スキルス胃癌と巨大胃癌の併発で6年4ヶ月前に胃と胆嚢の摘出と浸潤していた横行結腸の一部切除手術をしてもらった。もちろん、転移していたリンパ節もぞっくりとっていただいたのだが、幸いなことにそれ以上の転移がなかった。6時間の手術で出血は700cc、輸血なし、これには驚いた。
 肝臓への転移が強く疑われたので、「肝臓へ転移していたら1ヵ月後に部分切除します」と術後にきっぱり言われた。開腹した後で肝臓を指で触って異常がないか確かめてくれたようだがそれでも症例から考えて肝臓転移を払拭し切れなかったのだろう。MRIやX線CTではわからないことが、指で触診することでわかるケースがある。幸いなことに肝臓への転移はなかった。
 助からないはずの末期癌、リンパ節への転移と横行結腸への浸潤が認められたケース、しかもスキルスも併発していたのに、腕のよい若き外科医G先生がebisuの命を救ってくれた。典型的な"アケトジ"症例で手遅れだったのだが、あきらめずによく手術してくれた、私は運がよい。
 ドクターGと術場(手術室)の三人の看護師さん、ありがとう。
 私は5年生存確率がほとんどゼロ近い貴重な症例のようだ、生きて仕事をする意味がある。

 鉄分は胃で吸収されるので、貯蔵鉄が減少すればいずれ悪性貧血になると主治医から言われていた。体調の変化に気がつくとすぐに主治医に相談している。体内の貯蔵鉄の「在庫切れ」がいつ起きるかモニターする必要があるので、主治医はとくに鉄や赤血球数のチェックをその都度してくれている。
 この一月くらい身体がふわふわするので、血糖が下がっているのか赤血球数が下がっているのか確認したくて数日前に血液検査をしたら、赤血球数が1年前より25%減少して基準値を下回っている。血中鉄も下がっているから、酸素の運搬能が健常人の70%以下だろう。
 サイクリングで若い人に上り坂で追い越されても、ついていく気がしなかったのはこういう事情があって、身体がSOSを出していたからだろう。ムキになってスピードを出さなくなった、いや出せなくなっていた。
 牧の内コースから風力発電所の方へ向かうと、少しきついアップダウンがあるのだが、坂の上からアップダウンを眺めて、「しんどいな」と、そこから坂を下らずに初めて折り返したのは先月のこと。
10月に東京へ行ったときに、坂を下って散歩しながら買い物につきあい、家への帰り道の上り坂で息が切れて女房にゆっくり歩こうと頼んだ、しんどかったのだ。
 身体の言うことがよく聞こえるほうだから、無理はしない。

 ふじ薬局へよって、処方されたフェロミア錠50mgとメチクール500μgを受け取ってきた。フェロミアは数年前に飲んだことがあるのだが、錠剤のサイズが大きくて喉の接続部分のポケットにひっかかってなんども嫌な思いをしたので、金槌と石で砕いて飲んでいた。前は鉄剤を飲むと下痢や嘔吐感があり体調が崩れたので途中で服用をやめた。

 今回は玄米を口の中でドロドロになるまで咀嚼した後、フェロミアを一緒に飲んだらすんなり錠剤が通過した。食事の最後のところで玄米と一緒に飲み下すと楽なことが分かった。
 これなら一月飲めそうである。
 毎日2錠、半分吸収できれば貯蔵鉄が徐々に増えるだろう。体のふわふわ感がなくなればありがたい。薬の効果を測定するために、1ヵ月後に血液検査をすることになった。何せ胃がいないからどの程度の吸収率になるのかやってみなければわからぬ。結果はブログ上で公開する。

 粘膜を走るスキルス胃癌や通常の胃癌(腫瘍)でもあきらめないで戴きたい。リンパ節転移や大腸への浸潤が認められた症例でも、こうして6年間生きている。5年間再発がなければ完治だそうだ。
 サイクリングでハイスピード走行は無理だが、日常生活をするうえではきちんと自己管理をしていれば問題がない。顔色は青白いが、体調はマアマアだ。自然に自分の体の状態に慣れるものだ。
 手術の前までためていた貯蔵鉄がなくなるのにおおよそ6年間かかったということ。"cancer"というカテゴリーで書き溜めているこの記事が、胃癌でこれから摘出手術を受ける人々の参考になれば幸いである。
 6年後かかって元に戻ったことがある。それは排便時の腹圧である。手術のあとに以前のように強い腹圧がかけられなくなっていた。しかし、最近1ヶ月のことだが、元のように強い腹圧がかけられるようになった。慣れてきたのか内臓の筋肉が鍛えられたのかよくわからない。ただ、肛門を締めたり、息を吐くときに丹田よりも下部に力をいれていることがある。これは数十年間ヨーガの真似事や釈迦の長息トレーニングをしてきた癖が自然に出ているのだろう。気がつくとやっている。いつでもどこでもできるから便利だ。
 最近は息を吐きながら一気に腹圧をかけると50~60センチのウンチがシュルシュルと一気にでてくる、爽快だ。(笑) 

 インプラントをしてから咀嚼が楽になったので、身体は楽になった。口内炎もおさまっている。
 掛かりつけの消化器内科医の先生と歯科医の先生がいるのはありがたいことだ。歯科医のF先生のところとは三代のお付き合い、東京のかかりつけ歯科医である聖蹟桜ヶ丘のH先生とお二人に助けていただいている。

 こうして助けていただいた、そしていまも助けていただいている命をふるさとの子どもたちの学力向上のために存分に使えるのは大きな歓びである。
 体調の許す限り、仕事は正直に誠実にたんたんとやるのみ、そして天に感謝


 

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【貧血について―ドクターの解説】コメント欄より

塾長の貧血は鉄欠乏性貧血?それとも巨赤芽球性貧血?


胃切除後に鉄吸収能が低下し貯蔵鉄が枯渇して血清鉄も低下して発生するのが鉄欠乏性貧血です。症状は鉄欠乏性貧血では,舌炎口角炎,口内異常感と痛み、舌萎縮・食道狭窄感・嚥下痛・さじ状爪などを認めます。鉄の吸収は胃酸の存在で吸収が促進され、十二指腸から空腸上部で吸収されます。治療は鉄欠乏には腸管内徐放鉄剤を鉄量として1日100~150mg 経口投与します。鉄の腸管吸収には還元剤としてビタミンCが促進的に作用するので併用します。鉄剤の内服で効果不十分の場合は非経口投与を行い、通常20~40mgを連日静注します。

一方、巨赤芽球性貧血は胃全摘後のビタミンB12吸収障害によるものです。巨赤芽球性貧血では症状として舌の疼痛・味覚鈍麻・四肢のしびれ感などの末梢神経障害などが出現することがあります。ビタミンB12は食物中で蛋白質と結合して存在し、胃内で分解されて遊離型となり、胃体部および胃底部の壁細胞から分泌されるCastle内因子と結合して回腸終末部で吸収されます。ビタミンB12は肝臓にある程度貯蔵されており、術後数年間はその消費によって代償されていますが4~5年で枯渇してしまいます。このビタミンB12は非経口投与が原則で、補酵素型B12が用いられます。貧血の発症予防が大切で,胃全摘の数年後からビタミンB12を1,000μgの7日間連続注射を1クールとして2年ごとに投与します。


塾生さん達に鉄の吸収部位を正しく伝えて教えてあげて下さい。
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【12月6日追記】
 病院へ採血に行ってきた。貧血が改善していることを一般検査データで確認するためである。
 午前中ギリギリ、11時20分に受付をしてもらった。外来患者は午前中の診療時間が終わりに近づいていたので少なかった。廊下でまっていると、主治医が通りかかり、となりに座って説明をしてくれた。
 単純な鉄欠乏性貧血であって、悪性貧血ではない。飲み薬でデータが改善するかどうかチェックをしているだけ。飲み薬が効かなければ、点滴で静注することになる。
 3週間飲んでいるが、歩くときに感じた息切れ感は消失した。飲み薬が効いたのだろう。結果は再来週になる。わたしのほうの都合で、来週は通院できない。


*#3486 あれから十年:巨大胃癌とスキルス胃癌の併発を超えて Dec. 21, 2016
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-12-21