日本振興銀行事件で木村剛元会長逮捕のニュースが昨日流れた。直接の容疑はメール消去による金融庁の検査妨害だったが、今日の報道によれば粉飾決算容疑も出ている。

 手口は次のようなものだ。経営破綻した振興銀の融資先から木村が創設した「中小企業振興ネットワーク」に参加する中核企業二十数社が不良債権を高額で買い取ることで、その売上金を返済に充て、損失の「飛ばし」をやっていたというのだ。いずれ、これらの中核企業も次々に破綻することになる。預金者から預金を集め杜撰な融資をやり、破綻処理の先延ばしをしていた。その間に実質的な累積損失は膨れ上がっていき、預金者に払い戻す資金がなくなってしまう。時間が経てばすぐにもばれるような稚拙な損失飛ばしにどうして手を染めたのか、まことに理解に苦しむ。本人はごまかしきれないことをわかっていたはずだ。それでも「負け」が認められなかったのだろうか?強すぎる自尊心は身を滅ぼす。

 新銀行東京は出資母体の東京都が損失の尻拭いをしてくれたが、日本振興銀行にはそのような「出資母体」はない。
 新銀行東京は営業開始後4年間で1260億円もの累積損失を出し、東京都が400億円の追加投資をして破たん回避をした。破綻寸前の会社に3億円の融資をするなどそのでたらめな融資業務をやっていたことが明らかになっている。

 日本振興銀行は預金者が一斉に預金を引き出せば破綻することになるだろう。あとは預金者の行動次第だ。

【欠陥品の受験エリートたちによる犯罪】
 粉飾決算容疑で立件されたライブドア事件の堀江貴史は東大中退、インサイダー取引で訴追された村上ファンド事件の村上世彰は東大出身のキャリア官僚、実体のないヘルパーでの届け出による「コムスン事件」を起こした国内最大の介護事業会社グッドウィルグループ創業者の折口雅博は防衛大卒業などいずれも受験エリートである。
 そういう者たちの中に自分さえよければ何をしてもよい、不正直・不誠実な仕事をする輩が増えているような気がする。受験エリートがみなこういう輩であろうわけもなく、ごく一部の例外であるが、受験勉強ができたって心根が曲がっていたらとんでもないことになるのだよという見本を提供してくれている。
 自分さえ儲かればいい、自分さえよければ何をしてもよい、そうした価値観を経営の基盤に据えた新興企業は長続きしない、一時のあだ花である。
 住友家の家訓は「浮利」を追うことを禁じている。職人主義経済の価値観である「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」を経営の礎とする企業のみが時間の試練に耐えて生き残る企業となる。
 受験勉強ばかりでこころの芯をまっすぐに育てることを怠るとホリエモンやムラカミ君やオリグチ君になってしまうから要注意だ。

【能力不相応の地位にできる隙】
 東大経済学部卒業、元日銀マンの木村剛、この程度のお粗末な男が数年間も日本の金融行政の中心にいたのは「引き」があったからである。竹中平蔵元金融相が実務に不案内なのでコンサルタントの木村を片腕として使った。その後ろには内閣総理大臣小泉純一郎がいた。
 仕事のできない者(竹中平蔵)が責任者(金融担当大臣)の地位に就けば、こういうとんでもない輩が付け入る隙ができる。
 過去の話ではない、民主党政権もよほど注意しないと同じ轍を踏む。為政者に一番必要な能力は使う人の能力と心根を見極める力だろう。

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*#1112 日本振興銀事件(1):元会長木村剛(48)逮捕 July 14, 2010 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-07-14-1