< 更新情報 9/25朝9時 >
 9/27 午前0時40分 難易度指数を追加

 先週と今週、市内の中学校で学力テスト総合Aと中間テストがありました。C中学校だけは8月に1・2年生対象の学力テストを実施しているので、それも材料に取り上げます。
 学校の先生たち根室市教委のみなさんもデータに基づく議論をしてください。市議会文教厚生常任委員会のメンバーの皆さんは仕事ですからとくによくご覧ください。

 ブログ「情熱空間」が釧路のある中学校の実データを挙げて同じ問題を取り上げています。根室の状況と比較しながらお読みいただけたら、釧路と根室に共通の問題があることがわかります。
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*「0点、1点、2点が10%を占めているって…」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8592030.html

 「算数・数学、壊滅都市。北海道釧路市。」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8592513.html

 「よーいどん!で白旗を揚げる子ども達」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/8592603.html
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 誤解のないように念を押しておきますが、取り上げた特定の学校や学年だけの話とは思わないでください。たまたま手元にある数少ない資料から代表例として取り上げているだけで、根室市内の市街化地域の3中学校、各学年に共通した問題が潜んでいます。現実のデータはバラツキが小さくないことも考慮にいれて判断してください。

 C中学校の中3・学力テスト総合A(各科目60点満点、合計300点)と1学期期末テストデータを並べてみます。

   〈学力テスト〉〈期末テスト〉  差 〈相対難易度指数〉
  国語 29点 (48)    60      [12]      0.800
  社会 21    (35)    58      [23]      0.603
  数学 16  (27)    62      [35]      0.435
  理科 19  (32)   60      [28]    0.533
  英語 28  (47)   68      [21]      0.691
  合計 112 (187)  309    [122]        0.605
    (百点満点換算値)

  60点満点のものを百点に換算した数値を( )で、「差」を[ ]に入れておきました。学力テストの難易度を1としたとき、定期テストの相対難易度指数を計算してみます。一番右端の数字です。定期テストの数学の難易度は学力テストを基準「1」としたとき半分以下となりました。数学の問題が簡単すぎます。期末テストで62点取れても、学力テストでは百点満点換算で27点しか取れません。生徒の半数は高校生になったときに高校数学の授業がほとんど理解できません。高校の先生たちは授業内容を落とさざるをえません。高校では赤点でも追試をやらない科目が増えていますから、学力のない生徒でも卒業できます。社会人になってから苦労します。

  ご覧の通り、数学の平均点が一番低いのです。「読み・書き・そろばん(計算)」といいますが、基礎学力に大きな穴が開いている状態だと認識すべきです。
 学力テスト問題は8割の高校が毎年定員割れを起こしている道立高校入試問題に焦点を合わせているので、難しくありません。東京都立高校入試問題に比べるとずいぶんやさしい。道立高校入試問題で90%の得点層は都立高校の入試問題では75%程度の得点になります。
 2年前の3年生の4月の学力テストの五科目平均点は149.9点、数学の平均点は27.2点でした。五科目合計点で37点差、数学だけで11.2点の差があります。2010年に北海道新聞が、荒れ放題だったC中学校の取材記事を載せましたが、あの荒れ果てた状況に、校長先生と多くの教員の皆さんが、「文武両道」を繰り返し発信し、補習を繰り返して学校全体で果敢に学力向上に取り組んだ結果が出たのだとebisuは理解しています。そして現状は変えられると確信しています。現在の3年生の学力テスト総合Aの平均点が112点であることは驚きです。1年生のときのデータからこのままだと、五科目合計平均点が百点を切ることを予測していました。生徒も先生もよくやったと褒めたいデータなのです。めったに褒めないebisuですが、学校を挙げて取り組んだ5年間に敬意を表します。

 荒れていた2011年度の学力テストデータが#2870の表にあります、年間の学力テストの五科目平均値は117.3点でした。
 データには年度によってこんなにバラツキがあるのは事実です。これが過去10年間で最良のデータ(2014年の五科目合計点149.9点)だったかもしれません。わたしのところには全データがそろっていませんので、C中学校の先生は過去10年間分のデータを眺めて確認されたらいかがですか?

 中間テストの平均点がまだ出ていませんから、1学期の期末テストの平均点を参照すると、62点です。市内の中学校の定期テストは平均点が60点になるように難易度を調整している先生が多いようです学力テストでは16/60=26.7%しかとれないのに、定期テストでは平均点が60点になっています
 1学期・期末テストの数学は、テスト範囲が計算だけですから、平均点が高くなります。2学期中間テストの問題を見ましたが、大問14題のうち、文章題は1題のみでしたから、難易度が異常に低いといって差し支えないでしょう。
 教科書準拠問題集のA問題レベルです。B問題が標準レベルとすると、C問題は学校の教科書準拠問題集よりも難易度が上のものとなります。

 得点分布を見ましょう。
               %    累計%
  6点以下   6人  12.2%
  7-12点  13人  26.5%    38.7%
  13-18点 11人  22.4%    61.1% ⇒赤点以下の割合
  19-24点  5人   10.2%     71.3%  ⇒基礎計算力に問題あり
  25-30点  9人   18.4%     89.8%
  31-36点  4人    8.2%     98.0%
  37-42点  0人
  43-48点  1人     2.0%     100%
   合計  49人    100%

  最高点が43点か48点か不明であるが、49点以上がゼロ。全国基準では52点以上でないと五段階評価でとても5はつけられませんから、5の成績の生徒が一人もいないと言ってよさそうです。もちろん、何人も5がついています。五段階評価で「マイナス1」下げた評価で全国基準相当です。
 得点1割以下が12.2%もいます。ブログ「情熱空間」が同じ問題を取り上げていますが、釧路のある中学校も10%を超えているそうです。この得点層は九九すら怪しい。逆九九がスムーズに言えません。分数の加減乗除算や少数同士の乗除算も位取りを理解できていないでしょう得点2割以下が38.7%もいます。計算能力に重大な欠陥を抱えていますから、得点2割以下は部活停止して補習すべきです、それが仕事に対する責任というもの
 なんと得点3割以下が61.1%もいます、「赤信号みんなで渡れば怖くない!」という評語を思い出しました、高校生なら得点3割以下は赤点です。10人のうち6人が「赤点」です。計算問題がちゃんとできれば30点取れますから、計算がちゃんとできているのは上位12.2%の生徒のみ
 民間企業の経営にたとえると、普段の学力テストデータは四半期決算データです。決算データを見ないで経営はできません。根室市教委のみなさん、ふだんの学力テストデータをちゃんとモニターしましょう。市教委へ以前問い合わせたら、普段の学力テストデータはモニターしていないと回答がありましたから、もちろん指導主事もデータを見てないでしょう。データも見ないで仕事ができますか?

 1校だけだから例外だろうという議論の余地がありますから、B中学校の昨年度の1年生の数学の平均点をみます。

 ●定期テストの平均点 57.5⇒53.1⇒62.1⇒47.2 平均55.0
 ●学力テストの平均点 56.6⇒29.1⇒36.8        平均40.8

 定期テストと学力テストの平均点は初回は同じくらい、2回目以降は大きな差があります。学年末テストは平均点が15点も下がっていますが、出題の難易度が高かったのか、範囲が広くて平均点が落ちたのかわかりません。学力テストの平均点の推移を見ると、中学校へ入学してから急激に平均点が下がったように見えます。
 学力テストに比べて定期テストの数学の難易度が極端に低いからこういう結果になります。

 C中学校2年生のデータも紹介します。
  4月の学力テスト
 国語 47.8点
 社会 41.8
 数学 30.0  得点3割以下が(33人/58人)56.9%
 理科 49.4
 英語 56.5
 合計 225.5 

  8月26日の学力テスト
 国語 55.4点
 社会 35.7
 数学 37.9 得点3割以下が(23人/57人)40.4%
 理科 43.9
 英語 52.5
 合計 224.5 

 4月学力テストでは数学の得点が71点以上は58人中2人のみ、8月学力テストでは57人中7人90点以上はどちらもたった一人だけ。
 90点以上がたった一人だけです。数学の得点上位層は「絶滅危惧種」です。根室の子どもたちがこんなに数学が苦手になったのですから、10年間で釧路高専への進学者が激減しました。五科目合計点で400点を超えたのは4月も8月もたった一人だけ、データを見ると成績上位層の枯渇化現象がはっきり出ています。10年前は二桁いる学年がありました。

【fact-1:定期テストの難易度が低すぎ!】
 B中学校2年生の中間テスト数学問題をみました。大問13個のうち、文章題が5題でしたが、教科書準拠問題集のA問題のみの出題しかも数字すら変えていません。B問題からはひとつも出題がありませんでした。だから、3人の塾生のうち二人が90点を越えています。「簡単すぎてつまんない」と、生徒がため息ついています。
 C中学校3年生は大問14題のうち文章題は1題のみ。これもA問題ばかりでした。
 今回の中間テストで中学生の塾生の半数が90点を超えています。難易度が極端に低く、問題が簡単すぎるからです。学力テストだって全国最低レベルの難易度の出題ですから、それと比べても10-30ほども平均点に差があるのです生徒が勘違いを起こします得点3割以下でも4がついている生徒がいるでしょう。高校生なら赤点です、その赤点でもほとんどが3の成績ですからご用心。

【出題難易度の分類】
 中学校の教科書準拠問題集の問題はAとBに分類されています。もちろんB問題のほうが難易度が高いいのです。根室高校普通科で全員に受験させている全国レベルの「進研模試」はセンター試験レベルの問題が6割出題されていますが、これはCレベルです。
 難関大学の出題する問題をウルトラC(以下、UCと略記)としましょう。箇条書きに整理してみます。

 ● A問題:教科書準拠問題集の「A問題」・・・基本問題
 ● B問題:教科書準拠問題集の「B問題」・・・標準問題
 ● C問題:都立高校入試レベルあるいは高校生ならセンター試験レベルの問題
 ● UC問題:難関私立進学高校の入試問題、大学入試なら難関大学入試問題

<fact-2:中学校の定期テストの難易度>
 根室の中学生の大半は、定期テストでは難易度Aの問題のみ、学力テストで難易度Bの問題が1/3くらい出題されています。
 高校生になって進研模試(全国模試)を受けると、難易度Bが4割程度、6割は難易度Cですから、平均点が20点台です。難易度Cの問題なんて見たことがないのですから、そんな問題ができるのはとっても頭の回転のよい生徒か、大学受験目指して塾で1年以上の先取り学習をしてきた生徒たちだけです。やっていないことはできないのです。高校生になったら7月にいきなり全国模試の難易度の高さを知り、全国レベルでの自分の学力=偏差値を知るわけです。学力テスト400点で進研模試の全国偏差値は48前後です。ほとんどの生徒が全国模試のC問題に手も足も出ません。中学生のときにちゃんと難易度の高い問題をやっていたら、全国模試で50点くらいはとれます。

 A問題だけの出題は学力低下を促進してしまいますから、そろそろ安易なテスト問題作りはやめていただけませんか?半分以上はB問題から出題するのが当たり前とわたしは考えます

< 学力向上と素直な心根が地域活性化の素 >
 想像力を働かせてください、学力テストで30%以下の生徒たちは、高校を卒業してからどうなるのでしょうね?分数や少数の四則演算もまともにできないまま卒業した生徒は、知的な職業には就けません。非正規雇用の単純労働の担い手になるほかありません。
 それでなくても人工知能やシステムの高度化で知的な職業分野がどんどん侵食されています。人工知能の性能向上は指数関数的です。以前やりましたが、2年で倍の性能向上なら、30年では2^15倍になるので、32768倍の性能になります。3年で倍とすると、2^10、1024倍です。指数関数的な変化は人間の想像力を超えています、何が起きるのか予測がつきません
 1982年にNECがはじめての16ビットマシンのPC9800シリーズを発売しました。16ビットになったので漢字が扱えるようになりました。あのときにだれが現在のスマホを想像しえたでしょう?

 中3の61.1%が分数や少数の四則演算すら怪しい、根室高校では分数や少数の四則演算はいまのところ教えていません
 先生たちはどうやってそういう生徒たちに高校数学を教えるのでしょう?

【結論と対策】
 中学校の定期テストの難易度が低すぎて、生徒が難易度の高い問題に独力でチャレンジすることを阻害しているようです。学力テストで半数を超える生徒が3割り以下の得点でもほとんどの生徒に五段階評価で「3」がついてしまっています。分数や少数の四則演算すらちゃんとできないのに、多数の生徒が成績は3だから「まあまあ」だと勘違いしています。
 標準的な難易度の問題を出題して、学力の低さを知らしめ、子どもたちと保護者に危機感を醸成しましょう。
 こんなに度外れて難易度が低い出題は罪が深い、子供たちを育成するためによしましょう。

 子供たちの学力がこんなに下がってしまっては、彼ら・彼女たち自身の未来が暗くなるだけでなく、雇用する地元企業の未来も危うくなりませんか?

< 慨嘆と希望 >
 ブログを書き始めてから、8年くらいになるのかな、根室市政は教育にまったく関心がないですね。ebisuは「釧路の教育を考える会」のメンバーなので、両方の市政を比較してみています。
 地元経済団体が子供たちの学力向上にまったく関心を示さないのが根室の特徴です。釧路は、商工会議所も中小企業家同友会もロータリークラブもそれぞれ幹部メンバーが「釧路の教育を考える会」に参加しています。市議会は超党派の基礎学力研究議員連盟を結成して、基礎学力保障条例を制定しています。
 各団体の若手のメンバーに教育に関心を寄せる人はいませんか?「根室の教育を考える会」を立ち上げて、ふるさとの子供たちの学力向上に一肌脱ぐ人はいませんか?若い人たちが教育に関心をもって取り組めば、根室の未来はきっと明るいものになります。

< 9/25 午後5時追記 >
 根室管内のある町の中学校も総合Aの数学の平均点が16点だそうです。どうやら数学の学力低下現象は根室管内共通の問題かもしれません。別海町が例外でしょう。
 さて、地域の未来を左右する子供たちの学力問題は、根室管内共通のもの、根室が学力問題でリーダーシップをとる日はいつのことだろう?そうした構想をもって動く若い人が現れてもらいたい。


*#3276 四月学力テストデータ分析: C中学校2年生  Apr. 24, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-04-24

 #2870 根室の中学生の学力の現状(2):C中学校  Nov. 16, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-16-1


 北海道新聞根室支局の取材記事を取り上げています。
*#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1


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