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#2563 Common-law pairs OK'd for in vitro birth:結婚していない男女の体外受精承認 Jan. 13, 2014  [75.時事英語公開講座]

  気になる記事が出ていたので、紹介する。
  'common law'は「慣習法」という訳語を知っていた。法律として文章で定められた法律を成文法といい、慣習法は社会の慣習として定着しているルールのことを指すのだが、それでは意味が通じないので辞書を引いてみたら、「内縁」という意味があった。もう少し読めば、'those in common-law marriages' や、'common-law couples'と対比するように'legally married couples'が出てくるので、ああ、「内縁」だと気がつく。キー概念は何度も言い換えて出てきたり、対比的な用語が出てくるので、構わず読み進めるのがいい。全文にさらりと眼を通せば意味の見当がつくものだ。
 そういうわけで、あるところから、読書自体がが単語力強化になってくるし、用例ごと記憶に残るようになる。日本語の本の読書と事情はすこしも変らないのである。
 高校生は「ユメタン」をつかって単語の暗記をしているが、漢字検定用問題集で漢字の暗記をしているのに似たトレーニングである。
 シングル・センテンスで用例が示されているので、前後のテクストがない。用例は前後のテクストの関連の中におかれて、なるほどど腑に落ちる場合もあるから、コンテクストが示されたほうが使い方がよくわかるものだ。だから、日本語語彙を覚えるときには読書によって語彙拡張をしたほうが使える語彙の拡張という点からすぐれているということができる。英語も同じで、英字新聞を読むとか小説を読むとか、専門書を読むことで語彙拡張をするのが本筋なのだ。
 日本語と英語の語彙拡張のために、「ユメタン」の暗記とともに、興味のある分野の新聞記事や本の読書を勧めたい。
 高校時代はやることが多くて、じつに忙しいから、効率的にやる工夫ばかりでなく時間の使い方も工夫して、目標にあわせた勉強時間を確保したい。生活時間の見直しには北海道教育委員会が提供している「生活リズムチェック表」が便利だ。

*http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/sgg/checksheet.htm
(「生活全体編」の「中学生用」がいいだろう。全道の小中学生に配布した別のタイプの帯グラフ状のものがいいのだが、実績データはこのURLの表で記録してから、帯グラフをつくって生活時間の利用の仕方を見直せばいい。)

 それで本題だが、内縁関係にある男女(common-law pairs)に体外受精(in vitro birth)を認める方針を社団法人日本産婦人科学会(JSOG)が公表した。日本産婦人科学会は体外受精の適用基準を緩和したのである。

 進路を看護師や助産師、医師に定めている高校生にはぜひ読んで考えてもらいたい、もちろん大学生にも。
  これには生命倫理の問題だけではなく、日本の家族制度や社会の存立基盤の問題が絡んでいる。生命倫理の問題に関していうと、人間は生命の誕生に医学という武器でどこまで介入していいのか、ここいらで立ち止まって考えるべきではないだろうか。
 技術的に可能なこととやっていいことは別だということは広島や長崎に投下された原爆や福島第一原子力発電所のメルトダウン事故で学んだはずだ。技術的に可能なことをどこまでも推し進めて良いわけはない。

 未完に終わった『砂の惑星』という長編小説がある、物語の途中から人間は生殖能力をなくし、遺伝的にすぐれた者を選んで体細胞からクローンをつくるが、代を継ぐにしたがってだんだんおかしなことになる。
 子どもがほしい夫婦、子どもがほしい内縁関係の男女。人の欲望のままに生命を操作する領域が少しずつ拡大されつつあるように感じる。
 しかし、生命には人が踏み込んではいけない領域があるはずだ。線引きがどこにあるのかを決め、果てしない欲望をコントロールすることが必要な時代へ人類は突入したとはいえないだろうか。内縁関係にある男女へ体外受精の適用範囲を拡大することは、社会制度のあり方や生殖という人類の未来に関わる重大な問題を提起しているのではないだろうか?

http://www.japantimes.co.jp/news/2014/01/06/national/common-law-pairs-okd-for-in-vitro-births/
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Common-law pairs OK’d for in vitro births

Fertilization ban eased in line with Supreme Court's inheritance ruling

by Kazuaki Nagata

Staff Writer

The Japan Society of Obstetrics and Gynecology said Monday that it will officially allow those in common-law marriages to undergo in vitro fertilization, relaxing a longtime voluntary curb.

JSOG, which has about 16,000 members nationwide, will ease the criteria for in vitro fertilization in line with a September ruling by the Supreme Court that said a clause in the Civil Code that denies full inheritance rights to children born out of wedlock was unconstitutional.

The move may also prompt the health ministry to consider providing subsidies for the treatment to common-law couples, sources said. Currently, the treatment is not covered by insurance, but subsidies are provided to legally married couples in certain conditions linked to age and income.

The JSOG’s voluntary rule states that in vitro fertilization can be performed on “married husbands and wives who strongly desire to bear children.”

Hideo Aono, an JSOG official, said the term “married” would be dropped from the rule, which was written in 1983 when the first in vitro baby was born in Japan.

On top of the unequal inheritance rights that children born out of wedlock could face, being husbands and wives basically meant they were legally married back then, so the JSOG had apparently not qualified common-law married couples for in vitro fertilization, Aono said.

The relaxed rule will also help doctors, because privacy issues had made it difficult to confirm whether couples are legally married, and thus it was left up to physicians to determine the status of those seeking treatment in lieu of screening them with questions and formal documents to completely make sure. The submission of a family registry has not been mandatory when seeking in vitro fertilization.

The relaxed criteria are a way to apply the Supreme Court’s decision to current realities, Aono said.

A married couple with a combined income below ¥7.3 million can qualify for subsidies for in vitro fertility treatment.

Information from Kyodo added.

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fertilization: 受精
the Supreme Court: 最高裁判所
inheritance right: 相続権
Civil Code: 民法
wedlock: 婚姻、婚姻関係にある
unconstitutional: 違憲の
leave up to: ~任せにする
physician: 医師
in lieu of: ~の代わりに
submission: 提出


 面白い数字が出ている。日本産婦人科学会に所属しているドクターが16000人いると書いてあるから、年間120万人生まれるとしたら、ドクター一人当たり75人である。もちろん、全員が産科を担当しているわけがないが、7割が担当しているとしたら、一人当たり107人とりあげることになる。市立根室病院から産科病棟が消えて何年たつのだろう?年間160人は生まれているから、とくに初産の妊婦は不安だろう。

 さて、本題に入ろう。日本産婦人科学会は次のように体外受精適用の自主規制基準を厳格に定めていた。

The JSOG’s voluntary rule states that in vitro fertilization can be performed on “married husbands and wives who strongly desire to bear children.”

 米国では精子バンクにさまざまな分野の優秀な人材やさまざまな身体条件ごと精子の補完と売買がビジネスになっている。結婚したくない女性が、イケメンで優秀な頭脳の男子の精子を購入して人工授精が可能になっている。こうして「オーダーメイド」方式ですでに数千人が生まれている。兄弟姉妹がそれと知らずに惹かれあって結婚することもありうる。生まれてくる子どもに先天障害が生じてはじめてそれと知る。DNA検査をすれば兄弟姉妹であることはわかる。

 日本はいろんなことをなし崩しにするのが得意だが、わたし達は欧米の後を追いたいのか、それともそういう欧米の価値観とは別の価値観を維持するのか、日本人はよく考えるべきだと思う。

 竹田恒泰『古事記完全講義』を読んでから、何かを考えるときに『古事記』に書かれた考え方にもどってチェックする必要を感じている。源氏物語を読んでも、側室の紫の上とあとから来た正妻には厳然たる制度上の差があるし、もちろんその子どもに関しては相続について明確な線引きがなされていた。
 生命倫理の問題も家族制度の問題も、社会の存立基盤の根幹に触れる問題でありきわめて重大な問題なので、日本人は日本的価値観に立脚して考えるべきで、男女が本来もっている役割の相違を無視した欧米の薄っぺらな男女平等の価値観に左右されてはならないのではないか。
 日本の伝統的価値間は男女の役割の相違を認めるところから出発している。男女の役割の差とか家族とか、西欧とはどこかで根源的に考え方が相違している。
 中学生は「公民」で1999年制定の「男女共同参画社会基本法」という法律を習うが、これも見ようによっては、性差を無視して、女を男並みに過酷に働かせようという悪巧みにもみえる。

 よくはわからぬが、こういうこと(=体外人工授精)をビジネスにしてはならないと本能がどこかで警告を発しているような気があなたにはしないだろうか?
 この問題に関しては日本産婦人科学会はビジネスの当事者であり利害関係者であるから、ジャッジは別の機関でやるべきだ。最高裁が法の下の平等の観点から非嫡出子の相続権を嫡出子と同じという判例をつくったことで、日本産婦人科学会が、その線に沿うように(in line)学会の自主規制基準を緩和してしまった。こういう日本人の価値観に関わる問題を最高裁に判断を委ねていいものだろうか?
 相続に関する争いが起きないように、嫡出子と非嫡出子には相続上のの扱いで明確な差がありそれを社会全体が千数百年間認めていたことは事実である。それは争いを避け、財産を散逸させない工夫だったのではないか?そして財産を相続する者には財産の維持、両親の介護や祭祀を含めてそれなりの責任や義務が課せられていた。相続する本家嫡男にとって、相続財産は預るだけであり、次代へそのまま渡すべきもの、当代が処分してはならない。家業がある場合には本家長男(嫡男)は職業選択の自由すらない。天皇家にそれが象徴的に現れているように思える。

 内縁関係の男女間の対外人工授精はビジネスとしても、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」とはならないように思える。
 縄文以来続いてきた日本古来の家族制度や社会制度の土台を崩し、日本人の将来を危うくするような怖れをあなたはこの問題に感じないだろうか?
 いやいや、すでに相当崩れてしまっているのである。日本人が日本列島で2000年にわたって育んできた価値観を次々に放棄して、西欧の後塵を拝するのはどこか滑稽ですらある。

(このあいだ弊ブログでやったように、この問題について「JK対話}をやったらどうなるのだろう?
 基礎学力問題対話(1)~(4) #2555, #2556, #2557, #2558
面白いかもしれない。)


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  • 発売日: 1987/04
  • メディア: 文庫

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 この長編シリーズは17冊あるが、未完である。書いている途中で著者フランク・ハバートが亡くなった。新展開の予告めいたことが最後の巻にほのめかされている、続編を読みたかった。フランク・ハバートは、造物主としての神を想定したようにみえるがそれは従来のそれとは何か違うものをかんじさせ、謎である。
 この本は漫画の本のようにリラックスして読めるのだが、科学技術の発展の究極にきわめて象徴的な問題、水と命と神を措定している。
 小説は書いているうちに作者の手を離れて、勝手に主人公達が動き出すことがあるようだ。そして作者にいままで気がつかなかった問題を投げかけてくることがある。書き続けることでしか答えは見つからない。フランク・ハバートは答えを見つけたくて書き続けていたのかも知れぬ。もう5年ほど生きて、続編を書いてもらいたかった。いよいよ問題の核心へ迫ろうというそのときに、天が彼を召した。描いてはならぬ領域があると言わぬばかりに...

 さて、原文はどうなのだろう?分量は'Gone with the Wind' の3倍くらいあるし、哲学的な問いかけが頻繁に出てくる。どのように読むかで日本語訳がまるで違ってくるのだろう。この本に解説をつける形で哲学書が書けそうだ、だれかやってみせてはくれないだろうか?

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