昨日のこと、市立根室病院でCT検査をした結果説明を聞きに主治医のところへ伺った。相変わらず2階へ走って駆け上がり内視鏡検査を終え、急ぎ足で下りて来る。診察時間を確保するために移動は走る!息が切れているかと思いきや慣れているからそんなことはない。ディスプレイにCT画像を表示しながら説明をうけた。

 CTは"computer tomography"の略であり、"コンピュータ断層撮影"と訳される。胴体を輪切りにした画像を表示するのだが、今回は続きがあった。板ワサ、かまぼこを想像してもらいたい、包丁で縦に輪切りにしたのが従来のCT画像であるが、これを水平に輪切りにした画像を見せてくれた。もちろん、パソコンでデータを計算して水平にカットした画像*を表示できるわけはないだろうから、CT装置附属のコンピュータで計算処理した画像が市立根室病院から光回線で送られて医院側のパソコンに保存してあるのだろう。
 フィリップス製のX線CTに新しいソフトが導入されたのかもしれないが、詳しいことはわからぬ。道東でEUの高性能X線CTを導入している病院はほとんどないだろう。国産品の東芝製品のシェアが高い。釧路医師会病院では4年前に東芝製のX線CT装置を買い換えているが、それよりも画像が鮮明にみえた。ちなみに医療機器メーカーとしてEUではフリップスとジーメンスが有名だ。米国ではGEとHPだろう。釧路医師会病院がなくなってから市立病院のX線CT装置のお世話になっているがフィリップス製のこの装置で3度目の検査である。最初はぴかぴかだったが、色がすこし年季を感じさせるものに変わってきた。解像度は十分だろうが、病院建て替え後は買い換えるのだろうか?診療上は解像度が高いのでいまのままで何の問題もないだろう。メカ部分にトラブルがなければ買い替えの必要はない。

 それにしてもすごい時代になった。1986年ごろ病理画像診断で将来そうしたことをしたいと考えていたことがあったが、コンピュータの性能も回線の性能も追いついてしまった。病診(病院・診療所)連携ですでに画像伝送が実現している。
 画像伝送データの大きさなど考えなくてもいいほど回線速度もそれを処理するパソコンの性能もよくなった。伝送速度だけとっても当時の10万倍を超えているのだろう。メインメモリーは1980年頃はキロビット単位ではなかったか。64kビットRAMがでたのはその頃だったような気がする。いまではgiga・ビット単位である。100万倍になっている。メモリー量の拡大は社会の質的な変化をもたらしてしまった。

 ドクターの説明は丁寧だった。垂直に切ってみても水平に輪切りにしてもどこにも再発の兆候がなかった。84年に仕事で関わった"古典的な"腫瘍マーカー・CA-19-9の検査結果も大丈夫だ(輸入していたのは東レ富士バイオで関係会社だったので、東証Ⅱ部上場のために利益移転とならないような"客観的"な値決め方式を提案した。私は検査会社へ上場準備要員として中途入だったが、輸入商社での経験があったので東レ富士バイオ側の輸入業務も大筋理解しており、納得のいく方式で仕入値段を決めさせてもらった)。もう一つの腫瘍マーカーCEAもOKだ。
 こうして5年間の癌との戦いが終わり、主治医による根治宣言があった。スキルスと巨大癌の併発だって根治例はある、私がその証拠の一つだ。助けていただいた命は世のため人のために使いたい
 5年間の戦いはいい医者との出会いがあってのこと。地元の消化器内科の専門医のO先生、釧路医師会病院で執刀してくれた若き外科医のドクターGのお陰である。

 旭川医大の撤退による釧路医師会病院閉院を例にとるまでもなく、この5年間に根釧の地域医療は脆弱化の一途をたどっている。道東の町の地域医療に責任をもつ医大がほしい。
 道東の市町の首長たちはこぞって道東医科大学を釧路に新設・誘致してもらいたい。不可能だと思ったらできない、できない理由をとりのぞくために智慧を絞ればいい。誰かに任せっぱなしにするのではなく、それぞれが実現に向けてできる範囲のことをすればいい。


*CT画像の"水平切り"についてあるドクターからサジェッションがあったので注記しておく。

「CTの水平切りは通常見慣れた画像(いわゆる輪切り)で、縦に合成した画像(肉屋の冷凍庫にぶら下がっている奴)を縦切りと言った方が間違いないと思います。今のCTは本体内部のコンピューターが蓄積されたデータを使ってユーザーが求める画像構築が可能です。」

なお、フィリップス製のこの装置は「3D構成もできる~画質の良いマシン」だそうだ。だとすると、水平カットは当初からソフトがもっていた機能である。どういう角度でもカットできる。さすがフィリップス製、たいへんな高性能マシンで、使い慣れてきたということだろう。


にほんブログ村