外来ザリガニ駆除が危機を迎えていた。中心になってやっていた同職員の方が転勤になったからだ。ところが、再開された。16日付の北海道新聞根室地域版に事情が載っている。内容をよく読むと地元住民として考なければならない問題がみえてくる。

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 外来ザリガニ駆除 今年も
  「探偵団」3年目 24日に活動再開
【根室】特定外来生物ウチダザリガニの駆除団体「NEMUROざりがに探偵団」(高橋克己代表)は24日に今年初めての駆除活動を明治公園で行い、3年目の活動をスタートさせる。高橋代表(47)らが根室から転勤し継続が危ぶまれていたが、今年も根室の固有の自然を取り戻す活動を展開する。(栗田直樹)

 代表「気軽に参加を」
 探偵団は環境省が認定する根室管内はウチダザリガニ駆除団体として2010年に発足。日本固有主の日本ザリガニや水草を食い荒らす生態系への被害を防ごうと、ウチダザリガニを10年は600匹、11年は7500匹を捕獲してきた。
 ところが、4月、道職員の高橋代表が根室振興局から遠軽町に派遣異動し、他の中心メンバーも根室を離れ休止状態。活動を支援してきた市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターから「駆除をやめるのはもったいない」と継続を促された高橋代表が根室入りし、24日に駆除活動を再開することになった。
 タモ網5本を持参して根室に来る高橋代表は、「8千匹以上駆除してもウチダザリガニは減る気配がない」と指摘。「自然保護に関心がある人に気軽に参加してほしい。ゆくゆくは運営を担う人がでてくれれば」と期待する。
 当日は午後1時から、公園のひょうたん池で駆除する。申し込みは19日まで。定員20人(先着順)。問い合わせは同センター電話0153・25・3047へ。

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 遠軽に転勤しても、特定外来生物種に指定されているザリガニ駆除に駆けつけてくれる高橋さんに感謝。同姓同名の作家がいた、全共闘世代の人間なら知っているだろう。ebisuの書棚にも2冊あったかもしれない。

 こんなにウチダザリガニが根室に棲息しているなんて考えてもみなかったのだが、そこに気がつき3年前から駆除活動をしてくれた人が転勤族にいた。

 どうやら団塊世代が接してきた根室の自然と現在のものは、モノが違うようだ。市立病院の下には真ん中が木の柵でで仕切られた池があった。ゲンゴロウ、カエル、ミズスマシ、トンギョ、カラス貝など根室本来の水生生物の宝庫だった。湿地を走る幅50センチ前後の川で釣りをすると30分で小魚が10匹ほども釣れた。海も砂浜とか石の突堤とかで水と触れることのできる場所がふんだんにあった。
 病院下の古川の池も花咲小学校グラウンドにあった"底なし沼"も埋め立てられてなくなり、その代りに警察下の根室公園と明治公園に池がつくられた。海岸は岸壁でおおわれ子供たちが遊ぶ渚がなくなった。
 根室市のまちづくり計画にはこどもたちの遊び場を確保するとか、ふるさとの自然を守るという考えがまったくなかったように見える。こどもたちの数がこの50年間で四分の一に減り、あと十年もすればさらに半減するだろうが、こどもの遊び場がなくなってもいいとは誰も思わないだろう。それどころか根室本来の自然をそのまま次の世代へ渡したいと願う人が多いのではないか。
 底なし沼や古川の池でトンギョをとって友だちと遊んだり、石の突堤の水深の浅いところで流氷の乗ってちょっと危険な遊びをしたり、花咲小学校下の渚で友だちと「日本手ぬぐい」で水を掬うと、イカの幼生や小魚がうごめいていたり、花咲小学校の裏山でスキーやソリすべりをしたり…、そういう一つ一つの体験も「ふるさと」であったことに今頃気がつく。
 ふるさとの自然をできるだけ残し、子供たちの遊び場を確保するという考えが少しでもあったら、根室の町はずいぶん違っていただろうと残念である。わたしたちにできることは、これ以上ふるさとの自然を壊さずに次の世代へ渡すこと。

 春国岱がラムサール条約で脚光を浴び、にわかに野鳥観光と騒ぐが、その一方で大鷲やオジロ鷲、フクロウの棲むフレシマ地区での風車建設が持ち上がるなどチグハグな観光市政が見え隠れする。どうしてこんなにぶれるのだろう?しっかりしたビジョンや考え方が腹の底にないからではないか?

 明治公園の池のすぐ近くに啓雲中学校があるが、理科の野外授業をやったっていい。なぜ外来種のウチダザリガニがふるさとの自然にとって脅威なのか実物教育ができる。柏陵中学校の近くの運動公園にも川があるから、そこを調査するのも子供たちの知的好奇心と問題関心を育むためのすばらしい野外授業になるだろう。

 しっかりした考えでふるさとの自然を守り、次の世代へバトンタッチしていくということをそろそろ考えないと、ザリガニ問題ひとつとっても取り返しのつかないことになりつつある。

 省みると、なぜ根室人自身がふるさとの自然を守る旗をふれなかったのかという問題が浮かび上がる。
 根室にはいろんな団体があり、地元経済界関係ばかりでなくイベント関連の団体も多いのに、ふるさとの自然を守ることには関心が薄いように見える。これと学力問題への関心の薄さを重ねてみてほしい。

 集合Aがふるさとの自然を守ることへの関心の薄さ、集合Bが学力問題への関心の薄さである。集合Aと集合Bを重ねるとAとBの交わりの部分に教養の幅とか読書力の低さとか貧弱な知的好奇心の問題などが見えてこないだろうか?

 その一方で、固有名詞を一つ一つ挙げることはしないが、市政に関連のあることに関心の強い団体が多いように思える。
 根室の弱点は損得勘定抜きでふるさとのために何かをしようという人が少ないということにあるのではないだろうか?
 このことは教育問題で釧路の連中とお付き合いをしていて如実に感じることだ。「釧路の教育を考える会」のメンバーは、損得勘定抜きの人が多い。釧路のこどもたちの学力の低さに危機感をもってさまざまな分野の人たちが集まっている。私塾、学校の先生、大学の先生、複数の地元経済団体、市役所の幹部、市教委、市議と実に多彩だ。
 こういうことは自分の個人的立場や損得勘定を乗り越えないと集まって話もできないが、釧路ではそれが可能で現実の動きとなっている。
 集まるだけでどうにかなるものでもない、もうひとつハードルがある、それは問題を分析し短期間で提言をまとめるために仕事ができるメンバー(学力上位層)が核にいることである。釧路にそうした人々が少なからずいた。十分の一くらい根室にだっているだろう、しかし十分の一ではちょっときびしいかな。その分はのんびり時間をかければいいのだろう。(笑)

 特定外来生物の脅威をふるさとの自然に関連付けて考える人が少ないことは想像にかたくない。先週の日曜日(5/10)に第40回古本市があり、いままでで一番本が集まった(2万5600冊)ようだが、漫画の本が増えている(前回の倍の1万冊)のが気になる。これが根室市民の読書レベルの低下のシグナルでないことを祈りたい。

 知的好奇心はさまざまな分野の本を読み、ふるさとの自然を観察することで育つものだ。本にもいろいろある、漫画の本は誰でも読めるし、良質のものも多いのだが、それにとどまっていてはいけない。
 斉藤孝『読書力』の定義では児童書や漫画の本は歯が生えていない赤ん坊レベル、推理小説やSF小説が「乳歯レベル」の読書となっている。永久歯で歯や顎を鍛えるには硬いものを噛まなくてはならない、それが大人の読書だ。そういうレベルの読書を積み重ねてはじめて読書力が身につき、鍛えられる。知的好奇心が幅の広い教養に支えられれば、目先にとらわれずに考えることができる。

 中高生、そして大人たち、読書力を磨いて歯ごたえのある本をたくさん読み、ふるさとの自然や経済をよく見てなにがどうなっているのかを考えよう。その上でどうしたらいいのか忌憚のない議論をしてふるさとの町を住みよいものにしたい。それぞれの職業、各々の立場でできることは多い。

 歯ごたえのある知的レベルの高い本をたくさん読み、知的好奇心を育て、正直に誠実に仕事をする大人になろう。
 
 小欲知足
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」
 

*ウチダザリガニ駆除へ包囲網(旭川江丹別川)2008年9月1日朝日デジタルニュースより
 http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000500809010001

「■旭川・江丹別川 地域総出、1匹ずつ

 道東から道北、道央に分布が拡大している特定外来生物ウチダザリガニ。各地で駆除活動が展開されているが、旭川市郊外の江丹別川流域では官民一体となって駆除の輪が広がっている。地元の小中学校が総合学習に取り入れ、公民館は自主企画で住民を引き込み、上川支庁は市民有志を募って「ウチダザリガニバスターズ」を組織。5月から8月まで9回の駆除や調査捕獲では5千匹を超える成果をあげている。…」


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