった教え方 >
 数学の素因数分解の指導の仕方で、変わったやり方で指導している例があります。108の素因数分解で説明してみます。
              3
        ×
 108⇒6⇒2
      ×   
    18⇒2
             ×
       9⇒3
         × 
          3

  108=3×2×2×3×3=2^2×3^3

 元の数字を2項の積に分解します、次々に2項の積に分解していくと最後は素数の積になります。「さくらんぼ方式」と称しています。
  二つに分解するところがひとつの枝から分かれて二つ並んださくらんぼに似ているのでそういう名前がついたのでしょう。どなたの作かわかりませんが、面白いやりかたであることは認めます。
 たぶんこんな教え方(変法)をするのは、中高時代に数学が苦手だった人でしょう。こういう指導をする先生は他にも基本を外した指導を無意識にしています。これはいくつか気になったもののひとつ*(<余談-1>で取り上げます)です。

 「普通の教え方」を紹介します。

  2)108
    2) 54
    3) 27
    3) 9
        3

  108=2^2×3^3

 素数の小さいもので順に割っていくのが普通のやり方です。2、3、5、7、11、13、17、・・・、と素数を小さい順から割り算の除数に使っていきます。割り算を機械的に繰り返すことで、素因数が小さい順にちゃんと並びます。このように方法にはそれなりに意味があります。整理整頓されていて気持ちがいいでしょ?
 二つ方法があったら、シンプルで美しい方が断然いいのです。これが数学の価値観です。さまざまな問題を解くことや指導を通して、そういう(シンプルで美しいものが善い)ことを学ぶのが数学という学問です。

 生徒が「さくらんぼ方式」という変法に慣れてしまえば、治すのがたいへんです。癖がついてしまって標準方式が覚えられない生徒が続出します。並びも小汚いし美しくありません。
 中学校では基本に忠実に教えるべきです。そして繰り返しやらせて、基本技をしっかり身につけるべきです。そうすると高校数学に自然につながります。

 高校数学でも素因数分解は出てきますが、もちろん高校の先生は「さくらんぼ方式」で板書はしません。中高の数学指導の継続性ということを考慮に入れて仕事しましょう



< 余談-1:配慮の足りない教え方の事例 >
---------------------------------------------
*たとえば、この先生は乗法公式の1番目

[(a+b)^2=a^2+2ab+b^2]

を「2乗、2倍、2乗」と教えていますが、生徒たちが混乱を起こすもとになっています。生徒たちは第1項を2倍してしまいます。「(x+2)^2」という問題のときに真ん中の項を「2x」としてしまう生徒が続出します。ただ「2倍」では何を2倍するのかあいまいです。ですが、展開式の真ん中の項(第2項)は第1項の2倍と理解してもこの式なら整合性があります。だから、そういう誤解を防ぐために、わたしは真ん中の項を「中身を掛けて2倍」と教えています。
 あいまいな教え方をすると、生徒の64%が学力テストで20点以下ですから、少なからぬ生徒が誤解してしまいます。こういうことが学年全体の平均点を下げる原因のひとつになります。学校というシステムのまずいところは、こういう教え方をしていてもチェックがなされないということ。学校管理職はノータッチ。市教委には指導主事がいますが、こういうことにはまったく機能していません。無理なんでしょうね。ここには授業の品質管理は誰がするのかという根本的な問題があります
 話を元に戻しますが、なぜ「中身を掛けて2倍」なのかも、数字をいくつか入れ替えて解説しておけば、意味と一緒に憶えてくれます。こういう大事なところを手抜きしてはいけません。何が大事(エッセンシャル)で何がどうでもよい(トリビアルな)ことなのか見分けがつかないのだと思います。教員には担当教科に関わる専門知識と幅の広い教養が必要です。現役の間は研鑽を積みましょう。
 去年よりは今年、今年よりは来年、教える側も少しずつ成長すればいいのですから、それがプロフェッショナルだとわたしは思います。
(生徒に影響が出ているので精進の速度をもっとアップすべきです。管理職に「報連相」してみるのもいいかもしれません。ここまでブログで書かなければならないのは、学校管理職のマネジメントにも小さくはない問題があるからです。そんなにむずかしいですか?目配りがたりません。)
---------------------------------------------


********************************
 さて、明日は雪掻きに精を出します。雪はやまないようですが、午前中に1回、午後またやります。
 中高生の皆さん、親に言われなくても、雪掻きを手伝いましょう。
 (積雪は24cmでした、ebisuはゆっくり2時間かけて除雪しました)
********************************

*#3485 数学の学力別クラス編成は機能しているか? Dec. 20, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-19

 #3480 宿題:「隠れたカリキュラム」  Dec. 15, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14

      70%       20%      
 


  < 余談-2:投稿欄から紹介 >
 ハンドルネーム amandaさんは女子大数学科を卒業した方です。大学へ入学してから数学は苦手でしたと言ってますが、数学科の履修単位には数学の諸分野がひろく含まれています。「数学の教養」という点で、ebisuは敬意を表したいと思います。なお、引用は抜粋です。
========================
素因数分解=自然数を素数の積の形にあらわすこと
(2以上の自然数はすべて素数の積で表せる)
なので、一番小さい素数(一番簡単な2)から割り算を試していくのは自然な流れだと思っていましたが、その部分すっぽり抜けてたのかな?

by amanda (2016-12-23 15:42) 
========================


< 余談-3:本の紹介>
 人間の知的活動の土台は国語と数学です。この本を読めば素数(数論)に興味がわきます。受験数学なんて実に狭い世界なんです。そこから広い数学の世界へ羽ばたくために中高生に読んでもらいたい本です。この本が数字に秘められた神秘の世界へ通じる扉の役割を果たしてくれるでしょう。
 数論の専門書を読むのはたいへんです。高校数学が得意ぐらいではとても歯が立たない分野です。この辺りから数学のセンスが必要になります。
 『フェルマーの最終定理』も数論の面白い本ですが、こちらは門外漢でも楽しめます。
  フェルマーの最終定理とは、3以上の自然数について、次の方程式の解が存在しないというものです。

   x^n+y^n=z^n

 シンプル極まりない方程式でしょう。
  「n=2」のときは三平方の定理でおなじみです。「5^2=3^2+4^2」、「13^2=5^2+12^2」がすぐに思い浮かぶでしょう。ところが「n=3」になったとたんに見つからなくなります。見つからないのは「n=3」だけなのか、nが特別な数の場合に解のあるケースがひとつくらいあるのではないか。

  この単純な方程式に解があるのかないのかということを証明するのに360年かかっています。栄誉を手にしたのはアンドリュー・ワイルズという数学者です。
 この本を読んだ塾生はいままで一人だけ。中学生のときに学力テストで英語と数学の両方同時に満点の生徒でした。高校1年生の11月に日商簿記2級(全商簿記1級相当)に合格しています(簿記は特殊数学です)。できのよい生徒でした。去年大学を卒業したはずです。

世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 藤原 正彦・小川洋子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/04/06
  • メディア: 新書