標題は、1月13日のNHKラジオの番組「ビジネス展望」で経済評論家の内橋克人氏がとりあげたテーマである。最初は彼の論をそのまま取り上げて紹介し、2回目はさらにその論を前に進めてみようと思う。

 2008年 1億2800万人
 2040年 1億人
 2060年 8600万人
 2100年 5000万人

 社会保障人口問題研究所の推計データの端数を丸めてある。1900年(明治33年)の人口が4385万人、1920年(大正9年)の人口が5596万人だから、百年をかけて人口のピークに登りつめ、そしてさらに百年をかけて元に戻るのである。
 百年をかけて人口増加と経済の高度成長を成し遂げ、そしてその後に続く百年間でその座から降りるように人口が縮小していくというのが日本の姿。

*「人口増加率推移折れ線グラフ」
https://www.google.co.jp/publicdata/explore?ds=d5bncppjof8f9_&met_y=sp_pop_grow&idim=country:JPN&dl=ja&hl=ja&q=%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E6%8E%A8%E8%A8%88

*「1872年~2011年人口推移」2013年度版人口統計資料
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2013.asp?fname=T01-01.htm&title1=%87T%81D%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%90l%8C%FB%91%9D%89%C1%97%A6&title2=%95%5C%82P%81%7C%82P+%91%8D%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%90l%8C%FB%91%9D%89%C1%81F1872%81%602011%94N

*「2010~2060年 年齢3階層別・総人口J推計」
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/1-1.xls

*「2061~2110年 年齢3階層別・総人口J推計」
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/s-kekka/s1-1.xls


 今年の成人人口は119万人だった。

【2025年問題とは何か?】
 内橋氏は2025年問題をとりあげている。あと11年後に何が起きるのか?何も起きはしない、ただ人口は高齢化の度合いを強めるだけである。わたしたち団塊世代が75歳になるのがその近傍であり、数年間にわたって毎年220~240万人が後期高齢者の仲間入りをすることになる。団塊世代が現役からの完全撤退することで生産年齢人口が激減する。
 2025年には団塊世代が後期高齢者の仲間入りをすると同時に、生産年齢人口は総人口の半分となる。総人口から子ども(0~14歳)と老人を引けば、残りが生産年齢人口であるから、人口の半分が子どもか老人、そしてその8割が老人となる。人口の4割が65歳以上の老人となる。
 2025年をすぎると、最大に膨らんだ後期高齢者は死んでいくから、人口は急速に減少し始める。地方も都市も同時に急速な人口減少を迎えることになるのだが、それまであと10年しかない。こうした現実が目前に迫っているのに、安倍政権は「成長路線」を叫ぶばかりで現実に目をつぶる。生産人口がこれから20年間でおおよそ2000万人も減少するのであるから、経済規模の縮小が起きるのは当たり前のことで、「成長路線」なんてものは幻想にすぎない。人口構成の変化を冷静に観察すれば、アベノミクスの三本目の矢は存在しないのである。

【人口減少の原因】
 人口減少に原因として内橋氏は問題点を二つ挙げている。
 一つ目は人口が都市に集中したことが問題だったといういうこと。典型例として夕張市を挙げている。
 二つ目は子どもの絶対数の減少である。その原因として結婚できない若者が増えていること。ブラック企業や非正規雇用拡大をその理由に挙げている。
 労働力不足から、移民受け入れをするような動きがあるが、これは若者たちをますます追い込むことになると警告している。

 内橋氏はの結論は平々凡々、経済の根っこのところに国民の一人一人を大切にしないといけないのだいう考えをおくべきだいうこと。わたしたちはそんな簡単なことがまるでできない経済社会にしてしまった。

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【数字情報の捕捉】
 いくつか数字が違うと思われる点があるので、数字を挙げておこう。2025年に生産人口が総人口の半数になるというが、次の資料では56~58%付近にあるように読める。折れ線グラフで示されており、推計割合が書いてないが50%よりは60%に近い。別の資料には、8000万人の生産年齢人口が7000万人へ減少すると書いてある。11年間で生産年齢人口が1000万人縮小すれば、若者の失業問題は一応解消するが、非正規雇用問題はそのまま残る、それが大問題なのだ。正規雇用と同じ労働をさせ、給与が半分以下の非正規雇用は卑怯な雇用形態(卑怯でズルイ経営)であるという意識を醸成する必要があるように思う。こういうコンセンサスを創れるか否かが問われている。

*「日本の人口推移」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf
*「生産年齢人口は2025年に7000万人」(年齢人口推計結果の概要)から
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/con2h.html


【現代版「姥捨て山」の現出】
 認知症高齢者は受け入れ施設があまりない。老健施設は認知症の老人は受け入れない。国の医療行政は医療が必要な高齢者の受け入れ施設である療養型病床群のベッド数をこの十数年間で半減させている。財政が苦しいから医療費を減らすために、施設介護のベッド数を減らそうというまことに姑息で貧困な医療政策を採用してしまった。自民党でも民主党でもその政策は変わることがなかった。一体誰のための政治なのだろう?
 根室市には療養型病床は1ベッドもない。グループホーム18ベッドだけ。最近もう一つ増えたか増えるかしているから、人口2.8万人で36人分だ。老人人口の10%と考えると根室市の場合は現在8000人×0.1=800人である。2025年にはこれが7割増えるとしたら、1300人になる。老人医療の貧困は根室市に何をもたらすのか?
 生活感のある話しを書いておく。わたしは5年前に認知症がはじまった母親と暮らしていたので、それがどういうことを意味するのか痛みを伴って想像することができる。しっかりしていた母の人格が目の前で壊れていくのである。悲しいが現実だった。夜中の徘徊、見えないものが見えてしまう幻視症状、トイレ、お風呂、どれをとってもたいへんな苦労を伴う。ワイフもわたしも精神的にも肉体的にもギリギリのところへ追い詰められていた。しかし、母親の介護を投げ出すわけにはいかない。さいわい、グループホームが空いたのでお願いすることができた。そのグループホームも医療が必要になればいられない。母は1年半後に脳梗塞を起こし、精神科の病院のお世話になった、療養病床がないためである。
 精神科の病院と療養型の病院では介護のレベルがまるで異なる。わたしは300ベッド弱の療養型病院で一時期常務理事をしていたことがあるので、特例許可老人病院と療養型病床群の病院の介護について自分の目で見ている。理事長や副院長、老婦長から院内で実践していた「縛らない看護」の徹底について、さまざまな実例を聞かされた。志のある介護は戦いでもある。
 母は脳梗塞を起こし、食事が摂れなくなってグループホームから地元の精神科の病院に転院して半年後に亡くなった。3年くらいの間に認知症が進み徘徊が始まってからがたいへんだった。あと20年もすればわたしたち団塊世代の10%が同じことになる。いま40代の人たち、老人医療は他人事ではない。

 認知症高齢者数に関する推計値、(  )内は老人(65歳以上)人口に占める比率を表す。施設介護のキャパはまるっきりないが、いったいどうやってケアするのだろう?介護するほうも介護されるほうも修羅の日々が重数年後にくることだけは確実だから、団塊世代は子供たちのために早く死んであげるしかないよ。食べられなくなったら、医療は不要だから、そのまま死なしてもらえるように必要な法律や条令を整備しておくべきだ。看取ってくれる医師が殺人罪に問われたり、自宅で死んで司法解剖は嫌だろう?数字を見て、現実を直視し、必要な法整備をしておこう。現代版「姥捨て山」の状況が全国津々浦々で起きることになる。食事を断って死ぬのは何も苦しくないから心配しなくていい。家族に看取られながら自宅で死ねたら幸せではないか。幸せに死んでいく姿を子供たちに見せてあげたらいい。

 2010年度 280万人 (9.5%)
 2015年度 345万人 (10.2%)
 2020年度 410万人 (11.3%)
 2025年度 470万人 (12.8%)

*「介護度Ⅱ以上の認知症高齢者人口推計」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002iau1-att/2r9852000002iavi.pdf


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 次回は、なぜこのような急激な人口縮小が起きるのかについて分析してみたい。何の役にも立たぬ知的好奇心を充足するだけで充分だ。


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*#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-17

 #2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-16

 #2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10

 #2554 「日本の経常収支と円を考える」 東洋大教授・中北徹の論 Jan. 3, 2014 
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 #2549 アベノミクス批判 (2):内橋克人 Dec.31, 2013 
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 #2540 アベノミクス批判(1):『世界8月号』伊藤光晴論文 Dec. 23, 2013 
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*#2523 アベノミクスの行く末: 日本総研調査部長の論点 Dec. 9, 2013 
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  #2185 各論(3):'Abenomics' Jan. 24, 2013 
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 #2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04

  #2169 各論(1):国債暴落の可能性とその影響 Jan.2, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-02

 2168 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割(2):蔵相高橋是清暗殺 Dec. 31, 2012 
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 #2164 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割は何? 
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 #2158 自民党圧勝294されど第2の危機民主党惨敗  Dec.17, 2012 
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 #2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる 
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 #1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
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 #829 国家財政破綻の瀬戸際  Dec.12, 2009
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 #346 これから10年間の日本経済のシナリオ
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