安保法制が成立したと思ったら、10月1日付で防衛省に防衛装備庁という組織が新設された。
 日本は戦後武器を輸出しない国だった。それがいとも簡単に変更されてしまったが、これも十羽一からげで安保法制に組み込まれていたのだろう。法案を一つ一つ審議せずに、山盛りにして一括方式でやるのは、ことほどさように問題がある。

<人を殺さぬ軍隊の奇跡と世界一の商道徳が風前の灯>
 自衛隊は一人も殺していない不思議な軍隊である、そのことを誇りに思う国民は多い、わたしもその中の一人である。人を殺さない軍隊なんて言葉の矛盾のようだが、ある種の奇跡であった。世界史上、63年間にわたり人殺しをしなかった軍隊がはじめて存在した、これを奇跡と言わずして何と言おう。
 もう一つ挙げたい、日本は優秀な武器生産が可能なのに武器を輸出を禁止した誇り高い国だった。
 人殺しで儲けるような生業は「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」の伝統的な商道徳に真っ向からそむくものである。商道徳の点でも日本は世界に稀な誇り高い国だった。濡れ手に粟で儲けられる分野で、優秀な製品を作りうるのにそういうビジネスに手を染めなかった。その商道徳の高さはダントツに世界一。過去形で書かなければならないのが口惜しい。
 安倍総理に言いたい、日本が米国の真似をするのではなく、米国が日本の商道徳を学び、日本の真似をすべきだと。
 宗教と戦争とお金儲けの業が深すぎて米国は日本にはなかなか学べない。米国とイスラエルは宗教と戦争とお金儲けへの執着を滅することができない。

<平和の党の議員は、仏道の根本(=執着の滅尽)に還れ>
 防衛装備庁は武器の調達だけでなく、開発と世界市場に売り込みをするという。自衛隊が、武器製造企業の営業機能を受けもつというのだから、びっくりする。こんなに大きな変更が、まともな議論なしに国会を通った。自民党と公明党、とりわけ平和の党だった公明党の責任は重い。
 平和の党だったと過去形で書かなければならないのが残念である。権力の甘い蜜を吸ってしまったら、執着が生まれ離れがたくなる。執着が生まれれば権力を手放すことに苦が生まれる。執着を滅すれば権力を手放すことによって生ずる苦も滅尽する。執着を離れることはお釈迦様が説いた仏道の根本部分である。公明党議員諸氏よ、仏道の根本に還り、執着を滅する修行に励め。

<防衛庁調達ビジネスの実態>
 防衛庁の武器調達に関してはわたしは実務の現場を見ている。産業用・軍事用エレクトロニクスの専門輸入商社に29歳から34歳までの5年いた。経営分析、経営改革、省力化と利益増大そして為替管理および納期管理のためのシステム開発、統合システム開発、長期計画立案、年度予算編成および管理などの仕事をして、仕事の腕を磨くチャンスをたっぷりといただいた。社長の片腕だったといってよいだろう。
 その輸入商社では、直接防衛庁へ納品するものと国内大手電気メーカ経由で最終ユーザ防衛庁である売上を合わせると年間売り上げの半分を少し超えた。
 経験の知らしむるところは、防衛装備庁ができても調達コストは下がらないということ。
 調達先の商社や国内製造メーカには必ず防衛庁OBが何人も天下っており、彼らが防衛庁との取引を仕切っている。
 輸入に関していうと、米国にダミー会社を設立して、そこを通して輸入書類をつくり、大幅なマークアップをする。納入価格は実際の輸入価格の10倍になることもあるから、そうじて防衛庁調達製品の利益率は高い。特定営業部(ユーザは防衛庁)の売上総利益率は40%を超えていた。天下りを受け入れてもお釣りがくるほど採算がよい。10倍にマークアップしても書類がそろっていればOK。もちろん、防衛庁の調達担当部門が米国へ出張してメーカへ直接価格調査がなされるが、それも天下った人たちが付き添っていくから、何も問題は起きない。防衛庁自身が行う検査はまったくの有名無実であった。
 天下り先の確保は人事上の重要事項だから、現役が天下り先の先輩諸氏に口出しできるはずがない、すぐに自分の番が回ってくるのである。余計なことを言えば、自分の再就職先はなくなる。50歳前後で退職してから20年間ほどのうまみのある生活が待っているから、それを反故にする者などいやしない。退職後の安逸な生活を棄て去るほどの気骨のある者がいないということ。防衛庁幹部職員に国を守る気概が本当にあるのだろうかと当時は疑問に思った。
 あるときに心配で、防衛庁担当のS山部長に「ちょっとやりすぎでは?」と訊いたら、「いや、何にも心配要らない、僕らがいるから大丈夫だ」、「現地調査のほうは?」、「それも心配要らない、同行するから」、そうおっしゃっていた。とっくに故人だから、書いてもいいだろう。安くてうまい鮨屋があると築地の銀寿司に連れて行ってくれた。血圧の高い人で190あると言っていた。ある日の朝、本社のあった人形町駅出口で一緒になったが、降圧剤のせいで血圧が下がりすぎて今日はすこし気分が悪いとおっしゃった。その午後の日中に、昼飯を食べるために上野界隈を歩いていて倒れ、そのまま逝った。暑い日だった。やせぎす、お酒が好きで陽気だったS山部長。
 防衛予算は3割は削れるのだろう、だがそうしたら幹部職員の天下り先の大半がなくなるから、やるはずがない、幹部職員には天下り先での美味しい生活がまっている。どこの官庁だって似たようなもの。防衛庁出身のF田取締役は工業英語が堪能で、お酒が好きで気さく、中途入社のわたしにいろんなことを教えてくれた。この人も、定年前に急逝した。
 管理部には部長職で陸軍中野学校出身者がいた。米国のある軍事メーカーに強力なコネがあった。昼飯を食べながら中国への潜入時の話を何度か聞かせてくれたが、どういう関係で米国の軍事メーカにコネがあるのかは、ついに話してくれなかった。訊いたら話してくれたかもしれない。S木部長は戦後、GHQとどこかでつながりがあったはず。コネのあったのはウォータゲート事件で盗聴に使われたレシーバを生産していたメーカ、記憶にいささか自信がない、Watkins Johnson社のRecon devisionという名称を記憶している。陸軍中野学校出身者と米国諜報機器メーカをつなぐ糸があったということ、当時訊いておいて追跡調査・取材したら面白い小説が書けたかも。

<急進主義の安倍政権>
 安倍総理は「美しい国、日本」などと嘯(うそぶ)くが、その政権は実際には穏健なる保守主義ではなく急進主義(過激派)である。口から出る美辞麗句とは裏腹に、数百年間守り洗練してきた世界最高の商道徳を根こそぎにしつつある。日本の伝統的価値観の破壊者となった。
 わたしは、この国には伝統的価値や文化を守る健全な保守主義政党が育つことが望ましいと思っている。自民党の国会議員諸君に急進主義者(過激派)は少ないだろう、健全な保守主義を志向するグループが名乗りを上げて、内部改革をしてもらいたい。どんどんキナ臭いほうに法律が整備されていく、そろそろストップをかけないと取り返しがつかないところまで行ってしまう気がし始めた。

 特定秘密保護法案が昨年成立し、今年安保法制(まとめて)が衆参両議院で承認された。

*http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2015/opinion_150618.pdf
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政府は2015年5月14日,平和安全法制整備法案(略称。以下法律及び法律案の題名の略称については別紙参照。)及び国際平和支援法案(この両法案を総称して,以下「安保法制改定法案」又は「本法案」という。)を閣議決定し,翌15日国会に提出した。前者は自衛隊法,武力攻撃事態対処法,周辺事態法,周辺事態船舶検査活動法,国連平和維持活動協力法など10件の防衛関係法を改正するものである。そして後者はいわゆる自衛隊海外派遣恒久法案である。
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<ベトナムで米国の戦争に加担した狂気の韓国軍>
 いままでは、憲法九条を盾にして、海外派兵を断り続けてきたが、米国は一緒に戦ってほしいと思っている。ベトナム戦争では、憲法九条をもたない韓国が米国に追従して派兵し、ベトナム人をたくさん殺した。9000人の村民を虐殺したとされている。米国がベトナム戦争に負けて引き揚げた後には韓国人とベトナム人の万人を超える(5000人~30000人まで諸説ある)混血(ライダハン)が残され、敵の子どもとして迫害された。韓国軍兵士がベトナムの女性を強姦して生まれた子ども、現地婚による子ども、慰安婦たちが生んだ子どもたちである。
 戦争は狂気である、日本の自衛隊はそうはなってほしくない。米国についていけば、ベトナム戦争時の韓国のようなことにいつかなりかねない。自衛隊員の家族にとっても深刻な問題となる。

<軍需産業依存の経済構造をつってはならぬ>
 米国はいつもどこかで戦争をしている国である。軍需産業が大きすぎて、戦争をして武器を消費しないと景気が悪くなる、そういう経済構造の国。
 団塊世代が大学生の時代にベトナム反戦運動が起きた。あのときにこの安保法制があったら、日本政府は海外派兵を断れただろうか?

<アベノミクスの成長戦略の正体>
 安倍総理の三本の矢の一番肝心なもの、成長戦略はすがたも形もない。苦し紛れに出してきたのが、武器輸出三原則を棄て、武器輸出を奨励して経済成長をするというシナリオである。武器輸出三原則の一つに「紛争当事国への武器輸出禁止」がある。これは実質的に武器の輸出全面禁止である。
 わたしは紛争当事国へ武器輸出をして濡れ手に粟で儲けるという経済成長はノーである。米国のような軍需産業が大きな割合を占める経済構造の国にはしてもらいたくない。巨大な軍需産業がGDPの一角を占めるようになれば、戦争をすることが景気対策になってしまう。軍需産業の肥大化は日本を米国に似た軍需産業依存の経済構造に造り替えてしまう。
 日本が目指すべきは米国ではない。安倍政権は新三本の矢の第一に、GDP600兆円を掲げた、その柱が武器輸出である。

<千年間続いている宗教戦争に日本はかかわるな>
 キリスト教徒とイスラム教徒とユダヤ教徒は千年間も戦争を繰り返してきた。今後もやむことはない。その渦中に、米国のお友達として日本が参加すべきではない。どれだけ経済的な不利益を被ろうとも、日本はどこまでも部外者でいるべき。

<軍事と経済の米国依存からの痛みを伴う脱却>
 強い国家を中心とする集団防衛という構想は棄てよう、自分の国は自分たちで守る覚悟をもとう。米国を当てにしないことだ。TPPは米国中心のブロック経済だが、安保法制も米国中心のブロック安全保障だ。どちらも悪である。ブロック経済で日本は締め出され、大東亜戦争へと追い込まれた。強いものを中心とするブロック経済は敵(かたき)である。
 米国はいつでも米国の利害で動く、日本も日本の国益を考えて動けばいい。日本は痛みを伴っても、米国依存から脱却すべきだ。

<自立型経済システムの創造と正規雇用確保:人類への日本の貢献>
 強い管理貿易に移行して、国内に生産拠点を取り戻し、若者に正規雇用の職を保障しよう。職人中心経済へ舵を切ろう。
 マルクス『資本論』を超える21世紀の経済学の枠組みはカテゴリー「資本論と21世紀の経済学」で明らかにした。
 職人中心の経済社会を建設して、世界に範を示せばよい。そして、そのシステムを輸出すればいい。先進国にはグローバル市場を失うという痛みを伴うが、多くの発展途上国にはその国の言語や伝統文化を維持して経済的に自立できる道が拓ける。
 大東亜戦争が日本の敗戦に終わったが、その後にインドを含むアジア諸国が、白人の帝国主義から次々と独立を果たした。日本は職人中心の経済社会を創ることで、もう一度人類に貢献できる。20世紀と21世紀は日本が世界に大きな貢献をなすべき世紀である。さあ、坦々となすべきことをなそう。


*#195「少し過激な北方領土返還論」MIRV(多核弾道ミサイル)開発・組立・解体ショー
ロシアをぎゃふんといわせ北方領土を返還させるための具体論
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07



*#3121 既成経済理論での経済政策論議の限界 Sep. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01-1

 #3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15


『資本論と21世紀の経済学』 <目次>

       3097-0 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02 

    序   …2

       3097-1 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02-2

Ⅰ. 学の体系としての経済学      6

1. <デカルト/科学の方法四つの規則とユークリッド『原論』> …6
2.<体系構成法の視点から見たユークリッド『原論』> …8
3.<マルクスが『資本論』で何をやりつつあったかを読み解く> …10
4.<資本論体系構成の特異性とプルードン「系列の弁証法」> …11
5. <労働観と仕事観:過去⇒現在⇒未来> …13
 
       3097-2 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02-1

6.
<公理系書き換えによる21世紀の経済学の創造> …14 
 ○ 資本論の公理系の析出
 
 ○ 公理系書き換えによる新しい経済学の創出
7. <経済学体系構成原理は四つ> …19           
8. <『資本論』の章別編成> …20
9. <マルクス著作の出版年表> …21

       3097-3 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02-3


Ⅱ.第1の公理を巡って:マルクスの労働観と日本人の仕事観 
 …23

10. <対極にあるもの:ヨーロッパの労働観⇔日本の仕事観> …24
11. <日本人の仕事観:仕事が楽しい!> …25
12. 民間企業では仕事の要領の悪い者ほど「忙しい」とぼやく> …32
13. <労働者ではなく「教育の職人」としての誇り> …33

       3097-4 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03



. 経済学とは何か   35

14. <経済現象と日本> …35
15. <円安はいいことか?:80120/$の威力>  36
16. <経済学の定義> …40


       3097-5 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1


Ⅳ.日本経済の現状と人類の未来(人口減少と高齢化を見据えて)45

17. <人口統計から見える未来>…45
18. <「経済成長の天井」:日本総研山田久調査部長の論> …48
19. <馬場宏二「過剰富裕化論」> …52


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http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04


20.
<相対的貧困率上昇と金融資産1億円超の富裕層増大> …55
21. <『21世紀の資本』トマ・ピケティの空想的所得再分配論> …56
22. 2015年度政府予算案と公共性あるいは公益性について> …61 
23. <村落共同体と税:自由民と農奴について> …63


       3097-7 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04-1


24.
<文部科学大臣下村博文「教育再生案」について> …67
25.<人工知能の開発が人類滅亡をもたらす:ホーキング博士> 69


       3097-8 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05-1

26.
<利便性の追求の果に何があるのか> …70
27.<外国人持ち株比率3割の意味するもの(金子勝慶応大学教授)> …75


       3097-9 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05



28. <安保法制と日本の軍需産業と成長路線は一体のもの:東野圭吾著『禁断の魔術から>…77

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       3097-10 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04-3



(注-1)「コンピュータとネットワークと機械の新産業革命:ロボット工場はすでに現実」…82

(注-2「生産性向上事例」)…83
(注-3「総合偏差値による経営分析システム:5つのディメンション(指標群)と27指標」…86
(注-4「財政破綻と公務員制度改革」)…87
(注-5「民間企業の生産性向上の実例」)…87 
(注-6「繰延税金資産について」)…88
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      70%       20%       10%