米国経済が好調なのかどうか、なにをもって好調と判断するのかという判断基準が問われます。米国では経済格差が拡大し人口の3%の富裕層に富の半分以上が集中しています。
*ロイター 2014年9月5日「米国の所得格差が金融危機で拡大、富は上位3%に集中=FRB 」
http://jp.reuters.com/article/2014/09/04/us-frb-wealth-idJPKBN0GZ2O420140904
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「2010━2013年の期間に、米国の家計所得(インフレ調整後)は平均でおよそ4%増加したものの、所得の伸びは富裕層に集中した。上位3%の富裕層が所得全体に占める割合は30.5%だった。」
「また家計純資産の保有状況ではさらに格差が拡大。上位3%の富裕層が全体に占める割合は、1989年の44.8%、2007年の51.8%から2013年には54.4%に上昇した。」
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 日本経済が好調だと安倍政権とその周辺の経済ブレーンは言います。大企業の税引き後利益ととその社員の所得水準は立ちかに上がっていますが、並行して一人当たり国民所得が何年にもわたって減少し、非正規雇用が増えて経済格差が広がっている現状があります。中小零細企業やそこで働く人々へのトリクルダウンは起きていません。一部の人々の富裕化と大多数の人々の貧困化過程が同時進行して、経済格差が拡大しています。それだけではありません、政府の借金は1000兆円を超えて、さらに拡大を続けています。プライマリーバランスの回復は際限なく先送りされています。

 中国は400兆円もの設備過剰があるといわれはじめました。設備にあわせて生産を拡大したいのでしょうが、コスト面と品質面でミャンマーやベトナム、インドと競合しはじめ、生産拠点が中国からこれらの国々へ移りつつあります。いずれアフリカへ移るのでしょう。そこでどん詰まりとなります。

 さまざまな経済発展段階にある国の利害は一致しません。片方の利益がもう一方の損失につながります。変数が多すぎて既成経済理論のどれをもってきても利害の調整ができなくなっているのでしょう。
 米国と日本と中国で共通に起きている現象は、経済格差の拡大です。ピケティは『21世紀の資本』で所得分配の仕組みを変えることで経済格差縮小を提言しました。経済格差拡大の原因には手をつけずに、資産税による所得再分配を試みるものです。とうぜん既成の支配勢力の猛反発を招きますから、わたしには空想的経済政策論に見えます。蛇口を閉めずに、あふれ出る水をふき取る努力だけでなんとかしようというのですから、実証研究としてのデータの取り扱いには感心しますが、その所得再分配提言については疑問符をつけざるを得ません。

 そういうわけで新しい経済理論の出現が必要な時代に人類は到達してしまったのです。我田引水ですが、「資本論と21世紀の経済学」をご覧ください。日本に現代の資本主義社会を覆す、職人仕事をベースとした穏やかな経済理論が誕生しました。軍需産業が縮小される以外に、だれも犠牲になる必要はありません。仕事に関する価値観を転換して穏やかに経済社会の仕組みを変えましょう。まじめに働けば人並みの生活が保障される経済社会、職人仕事をベースにした経済社会では上位3%に富の半分が集中するようなことは起きません、経済格差を縮小できます。

 論文は四百字詰め原稿用紙で450枚ほどです。

*#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15


<参考資料>
**「トップ5%と下位20%、アメリカの所得格差はこう変わった」
http://blogos.com/article/108380/
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2013年時点で、全米で上位5%の平均年収は20万234ドル(約2428万円)でした。下位20%の年収が2万1433ドル(約257万円)ですから、上位5%の年収は9.3倍に達します。2012年の9.1倍から、じわり格差が広がっていました。

全米50都市別では、一段と拡大しています。トップ5%の平均年収22万1700ドル(約2660万円)に対し、下位20%が1万9143ドル(約230万円)。格差は実に11.6倍に及び、2012年の11.4倍を上回っていました。
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***「所得格差はほんとうに拡大しているのか?改めて考える。」
http://blogos.com/article/105431/
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・・・所得データを見る時は、当初所得か再配分後所得後データか、また世帯所得か等価所得かの違いに注意しなくてはならないからだ。どのデータであるかによって見える姿はとても違ってくる。
・・・3年毎に実施されている政府(厚生労働省)の「所得再配分調査」が報告している。

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001024668

最新の同報告書は平成23年(2011年)のもので、それによると等価当初所得と等価再配分所得のジニ係数の推移は次の通りだ。

     等価当初所得  等価再配分所得
1999   0.4075      0.3326
2002    0.4194              0.3217
2005    0.4354               0.3225
2008    0.4539               0.3192
2011    0.4703               0.3162

ご覧の通り、等価当初所得でみるとジニ係数は上昇し格差拡大を示しているが、等価再配分所得で見るとジニ係数は若干ながら低下し、格差の縮小を示している。 大雑把に言うと、これは高齢化によって老齢年金や医療給付などを受ける人口比率が増えたことが主たる要因であると検証、分析されている。

つまり人口に占める高齢者比率が増えると、多くは所得がないので、同世代間の格差は不変でも当初所得の格差は拡大する。 ただし高齢者は公的年金や医療給付の受け取り手なので、所得再配分後では格差は縮小する。

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 等価当初所得をベースとしたジニ係数から言えることは、現役世代の所得格差がこの12年間で急拡大しつつあるということだ。それは非正規雇用比率の拡大と強い正の相関関係があるようにみえる。

      70%       20%       10%
 

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