普段の学力テストデータを見ていると、気がつくことがあります。そのひとつを紹介してみます。
 3人の生徒が授業中に普通の音量で私語するだけで、先生の説明がその瞬間に聞こえなくなります。そうすると脳のワーキングメモリー内に溜め込まれた情報に脈絡がつかなくなります。その直前に話していたことの意味がつかめなくなります。3人いると、それぞれがそれぞれの発する声に反応するので、もう先生の制止は効きません、授業はワヤ(方言:ひどい状態)になります。
 「授業参観に行ってみたけど、(一部の)授業がひどい状態で、これではこどもの成績が下がってしまう」と心配するお母さんがいます。根室は授業参観する保護者が少ない、ゼロのクラスもあるようで、いても数人。わたしは東京で娘が中学生だったときに一度だけ授業参観したことがありますが、どの教室も後ろは20人ほどの保護者で一杯でした。保護者の半数は授業参観に来ていました。根室は教育に関心がある保護者が極端に少ない地域だと思います。大人が反省しなければならない点です。

(保護者だけでなく大人たちが教育に関心が薄いのが根室の特徴です。教育は町の未来を左右する重要なことなのに、経済諸団体も教育に関する発言がほとんどありません。批判や改善がよほど嫌いなようです。高学力層のほとんどが大学へ進学すると戻ってこないことと関係がありそうです。釧路を見るとずいぶん戻ってきているのですが、根室はほとんど戻ってこない。釧路は市役所にも地元出身の大卒がたくさんいます。部長連中はそうした人材が担っています。根室市役所はどうでしょう?
 大学進学した根室っ子が戻ってこないのは、戻ってきたくなるような魅力的な地元企業が少ないから、地元企業の経営改善の波が起きない限り、根室は衰退し続けます。地元企業経営者の大半の人々にとって、経営改善を言われるのは嫌なことなのでしょう。自己批判そのものですから。やらなきゃこれから25年ほどで3-5割が消えていきます。)

 団塊世代のわたしたちのときは、授業参観の時には悪がきだって先生に遠慮して静かにしたものです。いまは、傍若無人、そういう配慮すらできない生徒が増えているんです。殴れば、「暴力を振るった」「虐待だ」と騒ぐでしょう。度が過ぎると昔の先生は殴りました、やりすぎたら殴られて当然と、同級生も親も思っていました。「今日、先生に殴られた」なんて親に言おうものなら、「お前何か悪い子としたんだろう」といきなり拳骨を張る親も普通にいました。自分の子どもが先生に殴られて親がクレームを入れるなんて考えられませんでしたね。それほど学校の先生への信頼が篤かった。
 ところがいまはどんなに度が過ぎていても、先生たちは殴りません、殴れない、安全な殴り方も知らない。だから生徒はそれを見透かしてますます増長するんです。すでに先生たちだけではどうしようもないクラスが、市街化地域の学校にはいくつもあるようです。

 実は普段の学力テストの平均点や点数の分布から、その学年の授業中の生徒たちの様子がおおよその見分けられます。だから根室市教委にふだんの学力テストデータをモニターしろと主張しています。データを見ればわかります、今日の本題はそこです。
 1・2年生の学力テストデータで、五科目平均点が250点のラインを割ると、学力崩壊状態へ突入し始めたと考えてよろしい。230点以下になったら、学級崩壊による学力崩壊アリと判定して95%の確率で正解です
 中3年生は五科目300点満点の学力テストですが、1・2年生のときの学力テストデータを見ればよろしい。

 平均点が230点を切ったら、もう教科担当の先生たちの手には負えません。学校として保護者や地域の協力をえて対策を打たないとその学年、そのクラスの学力崩壊が進みます。
 気の毒なのは、勉強したい生徒たちです。うるさくて先生の声がしばしば聞こえなくなり、授業中の先生の説明が理解できない。その結果学力テストの五科目平均点が下がります。その学年はついに卒業するまで学力テストの五科目平均点が低いままにとどまるのが常です。何度も何度も繰り返されています。

 数学授業の話ですが、予習をしようにも、プリント主体の授業で教科書のどこをやっているのかさっぱりわからない、そういう学校がほんとうにあります。
 「いまどこをやっているの」と尋ねて数学の教科書を渡しても、やっているところを開けない生徒がいます。それで気がつきます、教科書を使わずにプリントだけで授業をしているのだと。プリントはあくまでも授業の補助のはずですが、逆転が起きています。校長先生は巡視して廊下から見るだけでわかるはずですからチェックしてください。プリント授業が行き過ぎれば学力崩壊が起きて当然です、生徒たちは教科書を使って予習ができません有効な学力アップの手段を奪われています。片手をもがれて海で泳ぐようなもの
 全員が教科書を読むだけでも予習してきたら、五科目平均点は100点以上アップできますよ。それほど教科書を読んでくるという予習は学力向上に効果が大きいのです。東京の子どもたちの1/4は小学4年生から私立有名中学受験のために予習方式の学習に切り替えます。進学塾へ通いながらちゃんと自学自習の構えができます。根室の子どもたちが予習を始めるのはほとんどが高校生になってからです。これでは学力が伸びずに大学受験に決定的な遅れをとります。地元に就職する人材の学力レベルが下がるのですから、長期的には地元企業への影響が大きい。

 根室に戻って塾を開いたのは、2002年の12月でした。そのときに中1の生徒が来ました。英語が10点台、数学が50点を少し切っていました。4月から予習方式に切り替えたら、1学期の期末テストで数学がクラストップになりました。英語はそれよりも遅れて2学期の期末テストのころにクラストップに。それ以降は数学も英語もクラストップを何度もとっていました。その生徒が2年生の1学期の終わりにこんなことを言ってました。
「先生、予習方式っていいね、おれ、学校の授業がよくわかるんだ、気持ちいいよ、授業が楽しくなっちゃった」
 変わってしまったのです。つらい勉強が楽しい勉強に。塾で予習してしまっているので、学校の授業は復習に変わったのです。だから大事なポイントをわかって聞くようになったのです。そこだけ集中して聞けばいいのです。予習方式は効果が大きい。C中学校の生徒でした。ふつうの学力があれば誰だって根室の中学校でなら得意科目でクラストップに躍り出る可能性を秘めています。

 グッドニュースを書きます。C中学校のある先生が教科書を読むだけでもいいから予習しておいでと生徒たちに伝えています。その先生が担任をしている教室には黒板に「授業中の私語を禁ずる」と書いた紙が貼ってありました。フリー参観のときに目に留まったのです、大事なポイントに気がついて、しっかりやりはじめた先生がいるとホッとしました。教頭先生や校長先生はあの張り紙に気がついているのかな?あれはサイン(sign:兆候)ですから、見落としていないでしょう。教室にいる生徒の半数以上が迷惑しているという徴(しるし)です。そしてそのクラスの平均点が下がるという実害が出てしまっています。学力テスト400点以上が一人だけ(B中も一人だけでした、A中はデータがありません)、2位以下の点数が1年生の前半に比べて大幅に下がってしまいました。授業中の私語が多いとクラスの平均点下落にじわっと効いてしまいます。11月の学力テストデータの分布図(棒グラフ)を見ると、1位が470点超、2位は360点台です。こういうデータをほとんど見たことがありません。ふるさとに戻って塾を開いて、過去14年間こういうデータはありませんでした。400点以上が1人なんてありえません。成績上位層がわずか1年間で5人ほど成績中位層に滑り落ちてしまっています。

 現実には授業に関しては具体的な手が打たれていません。騒がしい一部の生徒たちは飽くことなく騒ぎます。聞いていたって理解できないのですから、授業が楽しいはずがないのです。他の人に迷惑がかかっていようが、傍若無人、わがままで辛抱ができません。授業が理解できないことも原因のひとつに数えていいでしょう。だから、低学力の生徒たちへの対策が重要なのです。たとえば、百点満点の学力テストで30点以下が二つあったら、3ヶ月間部活停止というルールを決めたらいい家でも学校でも甘やかしすぎで辛抱できない生徒が増えているので、基準を明示しして厳しくあるべきです保護者の了解をとらないとできないことなので、PTAのほうでも学校に協力してあげたらどうですか?

 授業参観に行ったり、子供から普段の授業の様子を聞いて危機感をもっている保護者が増えていますよ。もっと危機感が強いのは、勉強したい生徒たちでしょう。そういう生徒が少なくありませんが、大人たちがこうした生徒たちの要望に応えていません。大人たちとは、学校の先生、学校管理職、保護者、根室市教委、根室市議会文教厚生常任委員会の面々です

 B中学校で、学級崩壊状態が起きはじめたのは、9年ほど前のことでした。300点満点の中3の学力テストで平均点が30点ほど下がりました。びっくりしましたね、数人の生徒が立ち歩いたり私語したりして起きた授業崩壊の威力の大きさに。2年生になるときに市街化地域の3校ではクラス替えを行いますが、3人が2クラスにばらけ、増殖してしまったのです。その学年の平均点は3年間低いままでした。教科担当の先生も、教頭先生も校長先生も、なす術(すべ)がなかったのです。ふだんの学力テストデータをモニターしていない根室市教委はそうした事実すら知る由もありません。市議会文教厚生常任委員会の市議たちも同様でした
 どこにも歯止めがないので、その後は頻繁にそういう学年が現れるようになりましたB中2年生の11月9日の学力テストの平均点は246点で、1年生は225点です。C中2年生は223点でした。ほかの学年も調べたらよいと思います。どういう状態か簡単に見分けられます。問題のある学年はさらにクラス別に平均点を比較してください。問題がどこに生じているのかわかります。
 市街化地域の3校のうち2校がこういう有様ですから、来年度と再来年度の全国一斉学力テストの根室市の平均正答率は惨憺たる結果になります。普段の学力テストデータをモニターしていれば、2年前から結果の推測ができます、具体的な手が打てるんです。

  どの学校もクラス別の平均点と分布図を公表していませんが、クラス別データをみれば、2クラスのうちのどちらに問題が生じているのか見分けがつきます。両方に問題ありというケースもあるでしょう。学校管理職はテータを読み慣れてください。校長先生から要請があれば、実際のデータを使って、統計加工の仕方や読み方を教えてあげます。5年間ほど経営データの分析とそれに基づく経営改善をやったことがあるので、ebisuはデータの扱いに慣れています。ebisu個人に協力依頼すれば根室市教委ににらまれるというようなことがあるなら、北海道教育文化研究所の方へメールでご依頼ください、「根室常駐」の研究所副所長が対応します。オフィシャルなルートですから、根室市教委や教育長は口出しできません。(笑)

<根室市教委、そして指導主事、教育長さんへ>
 勉強したい生徒たちが迷惑しているのを放置していたら、中学生の学力崩壊だけではすみませんよ。学校で勉強したいと願っていながら、うるさくて授業に集中できずに困っている生徒たちの悲鳴が聞こえませんか?うるさくて授業中に先生の声が時々聞こえなくなって、授業がわからなくなり、テストの点数が下がってあせっている生徒が増えています。現状を変えるために行動を起こす生徒が出ても不思議ではありません。
 生徒たちは全員根室高校へ進学します、次は根室高校で学力崩壊が起きます。
 小学校と中学校の校長先生と教頭先生は当事者ですからもっと事態を深刻に受け止める必要があります。

< 余談 >
 市議の皆さんたちが根室市総合文化会館2回で「議会報告会」を開いたことがありますが、その折に、文教厚生常任委員会の鈴木委員長に、一度学力問題で話し合いを持ちましょうと伝えたら、快諾されました。連絡のために、メールアドレスと電話番号の入った名刺をお渡ししました。もう半年たったと思うのですが、一度も連絡がありません。認知症の年齢には見えませんから、たぶんお忘れなのでしょう。鈴木委員長は共産党市議です。どなたかebisuが連絡を待っているとお伝え願えませんでしょうか。主義主張は異なっていても、ふるさとを愛する心は同じであると信じたい。
*#1206 根室まちとくらしネットワークフォーラム(2):船出 Sep. 16, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-16

--------------------------------------------
*#3480 宿題:「隠れたカリキュラム」  Dec. 15, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-14

 #3479 授業の雰囲気は生徒が創る(2) Dec.14, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-13

 #3478 授業の雰囲気は生徒が創る Dec, 13, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-12
 
*#3473 頑なな人ほどストライクゾーンが狭くなる Dec. 4, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-03-1

  #2641 創立138年花咲小学校新入生たったの39名 Apr. 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-12-1

--------------------------------------------
*#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

#1306 教育再考 根室の未来 第2部 低学力③:若手多く指導に苦戦も
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

#1304 教育再考 根室の未来 第2部 低学力②:「学ぶ意味」尊重されず
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17

 #2871 根室の中学生の学力の現状(3):学級崩壊  Nov. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-16-2

--------------------------------------------

      70%       20%