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養老牛温泉夜話(6)<市立病院中小企業論> #790 Nov. 8, 2009 [23. 養老牛温泉夜話]

養老牛温泉夜話(6) #790 Nov. 8, 2009

<病院は中小企業、院長は中小企業のオヤジ、経営成績はオヤジ次第>
 病院経営についてKさんは面白い假説を展開して見せた。600ベッドもあるような大病院は別として、300ベッドクラスまでは中小企業だというのである。
 中小企業の経営はオヤジに権限が集中しており、独裁型も少なくない。したがって、経営成績はオヤジの力量次第。会社経営というよりは、個人企業の色彩が強い。会社経営の視点があるからこそ、個人経営の特徴がよく見えるのだろう。数十の病院経営をつぶさに観察してえた結論のようだ。
 わたしは公立病院経営を企業経営とは別のものとしてみてしまい、共通点を見逃していたのかもしれない。事務長に経営者としての機能分担を考えていたから、Kさんの切り口―病院経営は中小企業経営であり、院長は中小企業のオヤジだ―が斬新なものに見えた。
 これは今書いていて気がついたことだが、医療の職人にすぐれた経営者としての能力を備えた者は少ないのが現実であるから、病院=中小企業論が人材難という袋小路に入り込む懸念はあるので、そこを打開する展望も必要だろう。やはり、わたしは事務長と院長の二人三脚による病院経営に期待をしたい。だが、Kさんから、経営能力を有する事務長も同様に稀であるをいう指摘がありそうだ。病院経営には企業経営には還元できない病院特有の何かが残りそうな気がしてならない。しばらく考えてから、これらの点についてKさんとまた話しをしてみたい。

 ところで病院事業は基本的にはサービス業という業種に属するのであるが、設備の重さからは製造業に近い気がする。広い病院建物は工場に、高額の医療機器は製造設備に匹敵する。
 医療サービス業でありながら、医者も看護師も薬剤師もレントゲン技師も検査技師も立派な職人である。そうした点からも製造業との共通点が多い。
 ウィキペディアによれば中小企業の定義は次のようになっている。

1.資本の額(資本金)又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であつて、製造業建設業運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く)に属する事業を主たる事業として営むもの

2.資本の額又は出資の総額が5000万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人であつて、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの

<経営責任は権限と裏腹:人事権の問題>
 Kさんは病院は中小企業だと主張するのには根拠がある。相似性と言い換えてもいい。経営成績が企業主であるオヤジ(院長)次第であることが、中小企業との相似性だというのである。数十の病院を自分の目で見て、院長や病院スタッフと直接話し、経営状況を比較しての結論である。
 中小企業だから、市立根室病院の経営改善もオヤジである院長次第だというのである。事務長ではない。その場合に、問題になるのは人事権だという。

<経営形態についてK氏の意見>
 地方公営企業法「全部適用」で院長を指定管理者にする案が考えられる。しかし、職員が公務員であること、予算を市役所の総務部あるいは財政課が握っていることから、実質的な予算権と人事権をもつことができないのが現実だ。こういう点を考慮すると、経営形態は地方公営企業法の全部適用よりも、事業管理者が院長で非公務員型の独立行政法人にするほうがよいというのがK氏の意見である。経営の自由度が大きくないと責任をもった運営ができない。

 具体例として、「昨年4月に那覇市立病院が、今年4月に静岡県の3病院が独立行政法人になった例を挙げている。山形県では昨年4月に県立日本海病院と酒田市立病院が合体して、あらたに非公務員型の地方独立行政法人*(2)になったのがユニーク」であるとメールで知らせてくれた。
  Kさんは市立根室病院が最終的には大学付属病院になるべきだとして、「お手本に」筑波大学附属水戸地域医療センター*(3)を具体例として挙げている。

<経営形態について公認会計士長氏の意見> 
 比較のために公認会計士の長氏の見解も確認しておきたい。長氏は経営形態について次のように提言をしている。
「根室市は、独立法人化を乗り越えて、一気に指定管理制度に行くのが懸命。独立行政法人は、医師確保にそれほど苦労していないようなところでないと意味がないと思っております」(2008年10月6日根室での講演会議事録、8頁)*(1)
例として、Kさんが挙げた山形県の病院の行政視察を勧めている。
「懇談会で取り上げたのは、山形県立日本海病院と市立酒田病院が経営統合して、独法化した事例をモデルにしている。将来、独法化するのであれば、行政視察はここに行かれたほうがいいというふうに考えております。」(同8頁)

<経営形態について―まとめ>
 指定管理制度を利用するとして、応募があるかないかというところが判断の分かれ目だろう。大学病院の付属病院化調整が事前についているなら、その問題はなくなる。

 権限のないところ経営に対する責任も生じないというのがKさんの持論だ。非常に明快で論理的なところがKさんの持ち味だ。説明のしかたも巧い。「夕令暮改」の都度、経営方針の変更理由をきちんと説明してきたことが、自然な語り口の中に説得力を与えているのだろう。

 仕事の重要な判断に関しては、私は違うソースから情報をとって比較する癖がある。
  専門家二人、長氏とK氏は経営形態に関して結論が一致している。最終型は大学を指定管理者にした大学付属病院化である。根室にとっては医師の安定供給が魅力だ。
 不等式で示せば次のようになるだろう。

 院長を事業管理者とする地方公営企業法全部適用 < 事業管理者を院長とする非公務員型独立行政法人化 < 指定管理制度による大学付属病院化

 さて、どういうステップで最終型にもっていくべきか。


<地域医療に関するビジョンやマスタープランの必要性>
 Kさんは、市民あるいは医療協議会などが根室市の10年後までの地域医療ビジョンをまとめ、やってもらいたいこととそのためにどこまで市が負担するのかを決めてから、道内3大学に市立根室病院の大学付属病院化を提案すべきだという。
 わたしたち市民もある程度は汗をかかないと良い病院は造れないということだ。

 これで、養老牛温泉夜話を終わるが、根室に来ていくつかの提案をしてくれたKさんに感謝したい。

*(1)講演会議事録URL http://www.city.nemuro.hokkaido.jp/dcitynd.nsf/image/69444edddc9a05b2492570c700077f92/$FILE/kouenkaikiroku01.pdf

*(2)地方独立行政法人・日本海総合病院酒田医療センター・ホームページ
 http://www.nihonkai-hos.jp/medicalcenter/

*(3)筑波大学附属病院戸地域医療センター
 http://www.tsukuba.ac.jp/topics/20081113112645.html
 http://www.tsukuba.ac.jp/topics/20090331210339.html
 http://www.tsukuba.ac.jp/public/press/081107press.pdf
 (筑波大と茨城県厚生農業協同組合連合会との協定書)
 http://www.mitokyodo-hp.jp/15_mmc/15-00.html
 (水戸協同病院ホームページ)

筑波大学附属病院水戸地域医療教育センターに関する協定締結

(2008.11.07)
 11月7日,筑波大学と茨城県厚生農業協同組合連合会とで,筑波大学附属病院水戸地域医療教育センターに関する協定を締結しました。
 この協定は,人的・物的資源の活用により相互に連携協力し,水戸協同病院内に「筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター」を設置し運営することにより,地域における診療活動を通した教育・研修及び医師の育成に寄与することを目的として締結したものです。
 締結式は,筑波大学からは岩崎洋一学長,田中敏副学長,山田信博附属病院長を始め各副病院長,医学群長,臨床医学系長らが,また,茨城県厚生農業協同組合連合会からは,市野沢弘代表理事会長,宮本幸男代表理事専務,萩谷和哉常務理事,平野篤水戸協同病院長らが出席し,山田附属病院長からの協定締結に至るまでの経過説明の後,岩崎学長及び市野沢会長が協定書に調印しました。
 協定締結により,今後,更なる地域における医療の充実,診療活動を通した教育・研修及び医師の育成が期待されます。

筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター開所式挙行

(2009.03.24)
 3月24日11時から,総合病院水戸協同病院にて,「筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター」開所式を挙行しました。
 このセンターは,地域における診療活動を通した教育・研修及び医師の育成に寄与することを目的として,平成20年11月に締結した茨城県厚生農業協同組合連合会との協定に基づき,水戸協同病院内に設置するものです。
 水戸協同病院1階玄関前にて行われた除幕式では,平野篤水戸協同病院長の挨拶のあと,川俣勝慶茨城県副知事,加藤浩一水戸市長,市野沢弘茨城県厚生農業協同組合連合会長と,筑波大学からは,山田信博附属病院長,渡邉重行センター長が参加し,序幕を行い,同センターの開所を盛大に祝いました。
 その後,水戸京成ホテルへ場所を移した式典・祝賀会では,市野沢会長,山田病院長,川俣副知事及び加藤市長の挨拶に続き,和やかな懇談となりました。
 同センターは本年4月1日から活動を開始し,水戸地域及び県北地域における診療の充実,さらには医師の教育・研修及び医師の育成も期待されます。

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