マルクス経済学では市民社会派と呼ばれる一群の経済学者がいる。内田義彦先生や望月清司氏、平田清明氏、哲学畑からは廣松渉氏をあげれば十分だろう。
 彼らは、『経哲草稿』『ドイツ・イデオロギー』『経済学批判』『経済学批判要綱』を取り上げ、マルクスの歴史認識を俎上に載せる。
 当然、ヘーゲル『歴史哲学』との関連も問題にせざるをえない。

 こういう方向でのマルクス研究が経済学としてどういう意味をもつのか、あるいは意味をもたないのかはっきりさせておきたい。「資本論と21世紀の経済学」の立場からの市民社会派の諸論批判ということになる。
 マルクスは『資本論第1巻』を書き進むうちに、経済学諸概念の体系化にヘーゲル弁証法が暗礁に乗り上げたことに気づき、資本の生産過程以降を書けなくなる。それがどういう問題を孕んでいたのかについて、宇野派も市民社会派も気づくことがなかった。

 市民社会派は『資本論』の体系構成法(廣松渉氏は「体系構制法」と書いている)については、スルーしてしまう。望月氏は『資本論』には自分の力が及ばないことを『マルクスの歴史認識』で正直に吐露している。
 『資本論』の体系構成法が明らかになると、市民社会派の論は成り立つのだろうか。一度整理する必要がある。

 内田義彦先生の諸著作と廣松渉氏、平田清明氏、望月清司氏の本をいま一度読み直さなければならない、手間がかかるが面白いことになりそう。

 いま手をつけている「認知症と介護」に関する仕事が終わってからやってみたい。


 #3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
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