第2回は、①'Cobuild English Grammar'のsubjunctiveの説明と英語の問題集②'Grammar In Use' を材料に接続法と「仮定法」に線引きを試みます。一つではなんですから、Leechの③"A communicative Grmmar of English"も俎上に上げます。

 いまわたしの頭の中に、「假定法とは何か」という問が立てられています。假定法とはこれこれであると、概念を定義できれば満足できそうです。基本型はすでに'Boys be ambitious.'で見たように動詞の原型を使うことにあります。

 ①の索引をみるとsubjunctiveには四つの項目ナンバーが割り当てられています。基本は'7-40'(324㌻)にあります。
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7-40 When someone makes a suggestion about what someone else, not their hearer, should do, you report it by using a 'that'-clause. This clause often contains a modal, usually 'should'.(誰かが(話者ではない)他の誰かになすべきことを提案をする場合に、that節を使って伝える。このthat節はしばしば叙述の法の助動詞―通常はshould-を含む)

  He proposes that the Government should hold an inquiry.
  (政府が調査すべきだと彼が提案した)
  It was definite enough for a doctor to advise that she should have treatment.
  (彼女が治療を受けるべきだと医者が言うのはあたりまえだった)

  Note that this structure can also be used to report a suggestion about what the hearer should do. Consider the example; 'Her father had suggested that she ought to see a doctor'; her father might have suggested it directly to her.
 (ここで留意すべきは、この構造は聞き手が何をなすべきかということについて一つの示唆を伝えられるということ。具体例を挙げると、'娘は医者の診察を受けたほうがいいと父が勧めた';父は娘に直接それを(医者の診察を受けるべきだと)勧めたのかもしれない。)
  If you do not use a modal, the result is more formal.
 (法の助動詞を使わなければ、結果はもっとフォーマルになる)
  Someone suggested that they break into small groups.
 (分かれて小集団になろうと誰かが勧めた)

 Note that when you leave out the modal, the verb in the reported clause still has the form it would have if the modal were present. This use of the base form is sometimes called subjunctive.(留意すべき点は、法の助動詞を外すと、被伝達節の中の動詞は、法の助動詞があればあったであろう基本形のままである。この基本形の利用がいわゆる亜型接続法である)

 It was his doctor who advised that he change his job.*
 (仕事を替えたほうがいいと勧めたのは主治医だった)
 I suggested that he bring them all up to the house.
 (彼がそれを全部家に上げるべきだと提案した)
 He urges that the restrictions be lifted.
 (その制限は解除されたと彼が断言した)

 Here is a list of reporting verbs which can be followed by 'that'-clause containing a modal or subjunctive.
(リストに挙げた伝達動詞は、法の助動詞あるいは亜型接続法を含むthat節が後続しうる)

  advise   agree  ask  beg  command  decree  demand
  direct  insist  intend  order  plead  pray  prefer
  propose  recommend  request  rule  stipulate
  suggest  urge 

 Note that 'advise' , 'ask', 'beg', 'command', 'order', and 'urge' can also be used with an object and a 'to'-infenitive, and 'agree', 'pray', and 'suggest' can also be used with 'that'-clauses without modal.
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 並べられたリストにある21個の動詞群の場合に、that節でshouldを使うが、subjunctiveはshouldを外した形だという説明です。わたしは順序が気になる性質でして、こういう説明だと基本はshouldであり、shouldが抜けた特殊ケースがsubjunctiveであるという説明順序になっています。
 一般 ⇒ 特殊

 形の上から見るとそういうことが言えるようです。しかし、基本はむしろsubjunctiveのほうで、shouldのほうが、基本から派生した表現ではないかという気がするのです。現実空間と反現実の仮想空間に橋を渡してつなげているのがsubjunctiveの機能です、わかりやすいでしょう。
 これを話者の心的状態を表す助動詞を使って同じ意味を表現するとしたら、shouldが最適になります。「当然~すべきだ=まだしていない」、「当然~すべきだった=しなかった」という二つの文が関連をもって「接続」されます。
 わたしはsubjunctive(亜型接続法)を演繹的な方法で説明しようとしています。それには出発点を措定しなくてはいけませんが、それが三人称で'基本形'を使う表現形式であると仮定します。そうすると圧倒的に多いshouldの用例と他の法の助動詞を使った用例が演繹的に説明可能になります。かように概念相互の関係を比較検討すると、subjunctiveの出発点に何を措定すれば統一的な説明ができるのかがわかります。subjunctiveの機能を相反する現実空間と仮想空間をつなぐものととらえ、出発点に三人称・動詞の基本型をすえることで、shouldだけでなく他の助動詞を用いた反実仮想の用例がすんなり定義できます。

 いま、「同じ意味」と書きました、これ案外重要です。同じ意味のものを同じ概念と考える立場からは意味が同じでその表現型が違うということになります。他にも同じ意味で異なる表現型のものがあれば、同じ概念に包摂できます。
 たとえば、subjunctiveを「反実仮想」という概念範疇にある表現ととらえると、ずいぶんと間口が広がります。
 説明を繰り返すと、現実にはありえないこと、あるいは過去の現実とは反対のことを想像して言うときは、言うこととそれとは逆のいまのありさま=現実、あるいは過去にあった出来事が頭の中に浮かんでいます。その二つが関連をもってつながれているというのがsubjunctiveの正体です(ドイツ語ではconjunctive)。すなわち、反実仮想。

 順序が気になると言いましたが、shouldを基本形に措定すると、その脱落から本来のsubjunctiveは説明がつきますが、「反実仮想」は他の(心的状態を表現する)叙法の助動詞(could、would、might)も使用可能ですから、そちらの説明が出来なくなります。shouldはシェアーが圧倒的に多いだけで、反実仮想という点からは他の助動詞と同列なのです。

 動詞の基本形を使うのが本来のsubjunctiveと定義すると、そこから類似の意味、類似の反実仮想のセットが想定できる文章はすべてsubjunctiveに含めて考えることができます。if-Clauseは両方セットでそろった表現形式でsubjunctiveの特殊な形態と定義できます。
 

 ここまでがわたしの現在地点でのsubjunctive(亜型接続法)の結論です。案ずるより産むが易し、きれいに整理できたようなので、みなさんのご批判を仰ぎたいと思います。

 あと3点の検討が残っています。
 基本的な概念定義が終わったので、もう半ばどうでもいい問題ですが、問題集'Use In English'でsubjunctiveとif-Clauseがどのような章立てになっているのか、そして高校英文法教科書ではどのような説明になっているのかということです。あ、ひとつ忘れてました、Leechの③"A communicative Grmmar of English"を、これはどうしようかな、必要なさそうな気もしますので、書きながら考えます。
 三つ目はsubjunctive moodに関する国文法学者の説明を紹介したいと思います。なんと後志のおじさんと同じ意見の国文法学者を発見しました。50年も前にsubjunctiveは「反実仮想」で日本語では反実仮想の助動詞「ましかば...まし」がそうだと解説しています。こんなこと国文学者でなければなかなか気づきませんよ、後志のおじさんの直感に脱帽です。
 後志のおじさんがsubjunctiveは反実仮想だ何度もというので、手元にある数冊の国文法関係の本を調べていて、あっと、驚きました、いたんですね、同じ見解の学者が。日本語にはsubjunctive専用の助動詞があった。

 後志のおじさんは英文法と日本古典文法を比較して眺められる知識の幅の広さをもっています、そこから斬新な問題意識がうまれる。Hirosukeさんはいままでまったく耳にしたことのない視点を呈示して解説してくれます、合格先生は英文法でも国文法でも智慧袋の中からなんでも自在に取り出してみせてくれます、物事を幅広く見られるというのは面白いでしょう?
 高校生と大学生に伝えたい、一生懸命に勉強しなさい、そうすればたくさん疑問が湧くから、好奇心の赴くままに本を読みなさい。さまざまな分野の情報を脳にインプットしておくと、それらが脳の中で自然に混ざり合って発酵し、次第に熟成して美味しいお酒になるのです。

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【予定変更】13日午後7時追記
 Michael Swan "Practical English Usage"(Third Edition)に載っているsubjunctiveの解説を次回取り上げたい。



 コメント欄が英語雑談喫茶店と化している、本欄よりそっちのほうがずっと面白いよ、ちょっと覗いてみたら?

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*#2423 'IAEA members give grief over leaks' Sep. 28, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-29

 #2435 "#2423の一文解説" Oct.4, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04-1

 #2443 仮定法ってなんだろう?(1):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-09-1

 #2444 仮定法ってなんだろう?(2):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-1

 #2445 仮定法ってなんだろう?(3):コメント投稿欄での議論 Oct. 10, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-10-2

 #2446 仮定法とは何か(1) : Boys be ambitious. Oct. 11, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-11

 #2447 仮定法とは何か(2): 概念規定と基本型 Oct.13, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12

 #2449 假定法とは何か(3): Swanの説明 Oct. 14, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-13-1

 #2452 仮定法とは何か(4):国文法学者の見解 Oct. 16, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16

 #2453 仮定法とは何か(5) : 国文学者の見解ー2  Oct. 17, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-16-1




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