養老牛温泉夜話(2) #783 Nov.3, 2009
<花まる:回転寿司の最高峰>
 回転ずしの花まるで食事をした。寿司ネタは地元のものを中心に。ウニはミョウバン処理していないし、イクラも美味しい。わたしはイクラが嫌いで食べられない。なんど挑戦しても嫌だ。マツブ、カレイのマツカワ、甘えび、ホタテなどが大好きだ。花まるはネタが新鮮で美味しい、そして安い。「東京の半分の値段だ」というのがKさんの感想だった。イクラの軍艦巻きを食べるとき嬉しそうな横顔をみせた。根室のイクラは今が旬である。
 
<近くに見える巨大な島影>
 牧の内のサイクリングコースを見たいというので、T字路まで走った。根室高校の広いグラウンド前を通り過ぎて、信号のない道をひた走る。納沙布へは行ったことがあるというので、T字路を左折してオホーツク海へ出た。今日は国後の島影が濃い。根室からは知床半島の先端と国後島とが重なって、つながって見える。茶々岳を指差し、
「あの辺りから国後島です」
「え、おおきいね、こんなにあるの」
「おっきいでしょ」
国後島の泊(とまり)までは地図上で直線を引くと根室港から約45キロ、釧路までの三分の一の距離である。島の長さは120キロメートル、芭蕉湾(根室湾)から見ると圧倒的な重量感で迫ってくる。
 歯舞漁協が監視船を転用して、「北方領土クルージングツアー」をはじめたようだ。あいかわらず斬新な試みをやってくれる。根室漁協は組合長の不祥事や保険組合専務理事の使い込み事件など不祥事続発、やる気が失せたのかアイデアが枯渇してしまったのか、あたらしい企画がさっぱり出てこない。流れが止まって水がよどみ腐ってしまったのだろうか。トップがこういう見識のない者では職員が気の毒だ。 
 国後島の圧倒的な大きさをみたら2島返還論は言いにくいだろう。択捉島はさらに大きい。200キロメートルもの長さでオホーツク海と太平洋の間に横たわっている。沖縄よりもはるかに面積が広いことは案外知られていない。水産資源は豊で、北海道全域を併せたぐらいもあるかもしれない。

<春国岱>
 ちょっとだけ寄って木道を橋の真ん中まで歩いた。曇っていたので鳥がいない。水はきれいだ。ここではホッキ貝やアサリがとれる。一週間前にSと歩いたときには鳥が一杯いたのだが、まったく鳥の姿が見えない。曇りの日はどこに潜んでいるのだろう。
 遠くに丸太を組んで造ってある見晴台がみえた。一度行ったことがあるが、ロープを張って入れないようになっている。だいぶ痛んで昇るのは危ない。
 そのまま朽ち果てさせるのは可愛そうだ。いっそのこと人を集めて、火を放ち、大きなキャンプファイアーに見立ててお祭り騒ぎをしてもいいのではないか。春国岱の中には3年ほど前の強風で大木がたくさん倒れている。チェンソーで1メートルほどにカットしてあるのもある。搬出しなければ虫がわき、腐って大量のメタンガスがでる。搬出して燃やして二酸化炭素にしたほうが温室効果が小さくできる。搬出にはお金がかかる。以前のブログで書いたがSがいい案を考えてくれた。ヘリで橋のこちら側の広い空き地へ運び、カットして欲しい市民が自由に持ち帰り燃料にする。根室市民みんなで智慧を絞り、協力してなんとかしたいものだ。

<中標津と根室、町の性格比較>
 根室の町は漁業中心だ。酪農の中標津と好対照である。漁業は略奪産業で、酪農は主として牧草と家畜を大事に育てることで成り立っている育成産業である。細かいことを言うと、漁業もカレイのマツカワのように養殖・放流したり、アサリや昆布のように管理・育成しているものもあるが、概ね「略奪産業」と一括りにして間違いではなかろう。
 漁業には計画性がないし、コツコツ積み上げるということも少なく(うーん、これも語弊がある)、どちらかと言うと出たとこ勝負で博打に近い。酪農の町はすべてがコツコツとまじめに積み上げるイメージがある。そうした主産業の違いが町の性格を規定している。

 根室の町がこの30年ほどで中標津に負けた理由のひとつは車の普及である。中標津は商圏としては根室よりも大きい。別海や標津、羅臼までも含む。概ね6万人の人口を有する。これは道路がよくなり車が普及したことが影響している。
 空港のあることも札幌や東京へのアクセスに差がついた理由である。

 東武サウスヒルズにビールとつまみを買いに寄った。季節限定の「琥珀エビス」が旨いというのでそれとつまみを少々買った。このショッピングセンターの規模の大きさにKさんが驚いた。根室にはこれに匹敵する規模のショッピングセンターはない。
 ついでに、通りを標津の方へ走り、KS電気、ホームセンターやユニクロ、ビッグハウス、シマムラ、ツルハドラッグなどの前を通った。

 東武サウスヒルズは中標津資本である。根室の業者は残念ながらこれだけの規模のショッピングセンターを自前でもてなかった。理由は仕入である。中標津の地元資本はコツコツと仕入先を開拓し続けたが、根室の資本は仕入先開拓ができなかった。この能力の差は何か?
 略奪産業主体の根室は漁師が主体、付け買い・定価販売が常識だった。漁がよいときにまとめて支払う。そのために小売業者は利幅を大きくできた。定価販売だから、仕入を安くする必要がなかった。中間業者(道内卸)からの仕入れに頼った。長年、そうした習慣がしみついていたから、大型店ができても仕入れ開拓ができなかった。したことがないことはなかなかできないものだという証明だろう。中標津は仕入を安くすることで利益を確保した。30年にわたってよい品物を安く仕入れるために営々と仕入先を開拓し続けてきた。
 
 こういう見方があたっているかどうかわからないが、一応論理的ではあるので、Kさんに説明した。翌日、温泉の帰りに立派な町立中標津病院建物と広い駐車場を見て、「病院も中標津に負けているな」、二人で同じことをつぶやいていた。

<病院建て替え問題と戦略性の欠如>
 とうやら根室の町には戦略性が欠けているようだ。目標を設定してそれに向かって営々と努力を続けることが苦手な町である。
 病院建て替え問題ひとつとっても、どのような医療が必要なのかという分析や、マスタープランがない。耐震化補助金をもらわなければならないから、必要な病院機能すら議論せずに着工を急ぐとういばかげたことをやっている。11億円の補助金をもらうために20億円も割高な病院を建てようとしている。ほんとうに阿呆だ。建築仕様や院内情報システム要件書を作る努力はまったくなされていない。市民へ説明すべき内容がいまだにないのだ。建設特別委や市議会、病院事務局からは何年経っても、現実的で具体的な提案がなされなかった。
 私たち根室市民はどのような病院が欲しいのか、それはどうすれば手に入るのか、次回はKさんの提案を語ろうと思う。