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養老牛温泉夜話(5) #786 Nov.6, 2009 [23. 養老牛温泉夜話]

養老牛温泉夜話(5) #786 Nov.6, 2009

<携帯及びゲーム依存症と学力、そしてコミュニケーション障害>
 窓辺近くに餌をついばみに来るカケスを眺めながら、コミュニケーションや音読の苦手な子供たちのことをKさんに話していた。
 根室の子供たちは、ゲームや携帯電話、インターネットに嵌っている時間が他地域の子供たちより長いことは、全国学力調査のときのアンケート調査で明らかになっている。その分、勉強する時間がなくなるから、学力は低下する。北海道14支庁管内で最低の学力水準である。

<本の音読が苦手な子供>
 子供たちを見ていると日本語の音読が苦手な者が20%程度はいるようだ。こういう生徒たちは日本語の語彙(ボキャブラリー)が極端に少ない。読めない漢字が実に多い。漢字の読みはもちろんのこと、意味も知らない。あまりのボキャ貧ぶりにこの子達は日本人と言えるのだろうかと疑問がわく。
 程度がわからないだろうから具体的に書こう。中学生に『読書力』斉藤孝著・岩波新書、『国家の品格』藤原正彦著の音読をさせてみると、読めない漢字が1ページ当たり10個ほどもある生徒がたまにいる。読めない単語の大半が日本語として意味がつかめていない。
 そういう子供たちは本を眺めても読めない部分が多いし、読んでも意味がつかめない。意味のあるものとして前後関係を理解しながら読み進むことができていない。
 問題文はどの教科も日本語で書かれているから、文の意味理解の速度や正確度が他の生徒に比べて著しく落ちる生徒は成績が振るわない。
 音読は次の行まで先読みをしながら声に出していかないと、流れるようには読めないものだ。意味がつかめないと、とくにひらがなの多い部分は区切りがわからずつかえる。音読は文を先読みしながら意味の塊を確認して区切りを見つけて読み進む高度な頭脳プレーである。脳をフル回転しなければ流れるような音読にならないのである
 小中高生の時期の文章の音読が脳の発達に強い影響を与えている可能性が大だ

 ゲームや携帯への依存でコミュニケーション能力の発達が止まってしまう子どもたちがいる。話しかけても3回に2回は返事をしない。相手の表情を見ていないのでコミュニケーションに対する反応が著しく鈍感になっている。
 たまにだが、先月まできちんと反応していたのに、話しかけても反応が急激に鈍くなってしまう生徒がいる。そういう時はインターネットや携帯電話に嵌っていないか確認するが、ほとんど推測があたってしまう。
 脳が急速に成長する中学生の時期にゲームや携帯電話への依存が強くなると健全な脳の発達が阻害されてしまうようにみえる。
 そういう子供は自己抑制力や辛抱力(我慢力)が未発達なまま大人になってしまうのではないだろうか。仕事に就いても、辛抱できなければ、何度転職を繰り返してもしっかりしたスキルが身につかず、いつまでも半人前だ。

 日本語の音読の苦手な生徒は英語の音読がもっと苦手である。声を出すこと自体が嫌なようだ。だから英語の音読が下手な生徒は日本語の音読がどの程度できるか確認することにしている。

<ゲーム・携帯依存症と発達障害>
 ゲームや携帯電話やインターネットは便利な一面で、人間同士の"face to face"の直接的なコミュニケーションを妨げる場合があるように見える。過度な依存が生じた場合がそれにあたるだろう。なにごともバランスが大事なことは言うまでもない。
 小学生高学年から中学生にかけては生活習慣が固定化する時期でもあるし、急激な精神的発育が生じる時期でもある。そのような時期に良質の本を読むとか、精神の発達にとって「滋養」ともいえる「良質の刺激」が必要である。
 ゲームや携帯電話に嵌っているこどもたちは本を読む時間や勉強する時間、そして直接コミュニケーションする機会が著しく少なくなってしまうようにみえる。個人差はあるものの、過度の依存により強い影響を受けて、精神的に未発達なまま大人になる者たちが増えているようだ。自己抑制力が鍛えられず、未発達なまま大人になってしまう。
 最近の犯罪、無差別殺傷は背景にコミュニケーション障害や精神の未発達な例が多く含まれているのではないだろうか。読書や適度なコミュニケーションはストレスを解消する効果がある。
 誤解があるといけないから、コミュニケーション障害を二つに分類してみる。
①人と話すことが苦手なだけで、ボキャブラリーも豊で読解力があり、自制心も十分ある。
②人と話すことが苦手で、ボキャブラリーも少ない。音読が苦手で、国語の成績が悪く、成績が全般的に振るわない。ある程度努力はするが、成果が出ない。

 人とのコミュニケーションはできるがボキャブラリーに問題がある場合を二つに分類する。
③人と話すことは平気だが、音読が苦手で、国語の成績が平均よりも悪く、成績が全般に振るわない。ゲームや携帯に嵌っている場合が多い。
④人と話すことは平気だが、ボキャブラリーが極端に不足して音読が下手である。嫌いなことを辛抱強くやり抜くということも苦手なタイプ。わがままで「辛抱力」に欠けるタイプ。もちろん成績は振るわない。


<対処法>
 Kさんがあるソウルシンガーのことを話してくれた。吃音だった彼は、ソウルミュージックを聴いたときに魂を揺さぶられた。そしてソウルミュージックを歌うことにのめりこむ。吃音はいつの間にか消えてしまっていた。①と②の両方に効果があるだろう。
 セラピー犬という種類の犬がいる。特別に訓練されて犬で、飼い主に寄り添い、飼い主のハッスル声に反応する。褒めてやると尻尾を振って喜びを表現する。簡単な英語の単語だったはずだが、褒める言葉がなんだったか思い出せない。"good boy"だったような気がする。
 シンガーが舞台でその言葉を声を合わせて言うように観客に要求すると、犬は褒められるということを感じて尻尾を振る態勢に入る。観客が声を発した途端に千切れんばかりに尻尾を振る。これから褒めるぞという心が犬に伝わっているのである。ここのところは、Kさんの話しを聴いたときには思わず涙がこぼれそうになるほど感動的なシーンだったのだが、文章が拙劣でブログを読んでいただいている皆さんに感動をお伝えできないのが残念である。

 犬には人間の心が伝わる。その犬に話しかけることができれば次の段階は人とのコミュニケーションである。これも①と②に効果があるだろう。直接、他人とのコミュニケーショントレーニングをせずに、迂回するところに特徴がある。一段階入れれば、次の段階への以降がスムーズにできるということだろうか。

 本の音読が苦手な生徒に無理やり本を読むトレーニングをしていい場合とダメな場合のあることに最近気がついた。後者の場合には音読トレーニングを強いると塾を辞めてしまう。ほとんどの生徒は音読トレーニングを強いることで、音読は上手になるし、国語の成績も顕著に上がってくるものだ。国語のテストが30点台しかとれなかった生徒が半年音読トレーニングをして、出てくる漢字を片っ端から10回ずつ書かせたら、70点以上とれるようになった。それ以来、中学生には授業時間を15分ほど延ばして音読と三色ボールペンで線を引くトレーニングをするようになった。
 だが、声を出すことが嫌いな生徒をよく観察してみると、声が小さく、楽しんで音読できていない。こういう場合は、直球勝負はダメだ。好きな歌を歌うのがいいだろうが、初めのうちは誰もいないところでやるのがいい。他人がいると恥ずかしがって大きな声で歌うことができないからだ。

 好きな歌を歌うことで大きい声を出すことに慣れることができるし、セラピー犬に話しかけることがコミニュケーションが苦手な人の会話トレーニングになりうるという。具体例を挙げて説明してもらってよくわかった。
 音読が嫌いな生徒にどのように対処すればいいか考えあぐねていたが、Kさんから聴いたソウルシンガーとセラピー犬の話しが参考になった。
 生徒は一人一人違うので、教える側はできるだけたくさんの「引き出し」を用意しておかなければならない生徒Aに有効だったことが、類似の問題を抱えている生徒Bには通用しないということはよくあることだろう。新しい生徒にめぐる合うたびに、学ぶのは教えるこちらの方だ
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