<更新情報>
6/25 正午 トレーニングビデオのURL追記 18分と48分バーションの2種類があります。バド部の人たちと指導している先生たちは、全国トップレベルのトレーニングや指導方法がとんなものなのかぜひ見て、参考にしてください。
    「渋谷実 バドミントン教室 in 和名ヶ谷スポーツセンター」
7/4 0時20分追記 <余談-5> 小寺さんの書いた本の紹介


 首都圏からバドミントン愛好家である小寺氏が訪れたので、C中学校バド部へお連れした。練習をみてもらい、トレーニング方法や文武両道についてなにかサジェッションがいただけたらいいなと考えた。元々は弊ブログをお読みになって、どういう教育をしているのか興味をもたれ、教育談義をしようと根室まで足を運んでくださるというので、わたしと話をするだけではもったいないから、橋渡しが可能だからC中のバド部を少し見てもらいたいとお願いした。学校側も小寺さんも快諾してくれた。首都圏のバド指導技術に触れる機会を生徒たちにつくってあげたいという思いは同じ。

 学校へ着いて、玄関前を通りかかった校長先生にご挨拶し、バド部との間をつないでくれた先生と体育館へ。体育館では女子バレー部とバド部が半分ずつ利用していた。間はボールが転がってこないように1mほどの衝立で仕切られていた。
 女子バレーボール強豪チームを率いているN.K先生の指導も遠くから観察できた。生徒たちに女子バレー部員が多かったので、前から練習風景を観察したいと思っていた、ひょんなことから実現した。

 小寺さんは体育館へ入るなり、
 「音が違います」
と感想を漏らした。
 「どう違うんですか?」
 「もっと乾いた音がします」
 どの音もパスンという音だった、身体を大きく振って強く打っているように見えたが、インパクトにはコツがあるという。
 早速、ラケットをもってきてもらい、O先生に「振り」のトレーニングの初動位置とスナップを利用したストロークをやって見せた。左肩を壁につけて前腕と手首だけをつかったコンパクトなストロークが基本型である。
 正面に相対して観察すると、ラケットの底が観察するほうに見える角度に手首を返して構え、前腕(手首から肘までの部分)と手首のみを使って鋭くフル。上腕は動かさない。この素振りトレーニングを繰り返して、手首と前腕にインパクトの瞬間の身体の使い方を覚えこませる。
 きちっと振れるようになるとシャトルを叩く「パスン」という音が、「パッ」という音に替わる。音が変わればシャトルの速度も大きくなる。この基本の型なら、ラケットだけあればいつでもどこでも練習ができる。


 二番目にやったのは、立ってラケットを構えている相手にシャトルを次々に投げつけて打たせる。それも投げつける位置を変えて打たせるのである。右左、前後と投げ分けて打たせる。基本ストロークを意識して繰り返す。
 慣れてくると右を見ながら左にシャトルを投げる。遠くへ投げるフリをしながっら手前の落とすというようなことをやる。さらに進むと、指のサインで四隅を決めておき、合図したほうに走って振り抜いてから、違う方向に投げたシャトルを打たせる。この段階になると、5分続けるとへとへとになるという。
 どんな場合でも最後まで眼でシャトルを追い、必ずラケットに当てること。「リターンエースはありえない」という方針でやらせる。

 三番目はシャトルを掬い上げてそのまま上に放り上げ、シャトルの下がってくる速度に同調させるようにラケットを下げて、シャトルを掬い取り、また上に放り上げる。これを何度も繰り返す。リフティングと掬い取る技術だ。これができるようになったら、シャトルが下がってくるときに任意の高さで打つ練習をする。高い位置、中ぐらい、低い位置とシャトルを叩く位置を変えてみる。
 このトレーニングの要点は、シャトルの動きをラケットがシャトルを叩く直前までしっかり眼で捉えるということ。

 四番目は、座らせて胡坐(あぐら)をかかせた相手に次々にシャトルを左右上下に投げつけて打たせる。上半身の動きだけでシャトルを打たせるのである。前腕と手首をつかって鋭いフリができなければ打ち返せない。基本ストロークで振りぬけているかどうかを確認しながらやるから、1番目のトレーニングの成果を確認することにもなる。
 このトレーニングは案外重要である。胡坐をかいてやるから、膝を痛める心配がない。そして上半身の稼動範囲を広げる役割がある。
(啓雲中学校には根室釧路管内で優勝したことのある選手、ショウホがいた。部活では足りないと根室市の青少年体育館でもトレーニングをしていた。そして中学時代に膝を痛めた。高校では大好きなバドを断念し、レスリング部へ。全国大会直前に膝の故障がぶり返し、出場を断念。全国2位ならいけただろう。運動のセンスのよい子だった。大人たちの配慮が足りないばかりに、才能を潰してしまった。小寺さんのトレーニングメニューを知っていたら、あるいは膝の故障はなかったかもしれまい。)


 五番目は壁の前に足を開いて立ち、足先と顎(あご)が壁にくっつくようにして腰を下ろす。相撲の四股に似た感じになる。これは股関節を柔軟にするトレーニングだ。特定のスポーツを長く続けている子どもたちは、特定の筋肉のみを使っているから、しばしば身体が堅くなり運動器の稼動範囲が小さくなっている。これでは身体の一部を固定したときに大きな動きができない。股関節が柔らかいのは身体を痛めないためにも、身体に技が乗るのだからその基礎部分の身体の中心にある股関節がやわらかいことが種々の技の上達のためにも必要。四股を十分に踏まない相撲取りは強くなれないように、バドでも股関節の柔軟性は重要なのである。
 「姿勢が悪いと上達しない」とおっしゃっていた。
*運動器:骨、関節、筋肉、腱、靭帯靭、神経など運動をつかさどる組織・器官

 六番目は、体育館に引かれた線上を向かい合わせで走ってターン、これを往復10回繰り返させる。向かい合わせで競争だからきつい。8回目くらいにヘタって来る。勝ち抜きでやらせて優勝者を決めるというのも楽しい。遊びながら俊敏性とスタミナを鍛える。

 七番目は基本の構えに関する問いかけ。構えはどういう形がよいのか、理由を明示して教えてくれた。つねに「なぜ」「どうして」と理由を問う。頭を使わないものは上達が遅い。頭を使って効率的で強くなれるトレーニングをつねに工夫すべき。

 生徒たちはすでに習得している技もあったが、大部分は未知のトレーニング方法だった。教えてもらったらすぐに吸収してできる部員もいた。うれしそうな顔をしていたのは生徒たちだけではない、小寺さんも生徒たちとのコミュニケーションを楽しんでいた。

 週3日、2時間で十分な効果を上げる工夫をする。だらだら長い時間はよくない。頭を使ってトレーニングしない者は上達も遅い。全日本チャンピオンクラスは工夫をして、短時間で集中度の高いトレーニングを行っている。一人でできる素振りなどのトレーニングは自分で毎日欠かさず少しの時間でやるべし
 50分間でこれだけ教えてくれた。他の学校のバド部のために、要点をメモって参考に供したい。

(小寺さんは、江戸時代に大塩平八郎の乱で連座して切腹した当時の私塾の塾頭の末裔である。ご自身は東大現役合格、長男は東京工業大学で電子物理学を教えている。この方もバドミントンの愛好家。母校の開成中学バド部にもOBとして顔を出すという。文武両道、生涯スポーツしよう!)


<バドミントン・トレーニング>
*関東第一高等学校ITCクラブ室
http://www.kantodaiichi-itc.com/new-itc/

<渋谷実 バドミントン指導ビデオ>
https://www.youtube.com/watch?v=P2A2mvU7rKo&feature=channel

必見!<渋谷実 バドミントン教室 in 和名ヶ谷スポーツセンター>
http://ota.saloon.jp/?p=874

 なるほどこれはきつい、5分で根を上げるハードトレーニングだ。きちんとしたトレーニングメニューを組み立てたら、毎日2時間なんて部活は不可能である。短時間で効果的なトレーニングを積むことは、社会人になったときに、仕事で絶大な威力を発揮するだろう。関東第一高校の教頭である渋谷先生にあったことはないが、わかるものはわかる、これは本物、仕事人のebisuが保障する。仕事のマネジメントも部活指導のマネジメントもつまるところは同じところへ行き着くのである。

 さあ、C中学校バド部、新次元を切り開いてみたらいい。うまくいったら、他の2校バド部も続け。ビデオは誰でも見ることができる。文武両道、渋谷バド哲学を学べ。

<余談>
 小寺夫妻は昨日4時過ぎに根室に着いた。50分間ほどC中学校で指導。今朝9時から太平洋岸沿いの道路を走って納沙布岬までご案内。貝殻島と水晶島はうっすら見えたが、国後は見えず。オホーツク海側の道路を走って戻り、スワン44で休憩して、先ほどバスで中標津空港へ。関東第一高校とのチャンネルはきっと小寺さんが開いてくれる。バドを通じた極東の町の中学校と首都圏とのコミュニケーションは若きバド部員たちに変化をもたらすか?

<余談-2>
 となりで練習していた女子バレー部、なかなかいいトレーニングをしていた。ネットの両脇に台に乗って人が立ち、次々にボールを打っていた。気合が入っていた。昨年道内3位の強豪チームである。それなりのトレーニングをこなしている。週1ぐらいの割合で理論研究もしていると聞いている。

<余談-3:才能ある二人の生徒とスポーツ障害>
 10年くらい前のことだが、C中学校のバド部には根釧地区でナンバーワンのS.S君がいた。運動神経抜群、筋力抜群、そして学力のほうも優秀だった。北大水産学部に進学してもらいたかったが地元に残って家業を継いでいる。かれは強かったので、部活だけでなくそのあと青少年センターでトレーニングをよくやっていた。体重が増加してくると膝に故障が出るようになり、結局バドミントンをあきらめることになった。高校ではレスリング部に入部した。持ち前の運動センスと抜群の筋力で、1年生で全国大会準優勝を期待されたが、膝の故障がぶり返して、レスリングも断念した。この座ってやるトレーニングメニューがあれば、あるいは指導者が様子を見てストップをかけていれば、膝を痛めなかっただろう。週に3日、各2時間みっちりやれば効果的なトレーニングは可能だと小寺さんは生徒たちに語っていた。「頭を使って短時間の効果的なトレーニングで上達しろ!ただ、長時間やるのはダメだ!」
 昨年武修館高校野球部が甲子園に出場したが根室柏陵中学出身のN君は中学校のときに肘を痛めた。投手で投げすぎたためである。武修館ではピッチャー以外はどこでも守れる選手と紹介されていた。あいつが、中学時代に投げすぎで肘を痛めなければ、ピッチャーで投げていただろう、武修館高校は1回戦で勝つチャンスがあったかもしれない。
 スポーツ障害を起こさないように、そして好きなスポーツを生涯楽しむことができるように、少年野球やバドミントンの指導者たちはトレーニング方法やスポーツ障害についてしっかり勉強しなければいけない。中学校の先生、なかなか責任が重い、経験のない部活をもたされている人は気の毒な気もする。


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<余談-4 *素振り :「天皇の料理番」>
 わたしはビリヤード歴が通算して二十年ほどあり、セミプロ・クラスの技術をもっているが、ビリヤードでも素振りは大切で、日々素振りを欠かさなければ腕はそう落ちるものではない。
 精確なストローク*こそが、いろいろな技の精度を高める基礎である。支点がぶれてはいけない、精確なストローク(素振り)すらできない者に高度な技ができるわけがない。ビリヤードは支点である肘を固定して前腕を前後にまっすぐにふる。キューには右手を添えるだけ、ショットの種類によってインパクトの瞬間に握る力を加減する。昔はピース(タバコの銘柄)の外函をテーブルにおいて、そこから10~20cmほど離してレスト(左手)を置き、右手でリズミカルにそして精確に素振りしながら外函の内側を通過させる、慣れてくると眼をつぶってもどんなに高速で振っても外函に触ることがなくなる。3年以上の経験者でこれができなければ、トレーニングの方法がよほど悪い。これくらいのことはセンスがよければ1ヶ月でマスターできる。

 アーティステックビリヤードで世界銀メダル保持者町田正先生のお父さんがやっているビリヤードには素振り用の鉄のキュー(本来は楓の木の棒)があった。二人の息子に、それを振らしていたという。まるで「巨人の星」のお父さんのような人ではないか。あるときに「世界チャンピオン養成用鉄製キュー」があることに気がつき、こんなキューを使って素振りしていたのかと驚いた。だ町田正先生はシルクハットというマッセの超絶技があるが、あれは鉄製キューの素振りなしには考えられない。左わき腹に左腕の肘を押し付けてレストが鉄でできているかのようにがっしり固定されないと、あのすさまじい勢いでのストロークに耐え切れず、タップがボールに当たった瞬間にレストがずれてしまう。ストロークのスピードが増せば増すほど、それを支えるレストは頑丈なものであらねばならない。それは鉄製キューを使った素振りトレーニングの賜物なのだろう。鉄製キューでストロークのトレーニングをしたことのないebisuにはとても真似ができない。
 私はお父さんの方にキャロムゲームのさまざなな技やトレーニングのボールの配置パターンやそれぞれの撞点、配置ごとのショットの種類等をなんどか習った。どこが気に入ってもらえたのか分からないが、「プロだからレッスン料はいただいているが、ebisuさんはコーチ料は要らないから毎日おいで」といわれた。たぶん持っていたキューと筋がすこしよかったのだろう(笑)。キューには当時すでにお目にかかれないレアモノの貴重なタップがついていたから、お父さんは「やすりをあてさせて欲しい」と言った。30年間みたことがないと言っていた。「どうぞ」とOKすると、うれしそうに自分流に半球状に調整してくれた。台の上に載せて専用の鉄製の鑢を当て、掌をキューに押し付けて回転させながら、「感触がいい」ととても楽しそうだった、しかし眼は真剣そのもの。どうしてそういう形にするのか聞いてみたら、球の撞点を精確につくためにはタップも球状のほうがいいという説明だった。それ以来、タップの半球状の一点とボールの一点が激突するイメージを描きながら突き抜けるようになった。
 タップの調整はビリヤードテーブルの上にボールを置いてそこから70cmほど離れたところから眼から50cmほど離して直線状に「眼⇒タップ⇒ボール」を見ると、タップの丸みとボールの丸みが重なって見えたらOKだという、それからはわたしはタップの調整はその流儀でするようにしている。昭和天皇のビリヤードコーチだった吉岡先生のタップの調整は平たい(半球状の上1/3くらいの丸み)削り方だった。当時は象牙の玉だから、ボールの端をシビアに撞く必要がなかった、撞く技術(右手のストロークと握りの微妙な圧力調整)でカバーしていたのである。象牙が輸入できなくなり、樹脂製の軽いボールになって、タップの調整がシビアなものになったのだろう。町田さん(お父さん)が研究を重ねて最良と判断したのだろう。
 レッスン料を無料にしてくれるというせっかくのご好意だったが、町田ビリヤードには仕事が忙しくて十数回しかいけなかった、しかしたいへん貴重な機会だった。トレーニングメニューは、配置を図面に落として研究ノートに書き溜めてある。
 町田正さんには3ゲームだけボークラインゲームに付き合ってもらったことがある。国内チャンピオンだから、技を目の前でつぶさに観察できたことがうれしかった。たしか、東京八王子駅前のシルクハットという名前の新しいお店(当時)だった。天皇の料理番ではないが、皇太子のビリヤードコーチである。霞会館というのがあり、そこで教えているとは、「(平成)天皇のビリヤードコーチ」スリークッション世界チャンピオンの小林先生から聞いた話。天皇や皇太子のビリヤードコーチだった先生3人に習ったことがある、日本でタダ一人のビリヤードプレイヤーである。腕はたいしたことがないが、この点だけは自慢できる。(笑)
 新大久保のビリヤード点(小林先生が運営をしていた)の常連会のメンバーだったので、メンバーの皆さんともども数年間親しくしていただいた。小林先生はマッセの構えが吉岡先生とは違って首のところにキューを当てていた。そのほうが撞点がよく見えるというのである、なるほどやってみたらその通りだった。町田先生も小林先生も、一流のプロはそれまでの常識を一つ一つ再検討して、改良を積み重ねるもののようだ。とことんビリヤードが好きなら、上達に関わることは何でもそしてトコトン極めたくなるのだろう。
 常連会の中では駿台予備校の数学の先生であるA木S蔵さんがプロ並みの腕前、かれは参考書も書いている。ビリヤードのではないよ、数学の参考書だ。五種目チャンピオンのディリスのサマーキャンプにヨーロッパへ出かけるくらいの人である。
 常連会にはもう一人キャロム系のゲームの全日本アマチュアチャンピオンのK柴さんがいた。A.Sさんと比べるとキュー捌きのやわらかい人だった。一度だけこの人と常連会の月例会で決勝戦を戦ったことがある。初回はわたしの先行で突き切ったら、その裏で突き切り返され、2度目のゲームも突き切られてebisuの負け。強い奴とやるときは手加減ナシの全力勝負だから楽しい。
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<余談-5> 7月4日0時20分追記
 小寺さんは富士通に10年勤務し、シャープで20年仕事をしており、新規事業関係の本を数冊書いている。他に1990年代にIT関係の本も数冊著している。そういう仕事をしてきた人のようだ。

新規商品企画の成功学

  • 作者: 小寺 次夫
  • 出版社/メーカー: 生産性出版
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 単行本

今すぐ新規事業を始めなさい!―死の谷を飛び越える成功のシナリオ

  • 作者: 小寺 次夫
  • 出版社/メーカー: 生産性出版
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 単行本

誰にでも簡単に書ける履歴書・職務経歴書・自己PR文―転職者向け

  • 作者: 加藤 雅子
  • 出版社/メーカー: インデックスコミュニケーションズ
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  • メディア: 単行本

企業人が伝授する完全就職ガイド〈2003年度版〉

  • 作者: 小寺 次夫
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
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  • メディア: 単行本



      


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https://blog.goo.ne.jp/badmintonmusume/e/7834b055fea

*#3741 部活指導の先生たちへ:指導の仕方を考え抜いていますか?May 18, 2018
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-05-18