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#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014 [91.経済]

 前回(#2565)では経済評論家である内橋克人氏の「人口減少社会論」を紹介した。
 内橋氏は2025年に団塊世代が次々に75歳を迎え、後期高齢者が激増し、生産年齢人口が急激に縮小していくことに警鐘を鳴らしている。あと10年しかないと彼はいうが、団塊世代が65歳をすぎる昨年から生産年齢人口の急激な縮小がスタートしている。生産年齢人口の急激な減少は未来形から現在進行形に変ったのだろう。
 内橋氏は人口減少の原因を二つ挙げている。一つは人口が都市に集中したこと、もう一つは子どもの絶対数の減少である。
 人口の都市部への集中は地方から中卒の集団就職が始まる昭和30年代から10年ほどの期間に過ぎない。その後の都市部への若者の流出の様相は異なる。
 1990年代から就職氷河期と非正規雇用が拡大が重なり、若者が結婚できないような状況が生まれている。内橋氏は少子化の有力な要因として、非正規雇用(40%)の拡大と、ブラック企業の問題を挙げた。

 人口減少についてはもうすこし大きいスパンで考える必要があるのだろう。百年をかけて人口が2倍となり、その後百年をかけて半減するというのは、縄文時代以来1万2千年の日本列島の歴史でおそらく初めての経験である。日本は「大転換期」を迎えているのだから、そうした文脈でも物事をとらえる必要がある。

 それは少し置いておくとして、昭和30年代の集団就職の時代には職を求めて中卒が都市部へ工場労働者や中小企業の働き手として大量に流れていった。昭和30年代の高度成長を支えた原動力であったのだろう。
 このころの大卒は地元に戻って来たものが少なくない。40年代になり、今度は大学進学者が増えて高校を卒業した成績上位の者たちが都市部の大学へ進学し、そのまま就職して戻らない時代が今に続いている。地方から都市部への大量の頭脳流出時代といえるだろう。地方は地元経済を支える優良な人材を失い衰退の一途をたどることになった。都市部の発展と地方の疲弊が同時進行したのである。
 80代90代の地元で活躍していた人材層と現在町を担っている50代60代70代をくらべてみると、その質の劣化に唖然とする。文学博士である考古学者のK.Y氏、その同級生で歯科医であるT.G先生は北国賛歌の作詞者で、少し若かった歯科医のF.S先生は昭和30年代頃に根室新聞に時代小説や現代小説を書いておられた。K.Y先生とT.G先生のお二人は根室商業の出身である。大地みらいの前身の根室信用金庫の幹部は根室商業出身の人たちがほとんどだった。この時代は高卒にも優秀な者が多く、そして地元に残ったから人材の自給自足が可能な時代だった。
 昭和30年代前半は豊ではなかったが、希望のある時代の幕開けであり、昭和30年代後半はその期待や予感を上回る豊かさであふれた時代であった。

 昭和の時代は都市部が地方の生き血を吸って繁栄していたが、あまりに長くやり続けたために、地方が枯渇することで優秀な人材供給の流れが細くなってしまった。平成を迎えてようやく、わたしたちは地方が衰退すれば都市部も衰退せざるをえないことに気がつき始めたのである。
 都市部への人材供給を支える力がおおよそ最盛期の四分の一となり、都市部の繁栄を支えきれなくなりつつある。地方の人材供給力が枯渇し始め、都市部も人材を自給できないとなれば共倒れしかない、それがいま、平成26年の現実なのだ。

 反省を踏まえて疑問が一つある。わが国において、都市部と地方の共存共栄は可能だったのだろうか?

 こうした弊害を見通すためには、長いスパンでものごとの推移を予測する智慧が必要だが、わたしたちはそうした智慧を欠いていた。目の前に展開することどもを直視しながら、同時に長い大きなスパンで物事を考える必要があるということだ。

 いまはたしかにまずい状況だし、これから30年間は最悪かもしれない。だが、希望のない30年間ではない、次の30年間には希望の光が見えている。だから再生への道程と言い換えられる。日本列島にしっかりした倫理観をもち、国内でのほとんどの製品の生産体制を整え自給自足を主体としながら、住民が幸せに暮らす日が来る。
 1.28億人にまで増えた人口が90年後には5000万人まで減少するのは悪いことばかりではないだろう。一人当たり資源量が2.5倍になるということだから、人口減少を織り込みながら、無理をせずに持続可能な経済社会を創ればいい。
 人口減少を前提として、今後100年間の戦略を創ればいいのである。もう、大きな公共投資はいらぬ。インフラの維持にお金を使うだけでいい、拡張する必要はないのだ。

 そうした観点から現在の諸政策をレビューするとしたら、人口縮小だから、粛々と撤退戦を戦えばいいのであって、成長路線は幻想だと結論を出す。東京オリンピックは辞退すべきで、巨大施設は要らない。津波対策のコンクリートの防波堤も要らぬ。地方の農山村は次々に消えていくのだから、何を守ろうというのだ。百年に一度の大きな津波が来るときはいっせいに高台へ逃げればいい。逃げられるような手段を講ずることを考えたらいい。防波堤は宮脇昭翁の提唱する森の防波堤をつくればいい。道路も新しいもの入らぬ、古いものを整備して使えば充分だ。
 こうした見直しをすれば国や地方の予算規模は3割は削れるだろう。それでも足りなければ増税を考えたらいい。

 TPPはやるべきではない。なぜなら国内から雇用を奪うことになるからだ。日本が目指すべき方向は強い管理貿易によって、若者たちに安定した職を保障することだ。多少貧乏でも安定した職があれば、結婚もできるし、子どもを数人育てられる。
 自由貿易はリカードは比較生産費説がその根拠だろう。彼の理論を推し進めると生産費の低いところへ生産が国際間移動していく。それの極みがTPPである。資本力が大きく世界中から頭脳を集めるグローバル企業が圧倒的に有利な世界市場を築くことがTPPの目的だ。そんなものとはおさらばしよう。日本の国益にそぐわない。工場労働を前提とするマルクス経済学ともおさらばだ、日本は職人仕事の国である。自国民に安定した職を保障することを優先しよう。自国でつくれるものは生産費が高くても自国でつくればいい。自国民が品質管理をしてつくった生産物を消費すればいい。自国で生産できないものだけを輸入したらいい。世界中の各国がそうして、自国民に安定した職を保障しよう。困るのは国籍のないグローバル企業とそれが本拠を置く米国だ。

 これから百年間で日本の人口が半分以下になり5000万人となる。それを前提として、戦略をつくり、そこから現在の政策を見直す。そうしたことにまったく無知だったかあるいはわかっていても目の前の私利私欲に負けてごまかしてきたのである。
 人口推計だってつねに出生率を過大に見積もり、年金財源があるかのようにごまかしてきた。人口の年齢構成も、中位ではなく低位の出生率で計算すれば現実に近いものがえられたのに、そうはしなかった。先に何が来るかはわかっていたのに、公共事業や天下り先にお金を流すためにごまかし続けてきたのである。そもそも公的会計自体がインチキで、たとえば、根室市立病院は年鑑17億円もの赤字を出しているのに、公的会計上では黒字ということになる。こういうゴマカシはやめるべきだ。
 原子力発電も同じことだ。最終処分方法や最終処分地すらないのにあるかのごとく装い、計算をごまかし続けてきた。そのコストや事故処理コストをいれたら、原子力発電は百倍ものコストなのに、東京電力福島第一原発で4つの原子炉建屋が爆発しメルトダウンを起こして3年もたつのに、政府は民意に抗って、一部の利害関係者の意見だけを聞きいまも原発再稼動をしようとしている。

 私利私欲を離れ、ゴマカシをしないこと。私利私欲がまじれば常に大局的な判断を誤ることになることを肝に銘じるべきだ。
 わたしたちが残すべきは、高いレベルの倫理観とあらゆる分野に根付いているすぐれた職人仕事文化のふたつである。そのためにはしばらく努力が必要だ。日本列島で1万2千年かけて育んできたシツケの仕方や倫理観や仕事観はずたずたになったが、こわれた倫理観はいま取り戻さなければならない。
 百年、千年単位で日本列島にわたしたちの子孫が幸せに暮らすことができるように、いま私たちができることはなんなのかよく考え行動すべきだ。現在の生活に不利益があったとしても、子々孫々に恥じない生き方をこそ選びたいもの。


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*#2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014 
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 #346 これから10年間の日本経済のシナリオ
 
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