#2318で同じタイトルでわけのわからぬ予算総額を問題にし、放漫財政を指摘した。根室市は財政規模を縮小すべきで、国の補助金を当てにした法外な単価の建築はコストを厳しくカットすべきだ。
 市長は市債の発行限度枠8億円を2年続けて破り続けている。そして、なぜか市長の諮問委員会には市と取引関係のある業者が委員長になっている。そういう構造に支えられて根室市の予算が膨張している。わたしはこういう構造を根室の旧弊と呼ぶ、時を継いでこうした構造が繰り返し再生産されて根室の町は衰退し続ける。
 それぞれ論拠を明確にして論じたので、興味がわいた人はもう一度お読みいただきたい。

 #2318 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(1):広報ねむろより Jun. 2, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-02



 今回は病院事業会計をとりあげる。
 「平成24年度予算(下期)の執行状況」というタイトルで「事業の概要」表が載っている。入院と外来合計で5%ほど前年度よりも増えているが売上は下がったようだ。
 不思議なことに当初予算がでていない、民間企業は当初予算と実績の比較表を作るが、市役所はそういうことをやらないようだ。そういう資料をわたしはいままで見たことがない。
 予算差異があまりのも大きいので恥ずかしくて公表できないのだろうか?でも、作成し公開すべきだ。部門別予算実績対比表を作り、予算と実績の差異分析をして翌年の計画に反映させる、それが経営の基本だ。明細表は市や病院のホームページ上にEXCELファイルで公開すれば簡単だ。それぐらいの情報公開サービスはすべきだろう。こんなことは簡単だから、明日からでも実行できる。

 Plan 1 ⇒ Do ⇒ Check ⇒ Act ⇒ Plan 2 ⇒・・・

 大事なことは学ぶ意欲とそれを支える基礎学力だけではない、志の高さも問われているのである。三つそろってはじめて前に進みだす。



 「経理の状況」には次のような数字が載っている。
  収益 22.2億円
  費用 22.7億円
  純損失0.4億円

 年間売り上げが20~26億円なのに、半期で22.2億円の売上があるなら、通期(年)では40億円を超える売上があることになる。
 このようにあるはずのない数字を並べて市民をたぶらかすところに現在の市政の構造的な問題の一端を垣間見ることができる。

 「収益」には一般会計からの繰入金が含まれている。これは病院の営業収益(売上)ではない。病院事業は平成27年度は16.7億円の赤字である。
 一般会計からの繰入金は経営赤字を補填するものだから、病院収益に含めてはいけない。市立根室病院は平成24年度決算で16.7億円の赤字を出して債務超過会社となり、同額の増資を行うと同時に減資したということだ。だから損益計算に一般会計繰入金を入れてはいけないのである。あたりまえのことだが、増資・減資は資本取引であって損益取引ではない。

 平成18年度から24年度までの売上の推移をご覧戴きたい。

---------------------------------------------
    医業収益  医業費用  不良債務  繰出金額 (単位百万円)
H18 2,527.6   /3,326.3   /280.4  /1063.4
H19 2,090.1   /3,177.3  /1,047.9  /481.4 (不良債務10億円は赤字特例債発行で7年間繰り延べ償還)

H20 2,316.2   /3,465.1   /0.0      /1148.9
H21 2,650.4   /3,823.9   /0.0      /1173.5
H22 2,422.7   /3,598.5   /0.0      /1175.8
H23 2,336.4   /3,636.8   /0.0      /1300.4
H24 2,201.9   /              /          /

*2296「地域医療対話(4): 経営の問題点がよくわかる一覧表」より抜粋
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-12-3


-------------------------------------------------

 長谷川市政の7年間累計で病院事業会計は90.6億円の赤字を出した。一般会計からそれだけつぎ込んだということ、そしてその赤字は大幅に拡大しつつある。このままやれば次の7年間では150億円を超えかねない。放置したら市財政は破綻する。

 年間売上実績は21億~26億円であるから、半期で22億円の売上なんてあるわけがないのだが、病院事業会計の下期「収益」は22億円と記載されている
 平成22年度の売上は表の末尾にあるように22.0億円である。どうしてこういう「虚偽記載」を平気でするのだろう。これでは市民が誤解するのも無理はない。
 企業財務に不案内でかつ不勉強な地元経営者の集まりがあるようで、「ebisuがブログで病院事業が11億円の赤字だと言っているが、「広報ねむろ」をみると黒字になっている、いったいどっちがほんとうなのか」とメンバーから疑問が出され、乞われて本田市議が講演会に招かれ公益事業会計のカラクリの説明をしている。赤字が黒字になる仕掛けが分かったとうことは、目を覚ましたのだろうから、なんとか言ったらどうだろう? 市財政が危機に瀕しているのだよ。
 パトリオット*は一人もいないのか?根室市は市債新規発行枠8億円を16億円もオーバーして予算の辻褄を合わせている。これは全部後年時負担となり、次の市長の予算編成を圧迫することになる。こんな勝手な予算編成を許してはいけない
 財政規律をないがしろにすると災厄はそこに住む住民に降りかかる。そういう意味では国の財政のほうがずっと状態が悪いから、いずれ大災厄となって国民負担を強いることになる
 安倍首相はいい顔をしてミャンマーに5000億円の債務免除、アフリカ諸国に3.2兆円の援助の約束をしている。自国の財政再建はどんどん先送りされている。40兆円の税収で90兆円を超える予算、なんとバカな財政運営を続けているのか、「日本の適正財政規模」は税収の40兆円だ。

---------------------------------------------------
*パトリオット
patriot:辞書には"愛国者"とあるが日本語のこの語とはニュアンスが違う。"自分の生まれ育ったところに敬愛の念を有し、(多少の不利益を省みることなく)ふるさとのためになすべきことをなす者"
とでも定義しておきたい。ナショナリズムのように思想的なものではなく、パトリオティズムは「ふるさとへの素朴な心情と義務」とでもいうべきものだ。

 手元にある英英辞典2冊をみるとナショナリズムとパトリオティズムは次のように定義されている
Nationalism: 2 a great or too great love of your own country
Patriotism: When you love your own country and are proud of it
     (Cambridge Advanced Learners Dictionary)
Nationalism: 2 the belief that your nation is better than other nations
Patriotism: strong feelings of love, respect, and duty towards your country
     (Macmillan English Dictionary)

 ナショナリズムはtoo great love of your own country(度を越した祖国愛)だったり、他国を省みない排他的なニュアンスがあるが、パトリオティズムにはそういう負のイメージはなく、生まれ育ったホームタウンへの素朴な郷愁や誇りにすぎない。しかしそれも程度問題で、容易に排他的愛国主義(ジンゴイズム)へと転化しかねない危うさももっている。
 Patriotism can turn into jingoism and intolerance very quickly. 


#1030 nationalism とpatriotism :遠藤利國訳・幸徳秋水『帝国主義』May 17, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-05-17
-------------------------------------------------


 社会保障・人口問題研究所が地域別の人口推計を公表したが、2040年には根室の人口は1.8万人だ。地元経営者達は謙虚に経営や財務について勉強したほうがいい。いまのままだと2040年には地元企業のほとんどが消えてしまうかもしれぬ。消えてもらっては困るのだよ。イーオン、サッポロコープ、マルシェ、ホクレンと4つスーパがあるが2040年には二つになっているだろう。電気店も一つだけになるだろう。二つあった地元の家具店はなくなった。個人商店が消えていく。飲食店も数を半減させることになる。何年も前から、閉店して店の権利を売りたくてもなかなか売れない状況になっている。
 マチの規模は小さくなっても、いいマチにはできる。1.8万人のコンパクトな活気のある町づくりを目指せばいい。それには本業のレベルを上げ経営の基本をしっかり学びなおすことが必要だ。次の代に事業を引き継ぐためにオープン経営を学べ

 話しが本筋からそれたので元に戻そう。
 病院事業会計は平成24年度16.7億円の赤字だったときちんと報告すればいい。市議会は民間会計基準で予算と決算データの公表を決議したらいい、こんなゴマカシはもうやめよう

 「広報ねむろ6月号」の8ページには「市立根室病院事業会計」の「平成25年度予算の概要」が載っている。

 病院収益 40.3億円
 病院費用 48.8億円
  純損失   8.5億円

 これには一般会計からの繰入が病院収益の中に13億円くらい含まれているのではないか。
 現実的な民間基準の予算に書き直すと次のようになる。
 
  病院売上 23.0億円
  病院費用 48.8億円
    純損失  25.8億円

 まるで違うでしょう?
 この費用の中には、旧建物除却損が2.5億円ほど含まれている。
 損失の規模は長谷川市政になってから年々拡大している。前任者の藤原市長の時代は概ね8億円の赤字だった。
  11億円(平成22年)⇒13億円(平成23年)⇒17億円(平成24年)⇒25億円(平成25年)
  
 市役所職員は市長のために働くのではない、市民のために働いている。正直に誠実に仕事をして、民間企業会計基準でゴマカシのない予算書と決算書そして予算・実績対比表を作成し、市民へ公表しよう。
 市議会は市職員が正直に仕事ができるように、市議会で民間会計基準での病院事業会計データ公表を満場一致で決議しよう。
 関係者がそれぞれ正直に渾身の力で仕事をすれば、根室の町は将来に希望がもてるいい町になる。
  如何なる困難があろうともできることとなすべきことを敢然とやってのけるのが本物の大人、そろそろいい仕事をしたいと思っている職員がいるのでは?男と生まれたなら一度もいい仕事をやらずに定年を迎えるな。ふるさとを愛するなら、こどもたちに胸を張れる仕事をしてみよう。


*#2296 地域医療対話(4): 経営の問題点がよくわかる一覧表  May. 13, 2013  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-12-3

 #2318 わけのわからぬ「根室市の家計簿」(1):広報ねむろより Jun. 2, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-02


------------------------------------------------

*#1415 市立根室病院市民アンケート Mar. 11, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-11

*#1413 市立根室病院へ公営企業法全部適用とは?(1)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-10-1



【予算関連記事】
*#2247 根室市予算案をチェックする(6): 補助9億円「高すぎる」 Mar. 20, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-19

 #2236 根室市予算案をチェックする(5): 国の借金は1100兆円になる
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-03-2

*#2231 根室市予算案をチェックする(4): 成央小耐震改修4億円 Mar. 1, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-1

 #2229 根室市予算案をチェックする(3): 病院事業赤字はどこへ? Feb. 27, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-27

 #2227 根室市予算案をチェックする(2): アカウンタビリティ  Feb. 26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-26

 #2226 根室市予算案をチェックする(1):市債発行額24億円 Feb.26, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-25

 #2203 明治公園再整備市民委員会:市民委員会は市政翼賛装置 Feb. 9, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09

------------------------------------------------




にほんブログ村