広報「根室4月」が来た、今回から「広報ねむろ」ではなく漢字に変わったので市の広報ではないと思った。最初のページには新年度にふさわしい記事、市長の市政方針が載っている。その中からおやっと思った語彙を冒頭部分から二つだけとりあげる。いちいち言葉尻をあげつらうつもりはなく、その奥に潜む問題に光があてられたらいい。若い市役所職員の皆さんが30年後に同じ愚を繰り返さないようにと思って書いている。

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…本市は、都市部に先行して生産年齢人口が減少し、経済の主力である中小企業等では、深刻な労働力不足が生じています。
 食品製造業、交通事業者、医療・福祉・介護、建設業、いずれの業界とも、一貫して人手不足であります。
 こうした構造的な課題には、関連した事業者や行政のみならず、官民が真正面から向き合い、ともに将来を展望していかなければなりません。
 この40年余り、雇用環境に起因して、若者の流出に歯止めがかかっていない現実があります。
 「安定した雇用」、「相応の賃金」、「誇りをもてるやりがい」、この三要件を如何にして実現していくのか、その対策が求められているところであります。
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 政策を具体化するのは、国ではなく地方自治体であり、地元に根を張った企業等であり、わたしたち「市民」です。
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 お気づきだろう、太字の部分がおやっと思った箇所である。
 「あなたとわたし」というときは、あなたが先でわたしは後だ。「あなたたちとわたしたち」というときもそうである。それは英語でも同じで、You and Iとは書くがI and youとは書かないのが作法である。「官民」と民間人が使うならまだあるだろう、しかし、官のトップである市長が「官民」と施政方針に書くのは言葉の使い方にいかにも常識がない。市長の市政方針原稿だから「民と官」と書くべきだ。
 ついでに言うと、最初の「本市」というのもいただけない。こういう用例はあまり見たことがない。大辞林を引いてみたら、「ホンシ」には「本旨」「本志」「本師」「本紙」「本誌」の5つの用例が載っているが、「本市」は記載がない。そのまま「根室市」とやるか「当市」とすべきだろう。ちなみに「当市」もまた大辞林には項目記載がない。しかし、ビジネス文書で自分の会社のことを「当社」とするのは普通のことで、社員向けにも、お客様や取引先向けにも使える中立的で便利な語彙である。
 それでは「弊社」もあるから、「弊市」はいいかというと、市長が市民向けに書く市政方針原稿ではよろしくないのである。「弊社」という言葉は取引先やお客様向けには使うが、社内向けには使わない。市長は公僕として根室市に仕えているのだから、市民向けに「弊市」という言葉をつかうべきではない。一段下げた言い方が「弊市」であろう。ここではたんに「根室市」とするか「当市」がいいのである。
 文書には書いた人の語彙力が出てしまう。3期目にしてこういうレベルの施政方針では困る。足りないのは若者だけではない、市長となるべき人材も足りないのである。
 複数の上場企業あるいは上場準備中の(そのご店頭公開上場済み)企業で3000件以上の稟議書や購入協議書、ビジネス文書を見てきたが、文書能力の低い者は概して仕事の能力も低い。市長が助役時代、そしてそれ以前にどういうレベルの仕事をしてきたかが、たったこれだけの施政方針文章からうかがい知ることができるのである。
(2期は無投票当選、3期目はようやく選挙になったがにわかに立候補した女性の東京都目黒区議、それでも現職(8456票)の半分以上の得票(4646票)を得た。地元の対立候補が3期続けて出なかったということは、市長の器をそなえた人材が居ないのだろうか、根室の行く末が心配になる。)

 たったこれだけの文で2箇所気になった。これ以上書くと言葉尻をあげつらうことになるのでやめておく。次の世代を担う若い人たちは中高時代は一生懸命に勉強し、社会に出てからも勉強を怠らず、正直に誠実に仕事をし続けてもらいたい。スキルは年々歳々あがっていく。どうやらそうはしなかった者、学ぶべき反面教師の姿がここにある
 ebisuはこの「市政方針」を読み、裸の王様という寓話を思い出してしまった。「市役所村の住人」はだれも「王様は裸だ」と言わない。

 高校を卒業して市内で就職先を見つけて根室で暮らす若者たちでも、しっかりした先輩や上司に鍛えられたら、30歳になるころにはきちんとした体裁のビジネス文書が書けるようになるし、一人前の仕事人になれる。高校時代は勉強を一生懸命にすべきだが、そこを部活ややる気が起きなくてスルーしてしまった若者は、正直に誠実に仕事をして、その都度必要な本を読み続けることでスキルを磨いてもらいたい。大学行かなかったからと泣き言をいうのはみったくナシだけだ。社会人になってから大いに勉強すればいい、そして5年10年間努力を続けて根室を担える能力を備えた立派な大人へと成長してもらいたい

 お粗末な「市政方針」の内容については、次回、簡潔に問題点をメモしていく。

 根室市の将来に関わることだから、市民の皆さんはどうか「広報根室4月号」の施政方針を熟読いただきたい


<余談>
 60年以上の歴史のある大企業の課長職には文書能力の低い者がまざるが、部長職の文書能力は比較的高い。ある程度の文書能力がなければ稟議書は通らないから、課長職から部長職への昇進で自然に淘汰されてしまうのだろう。
 そういう目でこの「市政方針」を眺めると、できの悪い課長職の作成文書に見える。言葉が空疎で有効な具体策も期限もない、問題点があるのみである。民間企業は問題を増やすために人を雇うのではない、解決するために人を雇う。
 何をいつまでにやるのか、それがはっきりしない「市政方針」には合格点はやれない。わたしが上司なら最初の4分の1くらいに朱をたくさん入れることになるだろう、後はばかばかしくてやっていられない。「これではダメだから最初のほうだけ朱を入れた、参考にして2日間で書き直しておいで」と伝える。こういうレベルの管理職には優秀な部下も権限も預けられないから、ラインの管理職から外すことになる。部下をつけずにスタッフとして働いてもらう。

<余談-2>
 もう何年前のことになるか、根室に内閣総理大臣が来たことがあった。その折に市役所建物に大きな垂れ幕が掛かった。
 「歓迎 内閣総理大臣様」だったか、「歓迎 ○○内閣総理大臣様」(○○の部分は氏名)だったか忘れたが、テレビにも映った。敬称に様をつけて恥を全国にさらした。こんなことも市役所部長職や市長がチェックできなかった。いや、やったのは部長職だったのではないか。
 部長職はある程度の幅の教養や常識が必要なのだが、人材が居ないのか課長職すら任せられないような人材が部長職のポストに就くことがあるようだ。勤務医を騙って品の良くない投稿を弊ブログにした市立病院管理職がいる。ブログ・ニムオロ塾があるのを知っていたら根室には来なかった、ニムオロ塾があって腹が立つから市立病院をやめようと思っている、責任はebisuにある、そういう内容だった。勤務医を騙って投稿するようなお下劣な管理職まで居たが、いったい根室市役所の管理職はどういう基準で任命しているのか訊いてみたい気がする。
 いまは大丈夫だろうか?市役所の管理職は、定型外の仕事や部下の指導ができているのだろうか?
 若い職員皆さん、研鑽を積まないと、50歳を過ぎて市役所部長職となり同じような愚を繰り返すことになるからご用心。

*4月11日現在、広報根室は市役所のホームページにまだアップされていません。
http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/0/C5BA49B257175EBA492570C300446F71?OpenDocument

*#3022 平成27年度根室「市政方針」論評  Apr.11, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-11-1



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